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16. 隙間≪Abyss/Space≫

Author: Mr.Z
last update Last Updated: 2025-08-27 20:51:03
 よりによって50階ってのが⋯⋯

 まずはエレベーターまで行くしかないな。

 俺が水色のハイスマートグラスを構えると、また海銃へと変化した。

 何やら構えるとこの姿になるらしく、コイツをリアルでも活用するしかなさそうな感じがする。

 ⋯⋯頼む。今だけでもいい、俺たちを守ってくれ

 それからは慎重に、なるべく足音を立てないよう、歩く事にした。

 この辺にもまだいるかもしれない。俺とスアが見たあの人型AIは、夥しい量だったからな⋯⋯

 だが意外とエレベーター前へはすぐ辿り着き、非接触パネルから下降ボタンをタッチする事に成功した。そしたら⋯⋯

「⋯⋯なんでだ? これ、動いてないぞ⋯⋯?」

 いくら押そうと、微動だにしない様子が見て取れた。

「え、そんな⋯⋯そんなわけ」

 スアも俺と同様に下降ボタンを押しまくっているが⋯⋯

 ⋯⋯最悪だ、ここ以外で考えるしかない

「先輩! あっちのエスカレーターなら動いてるみたいです!」

 そう言うと、モアは俺たちをそっちへ誘導した。

「ここなら階段よりは早いはずですよね⋯⋯!」

「だな。こっから行こう」

 俺たち3人はエスカレーターを突っ走り、素早く降りて行った。

 これによって、どうにか40階までは一気に来る事が出来た。

 しかし、40階からは"新設予定の学校?"が入っているらしく、それが35階辺りまで続いているようだった。

「これってさ、高校⋯⋯っぽいよね⋯⋯? ザイ、知ってた⋯⋯?」

「いや、全然知らねぇ⋯⋯」

 L.S.から館内マップを見ても、"工事中により立ち入り禁止"とだけある。

 そういや、さっきのエスカレーターは非常時用だったけど、ここに繋がってるのか。

 ここからさらに降りるには⋯⋯

「えっと、左に曲がって、広間みたいな場所にエスカレーターがあるみたいだよ。もっと奥にエレベーターっぽいのがあるけど⋯⋯たぶん動かないよね」

 展開したL.S.で何かを確認しながらスアが言った。

 今日の大会で酷使していた、超小型ドローンのバッテリーが復活したらしく、それを使って先を見ているそうだ。

「さすがです、スア先輩⋯⋯!」

「なんとか間に合ってよかったよ~。モアちゃんのドローンはまだ充電が必要そ?」

「そうですね⋯⋯
Mr.Z

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  • 異常のダイバーシティ   15. 極室≪PentHouse/Suite≫

     三人で一旦俺の部屋へと集まり、状況を確認する事にした。  さっきの警備員が、実は"ProtNeLT"というアレだった事も伝えると、スアの顔は青ざめていった。 「ねぇどうしよ⋯⋯ここにいても、また来るかもしれないよ⋯⋯」 「⋯⋯このホテルから出た方がいいか」 「待ってください! その"ProtoNeLT"というのはなんですか?」 「あ、あぁ、モアは知らないんだったよな。昨日、新大阪大学にオープンキャンパスに行ってきたんだよ。そこに"赤と青の謎のドア?"があって、中には"訳分からない人型のAI"が大量に並んでたんだ。それが"ProtoNeLT"って名前が付いてた。確かあれは略された名前で、本当の名前は"Prototype/Next time Living the Things"だったような⋯⋯」 「な、なんですかそれ⋯⋯?」 「俺たちもよく分かってない。ただ、あの場所で見ただけで⋯⋯」  話してる途中、スアが後ろから抱き着いてきた。 「な、なにして!?」 「ごめん、ちょっと許して⋯⋯。ザイの首筋の匂い嗅ぐとね、落ち着くの⋯⋯」 「そのクセまだ治って無かったのかよ!?」 「うん。我慢してただけ⋯⋯」  スアが俺の首元で大きく深呼吸し、その度になんとも言えない感覚が走る。  モアはというと、口をポカンと開けたまま、唖然とこっちを見ている⋯⋯。  これはこいつの昔からのクセで、こうすると何事も上手くいくような落ち着きを得られるそうだ、意味分からなすぎる。  高校生になってから治ったと思ってたのに、全然治ってねぇし⋯⋯!  でも嫌いってわけでもないから、別にいいんだけど⋯⋯  ⋯⋯もしかして、エンナ先輩に頭嗅がれたせいで戻ったんじゃ  あ、そういや先輩の方は何も起きてないよな⋯⋯?  俺はスアに嗅がれながらも、L.S.ですぐさまXTwitterを確認した。  すると、なんとここだけでなく、各所で"常軌を逸した事件"が多発しているという情報が流れ込んできた。  いきなり殴られたというところもあれば、ナイフで刺されそうになったところも、爆炎が起こったなんてのもある。  さっきまでいた竜星天守閣内でも、同様の事で混乱しているようだった。  さらにヤバいのが、大阪以外には連絡が取れなくなっているらしく、その上、大阪から出ようとしたところ

  • 異常のダイバーシティ   14. 対峙≪Confrontation≫

     ⋯⋯よし、誰もいない 急いで露天風呂の方に走った俺は、何事も無くスアの近くへと辿り着く事ができた。「その声⋯⋯ほんとに来たの!?」「当然だろ。この階は何とも無さそうだから、今のうちに着替えて部屋に戻るぞ」「分かった。モアちゃん、行こ!」「はい⋯⋯!」 その間、俺は辺りを警戒しながら、風呂の出入口付近の壁にもたれかかって息を整えた。 疲れと緊迫感とが混ざり合い、全身からさらに汗が噴き出る。 まさか間近で殺人事件に遭遇するなんて⋯⋯よりによってなんでこんな時に⋯⋯とにかく冷静に、冷静にだ。きっと三船コーチだったら、絶対そうする。 ⋯⋯そうだ、三船コーチに連絡してみるか? こんな時にどうするのか、あの人の方法を聞きたい。 そう思い、すぐさま通話を飛ばしてみた。 すると⋯⋯「⋯⋯なんで、こんな出ない事無いのに⋯⋯!」 一向に出る気配が無く、メッセージの返信も全くない。 これまで一度もそんな事無かったのに⋯⋯もしかして、"東京の方"でも何かあった⋯⋯!? その気持ちに畳みかけるようにして、俺が走ってきた奥角の方から不穏な足音がした。 ⋯⋯こっちに⋯⋯来てる⋯⋯? 徐々に近付いてくる足音に、鼓動がさらに激しくなっていく。 なんで⋯⋯こっちに⋯⋯ ついに足音が壁一枚隔てた先まで来た時だった。 スアとモアが女子更衣室から現れ、二人の足音が響いてしまった。 俺が静かにするよう合図するも遅く、真横で響いていた足音は静かになってしまった。 バレ⋯⋯たか⋯⋯?『そこで何をしていますか? 部屋から出ないようにとお伝えしましたよね?』 防弾着のような厚めのチョッキに、全身黒の服装、左手には赤く光る警棒。 唐突に入って来たのは、どうやらここの警備員で、ここまで安全の見回りに来てくれたらしい。「さっきまでお風呂に入っていまして、突然アナウンスが⋯⋯」『それは災難でしたね。私が付いて行きますので、安全なうちに部屋へ戻りましょう』 スアに対して笑顔で対応する警備員。 ⋯⋯ふぅ、なんだよ。てっきり、殺人犯が来たかと思って焦ったじゃねぇか⋯⋯ モアが俺の傍へと寄ってくる。「(入って来た時はびっくりしましたね)」「(いやまじ焦りすぎて冷や汗かいたわ⋯⋯)」 そして部屋へ戻ろうと、出入口から廊下へと出た時にある事が起こった。『ところで、一

  • 異常のダイバーシティ   13. 新策≪NewDiversity≫

    「あ、帰って来た! 何の用だったの?」 「明日の打ち合わせ的な」 「な~んだ。それじゃ、豪華ホテルへGO~!」 「楽しみですね⋯⋯!」  嬉しそうにスアとモアが先を歩いて行く。  ふと、スアがこっちを向いてきた。 「なに後ろで一人ニヤニヤしてるの?」 「ん、なんでもねぇよ」 「もしかして、まだ何かあったりするぅ~?」 「なんもねぇって」 「宿泊券以外なんかあるでしょ! 早く出してぇ~!」 「だからなんもねぇって!」  そうこうしている内に、宿泊券に記載された豪華ホテルへと辿り着いた。  これが凄い事に、用意されていたのは"最上階の部屋"だった。 「こんなにいい部屋、本当に泊まっていいの⋯⋯!? ザイ、一体何やったの!?」 「⋯⋯俺にも、何が何やら」 「スア先輩! こっちに貸切の露天風呂ありますよ!」 「わぁ!? モアちゃん一緒に入る?」 「はい! 入りましょう!」  そこからは各々の部屋へと分かれ、二人は早速露天風呂へ。俺は一人ベッドに横たわった。  さて、もうすぐAI総理のスペシャル対談が始まる。L.S.から配信でも見れるから、待機しておこう。  竜星天守閣内で待ってる人も多い。なんたって、生でAI総理を見られるのは今回初だ。それを体験できるのは今後無いかもしれないと囁かれている。  まぁでも、俺はそこまで興味も無い上、疲れたからホテルに帰る選択を取った訳だけど⋯⋯  これがメインイベントではあるが、俺たちAR e-Sportsプロをメインに来た人もいるだろうし、人によって目的は違うしな。  そして、この対談配信は前半が無料になっていて、後半からは有料に切り替わる。サミットの入場券を購入した人、招待されている人は全て見られるようになっているため、俺のように帰宅しながら見る人もいると思う。  ただ一つ他と違うのは、家から配信だけを見る事も可能だが、それは"大阪府民のみ"に限られているところ。このサミットは、全体的に何かと"府民が優遇されているもの"となっているらしい。  そんな中、未だ対談相手は発表されておらず、かなり意外な人物が出てくると予想されている。  誰が来るのか気になるとこだけど⋯⋯それよりも、俺は"さっきのあの人とのバトルシーン"で脳内が埋め尽くされていた。 ♢「またやろうな、ザイ。今まで一番仕上

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