「あの…神西課長、大丈夫ですか?」ついに、言ってしまった。…言ったそばからもう後悔する。「…は?」ゆっくり振り返った顔が怒っていて…それより言いたいことがあると、その端正な顔に書いてあるのがわかる。「そんなことより、企画書は?」「はい!…わかってます。今、マネージャーに提出してちょっと見てもらってるところで…」「…どうしてそんなまどろっこしい事をする?できたらすぐに俺に出せと、何度言ったらわかるんだ?!」いつの間にか怒られるこの構図…予想できてたから今まで言えなかった…「…だって!神西課長、背中に大きなカマを背負ってるから、ずっと気になって!」マーケティング戦略部の神西蓮【かみにしれん】は、32歳という若さで課長に昇進した強者で、私…鈴原凛花【すずはらりんか】の目の上のたんこぶ…いや、直属の上司だ。昼休み。外へランチに行く社員で賑わう1階エントランスで、流れに逆らうように前を歩く神西に気づいて、つい声をかけてしまった。私も、コンビニでサンドイッチを買ってオフィスに戻るところだった。「…今、なんと言った?」「え、あの…ずっと、危ないなぁって、思ってまして…」早足で近づいてきて、大きな手が肩を掴む。クールで色気ある目元がたまらない、と言われている顔が、顔面蒼白になっているように見えた。「とりあえず、こっちへ来い」「…え、あの…」勢いよく引っ張られて、サンドイッチが袋から飛び出してしまった。拾うことも許さず、階段を上がり始める神西。「か、階段ですか?うちの会社、28階ですけど…」2階あたりまでは何とかついて行ったが、3階になるともう息が切れる…「ふん…運動もしてないのか。若いからって病気にかからないと思ってるな?」「…え?運動不足で病気?」「生活習慣病は、運動不足が原因のひとつだろう?」だからって、今階段を登らせなくてもいいのに…ちゃんと、運動を習慣化するから…今はエレベーターに乗せてほしい。心の声は届かず、結局引きずられるようにして、オフィスのある28階に上がってきた。倒れるように床に座り込み、ゼェゼェと息をする凛花とは違い、神西はまったく息が乱れていない。…嘘でしょ?あのスピードで階段を駆け上がって、汗もかいていないなんて…トップアスリートか?「…早く来い」再び腕をつかまれ、凛花は無理やり立たされた。そして
Huling Na-update : 2026-02-28 Magbasa pa