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第166話

Author: 花朔
この作品の撮影が終わってから、一番気楽な時間だった。

ところが、少し離れたところに黒いベントレーが停まっているのを見た瞬間、海羽のほっとしていた心臓がまたきゅっと縮み、紗夜の腕を抱く手がぐっと強くなる。

「どうしたの?」

紗夜が足を止め、首をかしげる。

「えっとね、急に用事を思い出して......」

海羽の声はどこか不自然だ。

けれど紗夜は本当に急用なのだと思った。

海羽の仕事柄、予定が急に変わることなど珍しくない。

「そうなんだ。じゃあ行ってきて。瑚々の筆は私が買うから」

「それと......瑚々をお家まで連れて帰ってくれる?外に出ないように見てて欲しいの」

海羽は彼女の手を握り、真剣な顔になる。

「わかってるでしょ、過激なファンっているし......もし私に娘がいるって知られたら......」

「大丈夫、ちゃんとわかってるから」

紗夜はうなずいた。

「後で瑚々と一緒に帰るよ。出さないようにするから」

あのマンションの警備は病院より厳重だ。

「ありがとう、紗夜ちゃん」

そう言うと海羽は踵を返し、わざと病院とは反対の方向へ歩き出す。

ベントレーの持ち
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