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第2話

寝坊
特別室の中。

結衣は不安そうな顔で言った。

「湊、凛さんは大丈夫?彼女が怒っているのを見て……だから説明しに行こうと思ったんだけど、まさか発作が起きるなんて思わなくて……」

彼女は罪悪感に満ちた表情を浮かべ、その瞳には不安の涙がいっぱいに溜まっていた。

湊は彼女の涙を拭い、優しく腕の中に抱き寄せた。

「大丈夫だ。凛は昔から運が強いからな」

結衣はまだ少し怯えているようだった。

「でも、今日はあなたたちが婚姻届を出す日だったのに。私が不甲斐ないばかりに。やっぱり、私から彼女に説明した方がいいと思う。

私のせいで、あなたと凛さんが喧嘩するのは嫌なの」

その時。

湊の別のアシスタントが慌ただしくドアを押し開けて入ってきた。

「若様、警察から連絡がありました。桜井様のために用意された大量の花が、幹線道路を塞いでいるとのことです。

救急車が一台立ち往生しています。乗っている患者は交通事故に遭い、非常に危険な状態で、今すぐ道路を空ける必要があるそうです。

現在、撤去作業を進めていますが……」

言い終わらないうちに、結衣の目がさらに赤くなった。

「あれは、私のために用意してくれたの……?でも、私、まだ見てないのに……」

結衣のその言葉を聞いた瞬間、湊は即座に決断を下した。

「撤去は中止だ」

「しかし……」

「何?」

湊は冷たく鼻を鳴らした。

「病院にヘリコプターを出させて、患者を運ばせればいいだけの話だろう。費用は俺が持つ」

アシスタントは困惑した表情を浮かべた。

「ですが、そんな行き来をしている間に、患者の体力が持たないかもしれません。万が一のことがあれば、我が結城グループの評判に傷がつく恐れがあります」

湊は軽く笑った。

「何を恐れることがある。凛という優秀な弁護士がいるじゃないか。それに、俺たちはもうすぐ結婚するんだ。結城グループは俺たちの共有財産になる。あいつが適切に後始末をしてくれるはずだ。

俺は今、結衣のそばにいてやりたいんだ。用もないのに邪魔をするな。凛にもそう伝えておけ。

でなければ、お前も凛と一緒に消えろ」

アシスタントはまだ何か言いたげだったが、最後は諦めたように部屋を出て行った。

私は彼らの傍らを漂いながら、瞬きをした。

目尻から冷たいのが流れ落ちるのを感じた。

それが血なのか、それとも涙なのかは分からなかった。

湊はまだ、私が死んでいることを知らないのだ。

彼の思惑通りに、私が助け舟を出すことはもうできない。

だが……結城グループの弁護団なら、すべてを綺麗に揉み消すだろう。

私の死でさえも。

私はふと、たまらなく悲しい気持ちになった。

それからの数日間、湊はずっと結衣のそばに付き添い、仕事の時でさえ彼女の傍を離れなかった。

結衣が口を開きさえすれば、彼は何でも言うことを聞いた。

湊が結衣のために南の島を買い、さらに星の命名権まで買い取るのを私は見ていた。結衣が何気なくこう言ったからだ。

「私だけの家が欲しい。

それに、宇宙は永遠だから、永遠の何かが欲しいの」

私は苦笑した。

湊はいつの間にか、それほどの資産家になっていたのか。

彼はもう、私が出会った頃のような、惨めで哀れで、誰からも見下されるような存在ではなかった。

ただ、この数日間。

夜更けに結衣を寝かしつけた後、彼はスマートフォンを取り出し、何度も私のトーク画面を開いていた。

彼の目には、ほんの少しの戸惑いが浮かんでいた。

彼が何を考えているのか、私には分かっていた。私は彼を深く愛していたから、長期間連絡を絶つようなことは一度もなかったのだ。

たとえ結衣のことで喧嘩をしたとしても、半日も経たないうちに、私の方から折れて謝っていた。

それが何日も続いている。

私からの連絡がないことが、彼を少し不安にさせていたのだ。

彼はしばらくためらった後、指を動かした。

【結衣の病状が落ち着いたら、お前と婚姻届を出しに行く。

お前が言っていたサプライズって、何なんだ】

そこでようやく、チャットの履歴に、数日前に私が彼へ送ったこういうメッセージが表示されていることに気づいた。

【婚姻届を出す日、あなたにサプライズを用意してるわ】

突然、頭が割れるように痛んだ。

何か大切なことを忘れているはずなのに、どうしても思い出せなかった。

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