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座敷童──ザシキワラシ──

Author: 葛葉龍玄
last update publish date: 2026-09-11 09:06:32

 僕がまだ小さな頃の記憶。

 それは横断歩道に突っ込んでくる車の姿だった。

 気がついたら、見知らぬ病院の個室で沢山の管に繋がれた状態。

 僕は交通事故に遭って生死をさまよっていたのだ。

 なぜか僕の横には見知らぬ着物を着た女の子がちょこん、と座っていた。

 他の親族には見えていないようだ。

 祖父曰く。

 座敷の童は子供の妖怪だ。

 不幸に生まれた優しい子が死んじまって、霊魂だけになったあと、人々を幸せにしてくれるという。

 基本的には無邪気だが、気まぐれも多いのさ。

 奴らはなにを考えてるか、わからねぇぞ。

 見舞いに来た婆ちゃんがそれは座敷童だ、幸せを運ぶ妖怪だ。だから助かったんじゃないかい?

と言ってくれた。

 ぼくはおばあちゃんの話を聞いて、そのザシキワラシが、助けてくれたのだと信じきっていた。

 だから、この少女にはとても好感を持っていた。

 時には子供ながらにお見舞いでもらったお菓子をお供えしたりもした。

 容体も悪化したり振り戻したり、リハビリを懸命にしていた時も、少女はそばにいてくれた。

なんとか回復したあと、退院の日に僕は初めて声をかけて見た。

 一言お礼が言いた
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  • 百鬼徒然   提灯お化け──チョウチンオバケ──

     ひどく懐かしいものを見てしまった。 それは今や忘れ去られた提灯お化け。「けけけっ」 と鳴くと、付いて来いと飛んでいく。 祖父の言葉を思い出す。  お化け幽霊、妖怪なんぞは人間が信じちまうから生まれるんだ。 そして、使うものは年代を重ねるごとに変わっていって、古いもんは滅びゆくのよ。 もう使わねぇもの、あんだろ? ああいうのは境を隔てた向こう側に行くのさ。 境の向こう側、と祖父は行った。 時代遅れになり、人からも忘れ去られた妖怪。 それは妖怪たちにとっての天国や地獄のようなものなのか。 赤提灯お化けはフラフラと一軒の酒場に入っていき、そこで姿を消した。「いらっしゃい」 老夫婦が二人で切り盛りするような小さな酒場。 外には赤提灯が、下げられている。 少しはあのお化けも集客になっているのかもしれない。 それは、付喪神のように年月を経てこの老夫婦に、恩返しがしたかったのか……。 たまには美談も悪くない。 そう思ってから数日後。 その酒場は無くなっていた。 なんでも火の不始末で火事になったそうだ。 死者は二人。 あの老夫婦だ。「けけけっ」 またあの声を聞いた。 あれは老夫婦を守るものだったのか、それとも仇なすものだったのか。 最後までわかることはなかった。

  • 百鬼徒然   座敷童──ザシキワラシ──

     僕がまだ小さな頃の記憶。 それは横断歩道に突っ込んでくる車の姿だった。 気がついたら、見知らぬ病院の個室で沢山の管に繋がれた状態。 僕は交通事故に遭って生死をさまよっていたのだ。 なぜか僕の横には見知らぬ着物を着た女の子がちょこん、と座っていた。 他の親族には見えていないようだ。 祖父曰く。 座敷の童は子供の妖怪だ。 不幸に生まれた優しい子が死んじまって、霊魂だけになったあと、人々を幸せにしてくれるという。 基本的には無邪気だが、気まぐれも多いのさ。 奴らはなにを考えてるか、わからねぇぞ。 見舞いに来た婆ちゃんがそれは座敷童だ、幸せを運ぶ妖怪だ。だから助かったんじゃないかい?と言ってくれた。 ぼくはおばあちゃんの話を聞いて、そのザシキワラシが、助けてくれたのだと信じきっていた。 だから、この少女にはとても好感を持っていた。 時には子供ながらにお見舞いでもらったお菓子をお供えしたりもした。 容体も悪化したり振り戻したり、リハビリを懸命にしていた時も、少女はそばにいてくれた。なんとか回復したあと、退院の日に僕は初めて声をかけて見た。 一言お礼が言いたかったのだ。 それに答えて、その子が耳打ちでかえしてくれた。「なんで私と一緒に死んでくれかなったの?」

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     奥さんと子供を事故で亡くした親戚のおじさんがいる。 おじさんはその事故があっていらい、酒に浸って、廃人のような生活を送っていた。 そして、なぜか部屋の中に、おじさんには似つかわしくない可愛いらしい人形が置いてあった。 おじさんのなくなった娘さんが持っていたものだ。 なんでも、娘さんはとてもこの人形を大事にしていて、事故当時も持っていたらしい。 酷い事故にも関わらず、人形は無傷だった。 そして、おじさんは娘が大好きだったこの人形を、棺桶に入れて焼いた、というのだ。 祖父曰く。 人の形をしたもんは、魂が入りやすい。 たとえ売ろうが焼こうが、自分の住みやすい所に行くのさ。 自分の意志で、な。 祖父のいう通り、焼いたはずの人形は次の日には家に戻って来ていた。 何度捨てても、どこで供養しても、もどってくるのだ。 ある日、おじさんの家に行くと人形はなかった。 人形はどうしたのか? と尋ねると、おじはこう答えた。「質屋にいれたよ。また帰ってくるんだ。こんないい質草はない」 そう。おじさんは何度ももどって来る人形を、質に入れてお金にして酒に溺れていたのだ。 その後、本当の怪異に合うとも知らずに。 いや、おじさんにとってはある意味幸せだったのかもしれない。

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