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第2話

ผู้เขียน: 秋葉橙
音を立てず、中の三人に気づかれないように外へ出た。

弁護士をしている親友の浅井佳純(あさい かすみ)に電話をかける。私の声は、自分でも驚くほど冷静だった。

「辰哉を調べて。彼、不倫してるわ」

電話の向こうで、佳純が息を呑むのがわかった。

「寧々?大丈夫なの?」

私は唇を噛みしめ、答えなかった。

大丈夫なわけがない。

人生に残された、たった三人の家族が結託して、私を地獄へ突き落とそうとしているのだ。

ならば、もう善人でいる必要はない。

私を不幸に陥れた彼らには、相応の報いを受けてもらう。

翌朝、何の連絡もせず、私は堂々と家に入った。

ちょうど辰哉が朝食を運んで台所から出てきたところで、私と目が合った瞬間、その顔から余裕が消え失せた。

彼は、自分があるべき「アレルギー反応」を見せることさえ忘れていた。

「お、お前……どうして帰ってきたんだ?」

私はスリッパに履き替えて上がると、真っ直ぐダイニングへと足を進めた。そして、鼻で笑って言い放つ。

「何?自分の家に帰るのに、あなたに報告が必要なの?」

私の視線は、彼が持つトレーに注がれた。

絶妙な焼き加減の出汁巻き卵に、脂の乗った焼き鮭。ふっくらとした炊き立てのご飯。

食卓にはさらに、湯気を立てる味噌汁と、丁寧に盛り付けられた煮物の小鉢まで並んでいる。

結婚して十年の間、彼が台所に立つことなど滅多になかった。

以前、私が感染症にかかって脱水症状寸前まで熱を出した時。

一杯でいいから味噌汁を作ってほしいと縋る私に、彼は「俺はやり方を知らない」と冷たく言い放ったのだ。

あんなに無能を装っていた男が、これほどの手料理を作れるとは。笑わせてくれる。

私が平然と食卓につくと、辰哉はやっと思い出したかのように、白々しい演技を始めた。

「……うっ、ゲホッ!寧々、早く出て行け!俺は苦しいんだ、吐き気が……」

顔を真っ赤にし、涙目になってえずいて見せる。

昨日までの私なら、狂わんばかりに心配して、刺激しないようにすぐ背を向けたことだろう。

だが今の私には、この茶番が滑稽で仕方がない。

私は出汁巻き卵を一つ箸で取り、ゆっくりと口に運んだ。

「なら、自分の部屋にでも引っ込んでいなさい。邪魔よ。私はお腹が空いているの」

どこ吹く風といった様子の私に、辰哉はさらに顔を険しくし、焦ったように声を荒らげた。

「寧々!一体何のつもりだ!陸斗がもうすぐ起きてくるんだぞ!

あの子がお前の目の前で引きつけを起こして、救急車で運ばれるところを見たいのか!」

私は答えず、黙って味噌汁を口にした。

沈黙を貫く私を前に、辰哉の独り芝居はいよいよ行き詰まりを見せ始めた。

その不自然な静寂を破るように、寝室のドアがゆっくりと開いた。

あくびをしながら現れた柚葉の身には、あろうことか私のシルクのガウンが羽織られている。その声は、寝起きの甘ったるさと、どこか男を誘うような色香を帯びていた。

「あなた、もうできた?お腹空いちゃったわ……」

私の視線に射抜かれた刹那、彼女の言葉は喉の奥でかき消された。

私は箸を置き、柚葉を冷ややかに見据える。

「誰を『あなた』と呼んだの?」

柚葉は引きつった笑いを浮かべ、視線を泳がせた。

「お、お姉ちゃん?どうしてここに。寝ぼけていて、自分の家だと勘違いしちゃったの……」

あまりに穴だらけの嘘だ。

私が口を開く前に、小さな人影が寝ぼけ眼で走り寄ってきた。

柚葉の足にしがみつき、甘えた声を出す。

「ママ、抱っこ」

柚葉は弾かれたように陸斗を突き放すと、上ずった声を上げた。

「陸斗、間違ってるわ!私は柚葉よ!あなたのママじゃないわ!」

柚葉よりもずっと冷静だった辰哉は、陸斗を自分の背後に隠すと、彼に目配せを送った。

「寧々、落ち着いて俺の話を聞いてくれ。

昨夜、陸斗が急にひどい熱を出して、どうしてもママに会いたいって泣き止まなかったんだ。

俺一人ではどうしようもなくて、柚葉に手伝いに来てもらっただけなんだよ。

もういいだろ、とりあえず外に出てくれ。会いたい気持ちは分かるが、こんなふうに急に帰ってこられると、俺たちがもっと苦しくなるだけなんだ」

陸斗は泣きながら後ずさりし、私を指差して叫んだ。

「こっちに来ないで!見たくない!ママのせいで……苦しい、苦しいよお!」

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