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お互いのこと-06

Penulis: あさの紅茶
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-13 05:36:21

お互いのことをよく知らない。

表面上はよくわかっていても、その生い立ちや家庭環境までは踏み込んでいない。

(杏介さんのこと、もっと知りたいかも……)

そう思うのと同時に、紗良は自分のことも知ってもらいたいと思った。

好きだから知りたい、好きだから知ってもらいたい。

付き合うことはできないと断った後もこうして一緒にお出かけして、まるで付き合っているのと変わらないような関係が続いていることに自分自身喜びを覚えている、この矛盾した生活。

自分のことを伝えたら杏介は呆れるだろうか。

この関係は崩れるだろうか。

だったとしても、今、伝えたい気がした。

ずっと燻っている、紗良の気持ちを。

紗良は海斗がぐっすり眠っているのを確認してから口を開く。

「あのね、うちの両親は離婚してるの。私は母子家庭だけどお母さんが明るすぎて父親の存在なんて忘れちゃうくらい」

「確かに、紗良のお母さんは底抜けに明るいよな」

「でしょう。だからね、海斗を引き取るときも大丈夫だと思った。私もお母さんみたいにやれるって思ったの。でも実際はすごく大変でお母さんに頼ることも多くて全然できてないけど、でも私なりに頑張ってて……」

「うん、すごいと思うよ。だって最初に出会ったときは海斗の本当の母親だと思ったから」

「そう言ってもらえて嬉しいんだけど。でもね、最近はダメなの……」

紗良は杏介を見る。

運転している杏介の横顔は夕日に照らされてキラキラと眩しく、それでいて頼もしくかっこいい。

(ああ、私ってこんなにも杏介さんのことが好きなんだ……)

自覚すると胸がきゅっと苦しくなる。

伝えるべきなのか、どうなのか迷う。

だが杏介は「何がダメ?」と優しく問うた。
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    カシャカシャカシャッその音に、紗良と杏介は振り向く。そこにはニヤニヤとした海斗と、これまたニヤニヤとしたカメラマンがしっかりカメラを構えていた。「やっぱりチューした。いつもラブラブなんだよ」「いいですねぇ。あっ、撮影は終了してますけど、これはオマケです。ふふっ」とたんに紗良は顔を赤くし、杏介はポーカーフェイスながら心の中でガッツポーズをする。ここはまだスタジオでまわりに人もいるってわかっていたのに、なぜ安易にキスをしてしまったのだろう。シンデレラみたいに魔法をかけられて、浮かれているのかもしれない。「そうそう、海斗くんからお二人にプレゼントがあるんですよ」「えっへっへー」なぜか得意気な顔をした海斗は、カメラマンから白い画用紙を受け取る。紗良と杏介の目の前まで来ると、バッと高く掲げた。「おとーさん、おかーさん、結婚おめでとー!」そこには紗良の顔と杏介の顔、そして『おとうさん』『おかあさん』と大きく描かれている。紗良は目を丸くし、驚きのあまり口元を押さえる。海斗とフォトウエディングを計画した杏介すら、このことはまったく知らず言葉を失った。しかも、『おとうさん』『おかあさん』と呼ばれた。それはじわりじわりと実感として体に浸透していく。「ふええ……海斗ぉ」「ありがとな、海斗」うち寄せる感動のあまり言葉が出てこなかったが、三人はぎゅううっと抱き合った。紗良の目からはポロリポロリと涙がこぼれる。杏介も瞳を潤ませ、海斗の頭を優しく撫でた。ようやく本当の家族になれた気がした。いや、今までだって本当の家族だと思っていた。けれどもっともっと奥の方、根幹とでも言うべきだろうか、心の奥底でほんのりと燻っていたものが紐解かれ、絆が深まったようでもあった。海斗に認められた。そんな気がしたのだ。カシャカシャカシャッシャッター音が軽快に響く。「いつまでも撮っていたい家族ですねぇ」「ええ、ええ、本当にね。この仕事しててよかったって思いました」カメラマンは和やかに、その様子をカメラに収める。他のスタッフも、感慨深げに三人の様子を見守った。空はまだ高い。残暑厳しいというのに、まるで春のような暖かさを感じるとてもとても穏やかな午後だった。【END】

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