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第17話

Penulis: 緋色の追憶
そして、彼女の自分に対する、感謝の気持ちを通り越した執着と、日に日に強くなる独占欲を思い返してみると……

恐ろしい考えが、だんだんと竜之介の頭の片隅から浮き上がってきた。自分が今まで美咲を守り、甘やかしてきたことは、綾子を傷つけただけじゃない。もしかしたら、ずっと危険な人物を傍に置いていたのかもしれない。

そう思って竜之介は、美咲が基地に入ってからのすべての出入り記録、物資申請記録、外出届をデータから引き出し、綿密な照合を始めた。

同時に、自らの権限を使い、過去にあった不審な襲撃事件や、物資が異常に紛失した件について、極秘に調査を開始した。

そして、調べれば調べるほど、疑わしい点が増えていった。

美咲の行動の多くは、一見すると無鉄砲で衝動的に見える。しかし、何かの作戦の隠れ蓑にしたり、意図的に混乱を引き起こしたりするためだったと考えると、つじつまが合ってしまうのだ。

美咲が現地の情報源として使っていた人物の中には素性の怪しい者もいて、すでに把握されている武装密輸組織と、深いつながりを持っていた。

それがわかると竜之介の心は、底なし沼に沈んでいくように、どんどん重くなってい
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    1年後、とある国の国境近くの小さな町。戦火はこの辺鄙な場所から遠のき、人々の暮らしにもゆっくりと平穏が戻りつつあった。町のはずれには、最近できた小さな診療所があって、白い壁に青い屋根で、簡素ながらも清潔に整えられていた。そして、診療所の入り口には、英語と現地の言葉で書かれた看板が掲げられていた。【星と希望の診療所】そこで、綾子は清潔な白衣をまとい、熱を出した子供を診察していた。綾子の顔色は良く、その眼差しは穏やかで真剣で、左耳には、小さな補聴器がつけられているのだった。継続的な治療と休養のおかげで、彼女の心臓の状態は安定していて、PTSDの症状も、今ではほとんど見られないようになった。彼女はやっと母との約束を守り、しっかりと生きることができたのだ。そして、新たな人生の意義も見つけ出していた。慎吾は診療所の裏庭で、古いテーブルと椅子を修理していた。分厚い戦闘服は脱ぎ捨て、今はシンプルな麻のシャツと長ズボンを身につけている。袖は肘までまくり上げられ、がっしりとした肘より下と、そこに残る薄い傷跡がのぞいていた。その動きは相変わらず無駄がなく正確だった。でも、まとっている雰囲気はずっと柔らかくなっていた。たまに町の子供たちが、興味深そうに垣根の外から慎吾をのぞき込むことがある。そんなとき、慎吾は顔を上げると手元にある彫りかけの木の鳥を、子供たちに向かって振ってみせることもあった。彼のその灰緑色の瞳に、昔ほど険しさもなくなっているのだ。その日、最後の患者を見送ると、綾子はぐっと腕を伸ばした。夕日の残光が窓から差し込み、部屋を暖かく照らしていたのだった。綾子は裏庭へ向かい、ドアの枠に寄りかかった。そして、忙しそうに作業する慎吾の後ろ姿を見つめた。「今日の具合はどうだ?」慎吾は顔を向けずに尋ねた。彼の手は、作業を止めない。「まずまずね。マラリアが再発した人が何人かと、転んで縫合が必要な人が一人。薬はまだ足りてるわ」綾子は慎吾のそばへ歩み寄ると、ごく自然にそばにあった雑巾を手に取った。そして、修理が終わったテーブルの表面を拭き始めた。「あなたは?村長が言ってた、あの浄水装置は直せたの?」「ああ、午後に設置してきた。ついでに、メンテナンスのやり方も教えておいたよ」慎吾は道具を置くと、体を起こした。綾子の手

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    そして、彼女の自分に対する、感謝の気持ちを通り越した執着と、日に日に強くなる独占欲を思い返してみると……恐ろしい考えが、だんだんと竜之介の頭の片隅から浮き上がってきた。自分が今まで美咲を守り、甘やかしてきたことは、綾子を傷つけただけじゃない。もしかしたら、ずっと危険な人物を傍に置いていたのかもしれない。そう思って竜之介は、美咲が基地に入ってからのすべての出入り記録、物資申請記録、外出届をデータから引き出し、綿密な照合を始めた。同時に、自らの権限を使い、過去にあった不審な襲撃事件や、物資が異常に紛失した件について、極秘に調査を開始した。そして、調べれば調べるほど、疑わしい点が増えていった。美咲の行動の多くは、一見すると無鉄砲で衝動的に見える。しかし、何かの作戦の隠れ蓑にしたり、意図的に混乱を引き起こしたりするためだったと考えると、つじつまが合ってしまうのだ。美咲が現地の情報源として使っていた人物の中には素性の怪しい者もいて、すでに把握されている武装密輸組織と、深いつながりを持っていた。それがわかると竜之介の心は、底なし沼に沈んでいくように、どんどん重くなっていった。もしこの疑いが本当なら、自分はまんまと利用されていたことになる。そして自分は気が付かないうちに、綾子を裏切っただけでなく、部隊の利益を損ない、仲間の命を危険にさらした共犯者になってしまったことにもなるのだ。その時、竜之介の暗号化されたメールボックスに、見知らぬアドレスから一通のメールが届いた。メールに本文はなく、暗号化された添付ファイルがいくつかあるだけだった。差出人は匿名だ。竜之介は警戒しながらファイルをダウンロードし、何重にもかけられたパスワードを入力すると、ファイルが開いた。中には、大量の写真、音声の書き起こしテキスト、資金の流れを示す記録の一部、そしていくつかの分析レポートが入っていた。その内容は衝撃的だった。コードネーム『ナイチンゲール』と呼ばれる密輸ネットワークが、東F区で活動していることをはっきりと示すものだった。幾度となく起きた物資の異常な紛失と、美咲の活動エリアが重なっていることの分析。数回の襲撃事件の前後における、美咲、もしくはそのアシスタントと、不明な相手との通信記録。さらには、音質は悪いが聞き取れる音声データもあった。そ

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