返却請求代行―婚約破棄の代償、払わせます―謎の男に愛され始める

返却請求代行―婚約破棄の代償、払わせます―謎の男に愛され始める

last update최신 업데이트 : 2026-07-22
작가:  YOR참여
언어: Japanese
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10
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70챕터
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婚約者と社長令嬢から「婚約は白紙」と言われ、すべてを奪われ下着姿で放り出される如月璃子。 璃子を拾ったのは、甘いマスクの裏に秘密を隠した正体不明の修理工・真壁 仁。 不思議な魅力を持つcrescent moonの店主・真壁聖子との出会いが、璃子を美しく、冷徹に変身させる。 仁と契約結婚を結び、極秘の代行組織『Blue Code Studio』を始動。 自分を裏切った者たちへ、容赦のない反撃を開始する。 「略奪者たちへ捧げた時間とコスト、利息をつけて、全額返却請求させていただきます」 仁が見せる意外なほど深く、甘い愛。 やがて璃子は、彼が国内最大財閥の若き代表・山城 陸であることを知る。 裏切り、復讐、至高の溺愛。

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1화

第1話:私の婚約者

「そうだ、璃子りこ。お前が着ている服も、その指輪も、全部俺が買い与えてやったものだ。ここに置いていけ」

「直樹さん……置いていけって、どういう意味ですか?」

三年間一緒に過ごしてきた優しい直樹さんが、そんな残酷なことを言うはずがない。

「言葉通りの意味だ」

直樹さんは、即答だった。態度見ても、本気で言っていると気づいた。

「分かりました。後日、お返しします」

声が震えた。この人を好きになったことへの後悔からなのか、分からない。早くこの部屋から出たい。涙が溢れそうだ。直樹さんと麗香れいか専務の前で涙の一つも、見せたくない。そう思いながら、二人に背を向け一歩踏み出す。

「おいおい。勘違いしてのか? 俺の言った意味は――今、ここでだぞ」

「えっ?」

振り返ると、直樹さんは信じられないほどの笑みを浮かべていた。

(今、この場で、すべての服を脱げ、と)

「聞こえませんでしたか? 家政婦さん」

直樹さんの横で麗香専務は、両手の爪を交互に眺めながらそう言い放った。

目の前の二人は、璃子を傷つけ、辱めることを心から楽しんでいる。

三年間愛した直樹さんはもうどこにもいない、ただの怪物に成り下がっていた。

「お望み通り、置いていきます」

***

一週間前。

「直樹さん、急いで!」

寝室の扉を勢いよく開けベッドで眠る、如月きさらぎ璃子りこの婚約者・芹沢せりざわ直樹なおきの身体を揺する。

「あと、5分だけ……」

直樹さんは朝が大の苦手。同棲する3年前までは毎朝、モーニングコールで起こしていた。それでも起きない直樹さんを毎朝自宅まで起こしに行っていた。

今、同棲をしていても本当に起きない。

「せっかく、昇進の話も出ているのに。ここで遅刻したら取り消されちゃうよ」

ずっと、仕事らしい仕事をさせてもらえていなかった直樹さんに、部長クラスへ昇進するという話が飛び交っているのだ。婚約者として、自分のこと以上に誇らしい。

「そうだな。昨日、璃子が資料の最終チェックしてくれていたし」

疲れている直樹さんの代わりに、分析データをまとめ、企画書の骨組みも作った。

「今日の結果次第で、俺たちの未来が決まるもんな」

直樹さんは寝癖を気にしながら、甘えるような視線を璃子に送り抱き寄せた。

「いつも、ありがとうな。絶対に幸せになろう、俺たち」

「うん」

小さなアパートの玄関に置かれた使い古した芳香剤の甘い香りを感じながら、二人が勤める桐島ホールディングスへ歩みを進めた。

「部長になれば、給料も上がるし。その時は、ちゃんとした式を挙げよう」

いつもの駅まで並んで歩く幸せな通勤時間の中で、直樹さんはそう言った。

自分のことなんて、二の次でいい。

直樹さんが仕事で行き詰っている時は美味しいご飯を作って、気持ちよく過ごせるように綺麗に掃除をして、ふかふかの布団でゆっくり体を休ませる。疲れているときは笑顔で迎える。

「まずは、直樹さんの夢を叶えることを優先!」

「そうだな。必ず昇進してやる!」

直樹さんは、優しく見つめ返した。

璃子の右手をそっと手に取り握る。

「宝石店の指輪をつけような」

これは、付き合いたての頃に夜市でたまたま売られていた、おもちゃのような安物の指輪。だけど、夜の灯りの下で、この二つの指輪だけがひと際、目を引くほどの輝きを放っていた。その時「お互いを引き寄せ合う俺たちの運命みたいだ」と、直樹さんが少し照れながら購入してくれたもの。

本当は安物でもいい。幸せだから無理しなくていいと思っている。だけど、直樹さんの男としてのプライドをかけている。本当のことは言わない。

「うん」

「なんだよ。遠慮がちな返事だな」

そう言って、直樹さんは璃子の頭を撫でだ。

桐島ホールディングスの自社ビルに着き、エントランスに入ると、私たちは申し合わせたように数歩、距離を置く。社内恋愛禁止の会社ではないけれど、なるべく社内では接触しない、昇進前に余計な噂を立てたくないと慎重派の直樹さんの要望だった。

「直樹さん。後でね」

「芹沢さんと呼んでくれよ! 誰かに聞かれたら困るだろう」

困惑気味に直樹さんは、エレベーターに乗り込んだ。

エレベーターに乗った直樹さんを見送り、璃子は次のエレベーターを待つ。

いつかは、堂々と一緒に歩ける日が来る。

だらか、今は辛抱しよう。

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雨降る雪降る
雨降る雪降る
これはコメディなのでしょうか?
2026-07-02 22:40:23
3
0
70 챕터
第2話:不穏な足音
広告代理店の企画職・ブランド戦略のフロアに着き、横を見るとこの会社の専務であり社長令嬢の桐島麗香が訪れていた。 「そこのあなた」 「麗香専務。おはようございます」 麗香専務の機嫌を損ねることは、この会社ではクビを意味している。だから、璃子は深々と丁寧なお辞儀をして、挨拶をした。 「芹沢さんを呼んでくださる」 直樹さんに渡した資料にミスが出たのではないかと、不安が押し寄せた。 「かしこまりました」 何度も確認しているそう思いながら、急いで直樹さんのデスクへ向かった。デスクのモニターを見ている直樹さんの肩を軽く叩く。 「璃子! その行動、まずいぞ」 これまでに見たことのないしかめた表情をした。強い口調で直樹さんは、言い放った。 「麗香専務が、直樹さんのことを呼んでるの」 直樹さんは出入り口へ視線を投げ、軽くため息をついた。 「璃子。ミスしてないよな?」 直樹さんは、吐き捨てた。 「資料のこと?」 「それ以外に何があるんだよ!」 そう言い放って、直樹さんは璃子を一度も見ることなく、麗香専務が待つ出入り口へ向かった。自分のデスクへ向かい、デスクトップの電源を入れる。 「ミスなんて、していないはず」 ひとりごとを漏らしながら、数字の打ちミスなのか、計算式なのか、はたまたブランドロゴの配置か、いいえ、ブランドロゴの綴りを間違えたのか。画面を食い入るように見つめ、一つひとつの項目を再検算した。 「特に、ミスをしているように見えない」 そう独り言をつぶやき、ふと出入り口へ視線を投げる。 ちょうど、麗香専務と直樹さんが並んでフロアを去っていく後ろ姿が見えた。 直樹さんの足取りは軽やかに見える。 (それなら、特に問題なさそうね) ミスはしていないと確信した。握っていたマウスを手から離す。「璃子さん。何かあったんですか」 璃子の後輩、猫田 明衣さんが声を潜めデスクに身を乗り出した。 「麗香専務の噂話、璃子さんは知っていますか?」 「噂話?」 「麗香専務は、気に入った人を見つけると手段を選ばないそうですよ」 「どういうことなの?」 明衣さんは、璃子の耳元に顔を近づけた。 「芹沢さん、最近急にあか抜けたって社内で噂されているじゃないですか。さっきもエレベ
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第3話:境界線
それからの二週間、直樹さんは目に見えて変わっていった。 以前なら「資料のここ、どう思う?」と聞いてきた夜の時間は消え、直樹さんは連日のように麗香専務との会食で帰りが遅くなった。たまに帰ってきても、身につけている時計やネクタイが、とても手が届かないような高級品に変わっていく。不安で仕方なかった。だけど、声をかける時間すらもなかった。時々、直樹さんが一言二言話すだけで、璃子の話は聞こうともしない。 「俺、もうすぐ大きな仕事……いや、人生の勝負に勝つから。璃子も楽しみにしてろよ」 そう言って抱き寄せた。けれど、直樹さんの香水の匂いは、璃子が選んだムスクではなく、どこか気高く、刺すような柑橘の香りがした。翌日、桐島ホールディングスのエントランスに足を踏み入れると、たくさんの社員たち集まっていた。 周囲の社員たちの「ありえない」「顔採用か」という陰口が、璃子の耳に入る。 掲示板には「経営幹部・芹沢直樹」という信じられない辞令が貼り出されていた。 「やっぱり、後ろ盾は麗香専務だったんですね。あのネクタイ、見ました? きっと専務の見立てですよ」 隣で明衣さんが囁く言葉が、遠くの方で聞こえる。 璃子の視線は、掲示板の横を通り過ぎていく直樹さんの首元に釘付けだった。 今朝、マンションを出る時、璃子が直樹さんシャツに合わせて選んだのは、落ち着いたネイビーのネクタイ。 『これが一番、直樹さんに似合う』 そう言って結び直してあげた。 けれど、今、直樹さんの喉元を飾っているのは、透き通るような淡いアイスブルーのネクタイだ。 (……会社に着くまでの間に、着替えたの?) それとも、出社してすぐに専務室に呼ばれ、麗香専務の指先でそのネクタイを締め直されたのだろうか。 朝、自分が結んだネクタイは、今どこにあるのか。ゴミ箱に捨てられたのか、それとも直樹さんのバッグの底で丸められているのか。 直樹さんがもう完全に別の世界の住人になったのだと突きつけられたようで、見開いた目から、涙が溢れた。 「……目障りだな」 人混みの隙間から、低い男性の声が鼓膜を打った。 驚いて涙の目を上げると、掲示板のすぐ横。脚立の脚を掴んだまま、一人の青年がこちらをじっと見下ろしていた。 「そんな男のために、泣いているのか」 紺色の作業着、荒っぽく掻き上げられた黒髪の青年が鋭い瞳で璃子を
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第4話:偽りの愛の終わり
直樹さんの長い指に絡みつく、真っ赤なマニキュアの塗られた指。その手首には、璃子の給料の何ヶ月分かもわからない、ダイヤを散りばめた高級時計が光輝いていた。 「……直樹、さん? 麗香、専務……? どうして、二人が一緒に……」 震える声で絞り出す。頭の中が真っ白になって、立っているのさえやっとだった。 「あら、まだいらっしゃったの? あなた、直樹さんの家政婦さんでしょう」 「えっ? 家政婦?……直樹さん、これ、どういうこと?」 「璃子、昇進できたのは、麗香専務のお陰だ」 (コネということなの? それとも……男女の仲を?) 「直樹さん? 私が作ったデータや書類にミスでもあったの? 何か弱みでも握られているの?」 「麗香さんと婚約する」 「え……?」 「聞こえませんでしたか? 直樹とわたくしは、結婚いたしますの」 麗香専務が直樹さんの腕に胸を押し付けながら、顎を上に突き上げた。 「直樹さんは、私の婚約者です。三年間、ずっと支え合ってきました。それを麗香専務が私たちの家に……!」 「私たちの、家? ふふっ、おかしなことをおっしゃるのね。このマンションの名義は、わたくしの持ち物ですわよ」 麗香専務は、高らかな笑い声を上げながら、 「直樹は、我が桐島ホールディングスの経営幹部よ。掲示板を見てらっしゃらないの?」 掲示板は、見た。だから、今日は昇進祝いをしたいと思って、直樹さんの帰りを待っていた。 「家政婦さん。いいですか! 直樹は私の夫。次期副社長になりますのよ。ねえ、直樹?」 直樹さんは璃子から視線を逸らし、麗香専務の肩を抱き寄せていた。 「璃子……よく考えてみろよ。お前みたいな、学歴も職歴も地味な女が、経営幹部になった俺の妻にふさわしいと思うか? お前と結婚したって、俺の出世には何のプラスにもならないんだよ」 直樹さんは璃子のことを「自慢の婚約者だ」と言ってくれていたはずなのに、こんなにも簡単に切り捨てるの。これまでずっと直樹さんの踏み台になるために、踊らされていた。 「直樹さん、どうして?」 「家政婦さん。頭の回転が鈍いようですわね」 麗香専務はそう言って、直樹さんの腕をグッと引っ張った。 「璃子! 簡単なことさ。お前との婚約は白紙。白紙だ! 意味、分かるか?」 昇進したいという強い願望が、今の醜い直樹さんを作ってしまったのだ
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第5話:脱ぎ捨てた偽りの愛
璃子は、直樹さんを見つめながら、アイスブルーのジャケットに手をかけた。 「誕生日の贈り物よね? 直樹さんは『俺にふさわしい色』と言ったこと覚えていますか?」 そう言って、ボタンを外す。 真冬に着るには、驚くほど体温を奪う色。結局のところ、璃子のためではなく、直樹さんの隣に置くための色だった。 「一度も私に、馴染まなかったジャケット」 価値が失われたわけではない、役目が終った。 上質な生地の重みを確かめるように、一度持ち上げて床へ落とした。 次に、ブラウスのリボンに手をかける。リボンを解き、ボタンを一個一個外した。 「俺の成績を上げるためには、清潔感のある白を着ていてほしいと渡されたブラウスよね?」 璃子の装いは、着るたびに直樹さんの評価を飾る布で、名札の延長だった。 「不用品、分類としては、それで十分でしょう」 「はぁ、不用品か?」 直樹さんはそう言ったけれど、そんな問いに答える気はさらさらない。 ブラウスを脱ぎ、ジャケットの横へ投げた。 続いて、スカートのファスナーに手をかける。 「仕事ができる女は、ラインの出るスカートを穿くべきだと、身体の線を強調する、タイトなロングスカートを押し付けましたね」 正確なウエストサイズすら、直樹さんは知らなかった。実際はぶかぶかで、歩くたびに前後ろの位置がずれて、恥ずかしい思いばかりしていた。 「私とっては、ただの面倒な代物だった。独りよがりな指示も同然よね? そう! 押し付けよ」 そう言って、スカートを音もなく床へ滑り落とす。 「璃子! 黙ってさっさと脱いだらどうだ」 「わたくしは、楽しんでおりますのよ。どれほど、直樹を愛していたのか知りたいですもの。このまま続けて下さるかしら、家政婦さん」 「私は決めていましたから、麗香専務に言われなくとも脱ぎ捨てます」 そう言って、次はアクセサリーへ手を伸ばした。 「セール品、ポイント消化、余ったからプレゼントしてくれたものよね?」 イヤリング、ネックレスを丁寧に外す。引きちぎるようなことはしない。物に罪はないのだから。 「直樹さんが得意とする、賢い買い物術ですね! どこの女性が喜ぶと思っているのでしょうか?」 「璃子は、喜んでいただろう」 「勘違い男も、ここまでくると見苦しいものですね! 直樹さん。贈り物と呼ぶには条件が足りないと思いま
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第6話:夜明けの三日月
目が覚めると、白い壁と年季の入った木製の梁。 ここがどこなのか、記憶を思い起こす。 「そうだ、昨日の夜、あのマカベって青年に助けられたんだっけ……!」 慌てて布団をはぐと、女性物と思われるスウェットを着ていた。誰が着せてくれたのだろうか。 襖の向こうから、わずかにコーヒーと少し焦げたトーストの香りとゆっくり階段を上がってくる音がする。耳を澄ますと足音が止まり、スーッと襖が開いた。 「起きた?」 女性の優しい声が耳に残った。声のする方へ視線を向けると、絶世の美人が微笑かけている。 「大丈夫よ。何もしてないわ。そのスウェット、私が着せたわ。安心して」 何もされていないことに安心しつつも、更に女性へ釘付けに。ファッション誌の表紙のような華やかさに抜けるような白い肌、スウェットを適当に着崩しているのに格の違いすぎるスタイルのよさ。 それだけ、璃子の顔が真っ赤になる。 「あ、ありがとうございます」 そう言うと、その女性はにっこりしながらジッと璃子の顔を見る。 「私と会ったことあるでしょう?」 「えっ?」 会ったことない気がするけど、見たことある気もする。首を傾げなら必死で思い出そうとした。 「ほら、桐島ホールディングスの掲示板の前で」 「まぁ、元気出しなよ!と言ってくださった方ですね!」 「そう!私、真壁 聖子。Crescent Moonの店主をしているのよ」 そう言って、微笑んだ。 「あ、如月 璃子と言います。昨夜は、お世話になりました。ここはカフェですか」 「そうなの。カフェの二階よ。物置を改装して客間として使っているわ」 聖子さんの声、仕草は璃子を不思議と落ち着かせてくれる。 「あ、そうそう! 璃子ちゃん。これ食べて」 そう言って聖子さんは、湯気の立つマグカップとスープカップ、パンを乗せたトレイを差し出してくれた。 「こんなこと、質問されたら困るかもしれないけど、そのままにしておくこともできないと思うの。ズバリ聞くわよ。どうして下着姿でいたのよ。裸足だったし」 スープを一口飲んだ瞬間に問われ、喉が温まるよりも先に昨夜のことを思い出して泣きそうになった。だけど、人に涙なんて見せられない。泣き出さないようになる気持ちを必死にこらえた。話しをしようと口を開く寸前に、聖子さんが口を開いた。 「私の部下が桐島ホールディングスの令
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第7話:地獄に落とすなら、私の手で
「仁? あなた、近すぎない? 璃子ちゃん困っているわよ」 そんなこと口にされたら、余計に意識してしまう。聖子さんは、案外……というか、かなり人の恋愛模様を面白がるタイプなのかもしれない。 覗き込むような聖子さんの瞳は、完全に獲物を見つけた猛獣のそれだった。 仁さんは、バツ悪そうに一本の小瓶をテーブルに置いた。 「仁さん? これは?」 袋から出されたのは、いかにも高価でよく効きそうな金色のラベルのドリンクだった。 「体が冷えているかと思って、買ってきたんだ。疑問系はやめてくれよ!」 璃子は答えに迷い、聖子さんへそのドリンク瓶を渡した。 「璃子ちゃん。言いたいこと分かったわ。遠慮なく言っちゃって」 「はい。あの、マカ、アルギニン、スッポンエキス……」 「本当に、笑っちゃうわ。仁、最高ね! これ、超強精ドリンクよ」 聖子さんはそう言って、大きな口を開けて仁さんを叩きながら笑った。 「仁さんは、私をどうしたいんですか」 聖子さんは、吹き出した。 「間違えただけだ。高そうな棚にあったんだよ!」 そう言って、仁さんは顔を伏せた。 「成分の確認は基本ですよ。まぁ、アドレナリンは出そうですので、いただきます」 璃子は、キャップをひねり、一気に流し込んだ。 「聖子さん、仁さん。昨夜の出来事なのですが……」 喉の奥がカッと熱くなるのを感じながら、璃子は2人をじっと見つめた。 「聖子さん、さきほど『麗香専務がマンションに入っていくのを部下が目撃して、張り込みをしていた』とおっしゃいましたよね。……あそこに麗香専務が来ることを、最初から知っていたのですか?」 聖子さんと仁さんは、顔を見合わせていた。答えにくいことなのだろうと思った璃子は、そのまま話を続けることにした。 「私の婚約者、芹沢直樹を桐島ホールディングスの令嬢である麗香専務に奪われました。私に魅力がなかったのかもしれません。だから、着ている服から靴まですべてマンションに置いていけと」 そう話したら、聖子さんの顔つきが変わった。 「女性に服を脱いで、出て行けっと言ったわけ? それで璃子ちゃんはすんなりそれをのんだわけ? 知らん顔したらよかったじゃない?」 聖子さんの言っていることは正しいと思う。だけど、どうしてもすんなり出て行くことに抵抗があった。いや、抵抗というよりはどこかで直樹
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第8話:嵐の突撃と最初の請求
ロックされたガラス扉の向こうに立つ元婚約者の直樹さんを見つめながら、一瞬、愚かにも昨夜の出来事は夢だったのではないかと思った。 現実は直樹さんが、迎えに来てくれた。……そう思ってしまう自分は、どこかおかしい人なのだろうか。 こんな裏切られ方をした時、世の人たちはどのようにして気持ちの整理をしているのだろう。自分の心の拠り所が分からなくて、視界が歪みそうになった。 (泣いて、すがりついて、それからどうするの? 彼は私を捨てた。それが、目の前にある唯一の事実) そう思った、直後。 「仁、何かあったらすぐ裏口から璃子ちゃんを連れて出るのよ」 聖子さんの威勢のいい声が璃子の耳に入ってきた。 「あぁ。分かっているよ。姉貴も十分、気をつけろよ」 聖子さんの顔を見ていると、今度は目の前の仁さんの声が降ってきた。 「仁さん、私は大丈夫です。自分を探しに来た直樹さんともう一度、話をしたいと思います」 仁さんの背中を見つめながら、そっと声をかけた。それは、出会ったばかりの二人が、どうにかして璃子を傷つけまいと必死に守ろうとしてくれているからだ。 「いやいや。璃子さん、あんな姿で外に出した男だ。何をするかわかったもんじゃない」 仁さんは振り返らずにそう言ったけれど、直樹さんと3年間一緒にいたから分かる。 「仁さん! 直樹さんは一度も、暴力を振るったことはないんです」 聖子さんや仁さんからすれば、昨夜の璃子の姿があまりにも異様で、壮絶だったのかもしれないけど、璃子から見る直樹さんはそんな人ではない。 「璃子ちゃん。何言っているの? 暴力って外傷だけじゃないわよ。昨夜のことは、心の暴力よ! 分かる? 完全に暴力っていうの」 聖子さんの口調は、弾丸のように強かった。 (心の暴力……か) そう言われてみれば、聖子さんの言う通りだ。 璃子を追い詰めた男が血相を変えて現れたのだから、二人が璃子を守ろうとここまで警戒してくれるのも当然なのかもしれない。 「仁、開けるわよ!」 カチャ、と聖子さんがガラス扉のロックを解除する音が響いた。 その音が合図のように、璃子は仁さんの背後から横へ一歩、身体を出した。 「璃子! お前、こんなところで何油を売ってやがる!」 直樹さんの怒鳴り声が店内に滑り込んだ。 「直樹さ
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第9話:オフィス襲来
翌朝。璃子は聖子さんが選んでくれた、今までとは見違えるほど上質でシックなオフィスカジュアルに身を包み、桐島ホールディングスの本社ビルへと出社した。 これまでは直樹さんの好みに合わせて、自分を主張しない地味な服装ばかりを選んでいたけれど、今は違う。鏡に映る璃子は、我ながら驚くほど凛としていて、どこか品のありキャリアウーマンのようだった。 「あ、璃子さん……!」 掲示板の前で、ちょうど上の階から下りてきた後輩の猫田明衣さんが、璃子の姿を見つけて目を見張った。 明衣さんは、周囲を気にするように素早く視線を走らせると、小走りで駆け寄ってきた。 「明衣さん、おはよう」 「璃子さん、大変なんですよ! 今、オフィスの中がとんでもないことに……」 明衣さんは声を潜め、璃子の腕を掴んだ。 「あの、芹沢さんが、璃子さんのデスクを勝手に片付けようとしているんです。段ボールをいくつも持ち込んで、璃子さんの私物や書類をどんどん詰め込んでいて……周りのみんなも呆れて見ているんですけど、今の芹沢さんって、麗香専務のお気に入りだから誰も止められないんですよ」 この会社にいては不都合なことがある――そう言っているのも同然の行動だった。 「……直樹さんがね」 昨夜、警告したはずなのに、直樹さんは本当に、昔と変わらず後先考えずに動く。今の璃子にとってはありがたい行動だ。 「ええ。何でも『如月は一身上の都合で今日から出社しない。業務引き継ぎのために俺がデスクを撤収させる』って目の色を変えています。璃子さん、本当に会社を辞めちゃうんですか?」 明衣さんはそう言って、心配そうに璃子を見つめた。 「いいえ。辞めませんよ。明衣さん、教えてくれてありがとう」 璃子のデータがないと、何もできない直樹さんだ。そもそも、そのデータを直樹さんが持ち出したところで、直樹さんの業績がぐんぐん上がるわけでもない。 (これはいい仕返しの予兆) 「え……? 璃子さん?」 明衣さんには、分からないでしょう。 直樹さんから璃子に、何をされて、何を奪われて、何に怒っているのか。 「ちょっと、様子を見てきますね」 璃子は驚く明衣さんに向けて、フッと優雅に微笑んでみせた。 呆然とする明衣さんを残し、璃子はヒールの音をコツコツと響かせながら、オフィスの扉に
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第10話:極上の復讐は、ここから始まる
直樹さんは、璃子を給湯室へ乱暴に押し込んだ。怒り任せに直樹さんは給湯室のドアを閉めた。 「麗香に余計なことをバラしたら、ただじゃおかないからな!」 直樹さんは周囲に声が漏れないよう声を潜めながら、眉間にこれでもかと青筋を立てていた。 「わざわざ、私が言うまでもないでしょうね」 「……はっ?」 「自然に、気づかれますよ。直樹さんご自身で、分かっているのではないですか?」 三年間、この人に尽くしてきたから分かる。その焦りはすべて、手に入れた地位を失いたくないという惨めな保身からくるものだ。こんな時こそ、頭を下げてうまく利用すればまだ仕事の体裁は保てるものの、出世という言葉に目が眩んでいるから、自分で自分の墓穴を掘ることになる。本当に、底の浅い人。 「あまり、一緒にいますと誤解されますよ」 給湯室のドアに手をかける瞬間、背後から乱暴に腕を掴まれた。 「ふざけんな!」 振り返ると、直樹さんは顔を真っ赤にして、顔めがけて左腕を大きく振り上げた。 初めて直樹さんから暴力を振るわれる、そう思った瞬間、恐怖で目を閉じた。 (――バタン!!!) 激しい音を立てて、給湯室のドアが開いた。恐る恐る目を開けると、そこには麗香専務が立っていた。 「あら、直樹。この最高級の令嬢であるわたくしでは、ご不満だったのかしら?」 香水の香りをなびかせながら、麗香専務は腕を組んでそう言い放った。 「麗香!?」 直樹さんは罰悪そうに振り上げた拳を下ろし、掴んでいた腕を振り払った。 「違うんだ、麗香! 誤解しないでくれ! 俺はただ、璃子にここに呼び出されて、会社を辞めたくないってしがみつかれて困っていただけなんだ!」 直樹さんはそう言いながら、麗香専務の元へすり寄った。 「あら、そうでしたのね。会社にしがみつきたいなんて、本当に浅ましい泥棒猫」 麗香専務はそう言って、思いついたようにフッと意地の悪い笑みを浮かべる。 「それでは、哀れな家政婦さんにお仕事を差し上げますわ」 「麗香専務のお仕事を……ですか?」 オウム返しに呟くと、麗香専務はフンと鼻を鳴らした。 社内の噂では、麗香専務には専務らしい仕事など何一つないと言われている。ただ部下が必死に作った書類に目を通し、サインをするだけのお飾りなのだと。自分の力では
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