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第8話

Author: ルルル
どれくらい意識を失っていたのだろう。目を覚ますと、璃羽はすでに病院のベッドに横たわっていた。

目を開けた瞬間、全身の骨がバラバラに砕けてしまいそうなほどの激痛が走る。

片腕には包帯が巻かれ、もう片方の手には点滴の針が刺さっていた。

彼女が目を覚ましたのを見て、傍らにいた健太はあからさまに安堵の息を吐いた。

「璃羽様、やっと気がつかれたのですね」

璃羽は病室をぐるりと見渡したが、そこに蒼蓮の姿はなかった。胸の奥にぽっかりと冷たい穴が空いたように、ただ虚しさだけが広がっていく。

彼女の落胆した瞳に気づき、健太は慌てて言った。

「社長は璃羽様が事故に遭われたとつい先ほどお知りになりまして……今、こちらへ急いで向かっていらっしゃいます。

まずはゆっくり休んでください。社長が到着されましたら、すぐにお知らせしますから」

璃羽は痛みを堪え、無理に身を起こそうとした。

「私、どれくらい眠っていたの?」

健太は一瞬言葉を詰まらせたが、やがて正直に答えた。

「……丸一日です」

璃羽は自嘲するように笑った。丸一日……

――それほど長い間、私が意識を失っていたというのに、彼は「たった今知った」だなんて。その言い訳は、いくらなんでもお粗末すぎないかしら。

しかし彼女はそれをあえて問い詰めることはせず、ただ静かに頷いただけだった。

しばらくして、ようやく蒼蓮が病室に姿を現した。

彼はベッドの傍らに腰を下ろすと、手を伸ばしてそっと彼女の額に触れた。

「熱はないようだな。医者の話ではただの打撲と擦り傷だそうだ。しばらく休めば良くなる。家から雑炊を持ってきたんだが、少し食べるか?」

璃羽の目頭が、無意識のうちに熱くなった。昔、彼女が熱を出して寝込んだ時は、いつも彼が自ら雑炊を作って、スプーンで優しく口まで運んでくれたものだ。

最初は料理なんて何一つできなくて、火加減が分からずに真っ黒に焦がしてドロドロにしてしまったり、何度も失敗を繰り返しながら、ようやくまともに作れるようになってくれた。

ただ、今の彼は、もうずいぶん長い間キッチンに立っていない。

先ほどまで胸の中で燻っていた彼への恨みもどこへやら、璃羽は何も言わずにお椀を受け取ると、雑炊を大きめにひと匙すくって口に運んだ。

自分でも呆れるほど単純な女だと思う。彼がほんの少し歩み寄って優しくしてくれるだけで、またあっさりと全てを許してしまうのだから。

しかし、一口味わった途端、彼女の顔から笑みが凍りついた。

この雑炊は、決して彼の手作りなんかじゃない。この味は……病院へ来る道すがら、どこかの店で適当に買ってきただけのものだ。

璃羽は力なく笑った。またしても都合のいい期待を抱いてしまった自分の浅はかさが、ひどく惨めに思えてならない。

大企業の社長である彼が、わざわざ私のためにキッチンに立って雑炊を作ってくれるわけがないのに。

璃羽は二口だけ食べると、静かにスプーンを置いた。

蒼蓮は彼女とろくに言葉も交わさず、何本か電話で仕事の指示を済ませると、すぐに立ち去ろうとした。

立ち上がる彼の姿を見て、璃羽はとうとう堪えきれずにその手を掴んだ。

「もう少しだけ、そばにいてくれない……?」

彼は一瞬動きを止めたが、それでも彼女の手をそっと払いのけた。

「まだ片付ける仕事がある。後でまた来る」

後で、今度、そのうち――そんな誤魔化しの言葉はもう聞き飽きた。

華苑が帰国してからの数々の出来事が脳裏をよぎり、璃羽は自分の心の中の忍耐が完全に限界を迎えたのを感じた。

彼女はついに、彼を問い詰めた。

「蒼蓮……あなたの心の中で、私って一体なんなの?」

恋人とも呼べない曖昧な関係のまま、気づけば何年もが過ぎていた。自分さえ物分かりの良い女を演じていれば、この先もずっとその関係を繋ぎ止めておける――そんな淡い期待を抱いていたのかもしれない。

だが、華苑が戻ってきた今、もうこれ以上、自分に嘘をつき続けることはできないと残酷な現実を突きつけられた。

7年。もう、はっきりとした答えをもらうべき時だった。

蒼蓮は微かに眉をひそめ、彼女のその詰問に不快感を示した。

しばらくの沈黙の後、彼はようやく口を開いた。

「璃羽、お前が望むなら、一生俺のそばにいてもいい」

そう言い残して、彼は病室を後にした。

――もし私が望むなら、一生彼のそばにいてもいい。

それは、どんな立場で?友達?愛人?それとも、ただの都合のいいセフレ?

どの立場であれ、それが璃羽の求めている答えではないことだけは確かだった。

彼女は窓辺にもたれかかったまま、長い間、ただぼんやりと外を眺めて、何も考えられずにいた。

その時、手元のスマートフォンが不意に短い通知音を鳴らした。

華苑からのメッセージだった。彼女はしばらく躊躇った後、意を決して画面をタップした。

そこにあったのは、華苑のSNSの投稿をスクリーンショットした、たった一枚の写真だった。

広々とした広場は、何万本ものピンクの薔薇で埋め尽くされ、大勢の人々が華苑と蒼蓮を祝福するように囲んでいる。

溢れんばかりの笑顔と歓声に包まれる中、華苑は蒼蓮に向けてそっと手を差し出し、彼の手によって薬指にゆっくりと婚約指輪がはめられていく――そんな幸せの絶頂の瞬間が写し出されていた。

添えられたキャプションは一言。【喜んで!】

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