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第127話

Autor: 雨の若君
「おばあちゃん!」

松信は慌てて駆け寄ろうとするが、倫子は彼の腕をぐっと引き留める。夫婦で何十年も連れ添えば、互いに目配せ一つで気持ちは通じるものだ。

素羽は焦りながら叫ぶ。

「お父さん、早くおばあちゃんを病院に連れて行って!」

利と孝の間で、松信は結局、前者を選ぶ。

「司野に手を引かせる方法を考えろ」

「お父さん!」

素羽の目には、信じられない色が浮かぶ。本当に人間なの?

人間の醜さ。素羽は松信の中に、それをはっきりと見る。

歯を噛みしめて、素羽はしぼり出すように言う。

「分かったよ!約束します!」

病院へ運ばれ、命は助かったものの、いつ意識が戻るかは本人次第だと医者は告げる。

松信はせかす。「おばあちゃんはもう大丈夫だから、今すぐ司野に頭を下げてこい」

しかし、素羽は動かない。「おばあちゃんが目覚めてから」

松信は冷たく言い放つ。「今夜だけ待つ。明日、おばあちゃんが目覚めなくても、必ず司野に頭を下げてこい」

そう言い捨てると、まるで厄介ごとから一刻も早く逃げたいかのように、松信はさっさと出ていく。

素羽は芳枝の細い手を握りしめ、胸が締め付けられる。こんなにも頑張ってきた芳枝が、こんな目に遭うなんて。

彼女は一晩中、病室で芳枝のそばを離れない。ほとんど眠れなかった。夜が明けても、芳枝は目覚めない。松信は約束通り、朝一番で素羽を急かす。

素羽は看護師におばあちゃんのことを託し、司野を探しに行く。

瑞基本社。

社長室へと向かう。

だが岩治の姿はなく、素羽は入り口で足止めされる。

「司野に会いたいの」

美宜は事務的な口調で応じる。

「素羽さん、ご予約はございますか?」

「ない」

司野は彼女の電話すら取らない。どうやって予約などできるのか。

美宜は「それでは申し訳ありませんが、社長にはお会いできません」と断る。

隣の取り巻きが、にやにやしながら言う。

「美宜さん、そんな丁寧に対応する必要ないですよ。社長に何の用だっていうんです、どうせ色仕掛けでしょ?」

美宜は形ばかりの擁護をする。「そんなこと言わないで、本当に用事があるのかもしれないし」

取り巻きは鼻で笑う。「美宜さんは優しすぎますよ。私ならここに座らせずに、さっさと警備員呼んで追い出しますけどね」

美宜は困ったように「それはちょっと…」と口ごもる。

取り
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