Share

死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?
死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?
Auteur: 桜立風

1.

Auteur: 桜立風
last update Dernière mise à jour: 2026-02-28 15:47:09

「あの…神西課長、大丈夫ですか?」

ついに、言ってしまった。

…言ったそばからもう後悔する。

「…は?」

ゆっくり振り返った顔が怒っていて…

それより言いたいことがあると、その端正な顔に書いてあるのがわかる。

「そんなことより、企画書は?」

「はい!…わかってます。今、マネージャーに提出してちょっと見てもらってるところで…」

「…どうしてそんなまどろっこしい事をする?できたらすぐに俺に出せと、何度言ったらわかるんだ?!」

いつの間にか怒られるこの構図…予想できてたから今まで言えなかった…

「…だって!神西課長、背中に大きなカマを背負ってるから、ずっと気になって!」

マーケティング戦略部の神西蓮【かみにしれん】は、32歳という若さで課長に昇進した強者で、私…鈴原凛花【すずはらりんか】の目の上のたんこぶ…いや、直属の上司だ。

昼休み。外へランチに行く社員で賑わう1階エントランスで、流れに逆らうように前を歩く神西に気づいて、つい声をかけてしまった。私も、コンビニでサンドイッチを買ってオフィスに戻るところだった。

「…今、なんと言った?」

「え、あの…ずっと、危ないなぁって、思ってまして…」

早足で近づいてきて、大きな手が肩を掴む。クールで色気ある目元がたまらない、と言われている顔が、顔面蒼白になっているように見えた。

「とりあえず、こっちへ来い」

「…え、あの…」

勢いよく引っ張られて、サンドイッチが袋から飛び出してしまった。拾うことも許さず、階段を上がり始める神西。

「か、階段ですか?うちの会社、28階ですけど…」

2階あたりまでは何とかついて行ったが、3階になるともう息が切れる…

「ふん…運動もしてないのか。若いからって病気にかからないと思ってるな?」

「…え?運動不足で病気?」

「生活習慣病は、運動不足が原因のひとつだろう?」

だからって、今階段を登らせなくてもいいのに…ちゃんと、運動を習慣化するから…今はエレベーターに乗せてほしい。

心の声は届かず、結局引きずられるようにして、オフィスのある28階に上がってきた。

倒れるように床に座り込み、ゼェゼェと息をする凛花とは違い、神西はまったく息が乱れていない。

…嘘でしょ?あのスピードで階段を駆け上がって、汗もかいていないなんて…

トップアスリートか?

「…早く来い」

再び腕をつかまれ、凛花は無理やり立たされた。そして神西が引っ張っていく方向に仕方なく足を踏み出せば…そこは使われていない会議室。

背中を押され、やや乱暴に中に入らされ、さすがの凛花も怒りの表情で神西を見上げる。

「…いったい、何なんですか?ちょっと乱暴だと思うんですけど!」

汗もかかず、髪も乱れず、息も上がらず…ただ冷たい目で自分を見下ろす上司に、凛花は食ってかかった。

「いつからだ?」

「…は?」

「さっき言ったことだ。いつから、俺の背中にカマが見えていた?」

眉間に深いシワを刻む目元を、凛花は少し怖いと思う。…でも、言ってしまったものは仕方ない。

「2年前入社して、マーケティング戦略部に配属された時からです」

「…初めて会った時から、ということか?」

「あの…初めは、よく見えなかったんですけど…背後に何かが見える、といった感じで」

じっとこちらを見るまなざしに、驚きの表情が混ざった。

「それが、時間が経つにつれハッキリ見えるようになって…それが大きなカマだとわかったのは、」

一歩…神西が近づいてきた。反射的に、一歩…後ろへ下がる凛花。

「大きなカマだとわかったのは、いつだ?」

「3…ヶ月くらい前です…」

もう一歩進んできた神西。凛花はさらに後ろに下がった。

「…それを」

さっきと同じように大きな手が伸びてくる。今度は、両手だ。何とも言えない緊張感で、とっさにその手から逃れるようにさらにさらに後ろへ下がる。…が、背中に冷たい壁の感触が当たった。

「それを、誰かに話したのか?」

「…い、いえ…」

壁が、もう後ろへ下がれない事を知らせる。凛花は余計なことを言った自分を、激しく後悔し始めた。

「だ、誰にも言いませんし、その…もうこんなこと言いません。…忘れます」

ただ、大きなカマを背負う神西を見ても、誰も何も言わないことが不思議だった。

女子社員のほとんどは、神西に憧れて見惚れるばかりで、さりげなくその背中に触れる人もいたから、1人でヒヤヒヤしていた。

今ならわかる。…あのカマは、自分にしか見えていなかったのかもしれない。でもそれはそれでおかしなことだし、自分の目はどうなってしまったのか心配ではあるけど…

「…1人で忘れるのは無理だ」

ついに、神西の大きな手が、自分の両腕にかかった。

切りつけられそうな鋭いまなざしに捕らえられるくらいなら、こんなこと、言わなければよかった。

今も神西の背後に、大きなカマが見えている。

なんで私にはこんなものが見えるのよ…!

ギュッと目をつぶった瞬間、大きな影が…自分の上に降りてきたように感じた。

恐怖とは裏腹に…唇に柔らかい感触を感じる…

これは、もしかしたら…キス?

温度のない唇…なのに長いキスだった。

どうしてキス?…このタイミングでなんでキス?

「…鈴原」

名前を呼ばれ、目を開けた時には、神西はすでに凛花から離れていた。腕を組んで冷たい視線を向けている。

「どうだ…?」

「…は?今のキスでドキドキしたか、とか聞きたいんですか?」

…腹が立った。いきなり脈略のないキスをして感想を言えというのか?

初めてのキスだったのに…

「冗談じゃありませんよ?!女子社員は自分がキスをすれば皆言うことを聞くとでも?…べ、別にそんなものされなくても、言わないでほしければ言いませんよ!…背中のカマのことは!」

まくし立てて脇をすり抜けようとした凛花を、再びつかまえる神西。

「…ちょっと待て。…お前まさか、効かないのか」

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Latest chapter

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   4.否が応でも

    「今日から、俺の部屋においで」…妖艶な香りと共に寄り添うのは、神西。「い…いつの間に?」驚く凛花の目が、今朝は注がれなかった自分の背後を見ていると気づく。やはり…忘却のキスの効果は短いと知る。「…忘れ物に気づいて…取りに行こうと思って来た」「…え、何を、忘れたんですか?」「替えの…ネクタイを」取り返しのつくものだったとホッとしたのだろう。凛花はそれでも律儀に言った。「…こんなことになっちゃって…あの、お給料が出たら買ってお返しします」グスッと鼻をすすり、涙ぐむ目元を拭くのを見て、神西はわずかに首をかしげた。なぜ泣く…?引っ越したばかりでたいした荷物はなく、ほかの入居者もいないというので焼き払ったのに。…俺の魔力で。「こ…ここですか?」「そうだ。まぁ古いマンションだが、造りはしっかりしている」薄暗い廊下にオレンジ色の裸電球がぶら下がり、エレベーターの中の明かりも、切れかかってチカチカしている。「ひ、1人の時は…階段が良さそう…」…ここに住む気になったようだ。つい、口角が上がる。5階建ての4階に到着し、一番手前のドアを開け、まずは凛花に入るよう指先で示す。「あの、鍵は…閉めてないんですか?」「あぁ。盗られて困るものはないからな」本当は鍵などなくても、バリアを張れば…誰もこの部屋に入れないからだ。「君は、この部屋を使ってくれ」恐る恐る足を踏み入れた凛花に、神西は後ろから声をかけた。「…ヒィ…っ…!」と驚いた声を上げ、慌てて口元を押さえる凛花。神西が開けたドアの向こうに入っていく。明るさや日当たりなどを求めない死神の住まいは、夏はひんやりとしているが、冬なら極寒の寒さを誇る。「…わぁ…見晴らしがいい部屋ですね」そんな住まいのなかでも唯一陽射しが入る部屋を凛花に与えた。4月とはいえ…まだ寒い夜もある。彼女には長い寿命があり…わざわざ暗い部屋で寒さに耐える必要なはい。…死神でも、それくらいのことは考えるのだ。「シャワーも風呂も、好きなだけ使ってくれ。人間は、温まるのが好きだろう?エアコンも自由に操作して、快適を追求したらいい」「人間は…って、神西さんだって同じ人間じゃないですか!」「いや、俺は…死神だから」「死神って…!」笑う凛花に、自分の名前の由来を話した。「神西は…『しにがみ』を入れ替えて作った偽の名

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   3.

    …いったいどういうつもりなのか。本当に部屋にやってきた上司が、部下の部屋で普通にスーツの上着を脱ぐなんて…会議室での話は、役員たちが集まってきて呆気なく終わった。2人で中にいた事をごまかすように、とっさに会議の準備を手伝っているふりをした凛花。…お茶汲みまでさせられたところで、神西に声をかけられた。「ありがとう鈴原さん。もうデスクに戻っていいですよ」ドアを開けてくれる仕草が自然で、意外にジェントルマンだと感心したのに…バシッと強めにファイルを押し付けられた。「…このファイル、あとでよく目を通しておいてください」デスクに戻って確認してみれば…中味は小さなメモ1枚。『寄り道厳禁。帰宅後、すみやかに鍵をかけて俺を待て。帰りの予定は23時』…なかなか男らしい命令調だ。けれどこの時点で、凛花にはまだ余裕があった。なぜなら、住所を尋ねられていないし…他の手段を使っても、神西が私の自宅にたどり着ける可能性は低いから。実は引っ越して日が浅く…まだ新住所を人事部にも総務部にも伝えていないのだ。だから例えば…社内の個人データにアクセスして住所を調べようとしても無理だし、そもそも会社の人に引っ越した話すらしていない。どうやって住まいを突き止める気なのか…凛花はまず来ないだろうと高を括って、のんびり過ごしていた。なのに…メモの通り23時きっかり、部屋のチャイムが鳴らされた。…驚いて、座ったまま1センチくらい飛び跳ねたと思う。そして、本当に神西が来たのか確認したい気持ちが勝って、躊躇なくドアを開けてしまったのだ…「…よし、いるな」夜も遅くなっているのに、ざっくり後ろに流した髪に、乱れひとつ見当たらない。疲れた様子もなく、会社で会った時と同じ様子の神西は、凛花が何か言う前に部屋に入った。…そしてリラックスした様子でスーツの上着を脱ぎ、それを手渡してきたのだ。あまりに自然なので受け取ってハンガーにかける。つい、お食事は…?なんて、聞いてしまいそうだ。「シャワーを借りていいか」「は…」切れ長の瞳に見つめられると、ダメなんて言えない…それでも、わずかな勇気を振り絞って言った。「あ、当たり前みたいに部屋に入ってきて夫みたいに上着渡してきて、シャワーってなんですか?…次はご飯ですか?」…文句の言い方が少し違う気がする。神西もポカン…としているので、次の反撃

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   2.

    「…効かない?自分に惚れさせるためのキスだったってことですか?…だとしたら残念ですね?まったく効きませんし、むしろ…」丸い目を頑張ってつり上げて、神西を睨み上げる凛花。「…嫌いになりましたわ!ふんっ!!」つかまれた腕を振りほどこうとするのを、神西は力でねじ伏せる。…このまま離すわけにいくか…!「…ちょっと待て。もう一度…」忘却のキスが効かないとは、鈴原凛花…突然変異の人間か?逃れようとする凛花を抱きしめ、もう一度唇を合わせた。…今度はもう少し長く。…やがて、彼女の体から…フッと力が抜けるのがわかった。そっと体を離し、さっきと同じように凛花の様子を伺うと…意外な反応に神西は頭を抱えた。「…どうして2回もキスをするんですか?」ハラハラと涙が頬を伝っている。なぜキスくらいで鈴原が泣くのか、意味がわからない。「どうして泣く…?」「泣きますよ…いきなりこんな会議室に連れ込まれてキスなんて…」「…キス、されたことが悲しいのか」コクン、とうなずく表情は…わずかながら神西に罪悪感のようなものを植え付けた。「初めて、だったんですよ?なのに、無理やり2回も…ムードもなく、愛もないキスを…」…これは、どういうことだ?キスをされた記憶はあるようだが、背中のカマについての記憶はどうなった?「…鈴原、俺を見てみろ」凛花の正面に立ち、様子を伺う。「はい…何ですか」…背中のカマについて何も言わないということは、忘却のキスが2回目でやっと効いたということ。そんなの聞いたことないが…忘れたならそれでいい。「キスについては突然すまなかった。だがあれは、必要なキスだった。俺にとっては」「…どういう意味ですか?」「わからないならいい。ただ勘違いしないでくれ。君に対して、特別な気持ちはない」人間の女にとって、キスが特別なものだということはわかっている。だが普通、忘却のキスをしたら、キスをしたこと自体を忘れるものなのだ。だがこの鈴原凛花という部下には…「特別な気持ちがないのはこっちだって同じです」神西の言葉に、凛花はふふ…っと笑みをこぼした。「…神西課長はカッコよすぎて、私のタイプではありません。ファーストキスの相手が課長なんて、落ち込みますっ!」神西をキッと睨みつけ、凛花が会議室を出ていく。強めの音を立ててドアを閉めたのは、怒りの表現だろうか。…

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   1.

    「あの…神西課長、大丈夫ですか?」ついに、言ってしまった。…言ったそばからもう後悔する。「…は?」ゆっくり振り返った顔が怒っていて…それより言いたいことがあると、その端正な顔に書いてあるのがわかる。「そんなことより、企画書は?」「はい!…わかってます。今、マネージャーに提出してちょっと見てもらってるところで…」「…どうしてそんなまどろっこしい事をする?できたらすぐに俺に出せと、何度言ったらわかるんだ?!」いつの間にか怒られるこの構図…予想できてたから今まで言えなかった…「…だって!神西課長、背中に大きなカマを背負ってるから、ずっと気になって!」マーケティング戦略部の神西蓮【かみにしれん】は、32歳という若さで課長に昇進した強者で、私…鈴原凛花【すずはらりんか】の目の上のたんこぶ…いや、直属の上司だ。昼休み。外へランチに行く社員で賑わう1階エントランスで、流れに逆らうように前を歩く神西に気づいて、つい声をかけてしまった。私も、コンビニでサンドイッチを買ってオフィスに戻るところだった。「…今、なんと言った?」「え、あの…ずっと、危ないなぁって、思ってまして…」早足で近づいてきて、大きな手が肩を掴む。クールで色気ある目元がたまらない、と言われている顔が、顔面蒼白になっているように見えた。「とりあえず、こっちへ来い」「…え、あの…」勢いよく引っ張られて、サンドイッチが袋から飛び出してしまった。拾うことも許さず、階段を上がり始める神西。「か、階段ですか?うちの会社、28階ですけど…」2階あたりまでは何とかついて行ったが、3階になるともう息が切れる…「ふん…運動もしてないのか。若いからって病気にかからないと思ってるな?」「…え?運動不足で病気?」「生活習慣病は、運動不足が原因のひとつだろう?」だからって、今階段を登らせなくてもいいのに…ちゃんと、運動を習慣化するから…今はエレベーターに乗せてほしい。心の声は届かず、結局引きずられるようにして、オフィスのある28階に上がってきた。倒れるように床に座り込み、ゼェゼェと息をする凛花とは違い、神西はまったく息が乱れていない。…嘘でしょ?あのスピードで階段を駆け上がって、汗もかいていないなんて…トップアスリートか?「…早く来い」再び腕をつかまれ、凛花は無理やり立たされた。そして

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status