愛は星影に抱かれて

愛は星影に抱かれて

last updateLast Updated : 2026-01-02
By:  花宮守Ongoing
Language: Japanese
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天霧鈴(あまぎりりん)、27歳。記憶喪失。自分の名前さえも忘れていた彼女を、病院から自分の別荘へと連れてきたのは、従兄の天霧晧司(あまぎりこうじ)、38歳。大変な資産家。鈴の回復に一喜一憂し、献身的に寄り添う。病院で意識を取り戻してから数か月、彼が教えてくれるものが世界のすべて。彼は甘く優しく世話をしてくれるけれど、この生活は、どこか山奥に閉じ込められているようにも思える。 ある日、鈴と同い年の男性、影野夕李(かげのゆうり)が現れたことにより、事態は大きく動き始める――。 全250話前後を予定。 【その他の登場人物】 春日雷斗(かすがらいと)、明吉七華(あきよしななか) 晧司の部下

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Chapter 1

第1章 年の離れた従兄 第1話

「リン、食事の支度ができたよ」

 低く、穏やかな声が私を呼ぶ。

「はい、今行きます」

「こちらへ運ぼうか?」

 戸口から姿を現したのは、従兄の天霧晧司さん。今日も優しい笑顔。

「いえ、大丈夫です。今朝はとても気分がいいので」

 本心からそう言ったのに、彼は心配そう。部屋の中へ静かに入ってきて、身支度を済ませた私を眩しげに見た。

「今日は本当に調子がいいんです。洗顔も着替えも、途中で休むことなく済ませることができたんですよ」

 クローゼットから、服を選ぶ余裕もあった。薄い緑色のサマードレス。

「それはよかった。しかし、一度に動き過ぎてはいけないよ」

「晧司さん、本当に過保護ですね。もうじき、あれから四か月にもなるんですよ」

「まだ、四か月だね。正確には3か月半だ」

 背を支えてくれる手。私がよろけたり、呼吸が苦しくなったりしないかと、注意深く見守る目。私より十五センチほど背が高くて、すらりとして逞しい。安心して寄りかかれる。長い足は、一人では速足なのに、私と歩く時は歩幅を合わせてくれる。顔を上げると必ず目が合うのは、いつも私を見ていてくれるから。

 私の居室を出て、彼の寝室の前を通り、リビングへ。明るい朝日が差し込み、コーヒーのいい香り

が漂っている。

「今日もいいお天気」

「梅雨明け宣言はないが、今年は早いのではと予想されているね。光で目が痛くはないかい?」

「ええ。目は何ともないんですもの。……あ」

「うん?」

 晧司さんは私の視線を追った。リビングの階段を降りると、その先は『大きなリビング』。湖の上に張り出したテラスへと続く、この別荘の中でもとびきり素敵な場所。

「テラスまで降りたい?」

 遠慮がちに頷いた。駄目って言われるかな。でも、キラキラ光る水面を見ながら、晧司さんのおいしいお料理を食べたいな。

 彼はちょっと思案してから、フッと笑った。わ、かっこいい。

 見とれている間に、ふわっと抱き上げられた。お姫様抱っこ。緩くまとめたロングヘアが彼の腕にかかる。

「晧司さん?」

「では参りましょうか、姫」

「え、あの……」

「しっかりつかまって」

「あ……はい」

 おずおずと、肩に手をおいて首に手をまわす。病院からここへ移ってきた時も、ほかの時も、何度もこうして抱っこされた。そのたび、私でいいのかなっていう気持ちになる。十も年上の、よくは知らないけど大変な資産家だという晧司さんには、きっと大切な人がいる。時々切ない目をしているから、わかる。

 私を揺らさないように、一歩ずつ階段を降りていく。トクン、トクンと胸が鳴る。私はこの人に、淡い憧れを抱いていたのかもしれない。もしかしたら、子供の頃から。

 今の私は、何ひとつ覚えていないけど――。

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