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第640話

Auteur: 花朔
梅谷家が崩壊した翌日。

「スパイ・ローズ」制作チームの会議室は、重苦しい空気に包まれていた。

今にも雨が落ちそうなほどの圧迫感。

名プロデューサーの石井は湯気の立つ茶を手に、浮かない顔をした主要スタッフたちを必死に宥めていた。

「皆さん、落ち着いてください。梅谷家が倒れたことと、このプロジェクトは無関係です。新しい出資者にはすでに当たっています――」

言い終わる前に、重厚な木製ドアが外から勢いよく開かれた。

バンッ!

突然の音に、全員が一斉に入口へ視線を向ける。

ダークグレーのオーダースーツに身を包んだ一輝が、黒服のボディーガードたちを従えてゆっくりと入ってきた。

鋭い眼差し。

まるで縄張りを見回る豹のような威圧感。

「せ、瀬賀社長......?」

石井の手が震え、熱い茶がこぼれて手にかかる。

だがそれにも気づかない。

「な、なぜここへ......?」

一輝は答えず、そのまま上座へと歩き、当然のように腰を下ろした。

隣の秘書が一冊の書類を机に叩きつける。

石井は震える手で開き、表紙の文字を見た瞬間、顔色を失った。

――【スパイ・ローズプロジェクト所有
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