INICIAR SESIÓNなので皇后とも折り合いが悪く、協力するとは言い難い。(そんな人が偉大な聖女を殺すだろうか? 国の未来を考える立場なのに) まだ息子のトリスタンの方がありえるだろう。しかし、彼はカトリーヌに好意を抱いている。殺すとは思えないが。「もう少し調べてみよう」「は、はい」 レンデルの言葉にセレスティンは頷いた。 それから何日か、セレスティンは特に怪しい皇后のことを調べることにする。皇后の普段の生活は幼い頃からのいるので把握しているつもりだ。 コソコソと様子を探っていたら、ある日。その皇后から手紙が届いた。 何故か子供になった『キャサリン』宛てに。 中身は今日のお茶会の招待状だった。普段のセレスティンなら分かるが、子供の状態で呼ばれることは本来考えられないことだ。 皇后は、そこまで子供好きではない。むしろ息子のウィルモット以外は邪魔とかうるさいと毛嫌いしているぐらいだ。 断りたい。しかし皇室の招待状となると、断る権利はない。 レンデルに相談したいところだが、偶然出払っていなかった。仕方がなく、セレスティンは『キャサリン』としてお茶会に行くことを承諾した。 馬車で皇宮に向かうと、いつもの庭のお茶会場所に案内された。テラスで優雅にお茶を飲んでいる皇后に挨拶をする。「こうごうさまにごあいさつをもうしあげます。おちゃかいのごしょうたい、ありがとうございます」 ドレスの裾を少し上げて、たどたどしい感じを意識して挨拶する。「よく来てくれたわね。また会えて嬉しいわ。座ってちょうだい」「あ、ありがとうございます」 セレスティンは、戸惑いながらも椅子に腰を掛けた。テーブルの回りは、季節の果物を使ったタルトやサンドイッチ。クッキーやケーキなどたくさん並べてある。「たくさん召し上がってちょうだい。今日は、あなたのために用意したのだから」「わぁ~うれしい。ありがとうございます」 皇后は機嫌が良さそうに、ニコニコしながら気遣ってくれるが、逆に何を企んでいるのか分からず、怖さだけが残る。 それでも顔や態度に出したらダメだと思い、無邪気になってお礼を言う。 子供だからとオレンジジュースを用意されたので、それを飲みながら様子を伺うが、笑顔のままで、それ以外の表情は変わらない。 セレスティンの時は、会って早々に小言を言われてきた。むしろ日頃から機嫌が悪くで、
金庫箱の中を取り出してみると本と布がコンパクトに丸めて入っていた。 セレスティンは、丸まった布を広げてみると、ベタベタに血が付いたエプロンだった。このエプロンはメイドが付けているエプロンだ。(どうして血が付いたエプロンがここに!? まさかカトリーヌの血?) だとしたら、カトリーヌを殺害する時に付いた恐れがある。慌てて脱いで、隠したとしたら、やはり犯人はアンナということになるだろう。「おい、見てみろ!? この本は日記だ」「えっ?」 レンデルが声をあげて言うので、セレスティンは慌てて日記の中身を見せてもらう。 たしかに日記だ。 読んでいくと、毎日つけているようだったが、途中から書くのを辞めてしまっていた。パラパラとめくっていくと、ある文に目が行く。『皇后様が言っていた。カトリーヌは噓つきだと。聖女と偽って、殿下に言い寄っただけではなく、国を自分のものにしようと企んでいる。そのためなら皇帝も殺すと』『全部あの女のせい。殿下まで、あの女の虜になってしまうのなら、いっそう皇后様の言う通りにするべきなのだろうか?』 まるで自分に語りかけるように、カトリーヌに対しての嫉妬がかかれていた。 だが気になるのは、皇后の言う通りにするべきとは?(そういえば……部屋に訪れた時に妙なことを言っていたわね?) セレスティンは、彼女が言っていた言葉を思い出す。『違う。私は関係ない。あの子は聖女じゃないわ。皇帝を殺した悪魔よ』『噓じゃないわ。だって、あの人がそう言ったもん。私のせいじゃない。私は殺してはいない』 まるで共犯者がいたかのような発言。 日記の内容からして、そのことを言っていたのだろう。これだと、皇后が共犯者ということになってしまう。「まさか……陛下を殺すために毒を盛るように指示を出したのは皇后様!? それをアンナにやらせている最中に、カトリーヌに見つかり……殺した?」 そんなまさか……と思ったが、その方がまだ辻妻が合う。 皇后は、ウィルモットに早く皇帝になってほしがっていた。未だに決まらないことに嫌気がさして、殺すことも十分にありえるだろう。 しかしレンデルは、考え込みながら疑問をぶつけてくる。「だとしたら、どうやって密室にしたんだ? 部屋の鍵は、1つは寝室の引き出しに入っていたし、もう1つは宰相が持っていた。アンナが偽装したにしろ、首
「俺も皇帝になる者として、下の者の状況を知っておきたかったんだ。なにやらメイドが1人自殺したみたいじゃないか?」「……そうだが」「ふ~ん。メイドが……それは気の毒だな」 そう言ったウィルモットは、手で口元を隠した。だが、背の低いセレスティンは見てしまった。隠してはいたが、彼の口元は微かにニヤリと笑う姿を。 まるでアンナの死を喜んでいるかのように見えた。(えっ? 今……笑った!?) セレスティンは、ウィルモットの表情に驚く。しかし彼の方は、子供の姿になったセレスティンに気づくと、また暴言を吐いてきた。「おい、どうして? こんな場所にあの時のガキがいるんだ?」 たしかに、こんなところに子供がいるのは変に思ってしまうかもしれない。ギクッと震え上がると、レンデルは冷静に、「この子、好奇心旺盛でお転婆なんだ。あちらこちらと動き回るから、この子の母親の出産が済むまで、しばらく我が家で預かっている。邪魔はさせないから、放っておいてやれ」 そう言って返してくれた。セレスティンは思わずレンデルを見てしまう。(よく、そこまで噓が思いつくわね?) なにかと絡んでくるウィルモットにも困ったものだが、レンデルが意外と噓が上手いことに驚いた。噓つくのは苦手だと思っていたからだ。「まったく。ガキの遊び場じゃないぞ? ここは……さっさと追い出せ」「ああ……」 レンデルは適当に返事をするが、私を見るとクスッと笑ってくれた。普段の彼とは違う表情に胸が熱くなっていく。 結局、ウィルモットがいるので曖昧な捜査しかできなかった。だが、帰り際にレンデルが教えてくれた。「とりあえず、もう一度メイド寮に行ってみよう。今度行けば、何か分かるかもしれない」「は、はい」 セレスティンはレンデルの言葉に同意し、もう一度アンナの部屋に向かう。部屋は事件のままの状態で残してあるので捜査はしやすい。 入るとアンナの遺体は処分されていたが、カラスの羽の残骸は残っていた。 小さな手がかりでもいい、何かの突破口になれば。 子供姿だから高い場所は見れないが、低い位置のものなら見えると思い、探してみることにする。すると、あるものを見つける。 小さな鍵だ。イスの下に落ちていた。「ありました。小さな鍵です」 慌ててレンデルに見せると、彼はその鍵を受け取る。「これは、金庫箱か何かの鍵だな。
それに、レンデルのそういう表情を見るのは新鮮で可愛いとさえ、思えてしまう。(そういえば……初めて名前で呼ばれたわ。しかも呼び捨てで) いつもは「君」とかだし、そもそも呼ばれることがない。子供時は人前では『キャサリン』と呼ぶので、そちらの方が慣れてしまっている。 セレスティンの心臓は、またドキドキと高鳴ってしまう。微妙な空気が2人を包み込んだ。 しかし、そんな2人とはよそに皇后の執務室では、側近のテリーに情報を聞いた皇后は紅茶が入ったティーカップに口をつけていた。 ゴクッと一口飲むと、ティーカップをテーブルの上に置く。「まぁ、いいわ。上手く誤魔化せたのなら。それよりも、アンナっていうメイドの子が邪魔ね。あの子がうっかり口を滑らす前に始末をしてちょうだい」「承知しました」 テリーは頭を下げると部屋から出て行ってしまった。皇后は、はぁ~と大きなため息を吐く。「……まったく。私の計画に邪魔する者が多過ぎるわ」 皇后の企みの意味することとは……まだ誰も知らない。 だがしかし、事件はそれだけでは終わらなかった。 翌朝、アンナがメイド寮の自分の部屋で首吊り自殺した状態で発見された。 引きこもっていたアンナに食事を持ってきた友人の子が第一発見者となった。 どうして分かったのかというと、窓が開いていてカラスの鳴き声が部屋の中まで聞こえてきたらしい。アンナはカラスが嫌いなのでおかしいと思ったとか。 部屋に入ると、周りはカラスの羽で散らばっていた。アンナは大きな窓のカーテンのレールにロープをかけて、首を吊っている状態になっていた。 格好は寝る前だったのか、ワンピースタイプのナイトガウン。「うっ……」 二度目の死体に、セレスティンは気持ち悪くなるが、なんとかハンカチを口に押さえて耐える。(これは本当に自殺かしら? それとも他殺?) 罪を意識して、その罪悪感で自殺をしたと考えられなくもないが、セレスティンの中では納得が出来なかった。(いくらなんでも急に自殺なんかする? それにカラスが嫌いなら窓は開けないでしょ?) 言っていた言葉といい、不可解なことが多過ぎる。 そもそもアンナは、今回のカトリーヌの時間に大きく関わりがあった人物だ。 もし事件に関係しているとしたら、大事な証言人になっていたかもしれない。もしかしたら犯人の場合だって。 その時
アンナが皇帝が毒を盛られたと知っているのも不自然だ。ウィルモットには教えてもいないのに知っていた。(もう、すでに周りに認知されていたの? でもカトリーヌの様子では、彼女以外は気づいていないはず。どこから情報が漏れたのかしら?) セレスティンは深く考え込む。 結局、これもセレスティンの仕業ということで片付けられてしまった。このことは帰宅後にレンデルと話し合うことに。 やはりレンデルも同じことに疑問を抱いていたようだ。「そもそも、アイツ。ウィルモットの発言もおかしい。あんなに動揺して聖女がそんなことするはずがないと騒いでいたくせに、急に君が犯人だと罪を擦りつけてきた」 レンデルは疑問を言うが、それはいつものことだ。 ウィルモットが、いつだって悪いことになればセレスティンのせいにしていた。 今回のは、たまたま出た発言なのか。それともセレスティンではないとまずいのかは分からないままだが。「それは、いつものことなので分かりかねますが、不自然といえばアンナもです。何か私たちには言えない事情を知っているのかも」「……そうだな。アンナというメイドを徹底的に調べてみた方がいいだろうな。事件のことも含めて」「はい……う、うん?」 セレスティンは返事をしようとするが、体の中が急に熱くなってきた。息が荒くなり、胸が苦しくなってくる。「どうした? 大丈夫か?」「だい…じょう……くっ」 レンデルは心配そうに言ってくれたが、胸がギュッと締めつけられそうになるぐらいに辛くなってくる。脂汗まで出てきた。「せ、セレスティン!? これが大丈夫なわけがないだろう!? 待て。すぐに医者を」「ほ、本当に大丈夫ですから」 セレスティンは咄嗟に彼の腕を掴んだ。大げさにするつもりはない。 すると、その時だった。ドックンッと大きく心臓の音が高鳴ったと思ったら、ポンッとセレスティンの体が大きくなった。「「えっ?」」 お互いに驚くのも無理はない。大きくなったセレスティンの服のサイズが合わなくて、あちらこちらが破れてしまった。 胸元が見えてしまい、露わな状態に。セレスティンは「キャアッ」と叫びながら胸元をパッと手で隠した。 レンデルは思わないハプニングに大慌てで目線を逸らしていたが、内心はドキドキと心臓が高鳴ってしまう。「み、見ましたか?」「い、いや……俺は見ていない。
「私は大丈夫です。それよりも、気になる人が……」 セレスティンはアンナのことを話した。有力の情報を持っている可能性が高い。むしろ現段階では犯人として十分に怪しい。 レンデルも話を聞いて、調べてみようと言ってくれた。 その後、アンナの情報を探る。しかし彼女は、あれ以来部屋に閉じこもったまま一歩も出て来なくなってしまったらしい。 数人のメイドが呼びに来ても、一切ドアを開けないらしい。仕方がなく、食事はドア近くに置いたりしているとか。まるで何かに怯えているかのように。 レンデルは直接話を聞きに行くと言うので、セレスティンも同行することに。 アンナは皇宮付近にあるメイド寮の1人部屋で住んでいる。レンデルがドアをノックして呼びかけるが、一向に出てこない。 本来なら第2皇子が呼んでいるのだから、すぐに開けないといけないのだが。「今回の事件に君は本当に関わり合いがないのか? 何か事情があるなら早く言った方がいい。長引くと罪が重くなるぞ」 ドアを叩きながら、冷たい口調でそう告げるレンデル。するとアンナが泣きながら、何かを訴えてくる。「違う。私は関係ない。あの子は聖女じゃないわ。皇帝を殺した悪魔よ」 アンナが訴えてきた言葉は、衝撃的な内容だった。「何を言っているんだ!? 聖女が皇帝を殺したって」「噓じゃないわ。だって、あの人がそう言ったもん。私のせいじゃない」 レンデルが聞き返してもアンナは、泣きながらそう言い続ける。自分は悪くない、全ては聖女が悪いと。 セレスティンとレンデルは困惑して、お互いに見つめ合う。(どういうこと? カトリーヌが皇帝を殺すわけがないじゃない!? それに……あの人って誰のこと?) あの優しいカトリーヌが皇帝を殺すとは、到底に思えない。そもそも動機がない。「アンナ。ちゃんと教えてくれ。それは、どう意味だ」 しかし、その時だった。騎士やメイドたちが何やら騒ぎ出した。「どうしたんだ!?」 レンデルが近くにいたバタバタしていた騎士を捕まえて尋ねた。「大変です。聖女様が使っていた部屋から毒物が入った小瓶が見つかったそうです」「何だって!?」 今度はカトリーヌの部屋から毒物が入った小瓶が見つかったと、大騒ぎになってしまった。 これでは、カトリーヌが皇帝を殺すつもりだったということになってしまう。「何かの間違いでは?」
シャノンの決めてくれた通りに、友人の子で聖女に憧れていた設定にする。 葬儀のために喪服を着ると、馬車で神殿に向かう。たくさんの人たちが嘆き悲しんでいた。 貴族だけではなく民までいる。カトリーヌがどれだけ慕われていたのかが分かる。 棺の中心でトリスタンが泣いているのは見えたが、アンナの姿は何処を探してもいなかった。イトコだから来ていてもおかしくないのに。 不思議に思っていると、民や貴族がコソコソと噂話をしているのが聞こえてきた。「聞きました? 聖女様が亡くなったのは、あの悪女・セレスティン公爵令嬢が殺したからですって」「なんて恐ろしい。聖女様に嫉妬して、そこまでやるなんて」「偉
カトリーヌとの仲や、このような事態になったことまで詳しく話した。 しかし話につれて、ある疑問に気づく。(やはりおかしいわ。あの時に呼びにきたのはアンナなのに、なぜ彼女は黙秘しているの?) 一緒に来たはずのアンナの姿はどこにもなかった。本当なら同じ現場を目撃しているか、何か情報を掴んでいるはずだ。(それに皇帝の呼び出しと言っていたのに、私があれだけ騒いでも起きてこなかった。意識があったのなら気づくはず……だとしたら彼女がカトリーヌを?) うーんと考え込んでいると、それに気づいたレンデルは、「どうした? 何か悩みことか?」 と、心配そうに聞いてくれた。セレスティンはハッとして首を
「凄い……本当に魔法みたいな薬って、実際していたのね!?」 その効果に驚くも、セレスティンは事実だったことに感動する。しかしレンデルは慌てるように近くに置いてあった大きめの袋を取ってくる。「詳しい話は後で聞く。とりあえずこの中には入って。子供が入るぐらいの大きさだから、疑われずに済むだろう」 レンデルは持ってきた袋は、確かに小さな子供が入れるぐらいのサイズだ。これなら他の人たちに見つからないように逃げられるかもしれない。 セレスティンは恐る恐る、その袋に入る。 レンデルは、袋を持って肩に抱えると地上に上がっていく。暗くて狭い袋の中では、外の様子がどうなっているのか分からない。だが、
「そんな……」 まだ、弁解もなにもしていないのに。急に決まった死刑判決に啞然とする。 セレスティンは檻の鉄格子に掴まり、必死に訴えようとする。このままでは、本当に無実の罪で殺されかねない。「皇后様。ですが……これは」「ああ、本当に残念だわ。でも……聖女が亡くなった以上は、仕方がないことよね」「えっ……?」「明日は、その足で死刑台に上がってちょうだい。いい? どうせ逃れられないのだから、余計なことは言わないこと。そうすれば、あなたの家族だけでも助けてあげるわ」「ま、待ってください!?」 セレスティンの表情は青白くなっていく。助けてくれるどころか、余計なことを言うなと言われてし







