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苦悩2

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2025-12-16 21:37:43

千聖が罪悪感を覚えるのは、金銭の問題だけではない。自分が紅玲を利用していた女達と同じことをしていないか? 紅玲に恋愛感情を抱くことはないが、だからといって彼をボロ雑巾のようにするつもりなどない。

「あのこと、斗真に聞いとくんだったかも……」

千聖のいう“あのこと”とは、紅玲の親のことである。地元のファミレスで話した時、紅玲は自分の親も毒親だったと言っていた。その話を聞いてから、無闇にぶっきらぼうな態度が取りにくくなってしまった。

「私なりに、紅玲と向き合った方がよさそうね……。少なくとも、あの3週間は会うんだから……」

千聖はコピー用紙を1枚持ってくると、紅玲についてまとめだした。

分かっていること

・私が好き

・毒親持ち

・お金がある

・シナリオライターやFXで生活している

・外食が多い

・斗真とは高校からの付き合い

・女性関係のトラウマ級の過去

・お酒に弱い

分からないこと

・私のどこが好きなのか

・どんな毒親だったのか

・女性をどう思っているのか

・なぜ借金を肩代わりしたのか

リストを書き終えると、千聖はボールペンを転がしてため息をつく。

「分からないことっていうより、知りたい
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    「な、なに……?」「時間になっただけだよ」紅玲はサイドテーブルのスマホを手繰り寄せると、アラーム画面を見せた。そこには“契約終了”の文字が並んでいる。千聖はアラームを止めると、スマホをソファの上に投げた。「契約なんて、もう知らない……。ねぇ、愛して? いつもみたいに、愛してるって言って!」「愛してるよ、チサちゃんだけをね」紅玲が千聖を抱きしめて唇を押し当てると、どちらからともなく舌を絡ませた。水音と吐息が、淫靡に響き渡る。「んっ……ふ、ぁ……は、んんっ……」唇が離れると、千聖は紅玲の首に腕を回す。「愛してるわ、紅玲。ずっと、そばにいてね」「チサちゃんに愛されるだなんて、オレは幸せ者だなぁ」紅玲は千聖を押し倒すと、首筋に舌を這わせる。「あぁ……! お願いよ、私はあなたのものだって、痕をつけて」「いくらでもつけたげるよ」紅玲は千聖の首筋を甘噛みすると、思いっきり吸い上げた。鈍い痛みさえも千聖は愛情と快楽に捉える。「いっ……んはぁ……! ちゃんとついた?」「うん、綺麗についたよ。もっとつけようか」「嬉しい……」紅玲は再び首筋に顔を埋め、いくつもの所有印をつけていく。それは首筋だけにとどまらず、胸元にまで彩りを添えていく。「ああっ! んぅ、ゃ……あぁんっ! 紅玲……ひぅっ、んんっ……好きよ、愛してるの……」千聖は熱にうなされたように、愛の言葉を口にする。「オレもチサちゃんのこと、愛してるよ」紅玲は耳元で囁くと、深い口づけをした。ふたりは明け方近くまで愛を口にしながら求め合い、チェックアウトギリギリまでホテルに滞在した。数日後、仕事を終えた千聖は1等地に建ててある一軒家の玄関を開けた。「ただいま」「おかえり、チサちゃん。今日もお疲れ様」紅玲は千聖を出迎えて抱きしめると、色白の細い首に真っ赤な首輪を付けた。(あぁ、ようやく紅玲を独り占めできる……。独り占めしてもらえるんだ……)千聖は仕事用のカバンなどは乱雑に隅に投げ、紅玲の首に腕を回し、キスをした。

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    「おまたせ、チサちゃん」紅玲はヘッドホンを取ると、千聖をベッドの上に運んだ。その間千聖はずっと口を動かしているが、声は出ていない。「喋ろうとしない方がいいって言ったのに……」紅玲は茶色の小瓶をカバンから出すと、再び口移しで飲ませた。「少ししたら喋れるようになると思うから、無理しないでね」紅玲は千聖の髪をひと撫ですると、ベルトを外していく。「紅玲、あなた……げほっ、ごほっ……」紅玲の言葉を無視して言葉を発すると、声は出たが未だに残る閉塞感で咳き込んでしまう。「まったく、無理しないでって言ったそばから……」紅玲は拘束具を外すと、千聖を抱きしめた。「ひどい……げほっ……あなたは、ひどい人よ……」涙ながらに訴える千聖の背中をさすり、頬にキスを落とす。「うん、ごめんね? お水でも飲む?」紅玲がコンビニボックスへ行こうと千聖から手を離すと、千聖はその手を力強く握った。「チサちゃん?」「ダメ、行かせない……。あんな女のところには……」そこまで言って、千聖は再び咳き込む。「大丈夫、お水持ってくるだけだから。この部屋からは出ないよ?」紅玲は子供をあやす様に、千聖に言い聞かせる。「本当に……? ここにいる?」「いるって。すぐそこだから」紅玲がコンビニボックスを指さすと、千聖はようやく手を離した。紅玲はミネラルウォーターを購入すると、キャップを外して千聖に渡した。千聖は半分近く飲むと、ペットボトルを投げ捨てて紅玲に抱きつく。「嫌よ……。あなたは誰にも渡さないんだから……。ミチルなんかに、渡すものですか……」(あぁ、やっぱりあの時ミチルが怒鳴ってたのは、チサちゃんだったか……。あとでお礼しなきゃなぁ)千聖の言葉に、紅玲はミチルに再会した日のことを思い出した。そのことを確かめるのを兼ねて、ミチルと特徴が似ているデリヘル嬢を呼んだのだ。「チサちゃんは、オレのこと好き?」「えぇ好きよ、愛してるの……。もう変な意地張らないから、どこにも行かないで……。私のそばにいて……」紅玲は自分にすがる千聖を抱きしめると、そっと唇を重ねた。同時に、紅玲のスマホがけたたましく鳴る。

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    紅玲は熱っぽい目で女性を見ながら、何度も口を動かす。千聖にはそれが愛を囁いているようにしか見えず、嫉妬にかられる。(私のこと好きって、愛してるって何度も言ってたのに! 紅玲はそんな女を選ぶの? 嫌よ、そんなの……。あんな女に、紅玲は渡さない!)千聖の中で嫉妬の炎が燃えたぎる中、ふたりはおかまいなしに互いの躯に触れる。女性は紅玲のペニスを咥え、頭を上下に動かす。紅玲は気持ちよさそうな顔をしながらゆるゆると腰を振り、女性の髪を撫でる。ふと、紅玲はなにか思い出すような顔をすると、こちらに向かって妖艶な笑みを浮かべる。だがすぐに視線を女性に戻し、彼女の髪を撫で続ける。(ひどい……! なんで私にこんなの見せつけるのよ!? 紅玲から離れなさいよ、このアバズレ! 紅玲は私のものなのに……)嫉妬や戸惑い、更には独占欲でぐちゃぐちゃした感情が渦巻き、千聖は今にも気が狂いそうになる。目頭が熱くなり、涙が溢れる。薬のことなど関係無しに、千聖は叫んだ。声が出ていようがいまいが、関係ない。叫ばずにはいられなかった。「私の紅玲よ! どうせお金が目的でしょ!? 離れなさい、このろくでなし! 紅玲も紅玲よ……。私のこと愛してるなら、そんな女いらないでしょ!? 今すぐ追い出してよ!」のどは相変わらず閉塞感で満たされ、聴覚も奪われている。それでも普段使わない罵詈雑言を女性に浴びせ、紅玲は自分のものだと叫び続けた。紅玲は絶頂を迎えたらしく、ベッドに寝そべる。女性はティッシュに紅玲の欲を吐き出すと、うがいしに消えた。「なんてもったいないことするの!? 信じられない!」千聖の言葉が途切れたタイミングで紅玲は起き上がり、笑顔でこちらに手を振った。「紅玲、あなた最低よ! 私がいるのにあんな女と! 許さないんだから!」実際にはこれらの声はふたりに届いていない。だが怒り狂った千聖には、そんなことは頭の片隅にすら残っていない。女性が戻ってくると紅玲は彼女にお金を渡し、女性はそれを受け取って部屋から出ていった。「結局金だけじゃないの! 紅玲、あなたいつまでこんな女に騙され続けるつもりなの!?」画面から紅玲が消え、トイレのドアが開けられる。千聖は潤んだ瞳で紅玲を睨みつけた。

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    「ちょっと待っててね」紅玲はトイレから出ていく。(怖い……。私、どうなっちゃうの? 殺されたりとか、しないわよね……?)まったく読めない紅玲の行動に恐怖を感じ、悪い方へ思考を回す。「おまたせ。これがあれば退屈しないと思うんだ」戻ってきた紅玲は、洋式トイレの蓋を閉め、その上に小型テレビを置いた。テレビには、先程までいたベッドが映っている。(何をする気なの……?)不安になって紅玲を見上げると、彼は優しく微笑んで髪を撫でる。「そんな不安そうな顔しないで? オレがチサちゃんに、酷いことするわけないでしょ? だって、こんなに愛してるんだから」紅玲は千聖の頬にキスをすると、今度はヘッドホンをつけた。大音量でジャズが流れる。紅玲は口を動かすが、何を言っているのか聞こえない。自由と声、そして聴覚を奪われて怯える千聖にキスをすると、紅玲はトイレから出ていった。小型テレビを見ると、紅玲はベッドに腰掛け、電話をしている。電話が終わると、こちらに向かって手を振った。(もう、なんなの!? なんで私がこんな目に合わなきゃなんないのよ!)千聖の叫びは誰にも届くことはない。10分もすると紅玲はベッドから立ち上がり、画面から消えた。すぐに戻ってきたが、女性と一緒だ。女性はウェーブのかかった髪に、シフォンスカートをはいている。ふたりは笑顔で話をしながら、ベッドを素通りして画面から消える。その先にあるのは、浴室だ。(今の女……。もしかして、ミチル!?)以前ぶつかった女性と同じ特徴を持つ女性に、千聖の胸がざわつく。例の女性がミチルと確認したわけでもなければ、画面に映った女性と同一人物というわけでもない。それでも混乱に陥った千聖は、例の女性と画面の女性がミチルだと思い込んでしまった。シャワーをすませたふたりが、ベッドの上に戻ってくる。ふたりは情熱的なキスを何度も交わしながら、バスローブを脱がせ合う。紅玲は愛おしげな目を女性に向けながら押し倒し、貧相な女性の胸を貪る。(なんで? どうして私じゃない女をあんな目で見たの? なんでそんな女に夢中になるの? その女は、あなたを金づるだとしか思ってないのよ?)千聖の中で、疑問と怒りがふつふつと沸き上がる。

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    「そっかぁ、この1ヶ月で好きになってもらおうと、オレなりに努力したけど、ダメだったか。それは残念」残念というわりには、不自然な笑顔は張り付いたままだ。紅玲は千聖を片手で抱きしめ直しながら、カバンから茶色の小瓶を取り出す。千聖は音だけで紅玲がなにかを取り出したのを察し、彼の胸板を押して見上げた。「何をしようっていうの?」「面白いこと」紅玲はそう言って千聖の頬にキスをすると、小瓶の中身を一気にあおった。「紅玲、それは……んんっ!?」紅玲は千聖を押し倒し、唇を重ねる。舌を千聖の口内に侵入させると、先程の液体を流し込み、彼女の可愛らしい小鼻をつまんだ。(なにこれ、甘い……苦しい……!)千聖が大きくのどを鳴らして薬を飲み込むと、紅玲はようやく彼女の口と鼻を解放した。千聖は大きく肩で息をしながら、紅玲を睨みつける。「何を飲ませたのよ?」「そのうち分かるんじゃない?」紅玲はニヤつきながら、千聖の躯に指先を這わせる。「んぅ……あ、や……あぁ……!」小さな快楽に時折躯を小さく跳ねさせながら、吐息と共に悩ましい声が零れる。「チサちゃんの感じてる可愛い顔も、今日で見納めかぁ……。寂しいな」紅玲は相変わらず言葉と一致しない顔をしながら、千聖の乳首をつまみ上げる。「ひうぅ……! ん、ああっ……! や、やだ……! なんか、……っ!?」千聖は感じながら、自分の躯に違和感を覚えた。躯はダルくなり、のどに閉塞感がじわりと押し寄せてきた。「即効性とはいえ、こうもはやく効くとはね」嬉しそうに言う紅玲に説明を求めようとするが、声が出ない。「しばらくは声を出せないはずだよ、無理して喋ろうとしない方がいい」紅玲はカバンから黒い寝袋のような拘束具を出すと、ロクに動けない千聖を入れて、複数あるベルトを次々と締めていく。(嫌、やめて! やめてよ!)千聖は心の中で悲痛な声を上げるが、紅玲に届くはずもなく……。「できた」紅玲は満足げに千聖を見下す。顔以外、寝袋のような拘束具におおわれた千聖は、芋虫のような有様だ。紅玲はそんな千聖を抱えてトイレに行くと、便器と向かい合うようなかたちで、壁によりかからせて座らせる。

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    「そりゃね……。そもそも隠しようがないでしょうよ……」「まぁ隠す気もないんだけどね。今日が最後だから、思い出の地を巡ろうってだけ」「本当にそれだけ?」どうしても裏があるように思えてならない千聖は、さらに問いただす。「もしかして、サプライズに婚約指輪でも用意したほうがよかった?」「茶化さないでよ」千聖がそう言いながら睨みつけると、紅玲はわざとらしく怖がってみせる。「チサちゃん怖いよ。本当だって、チサちゃん考えすぎ。オレがなにか企んでるっていう根拠があるなら、話は別だけど」そう言われると、千聖は黙るしかない。「今日は笑って終わろうよ、最後なんだからさ」紅玲は穏やかに微笑みながら言う。その笑みが、千聖の不安にも似た感情を掻き立てる。(運命だなんだって言ってたわりには、ずいぶん落ち着いてるのね……)しばらくすると料理が運ばれ、ふたりは他愛のない話をしながら食事をした。紅玲は終始寂しさや未練を感じさせず、楽しそうに会話をしていた。食事を終えると、ふたりはホテルへ行く。「22時半か……」紅玲はスマホを見ながら、ぽつりと呟く。「なにか用事でもあるのかしら?」「いや、なんでもないよ」紅玲は貼り付いたような笑顔で答えると、ベッドの上にカバンを置いた。「ずっと気になってたけど、それはなんなの?」「これ? ヒミツ。シャワー浴びよっか」紅玲は千聖の肩を抱き、浴室へ行く。髪や躯を洗い合って浴室から出ると、ベッドの上で向かい合うように座る。紅玲は千聖を抱きしめると、触れるだけのキスをした。「好き、愛してるよ、チサちゃん。チサちゃんは? オレのこと、どう思ってる?」愛を求める紅玲に、千聖はげんなりする。「すごい人だとは思うけど、好意は抱いてないわ。契約期間が終わったら、会うつもりはないもの」千聖がきっぱり言うと、紅玲はニィッと口角を上げた。(なんなのよ……?)紅玲の不自然な笑顔に、得体の知れない恐怖がこみ上げてくる。

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  • 独占欲に捕らわれて   契約期間開始14

    ホテルから出ると、千聖はさよならと短く言って、早歩きでその場から離れた。「はぁ……、このまま今日が終わるの、なんか癪だわ……」千聖がカリカリしながら帰路を辿っていると、スマホが震えた。「誰かしら?」画面を見れば、浩二郎という男性からLINEが来ている。彼はパパリストのひとりで、千聖から彼に連絡することはない。というのも、浩二郎はどこにでもいるサラリーマンで、セックスはまぁまぁ上手いが羽振りがイマイチだ。食事に行けばファミレスの中でも1番安いところで、ホテルに行っても宿泊料金にならないよう、時間をこまめに気にしている。千聖としてはどんなに安い食事でも構わないが、この男は千聖が注文した

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