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第96話

Penulis: 清水雪代
薄い唇がわずかに開き、冷ややかな声が落ちた。

「俺は忙しい。大事な用じゃないなら、今すぐここを出てくれ」

言い終えるや否や、悠人は踵を返し、迷いなく自分のオフィスへ向かった。

一歩一歩が揺るぎなく、まるで一秒たりとも、ここにいたくないと示すかのようだ。

だが、千夏はその冷たさや苛立ちにまるで気づかぬ様子で軽やかに追いかけてきた。

笑みを浮かべ、瞳を細めて甘い声を響かせた。

「もう、いいじゃない。ちょっとあなたの仕事ぶりを見たいだけよ。それにお昼は一緒に食べられるでしょ?」

その屈託のない調子に、悠人の胸に湧くのは感動ではなくむしろ深まる嫌悪だった。

何度も「恋愛対象ではない」とはっきり告げてきたはずなのに、この女は諦める気配を見せなかった。

どうにかしてこの執拗な追随から逃れたい。

しかし千夏は、彼の拒絶など存在しないかのようについてくる。

二時間後、窓の外をふと見るとまだ彼女は帰っていなかった。

もともと良くなかった気分は、さらにささくれ立つ。

眉間に皺を刻み、不機嫌な顔のまま携帯を取り上げた。

ダイヤルしたのは、兄の番号だった。

「どうした?」穏やかで
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