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第20話

Author: 信陽侯
時間が過ぎていき、天承はその日記を頼りに辛い日々を乗り越えていた。

彼は毎日それを読み、飽きることなく繰り返し読んでいた。

彼はいつも、彼女がかつて自分を好きだったあの時を思い描いていた。

その晩、書斎で仕事を終えた後、いつものように日記を取り出した。

机の上にはファイルが山積みになっており、日記を取り出すときに、「ドン!」と大きな音が鳴った。

ファイルが床に落ち、紙が散らばった。

天承はそれを拾い上げようとしたが、ふと机の下に隠れている紙を見つけ、ゆっくりと引き出した。

表紙に書かれた文字に彼は驚愕した。

【治療放棄同意書】

どういうことだ?

治療放棄とは?

誰が治療を放棄したのか?

実はその紙を手に取った瞬間、天承はすでに答えを知っていた。

しかし、彼はそれを信じることができなかった。

震える手で、彼は表紙の蜘蛛の網を払って、ページをめくった。

患者欄に署名があり、そこには夕夏の名前がはっきりと書かれていた。

次の行を見る。

病因:膵臓癌末期

手術成功率:5%

生存期間:4ヶ月

4ヶ月……

「バタッ」という音がしてから、天承は手が力を失って、紙が床に落ちた。

外から風が吹き込み、紙が散らばった。

天承は狂気に陥った。

彼は本当に狂ってしまう……

彼は椅子に座り、一晩中繰り返し呟いた。

「通りでどこにも見つからなかった。なるほどね。もういない。もういないんだ……」

涙が後から溢れ出し、気づいた時には顔中が涙でびっしょりだった。

書斎で3日3晩、彼は静かに座っていた。

3日目の夜、使用人が水を持ってきてくれたおかげで、彼はようやく意識が戻った。

天承は猛然と目を大きく開けると、椅子から転げ落ちて、床に激しくぶつかった。

「ドン!」という音と共に呻き声を上げた。

彼は髪を掴んで大声で笑った。苦々しく、痛々しい笑いだった。

目が赤く充血していた。

彼は繰り返し呟いた。

「通りでどこにも見つからなかった。なるほどね。もういない。もういないんだ」

笑い声に続いてやってきたのは涙だった。無理に絞り出して、ようやく一滴が目の端に浮かんだ。

乾燥した口元を少し引っ張ると、皮膚が裂けてしまった。

使用人は恐怖でその場に立ち尽くしていたが、近づくことも、離れることもできなかった。

しばらくして天承が突然、疲
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