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第7話
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煉紅村 第8話
「何しに来たの？早く帰りなさい」姉さんは手を引き離そうとしたが、私は強く手を握りしめ、彼女が力を入れれば入れるほど、私は逆に力を込めてその手を引き寄せた。「私、全部知っている」この言葉は軽やかに聞こえたが、姉さんの胸に轟音のように響いた。彼女は深いため息をつき、私を見つめたその目には、かつての姉さんが重なって見えた。「村のこと、知ったの？夏井清のこと、そしてあの晩のことも見たの？」彼女は答えなかった。ただ、私の手をそっと握り返した。その仕草は千言万語を超えるものだった。姉さんはすべてを知っていた。これまで、彼女の口から出てきた悪言の一つ一つが、私への長年の愛情を慎重に隠していたものだった。しばらくして、私たち二人だけが聞こえる音で彼女はゆっくりと口を開いた。「くり、相変わらず賢いね。でも、どうしてこんなことに巻き込まれているの？私がいればそれで十分じゃないか」「うん、姉さん、私にはあなたがいればそれで十分だよ」煉紅屋は御霊屋の裏山にあり、入り口に至るには隠し通路を通らなければならなかった。そこからは湿った空気とわずかな血の匂いが漂ってきた。同行していた女の子たちは、少し恐れを感じて足を止めた。予想外の展開に戸惑いながらも、すぐに後ろや前の男性たちから催促され、仕方なく歩き出した。私と姉さんは心理的な準備を十分にしていたが、それでも大きな扉が開かれた瞬間、震駭した。そこに広がっていたのは、煉紅屋というよりも「人肉屋」と言ったほうがふさわしい場所だった。床には肉の塊が散乱し、無数の肉色をした巨大な虫が這い回っていた。人々の間で起伏する尖った叫び声が部屋の中に響き渡った。それが男たちの苛立ちを引き起こしたようで、彼は手を挙げ、目の前にいる女の子に平手打ちを食らわせた。「叫ぶな。叫んだらお前を殺す」女の子たちは男の脅しにおとなしく口を押さえたが、それでも涙が止まらずにこぼれ落ちていた。その中で少し大胆な女の子が、最後の希望を持って震える声で尋ねた。「お兄さん、もしかして間違った場所に来たんじゃないですか？私たちは村長に指定されて煉紅屋に行くんです」男は無造作に地面に落ちている一匹の肉虫をつまみ上げた。その虫は数えきれないほどの触手が血の糸で繋がっている。男は指で力を入れると、虫は血と泥の塊にな
煉紅村 第7話
御霊屋の中には、各家から年齢に達した女の子たちが親に連れられて集められていた。彼女たちの目は皆、煉紅屋で働くことへの憧れで輝いていた。そこで働くことができれば、家族にとって大きな名誉となり、両親はそれを誇りに感じているだろう。私は母さんの横に立っていたが、この日を迎えることを楽しみにしていたはずなのに、今は恐怖の方が強かった。夏井清の「やめて」という言葉と、彼女の惨死が私の神経を刺激し続けていた。群衆の中からすぐに見覚えのある影が現れた。それは姉さんだった。母さんは彼女に「あんた、野次馬みたいに、ここに来るべきじゃない！」と叱ったが、彼女は耳を貸さず、逆に強く反論した。「来るべきではないのは、彼女でしょう？」村長は私たちを満足げに見渡した。「みんな良い子だ。この店の仕事にはこだわりが強いから、毎日決まった時間にスープを飲ませてもらってるんだよね？」みんなが次々と頷く中、一つの声が際立った。「いいえ」皆の視線がその声の主を追い、そこには姉さんが立っていた。姉さんは相変わらず眉をひそめ、私を指差して言った。「もちろん、私じゃなくて、彼女だ」母さんは横で、突然の展開に驚いて立ち尽くしていた。毎晩私にスープを持ってきてくれていたのに、どうして今は姉さんがそう言っているのか？母さんの目は私をじっと見つめ、まるで穴を開けてしまいそうなほど強く私を睨みつけた。そして、私の手首を一気に掴み、確認するかのように言った。「飲まなかったの？」私は黙って頭を下げただけだった。スープは確かに飲んでいなかったが......姉さんも飲んでいなかった。言おうとした瞬間、姉さんが咳をして私を制止した。長年朝夕生活を共にしてきたので、私はすぐに、彼女の「余計なことを言わず、言う通りにしろ」という意図を理解した。村長は表情を変えず、私と姉さんを見回した後、笑って言った。「じゃあ、お姉さんに行ってもらおう。あなたは家でお母さんたちの世話をしてなさい」そう言い終わると、私たちにそれぞれ自分のものを整理して、今夜のうちに店に行く準備をするように指示した。本来ならそんなに急ぐ必要はなかったが、夏井清の事件の影響で材料が足りなくなったため、村長は私たちにすぐに店に行って手伝うように指示していた。私は家の中で、母さんがまる
煉紅村 第6話
まさか、母さんが電気を消し忘れたのか？私はしゃがんで頭を窓のそばに突っ込み、隙間から中を覗くと、やっぱり誰かがいる。それは母さんの姿だった！でも、母さんは何をしているんだろう？こんなに遅くまで寝ていないなんて。ぼんやりとしか見えないが、母さんは火を焚いて何かを煮込んでいるようで、鍋からは白い蒸気がブクブクと立ち上っている。どうやら沸騰しているらしい。私はそっと指で隙間を少し広げ、視界がクリアになると同時に、厨房の中から聞こえる音もはっきりと聞こえてきた。この光景、私は生涯忘れられないだろう。まな板の上に横たわっているのは、夏井清だった。その時、彼女はもう命を失っていて、まるでまな板の上の魚のように、四肢が散らばっていた。晩に、私と目が合ったあの瞳には、血のように真っ赤で、前をじっと見つめ、まるでどれほど無念だったのかを語りかけているようだった。私の心臓は、瞬時にぎゅっと締め付けられ、息ができなくなるほど苦しくなった。体中の血液が凍りつくような感覚が広がり、風が吹くと、まるで溺れた後のように必死で空気を吸い込んだ。厨房の中から声が聞こえた。「この死にぞこないか！こんな時に出てきやがって！お父さん、残りのを他の人に分けて、スープにしてやってくれ」厨房の中で、母さんは片足を鍋に放り込んだ。父さんは不機嫌そうに残りを、まるで豚肉のように無造作に袋に詰め込んだ。そして、力強く煙草を一口吸ってから、頷いた。スープにするとは！まさか......胃の中が波のように激しく揺れ、私は思わず空嘔吐した。厨房の中にいる人たちが、外で誰かが見ていることに気づいたのか、一斉に窓の外に目を向けた。私は父さんがまな板の上にあった大きな包丁を取り上げ、それにはまだ肉や骨が残っているのを見た。彼は冷たくその包丁を持ち、外に向かって歩き出した。この逃げ足では、私はすぐに見つかるに違いない。急いで厨房の横にある草むらに隠れ、見つからないように祈るしかなかった。足音が遠くから近づいてきて、私の周りをぐるぐると回るように響いた。一歩一歩が、まるで死の鼓動のように、私の心を強く揺さぶった。父さんが刃先で稲草を切り裂き、内部を探ろうとした。その時、不意に後頭部に強烈な一撃を受け、私は完全に意識を失った。印象に残っているのは、姉さんの声だっ
煉紅村 第5話
予想通り！やっぱり夏井清だった。私は葉をかき分け、ちょうど白く明るい月光が降り注ぎ、彼女の顔を照らしていた。真っ白で血の気のない顔が突然私の視界に飛び込んできた。去年の夏、彼女は私に笑いながら、自分が煉紅屋に入ったことで家族に良い生活をさせることができると言い、休みに帰ったら一緒においしいものを買いに行こうと約束してくれたことを覚えている。彼女の顔を見て、私は涙が止まらなかった。恐怖ではなく、心からの痛みだった。隣に住んでいた清姉さんが、どうしてこんな姿になってしまったのか！村長が言っていた泥棒や、全村を裏切った裏切り者が、どうして息も絶え絶えの彼女であるはずがあるのか！私は急いで地面に倒れている彼女を支えたが、体が冷たく、まるで温かさがないようだった。姉さんのような温かさが感じられない。ほとんど軽い力で彼女を支え上げると、彼女の肩甲骨は皮膚だけで、もうほとんど骨と皮だった。下を見ると、腹部が異常に膨らんでおり、まるで7、8ヶ月の妊娠をしているかのようだった。よく見ると、まだゆっくりと蠕動しており、まるで子供が母親の腹の中で足を動かしているかのようだった。彼女は難儀して私の腕の中で苦しそうに息をしていて、ぼそぼそと何か言っていたが、私は聞き取れなかった。本能的に耳を近づけると、彼女からは煉紅の香りが漂ってきた。彼女は断片的に「ダメ、スープ、姉さん、煉紅、火」といった言葉をつぶやいていた。何か聞こうとしたその時、遠くから足音が聞こえた。夏井清もそれに気づいたのか、急いで体を隠すように縮こまった。彼女が見つけた隅っこは非常に目立たず、ちょうど一人分が収まる小さなくぼみだった。彼女は微かに私に頭を振って、私に早く行くように示した。私はうなずき、「必ず助けに来るから」と口の形で伝えた。その瞬間、彼女の空々たる目に、一瞬光が宿ったように見えた。「くり、どこにいる？」同行の男の声が空中に響いたので、私は急いで夏井清から少し離れたところに座り、叫んだ。「ここにいる！」すぐに彼らは私の声を追ってきて、同行の男が座っている私を引き上げて心配そうに聞いた。「お姉さんが君の声を聞いたって言って、探しに来てくれたんだ。何か見つかったか？」私はすぐに首を振り、痛そうに見せて言った。「ちょっと注意を怠ったせいで、足元の
煉紅村 第4話
村長は私たち全員を見渡し、すぐに命令を下した。私たちが幾つかのグループに分かれて夏井清の行方を追い、生死を問わず、必ず探し出せという命令だった。私たちの村は地形が複雑で、山がいくつもあった。私は姉さんと他の一人と一緒にグループに分けられ、朝から夕方まで探していた。その時、空は次第に暗くなり、黒い闇が瞬く間に空全体を覆い尽くした。わずかな星々が空に輝くのみだった。こんなに大きくなって、私は初めて深山に足を踏み入れた。村の年寄りたちがよく話していたことだが、この山の中では時折、何とも言い難い音が響くことがあると言う。噂では、ある移り気な男が妻を裏切り、妻を殺してこの山に捨てたのだという。姉さんは私を押しのけ、嫌そうに指をさしながら言った。「そっちに行けよ、私を押しつぶす気？」私はおとなしく横に寄ると、足元の落ち葉がサクサクと音を立て、周りでは虫の鳴き声があちこちに響いていた。その音が恐怖となり、涙が溢れそうになった。恐らく、幼い頃に山に捨てられたせいか、山に対しては何となく恐怖を感じていた。先頭の人が立ち止まり、目の前に三つの分かれ道が現れた。彼は空を一瞥して、私たちを三方向に分けて探すように指示した。「私はこっちに行く。お前たちはそれぞれ二手に分かれろ」私は遠くの真っ黒な森を見つめ、助けを求めるように姉さんを見た。姉さんは私に白い目を向け、「うるさいな！」という意を込めて視線を投げかけると、そのまま分かれ道の一つに足を踏み入れた。私は二人の後ろ姿と残された別れ道を見つめた後、深く息を吸い込み、覚悟を決めてその道に足を踏み入れた。私は必死に頭の中のその映像を消そうとしたが、逆にそのたびにどんどん鮮明に浮かび上がり、恐怖と緊張で視界に幻影まで現れるようになった。もう一度前の木の葉が女性の顔に見えた瞬間、私は思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ。その時、心の中で自分がなんてこんなに不甲斐ないだろうと思い、姉さんが私を見下す理由がよく分かった気がした。「くり？」突然、どこからかぼんやりと声が聞こえた。元々立ち上がろうとした私は、またすぐに頭を抱えてしゃがみ込み、耳と目を塞いだ。今回は幻覚だけでなく、幻聴までもした。私は心の中で「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と繰り返し唱えたが、音は消えるどころか、ますますはっきりと聞こえるよ
煉紅村 第3話
「どうした？大きくなったから、逆らうつもりか？」私は姉さんが何を聞きたがっているか分かっていた。彼女はいつも私に、両親に捨てられた野育ちの子供だと認めさせたがっている。最初、ここにいることができたのは、父さんが姉さんが一人で寂しすぎるのを心配したからだ。「そんな！私は捨てられた子だから、姉さんとは比べられない」姉さんは私の答えに満足した様子で、暖かい黄色の光が彼女の髪の上にかかり、優しかった姉さんが戻ってきたように見えた。私は再三ためらった結果、試しに姉さんの前に歩み寄り、勇気を振り絞って翼々と姉さんの手を取った。すると、まるで汚れたものに触れたかのように、姉さんはほぼ反射的に私の手を振り払った。その瞬間、私の手の甲は大きく腫れ上がり、まるで発酵したまんじゅうのように膨れ上がった。私は苦々しく言った。「姉さん、これから私は煉紅屋に行くことになるから、きっと会う機会も少なくなる。だから、もう喧嘩はしないで。私、ずっと姉さんが良い姉さんだと思ってる」姉さんが普段私に優しくないことは分かっていた。それでも私は、数少ない家族を取り戻したい一心で、再びやり直そうと決意した。姉さんは私の言葉を聞くと、目の奥にまつ毛が垂れた影が広がり、表情も嫌悪感に変わった。「そんなに自信があるの？」私は姉さんを見つめ、何か言おうとしたが、言葉が喉元で引っかかり、結局何も言えずに黙ってしまった。日々はそんな風に何も変わらず、穏やかに過ぎていったが、やがて予期しない訪問者が村の平穏を破った。御霊屋の中は人でいっぱいだった。誰もが理由が分からず、あれこれと噂を交わしながら、煉紅村全体がここに集められていた。御霊屋の最前列には村長が立っていたが、以前の温和で礼儀正しい村長とは異なっていた。彼の顔には微かに険しい表情が浮かんでおり、眉をぎゅっとひそめると、私たち一人一人をまるで何かを探すようにじっと見回していた。ここまで大規模に集まるのは久しぶりで、きっと何か大きな出来事が起こったに違いない。奇妙な雰囲気が漂い、村人たちの顔にはそれぞれ異なる表情が浮かんでいた。村長が咳払いをすると、人々は一斉に静まり、村長は一字一句をかみしめるように言った。「私たちの村に裏切り者がいる。この村の何十年にもわたる生計を支える煉紅の秘方を盗もうとした。その裏切り者
