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葛葉龍玄
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Novels by 葛葉龍玄

人外娘さんと真面目にファンタジーしちゃう本

人外娘さんと真面目にファンタジーしちゃう本

これは、ジハード(聖戦)でもレコンキスタ(再征服)でもあってはならない。今までにない新たな世界を作る、神話の如きジェネシス(創世記)であるべきなんだ。 クーデターにより国を失った精霊魔法使いのエグゼ 反乱軍のソウマ、アラクネ族のアーニャや人外娘たちと宿敵を倒す。
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Chapter: 神魔の正体
 3日後。 ティアラとたたらの献身的な看護もあって。「よし、もう大丈夫だ!」 完全に回復していた。「ばかな! 腹部貫通だぞ! 感染症とかだって、危うかったんだ !こんなに早く回復する馬鹿がいるかっ!?」 自分で看護をしておいて、その回復ぶりに悪態を付くたたら。「なぁ、エグゼ? なぜ俺は怒られている?」 訳が分からず、エグゼに尋ねるソウマ。普通は祝われるところだが。「ま、まぁ驚くのも、無理はないと思うよ」 全くもって通常営業のソウマに、エグゼ以下の3人も呆れていた。「どんだけ規格外なのよ……」「でも、良くなってよかったねぇ!」 三者三様ながら、ソウマの回復に胸を撫で下ろしていた。「さて、俺も良くなったところで、アーニャには、聞きたいことがあるんだ」 一転。真面目な空気を作り、アーニャに尋ねるソウマ。「お前は、あのサイクロプスに『なにを見た?』」 ソウマらしい、隠すことのない直球な物言いだった。「ソウマ、それは……」 たたらは、ソウマがアーニャを責めるものだと思い、口を開いていた。だが、それをソウマが遮る。「いや、責めている訳では無いんだ。アーニャの能力は、この中じゃ俺が一番よく知っている。『物事の本質を見極める能力』。この能力が、あの不可解な生命体に反応して、我も忘れて知ろうと近づいて来たんだろう」 そういえば、サイクロプスを一目見たあとから、アーニャの様子がおかしかった気がする。 たたらも、口を挟むのをやめて、話を聞く体制に入った。「うん、それが……」 アーニャは言い辛そうだった。 自分の見たものが、信じられない。そんな面持ちだった。「私が今回、あのサイクロプスに見たのは、その『魂の在り方』だったの。 普通の人は、もちろんなんの違和感もないんだけど……」 普通の造魔でも違った。「あれはまさに、作られた命、よ。魂という器だけ作り、中になにも入れない。その代わりにいれるのは、ミハエルのおっさんの命令よ。だから、造魔は命令を聞いてるんじゃなくて、命令自体が、生きている理由みたいになってるの」 命令がないときは、まさに生ける屍なのだろう。 魂の中身がないのだから、感情や、自身の考えなどあるわけもない。 正に、操り人形だ。「魂なんて不確定な物に、そんなに手を加えることが出来るのか?」 ソウマが、口を挟む。
Last Updated: 2026-11-06
Chapter: 戦いが終わって
「まさか、ヴィヴィアンがこうも容易くやられるとは……」 玉座に座り、ミハエルは一人呟く。 強い魔力を持つ者と造魔を掛け合わせ造った、造魔の中の造魔。 ミハエルは『神魔』と呼んでいた。 そのプロトタイプであるヴィヴィアンは最年長ながら、その分経験値が圧倒して多かった。自分の感覚と造魔、神魔と感覚を繋げると、どうしても隙やタイムラグ、誤差がでる。 しかし、その点ヴィヴィアンは長い練習のため、一番扱いやすく自身の動きをトレースしやすかった。「ソウマ君の強さ」 想定外。ノームを使い、あの大軍とヴィヴィアンを持ってしても、怪我一つ負わすことができなかった。「エグゼ君の強さ」 こちらはもっと想定外だった。ソウマとも違う、異質の強さ。 寒気がした。 こちらの手の内の全てを見透かしたような、あの瞳。 なんとしても……! しかし、こちらとしても手の内をすべて明かしたわけではない。 ヴィヴィアンは、『神魔』の中でも最弱なのだ。 これから狙うのは、『剣聖の鎧』と『エンシェントドラゴン』『光と闇の軍勢の混沌の力』そして『大精霊の創造』まだ、改良の余地はある。 その力を試す上で、エグゼとソウマは恰好の標的だ。 もし途中で息絶えたなら、この大陸を飛び越え、他の大陸を侵略するまでだ。 ………。 ……。 …。 座り慣れた玉座で、ミハエルは一人思索を重ねていた。「ソウマの容態はどうだ?」 処置を終え、たたらとティアラが、寝室から出てくる。「大丈夫だ。あの化け物がそう容易く死ぬか!」 しかし、その大きな一つ瞳が涙で濡れているのを、誰もが気付いていた。「幸い、ティアラの魂の欠片も効いているしな。ありがとう、ティアラ」「そーまのためだもん!なんてことないよっ!」 妖精の体液や鱗粉には、傷を癒す効果がある。 それは奥深くなればなるほど、濃くなればなるほどその効果が強い。 しかも、魂となればなおさらだ。 ティアラも元気そうにしているが、相当消耗していることだろう。「でも、私、どうしよう……。私の所為で、ソウマは……」 ソウマが助かったのも嬉しかったが、それ以上に後悔の念が押し寄せる。 なぜあそこまで我を忘れて、あのサイクロプスを間近で観たいと思ったのか。「アーニャにはアーニャの理由があったんだろう?キチンとした理由があれば、ソウマも怒りは
Last Updated: 2026-10-30
Chapter: 日の大精霊・サニー
『お涙頂戴は終わりですか? では、行きましょうか、エグゼ君。精霊の力がどれほどなのか、私に見せてください』 ヴィヴィアンも流水の構えを取ると、エグゼに相対する。 先に動いたのはサイクロプスだった。 ゆっくりにも思える動きで初手を繰り出す。 貫手から繰り出される、目潰し。 しかし、エグゼは交わそうともしない。それがフェイントだとわかっていたからだ。 完璧なるフェイントに隠された真の攻撃は蹴り。大木の如く太い足から繰り出される強烈な前蹴りが、エグゼを襲う。 エグゼはその蹴りに足をかけ、蹴りの威力を使って後ろに飛び、緩やかに着地してみせた。『あの蹴りの威力を吸収した、ですか?』 一歩間違えば、まともに蹴りを受けて、この一撃で勝負は決まっていたはずだ。『ならば、これならいかがでしょうか?』 フェイントを織り交ぜ、先程よりも早く鋭い攻撃を繰り返す。 直線的な攻撃は隙はすくないが、連続性に欠ける。 円運動の攻撃は連続性に優れているが、外した時の隙が大きい。 しかし、一つ目の巨人は、その二つをうまく組み合わせ、連続的に、さらに隙なく攻撃を次から次へと繰り返している。 直突き、鉤突き、裏拳、肘、肩。 蹴り上げ、回し蹴り、足刀、膝、踵。 頭突き、体当たり。 ありとあらゆる攻撃がエグゼに襲い掛かるがことごとく交わされる。 それは、ソウマのように洗練された武技とはまた異質のものだった。 まるで、次の手がわかっているような…。 いつもの優しげな瞳のまま、悠々と攻撃を交わしている。「なつかしいね、サニー。そうだ、僕はこの感覚が大好きなんだ」 戦いが好きなわけではない。 精霊をその身に宿し、一緒に何かをするこの一体感。それが大好きなんだ。 エグゼの眼中には、巨人は映っていなかった。 ただ、日の大精霊とダンスを踊るように実に軽やかに敵の一撃必殺の攻撃を避けている。『な、なんなのですか、貴方は! 私を見なさい、私の相手をしなさいっ!』 自分が相手をされていない事実に、ミハエルも気づいていた。激昂し、さらに攻撃が激しくなる。「そろそろ攻撃もしてみようか。ね、サニー」 流れる水の如く繰り出される、精錬された連撃。 ほんのわずかな、コンマの隙を、剣尖が走る。『ばかな! そんな隙など!?』 あろうはずもない。 はずだった。 達人でも見
Last Updated: 2026-10-23
Chapter: 絶望と希望
 腹部を貫く鋭利な爪。 飛び散る血液。 響き渡る悲鳴。 たたらとティアラが戦場に着いた時にはもう、全てが決着したあとだった。「ソウマっ!!」 泣き叫ぶアーニャの眼前で、身体を張って敵の攻撃を受け止めたソウマ。『思った通りですよ、ソウマ君。君がこういう行動にでるのは。まぁ、間に合わなくても、メリクリウスのNo.2を殺せた訳ですから、私にとっては僥倖ですが……』 ずるり、とソウマの腹部から、その豪腕を引き抜く。「がはっ !……。へ、丁度いい、ハンデじゃないの」 腹から飛び出しそうになる内臓を手で抑えながら、ソウマは軽口を叩く。『まだ、戦う気ですか?』 サイクロプスが片腕を軽く動かす。 なんの変哲も無い攻撃。 しかし、ソウマは避けることもできず、まともにくらい吹き飛ばされる。「そうまぁ!」「ソウマっ!」 ティアラとたたらが駆け寄る。 が。「来るなっ!」 それでもなお立ち上がるソウマが、静止をかける。「約束、したろ? この戦場には、お、俺かエグゼしか、たたない、って。お前が、約束、破るなよ……』「ばかな、そんなこと言っている場合か!? しかも約束のことを言うなら、アーニャをこの戦場に行かせてしまった私たちにも責任がある! そんな約束、反故だ!」 鉄槌を手に、闘いに加わろうとするたたら。 それを、ソウマが手をかざし、止める。「止めておけ、お前じゃ勝てん」「うるさい! なら、誰が戦う? 貴様がそのざまで、勝てるのか!?」『はははは! いいですねぇ。私は、こう言った茶番が大好きなんですよ。もっと見せて下さい!」手を叩いて笑う巨人と、その奥にいるミハエル。「深、淵流……。『影の小太刀かげのこだち』!」 どこにそんな力が残っていたのであろうか。 鋭く振るわれた右の拳が一閃する。 手を叩いていた一つ目の巨人の右腕が、深く傷つけられる。『ば、馬鹿な!? どこにそんな力が!!』 いつも冷静さを失わない、さすがのミハエルも、慌てていた。 相手は明らかに瀕死の人間だ。「ちっ! その邪魔な腕を、切り落としてやる、つ、つもりだったんだけど、な……」「ソウマ、なんで……」 アーニャの脳裏に、ソウマの台詞がよみがえる。『闘う俺のために祈る人間がいるという事は、その戦で俺が負ければ、傷つく誰かがいるという事だ。なら、俺は負ける
Last Updated: 2026-10-15
Chapter: エグゼ、覚醒
「アーニャ!?」 戦場に近づくアーニャにいち早く気付いたのは、たたらだった。やはり、その視力は計り知れない。「え? だって、今までそこに……」 ティアラも驚きの声を上げる。しかし、戦況を見守り、集中の余り周囲への警戒心がなかったのも事実だ。「まずい、追いかけるぞ!」「う、うん!」 なぜ、戦場に向かったのか? 疑問を抱えながら、二人はアーニャを止めるべく森を抜け出すのだった。 知りたかった。 あの歪な魂の真実を。 此処だと遠い。 もっと近くで観れば、わかるのに……。 その一心で、アーニャは歩いていた。 瞳は真紅から碧へと変わっている。『真実を映す瞳』が発動してるのだ。 向かう場所が戦場だということも忘れ。 その先には、命を賭して闘う仲間と、その敵がいることも忘れ。 そして一瞬の隙をつき、サイクロプスはソウマに背を向け駆け出す。 一瞬、逃げたか? と思ったソウマだがその先にある気配に気がついた。「馬鹿な! なんで来たっ!?」 明らかに、この怪物はアーニャを狙っている。 間に合うか!?(あぁ、やっとよく見える) 目の前に立つ山の様な巨人を前に、アーニャは笑みを浮かべる。(やっとわかった! この歪な魂の理由が……!) アーニャの中にあるのは、恐怖でもなんでもなくて、ただ純粋な好奇心。そして彼女は知り得たのだ。 その造魔の真実を。 眼前に迫る巨人の鋭い貫手。 それは逃れられない死。 ミハエルはほくそ笑む。 ソウマがどういう対応をするから、知っていたからだ。 そして、その通りの未来が訪れる。「え? あぁ……」 目を見開き、声をもらすアーニャ。 眼前で繰り広げられている光景が信じられない。「い、いやああああぁぁぁぁっっ!!」 悲痛な叫び声だけが、戦場に響き渡った。「久しぶり。サニー」 心の奥底。魂のさらに奥深く。 生命の一部に、確かに感じる、太陽の息吹。 まるで、細胞の一つひとつが覚醒したような開放感に浸る。 魔法力を失う前と同じ。いや、それ以上の力が、全身に漲る。 五感が研ぎ澄まされ、それ以外の意識が目覚める。 まるで自分とその周囲を俯瞰で見ているかのように、状況が把握できる。 確信。 これならいける。 7大精霊の内、1人を取り戻しただけで、このチカラだ。 全員と契約し直し、その力を扱
Last Updated: 2026-10-05
Chapter: ソウマとヴィヴィアンと誤算
 巨大な鉄の塊が、振り下ろされた。 造魔も、人間の兵も、そしてもちろんソウマも。 全てがその醜い魔物の餌食になった。「ソウマ!」「そーま!?」 遠くの森では隠れて見ていた、たたらと、ティアラが驚愕の叫び声を上げる。 しかし。 全てを破壊した余韻に浸っているはずだった魔物の腕から、血が吹き出す。 そして、その手にあった鉄槌が、粉々に吹き飛んだ。「『深淵流・絶技、断罪之太刀だんざいのたち』」 片脚を天に突き上げたソウマが、何事もなかったかのように立っていた。 砂の様に砕け散った敵の武器が降り注ぐ。その中にあって、立っているのはソウマのみ。他の造魔は、みな塵となり、消え失せていた。 これに驚いたのは味方だけではない。サイクロプス越しに、勝利を確信していたミハエルも言葉を失った。ーーこいつは、本当に人間なのか?ーー 魔法が失われたこの大陸で、この『神魔、ヴィヴィアン』に敵う者などいない。 はずだった。 しかし。『面白い。実に面白いですよ、ソウマ君!キミがここまで強いとは!』 心底楽しそうに、ミハエルが笑う。『このヴィヴィアンでは、貴方に勝てないかも知れませんが、全力でお相手しましょう!』 ヴィヴィアンと呼ばれたサイクロプスは、その巨体に似合わず、まるで流水の如き足運びで、ゆるり、と、ソウマとの間合いを詰める。「なるほど。気配を感じないわけだ」 その動きは、達人そのもの。 硬い物は砕けるが、水は切る、壊すことは叶わない。 しかしその奔流は、時として牙を剥き街を押し流すほどの激流となって、全てを破滅へ導く。 それを、肉体的強度では人間とは比べるべくもないこの怪物が使うのである。 その脅威は、いかほどのものか。 交差する拳、蹴り。 体格差で圧倒的に勝るサイクロプスの攻撃を一重で交わし、受け流すソウマ。 その攻防は、どちらも一歩も引かない、熾烈極まりない物だった。 しかしその一方で、ソウマの動きが変わってくる。大きく動き、かわしていた攻撃を徐々に、その場から動かずに避けるようになっていた。 サイクロプス渾身の突きを左手で受け流す。と、同時に相手の力の流れに任せて、その巨体を揺るがす。 遠い国の言葉では、それを『合気』という。 信じられない事にサイクロプスの巨躯が宙に舞う。 背中から地面に叩きつけられた一つ目の巨人
Last Updated: 2026-10-01
百鬼徒然

百鬼徒然

千文字で終わるホラー 祖父曰く。 この世の怪異なんざぁ99.9%が偽もんよ。 科学で証明できる。 だがな。残りの0.1%は。 ──悪意を孕んだ怪異だ──
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Chapter: 雪女──ユキオンナ──
山で遭難した男は、雪女と約束をする。「私の事を誰にも言わなければ、命は助ける」その後男は、雪女のことを誰にも話さずに暮らしていた。数年後。妻帯者になった男は、もう大丈夫だろう、と妻に雪女のことを話してしまうのだ。すると妻は妖怪に変幻する。その姿はまさに雪女。そして、約束を破った男は氷漬けにされ、雪山へと連れ去られたという。祖父曰く。神や悪魔や悪霊なんてのは『約束事』が好きな連中だ。それは口約束でも、違反したら逃れられないのさ。奴らと話す時は気をつけろ。魂持っていかれるぞ。もう4月も半ばだと言うのに、ひどく寒い夜があった。ちらりと外を見ると、女が一人で雨の中立ち尽くしている。濡れ女子か?いや、違う。あれは……。僕は慌ててカーテンを閉めた。目は、合っていない。心臓が早鐘を打つように鳴り響く。そして、何の気なしに後ろを振り返る。「見たね…」先ほどの女が後ろに立っていた。「……っ!?」「死ぬか、わたしの事を未来永劫誰にも話さないか、決めなさい」それは言霊。しかし。しかし、僕も言霊は得意な方だ。「み、未来永劫話さない!そ、そのかわり……」僕は頭を回転させる。この場合、おそらく生き続けても、死ぬ間際に僕の魂を奪いに来るだろう。「僕が天寿を全うしたら、天国に行きたいんだ!でなければ…」僕はスマホを見せる。「世界中にあんたのことを、話してやる!」「……?」どうもスマホがよくわからないらしく、一から懇切丁寧教えてあげる。「人間も変わったのね……。あなたの条件飲みましょう。それと」「ま、まだ何か?」「あなた、なかなか物の怪に好かれやすいみたいだから、これを持ってなさい。天寿を全うするまで、あなたの魂はわたしのものよ」それは、氷でできた、タリスマンのネックレス。これはなんなのか聞こうとした時には、雪女はすでに消えていた。しかしこれだけはわかる。僕の口車に惑わされた雪女は、僕が約束を破るか、死ぬまでは僕の味方だ、と。
Last Updated: 2026-11-04
Chapter: のっぺらぼう
夢を見ていた。小さい頃の夢。その中で僕は、かごめかごめをやっていて、真ん中に座り、目隠しをして、歌をうたう。かごめかごめ、籠の中の鳥はいついつ出やる夜明けの晩に鶴と亀が滑った後ろの正面、だあれ?大人になった今は、この歌詞が流産してしまった人の歌である、という説を知っている。しかし、子供の頃はそんなことも知らずに、遊んでいた。祖父曰く。真の闇って奴が、どんなものか知ってるか?それはな、オメェが目を閉じてる時だ。目を閉じてる時だけ、別のナニかになっちまってても、気付かねぇだろ。本当に人間か?はてさて、または物の怪か……。それが闇さ。夢の中で遊びは続く。後ろの正面だあれ?声が。一人分多いような気がする。聞き間違いか?だって目を閉じてる時は闇なのだから、目を開けるまで真実はわからない。だから。目を開ける。◯◯くん!子供の頃の僕には、恐怖心はない。しかし、成長した僕には恐怖心しかない。答えて目を開ける。そこには、誰もいなかった。僕だけがポツン、と立っていた。子供の頃の僕の後ろ姿に、声をかける。子供の頃の僕がこちらを振り向く。みてはいけない。そうわかっているのに。振り向いた幼い、僕には顔が。ない。
Last Updated: 2026-10-26
Chapter: 古杣──フルソマ──
大学に行く途中、長らく工事している駅を毎回通るのだが。 「おおい! 危ないぞ!」 と言う声とともに、轟音が聞こえる。 思わず上を見るが、特になにもない。 あたりの人も、何事かと僕を見る。 今の声と音はいったいなんだったのだろう。 その時、祖父の言葉が思い出された。 昔から音だけの怪はよくあることよ。 木が倒れる音を出し、注意を呼びかける。 古杣だの天狗倒しだの言われちゃいるが、山がなくなった今、どう怪異を起こすか、わかったもんじゃねえぞ。 それからしばらくして、工事の人に話しを聞くことができた。 やはり、声や音だけ聞こえて、実際には何も起こっていないことが多いそうだ。 いたずらの可能性も含めて警察に相談済みらしいが、犯人は捕まっていない。 しかし、作業員はそれでも仕事をしなければならない。 そしてついに。 事故が起きた。 いつもの如く、誰かのいたずらだろうと思った作業員が、声に耳を貸さず仕事を続けた所、瓦礫の下敷きになったのだ。 本来人の命を奪うことまではしない古杣だが、住処を奪われ、忘れ去られ、ぞんざいに扱われてその怒りを露わにしたのかもしれない。 自然と共に合った怪異は、あらたな居場所を求めてこの都会をさまよっているのかもしれない。
Last Updated: 2026-10-18
Chapter: 人面犬──ジンメンケン──
一時期流行った人面犬。人面犬、人面魚、件のように人頭獣身の化け物のは意外と多い。その中にあって件などは、予知をするともされている。友人がある日、僕を尋ねてきた。件は予言するんでしょ?なぜ他の人面犬とかはしないんだろうね。ふとした疑問だったのだろう。たしかにその通りで、僕も気になってしまった。祖父の言葉にヒントがあるような気がして、頭の中を探してみる。祖父曰く。昔から人頭獣身の化け物と言やぁ、災厄の前触れと相場が決まってんだ。中国の化蛇だ、燭陰だなんてのもおる。人面犬にしろ、人面魚なんてのにしろ、バブルの崩壊でも予見してたんじゃねいえか?その後やれ就職氷河期だ、リーマンショックだ、少子高齢化、震災に原発問題。ろくなことがありゃしねぇ。動物は未来が見えるのだろうか?人間に知り得ないことを知るすべを持ち、なんらかの形で人間に警鐘を鳴らしために現れるのだろうか。しかし、今はいない。人面犬なんてそんなものはただのフォークロアで、なんの信憑性もない。夜な夜な聞こえる鳴き声。情けなく鳴く犬の声にも聞こえるし、人の赤ん坊のようにも聞こえる。つい。気になってしまった。意思とは無関係に体は外を歩く。そして。「あんたかい、波長が合っていたのは」話かける男の声。でも、人影ない。暗闇の向こうに相貌が見えるだけだ。「おっと、俺の姿を見ない方がいいぜ。ショックで死んじまうわ」カラカラと笑うその生き物はなんなのか。「なに、とって食おうて訳じゃない、波長があう人間がいたから、良い事を教えてやろうと思ってな」僕はなにがてきるでもなく、ただ話を聞いていた。「あんた、死ぬよ?近々」頭に鈍器で殴られたような衝撃ごはしる。でも、体は金縛りに合い、声も出せない。「ま、もし死にたくなけりゃあ」その生き物は階段を上っていく。その先は神社のようだ。「この神社をお参りして、掃除でもするんだな」それきり、声も姿もなくなって、気がつくと家のベッドの中だった。すぐさま飛び起きて、昨日の神社に行った。お参りをして、できる限りの掃除をして。そして、この神社の由来を見てしまったのだ。普賢神社。いわゆる犬神払いのできる神社である。人面犬は、犬神と関係があるのか?もしくは犬神憑きとして死んでしまって、成仏できていないのでは…人面犬などとあなど
Last Updated: 2026-10-08
Chapter: テケテケ
 朝、通学途中の電車の中。 人身事故のため、電車がとまっていた。 この時期には多くなるな、と思いつつ車内に閉じ込められてしまったので、友達に一報いれて、朝イチの講義は出れないかもメールを送った。 ずるり……。 なんの音だかはわからないが、なにかを引きずるような音がした。 ずるり……。 また、今僕はイヤホンで音楽を聴いている筈だ。 ズルリ……。 電車の事故から生まれた有名な妖怪を思い出す。 上半身しかない、テケテケという妖怪だ。 北海道で事故に逢い、上半身と下半身が千切れてしまっても、寒さのあまりに出血が止まり、数分間もがき苦しんだという。 その時、祖父の言葉を思い出した。 とかく、凄惨な事故ってのは怪談になりやすいのさ。 番町更屋敷だお岩だなんて悲劇もその類よ。 そして、そいつらはそいつらを信じる者がいる限り成仏できねぇのさ。 呪いみたいなもんだ。 呪縛霊、とでも言うのだろか。 こういう類の霊は、その霊の成仏を祈ってあげるといい。 心の中でお祈りをすると、電車が動き始めた。 これなら講義も途中参加できそうだ。 こうして授業に出れたわけだ。 結局、あの音はなんだったのだろうか?  音だけの怪異か、空耳だったのかも知れない。 ずるり……。 ひときわ大きな音がして、僕は机の下を覗き込む。 ーー足、いりませんか?ーー
Last Updated: 2026-10-02
Chapter: 釣瓶落し──ツルベオトシ──
ーー夜業済んだか、釣瓶落とそか、ギィギィ。街中でふ、とその声を聞いた。ーー夜業済んだか、釣瓶落とそか、ギィギィ。それはこの世ならざるものの声。祖父曰く。釣瓶落としってのは、木になる陰火よ。山岡元隣なんかは、雨の日(水)に木より降りて(木)くる火(火)、ということで、水-木-火の相生をなすことから大木の精だと言ってるが、それは昔の話よ。今は大木よりでっけぇのがわんさか建っていやがる。そして陰火の元も変わるのさ。それは釣瓶落としか鶴瓶火か。元は同じという説もある。しかしこれは、木などではない。ビルだ。ビルに釣瓶落としなんて聞いたことがない。本能は警鐘をならしている。見てはいけない。しかし体が勝手に上を向く。そして、目があった。間も無く聞こえる激しい衝突音。それは、ビルから飛び降りた人だった。ーー夜業済んだか、釣瓶落とそか、ギィギィ。また声が聞こえる。あたりは騒がしい。当然だ。自殺者が出たのだから。しかし僕は別のものに釘付けになる。自殺者から剥がれた幽体は、ビルに吸い込まれ、ビルの上へと登っていく。ーー夜業済んだか、釣瓶落とそか、ギィギィ。一体何人の人が落とされたのか。都会の釣瓶落としは、人の命を喰らう。そして、新たな釣瓶落としが生まれるの
Last Updated: 2026-09-24
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