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第2話

Auteur: 春朧
千夏が家に近づいた頃、マンションの入口でかつてのマネージャーに電話をかけた。

「もしもし、白井さん。私、復帰するつもり」

電話の向こうで白井(しらい)はしばらく黙りこんだ。けれど、その沈黙の中には抑えきれない喜びが滲んでいて、その中には少しだけ痛々しさも混じっていた。

「よかった……ファンのみんな、ずっとあなたの帰りを待ってたよ。戻ってきたら、また私があなたを大スターにしてあげる。達也のところで苦労してたんでしょ?辛かったら帰っておいで、うちらはあなたの家族なんだから」

七年前、千夏が芸能界を引退しようとしたとき、最初に反対したのが白井だった。必死で止めてくれたのに、千夏はそれを「金づるだから手放したくないだけ」と思い込んで、大喧嘩になった。

出ていく日、白井はドアの前で立って待っていて、最後に一言「また戻りたくなったら、いつでも私が引き上げてやる。千夏、人に養われるってのは楽じゃないよ」って言って、首を振りながら見送ってくれた。

その言葉を思い出して、千夏は今にも涙がこぼれそうになったが、なんとか顔を上げて涙を引っ込め、マネージャーの言葉に返事をした。

「失敗した。でも、もう二度としないよ。白井さん、お仕事は七日後からお願い。それまでに家のこと、片付けたい」

電話を切ってから、千夏は家の中に入った。部屋の中は真っ暗で、達也と颯真がまだ帰ってないのが一目でわかった。

千夏は気にも留めず、まっすぐ寝室に向かって自分の荷物をまとめ始めた。達也と一緒に買ったペアルックや親子ペアの服をたくさん取り出しては、ひとつひとつ畳んでいく。

けれど、それらの服は一度も着られることがなかった。

「子どもっぽいから着たくない」――いつもそう言われていた。

だけど今日、真奈のSNSを見た。そこには達也と颯真、そして真奈の三人が親子服を着て写っていて、キャプションには「三人家族〜」と書かれていた。

たとえ顔がスタンプで隠れていても、千夏には一目でわかった。あれは達也と颯真、そして真奈だった。

着るのが嫌だったわけじゃない。ただ、自分と一緒に着たくなかった――そう気づいた瞬間、千夏は苦笑いをした。

それから、手元のペアルックと親子服を全部ゴミ袋に投げ入れた。

父子が帰ってきたのは、深夜もとうに過ぎた頃だった。

達也は颯真の手を引いて帰宅した。颯真は名残惜しそうに言う。

「パパ、次はいつ真奈おばちゃんに会えるの?まだ帰りたくなかったな〜。真奈おばちゃん、すっごくきれいだった。ママの一万倍きれい!ママは料理と掃除しかできないし、いつも油くさいし、宿題ばっかりやらせるし……僕、ママなんか嫌い。真奈おばちゃんがママだったらよかったのに!」

達也は何も言わず、暗い目で颯真をしばらく見つめていた。

そして、黙ってしゃがみこみ、颯真を抱き上げた。

「颯真、いいか?これから家に入ったら、ママに余計なこと言うなよ。ママに『どこ行ってたの?』って聞かれたら、『パパと塾に行ってた』って言うんだ。いいな?」

「うん、わかったよパパ!」

そんな会話をしていたふたりは気づいていなかった。玄関で荷物をまとめていた千夏が、すべてを聞いてしまっていたことに。

まさか、この子が自分の十月十日お腹で育てて産んだ子だなんて、誰が信じるだろうか――そう思った瞬間、胸が締めつけられるように痛んだ。

家に入ってすぐ、達也は千夏を見つけた。途端に、心の中にうっすらとした罪悪感がよぎった。

そしてその視線の先には、部屋の隅に積まれた大きなバッグたち。家の空気が、どこかスカスカして見える。

なぜだかわからないが、達也の胸にもぽっかりと穴が空いたような、そんな気がした。

「何を……片付けてるんだ?」
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