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第455話
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永遠の毒薬 第462話
晴嵐はまだ子供で、自分の感情をどう扱うかを学んでいない。怒っているときは怒っている、無理に笑顔を作ることはできない。「一体何があったの？言ってごらん、おばさんが助けてあげるよ」紗希は彼が話さないので、少し焦った様子で言った。「僕のパパ、凌央っていうの？創世グループの社長？」晴嵐は顔を引き締めて話し始めた。「あなたのママが教えたの？」紗希は少し驚いた。乃亜の動きがこんなに早いなんて。「彼はすごい男じゃないの？ママに冷たくて」晴嵐はさらに質問を続けた。紗希は一瞬驚き、思わず言葉を詰まらせた。乃亜はこんなことを晴嵐に言わないはずだ。仮に晴嵐に父親のことを話したとしても、凌央のことをこんな風に言うはずがない。一体誰がそんなことを教えたのだろうか？もしかして拓海か？でも、拓海はそんな人じゃないはずだ。「やっぱり僕が言った通りだよね？」晴嵐は紗希の顔を見て、確信したように言った。紗希は咳払いをして、すぐに答えた。「これはパパとママの間のことだから、あなたのママから聞いたことだけが本当のことよ。ほかの誰かが何か言ってていても、あまり真に受けないで。だって、他の人が見ているのはその人の一面だけで、全体像じゃないから」晴嵐はしばらく考えた後、納得した様子で言った。「じゃあ、機会を見てママに聞いてみるよ」「じゃあ、今は笑って、少しでも楽しい顔をしてくれない？」紗希は彼の頬をつねりながら、優しく言った。その顔は柔らかくて、つねるととても気持ちが良かった。もっとつねりたかったけれど、晴嵐はそうさせなかった。「おばさん、行こう」晴嵐はそう言って、先に部屋を出た。紗希は自分の手を見ながら、思わず微笑んだ。いつか、自分もこんな可愛い息子を育てたいなと思った。ダイニングルームに入ると、乃亜はもう席に座っていて、拓海は料理を並べていた。その光景を見た紗希は、思わず羨ましそうに見つめた。本当に幸せそうだな。晴嵐は乃亜の太ももに抱きつき、仰いで顔を見上げながら、柔らかく「ママ」と呼んだ。乃亜は頭を下げて、彼の小さな顔をつねりながら言った。「抱っこしてあげようか？」「大丈夫、僕は自分でできるよ！」小さな晴嵐は首を振り、両手でしっかり抱きついた。ママを心配しているんだね！「どうしたの？」乃亜は何か
永遠の毒薬 第461話
紗希は笑いをこらえきれず、思わず声を上げてしまった。頬をぎゅっとつまんで、「欲しいものがあったら、遠慮せずに言ってね。おばさんがお金持ちだから、なんでも買ってあげるよ！」と、にっこりと笑った。紗希は自慢しているわけではなく、本当にお金がたくさんあるのだ。スタジオを開いたばかりの頃は、必死に父親に頼んだり、色んな人にお願いしてプロジェクトをもらっていた。しかし今では、プロジェクトは自分からやってくるようになった。仕事に困ることはなくなったし、弁護士事務所からの収入もあるので、今ではすっかりお金持ちの女性だ。晴嵐が数冊の本が欲しいと言ったなら、何冊でも買ってあげるし、家も車も目を向けることなく買ってあげるのが今の紗希だ。「それじゃ、可愛いドレスを何着か買ってくれる？病院にいる妹にあげたいの」晴嵐はベッドに横たわっている妹のことを思い浮かべ、なぜか心が痛んだ。「そんなにその子が好きなの？どうして？」紗希は不思議そうに聞いた。だって、乃亜から聞いた話では、晴嵐は冷徹で、外では誰に対しても冷たい顔をしている、まるで人を寄せ付けないようなタイプだと言っていた。それなのに、どうして見知らぬ女の子にこんなに優しくするのかが謎だった。「だって、妹は僕と全く同じ顔をしてるんだもん！」晴嵐は大きな目をぱちぱちさせながら、紗希を見つめた。「おばさん、明日ショッピングに連れて行ってくれる？僕が妹に可愛いドレスを選んであげる」紗希は驚いて目を見開いた。「そんな急に？」「だって、来週は僕の誕生日だし、妹には僕が買ったドレスを着て来てほしいんだ！」小さな晴嵐は真剣な顔で言った。「うん、わかったよ！」紗希はうなずいた。目の前の凌央と似っている顔は本当に可愛くて、彼が凌央に会ったら、すぐに父親だと分かるだろう。「それじゃ、約束だよ！おばさん、ちょっと遊んでて、僕は部屋に戻って着替えてくるね」小さな晴嵐は紗希をマットの上に座らせ、買ってもらったレゴを手に持たせた。真剣な顔つきだ。紗希はその様子に笑いながら言った。「わかった、私は一人で遊んでるから、気にしないで」晴嵐は嬉しそうに笑いながら、部屋に向かって手を振った。紗希はその後ろ姿を見送りながら、心の中にわずかな不安が湧いた。もし凌央が晴嵐の存在を知って、彼を取り戻そうとしたらどうしよう......
永遠の毒薬 第460話
下の階で、拓海が帰宅した。掃除をしていた乃亜は彼を見つけて急いで近寄り、手に持っている荷物を取ろうとした。拓海は彼女を見て、優しく笑った。「俺が持つよ。君が忙しいなら、ちょうどいいから一緒にご飯を作ろう」「うん！」乃亜は答えたが、心の中では少しだけ複雑な気持ちが湧いてきた。ここ三年以上、拓海はどんなに忙しくても家に帰り、ご飯を一緒に作ってくれた。その姿が、昔の自分を思い出させるようで、少し胸が痛んだ。「どうしたの？何を考えているの？」拓海が彼女の沈黙に気づき、声をかけた。乃亜は首を振りながら答えた。「何も考えてないよ。ただ少し疲れていて、話したくないだけ」拓海は彼女の手を取って引き寄せ、優しく言った。「疲れたなら、無理しないで。今は俺たちに何もかもあるんだから、そんなに頑張らなくてもいいんだよ」乃亜は心の中で思った。昔は凌央のためにすべてを捨て、結局は辛い結末を迎えた。もう一度やり直せるなら、絶対にあの道は選ばない。拓海は乃亜の手をしっかりと握り、「乃亜、俺は君ほど優秀じゃない。君は俺を嫌いになったりしない？」と不安そうに言った。二人はそのままキッチンに入り、拓海は手を放して食材を水で洗い始めた。乃亜は袖をまくりながら彼を見て、にっこりと笑い、「もしかしたら、嫌うかもしれないね！」と言った。感謝しているどころか、嫌うなんてあり得ないと思っている。「それなら、安心した！」拓海は乃亜の袖を整え、「君は横で見てて。もし間違っているところがあれば、指摘してくれ」と言った。乃亜は仕方なく彼の横でおとなしく立ち、拓海が料理をするのを見守った。そのとき、紗希が部屋に入ってきた。目にした光景は、まさに温かくてロマンチックな瞬間だった。キッチンには心地よい生活感が漂い、柔らかな灯りの下で、拓海は台所で手際よく料理をしていた。蒸気が立ち昇る中で、彼の目は集中しており、優しさが溢れていた。まるで、家の味を一つ一つ丁寧に作り上げているようだった。乃亜は横で洗ったばかりのトマトを手にし、時々拓海を見つめていた。まるで初めて恋をしたような、恥ずかしそうな少女のように。紗希はその温かい光景を邪魔したくないと思い、息を潜めた。そのとき、背後の小さな存在が気を揉んで、紗希の服を引っ張り、低い声で言った。「おばさん、どうし
永遠の毒薬 第459話
「あなたも知っているでしょう？私たちには桜華市のトップ弁護士、咲良がいる！彼女がいれば、凌央が息子の親権を取るなんてあり得ないことよ！」乃亜は自信満々に言った。それに、今の乃亜にはお金もあり、しっかりとした後ろ盾がある。凌央とは対等に戦える立場だ。凌央が何をしようと、彼女は付き合う覚悟があった。「咲良は看板、でもあなたが本当の黒幕よ、ハハ！」紗希は笑いながら言った。「でも、私が一番心配なのは、もし晴嵐が知ったらどうしようってこと。もし彼が、父親が拓海じゃなくて凌央だと知ったら、絶対に調べ始めるわよ！」晴嵐は天才的な頭脳を持つ子供だ。もし彼が調べ始めたら、すぐに過去のすべてが明らかになるだろう。そして、彼が自分の母親がどれだけ凌央のために辛い思いをしていたかを知れば、間違いなく凌央に復讐しに行くだろう。冷酷な凌央がそんなことを許すわけがない。紗希はしばらく黙った後、口を開いた。「正直、私はあなたが直接、晴嵐に直接そのことを話した方がいいと思うわ」彼女は真剣に考えた結果、そう提案した。もし乃亜が自分で晴嵐に話せば、晴嵐が自分で調べるよりもいい結果が得られるだろう。少なくとも、彼女の態度が誠実であることを見せることができるからだ。「ちょっと考えてみるわ」乃亜は少し考えた後、そう答えた。まだ晴嵐にどう話すかは決めていない。「うん、じゃあこの話はここでおしまいね。私はこれから外出して、晴嵐におもちゃを買ってくるわ。買い終わったら、あなたの家に行ってご飯をおごってもらうわ！」紗希は元気よく電話を切った。乃亜は電話を握りしめながら深く息をついた。晴嵐にどう伝えるかを考えていると、ちょうどその時、電話が鳴った。表示された番号は見覚えのないもので、少し躊躇してから受話器を取った。「もしもし」「乃亜、今すぐ会いたい！今すぐ！」恵美の声が強い口調で電話越しに聞こえた。乃亜は目を細めた。「あなたに会いたくないわ」思い出すのは、かつて凌央が久遠家を一夜で破産させたことだ。久遠家はすでに誰でも踏みつけにできるような状態だったが、恵美が凌央に取り入ったことで、彼女だけは急に立ち直った。今、恵美がこんなにも自分に威張っているのは、裏で凌央がついているからに違いない。彼女に会いたいだって？あんな人間に
永遠の毒薬 第458話
「わかった、部屋に戻るね！パパ、ママ、バイバイ！」晴嵐は手を振りながら二人に別れを告げた。乃亜も手を振って応えた。「うん、行ってらっしゃい！」晴嵐は小さな足で駆け出した。拓海はその後ろ姿を見守り、心が温かくなるのを感じた。なんて可愛い子なんだろう！「拓海、会社のこと、まだ片付いてないんでしょ？早く行って仕事してきなさい。私たちは気にしないから！」乃亜はそう言いながら、階段を上がっていった。以前の離婚事件で、女性が自殺した件について、証拠を集めたり、目撃者に話を聞いたりしなければならなかった。やるべきことが山積みだった。彼女は男性にずっと付きまとわれるのが苦手だった。「わかった、じゃあ先に会社に行ってくる。夕飯は帰ってから作るよ」拓海は彼女が疲れないよう、キッチンに立たせないようにしていた。乃亜は拓海の真剣な様子を見て、心が温かくなった。小さい頃から、拓海はずっと彼女に優しくしてくれた。「あなたも早く行って、仕事を終わらせなさい。私はこれからやることがあるから」乃亜は言って、部屋の中へと入っていった。拓海は彼女が見えなくなるまでじっと見つめ、その後ようやくドアを開けて出て行った。乃亜は階段を上がり、すぐに書斎へ向かった。そして、真剣に作業を始めた。それからずっと忙しくして、ようやく日が暮れる頃にすべての整理ができた。伸びをしながら、ふとその事件を思い出した。女性はどうしても離婚したいと言っていたが、男性は離婚を拒んでいた。その間、愛人が女性に会いに来て、権利を主張してきた。女性はその場で倒れてしまった。目を覚ますと、愛人はまだ女性の前で、夫が自分にどれだけ優しいかを自慢していた。こんな挑発を受けても冷静でいられる女性がいるだろうか？そして、女性は命を落とした。愛人はそのまま女性の家に引っ越し、二人の関係はますます深くなった。女性は命を失ったが、男性はそのことを全く気にも留めなかった。乃亜はその女性の無念さに胸が痛みながらも、必ず彼女に代わって正義を取り戻すと心に決めた。その時、携帯が鳴った。乃亜は思考を切り替え、携帯を取ると、紗希からの電話だった。「直人の元カノが帰ってきたわよ！」紗希は電話の最初にいきなり爆弾発言をした。乃亜は驚きながらも、すぐに返答し
永遠の毒薬 第457話
凌央は窓の外を見つめながら、ふとタバコを吸いたくなった。どうするつもりだろうか？まだ、考えていない。「凌央、乃亜のこと、まだ愛してるの？」直人は、いつも凌央の心を見抜けなかった。彼は自分の感情をうまく隠していた。「用事がないなら、切るぞ」凌央は乃亜のことを話したくなかった。乃亜が突然現れたことで、彼は大きな衝撃を受け、未だにそのショックから立ち直れていなかった。愛しているかどうかなんて、今は考える余裕もない。「愛してるなら、追いかけろよ。お前たちには子供もいるんだから」直人は晴嵐が男か女かも知らなかった。凌央は唇を噛み、すぐに電話を切った。乃亜と拓海はすでに結婚している。もし今でも乃亜を愛していても、二人の間にはもう何もない。今、凌央ができることはただ一つ。子供を取り戻すことだけだ。その考えが頭をよぎったとき、凌央は一瞬、我に返った。だがすぐに冷静さを取り戻した。乃亜から子供を取り戻す......乃亜はきっと彼を憎むだろう。でも、もし子供を取り戻さなければ、息子が拓海を父親と呼ぶことになる！その思いに胸が苦しくなった。深く息を吸い、山本に電話をかけた。「凌央社長」「桜華市の有名な弁護士に連絡を取って、明日オフィスに来てもらえ。訴訟をお願いしたい」「どんな訴訟ですか？」山本は、最近、会社に訴訟がなかったので不思議に思った。「詳細は彼女に会ってから話す」「分かりました」山本は返事をし、電話を切った。だが、創世グループには法務部があるのに、なぜ弁護士を呼ぶのかと、彼は疑問に思った。一体、どんな大きな訴訟なのだろうか。その疑問を抱えながら、山本はすぐに咲良の電話番号を調べ、連絡を取った。咲良が電話を受けたとき、驚いた。創世グループの社長が彼女に訴訟を依頼するなんて、予想外だった。どんな訴訟だろうか？電話を切った後、咲良は急いで乃亜に連絡を取った。「乃亜姉さん、さっき創世の社長秘書から電話があって、明日オフィスに行って訴訟を依頼された。行った方がいい？」咲良は、遠回しな言い方をせず、率直に尋ねた。乃亜姉さんは少し沈黙した後、優しい声で答えた。「もちろん、行くべきよ。凌央はお金持ちだし、弁護士費用は高く取っても全然問題ないわ」凌央が咲良に訴訟を依頼する
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