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02話 騎士の本望

Penulis: グラマス
last update Tanggal publikasi: 2026-04-03 16:05:12

 セレナ王女の悲鳴に俺はやっと我に返った。

「まだ危険だ、出て来ないで!」

 彼女が降りようとしたから、俺は慌てて安全を考慮して一度閉じ込める事にした。

 他にもいたのか、気づかなかった。

 相手は《アサシン》とか《隠蔽》・《隠密》とかの類いのスキルを使ってるんだろうか。

「まさか仲間が一瞬で殺されるとは、予想外だったぜ」

 姿とも気配も殺気も何も感じない、相手は高速移動しながら草花をわざと揺らして視線誘導でもしているつもりなら、俺も挑発してやる。

「どうした! 女1人にコソコソしないとまともに戦えないのか?」

「安い挑発だな。《アサシン》の俺が正々堂々正面から来ると思ってるのが間違いだぜ……何ッ!?」

 背後から声が聞こえて振り返った瞬間、アンデッドの騎士が身代わりとして盾になってくれた。

 相手の短剣で破壊されたが、魔力供給で再構築出来たから問題はない。

 《アサシン》はエクレールに敵意を向けていたから、今みたいにアンデッドが反応しなかったんだな。

 彼女の死体からは残存した魔力量が多く放たれていた。

『セレナ様……助ける……力欲しい……』

 エクレールの死体から後悔の声が聞こえた。

「力を貸してくれ、解放リベレイション!」

 彼女の残存した魔力と俺の魔力が融合して、アンデッド化したエクレールが解き放たれた。

「何だそりゃ、《ネクロマンサー》にしちゃ弱すぎるぜ」

 《アサシン》が迷わずエクレールに二刀流短剣を叩き込み破壊するが、魔力供給で何度も再構築する。

「行け、エクレール」

『はい、クロエ様!』

 最初のアンデッドは喋れなかったのに、エクレールは全身が雷属性化してロングソードの刀剣から青白い雷がバチバチと火花を散らす。

「面白え、俺のスピードについて来れるか……っ!?」

『遅いな』

 イキッてた《アサシン》が高速移動していたんだろう。

 だが今のエクレールは魔力体だから雷属性を纏うと、全身が雷そのものになった方が早く動く度に、青白色の雷が軌跡を作り出していた。

 一瞬にして《アサシン》の体を雷のロングソードで細切れにした。

 今度こそ終わりみたいで、檻を開くとセレナが降りてアンデッド化したエクレールと対面してしまった。

「貴女はエクレールなの?」

『この様な姿になってしまいましたが、正真正銘のエクレール・ヴァンガードです」

 生前とは違い漆黒の軽装鎧、中身は魂みたいに純白に光ってるからな。

「ぐすっ……ぐすっ……。殺されて凄い動揺したけど、貴女とこうして話せるなら何だって構わないわ!」

 セレナは泣きながらエクレールに抱きつく事数分間。やっと落ち着きを取り戻す事が出来たみたいだ。

「取り乱してすいません。貴女は敵じゃないのですか?」

 一番大事な人が殺されたと思ったら、アンデッドにされるという大事な人の魂を弄ぶ行為をしているのには変わらない。

「俺は敵ではありません、味方ですから安心してください。疑うのはアンデッドですよね?」

「すいません。死体をアンデッドにして操る闇魔法を好む者もいます。特に「神聖教会」の総本山・神聖皇国ルミナスではアンデッドや闇魔法は忌むべきモノとして扱われています」

 話を聞くに聖属性で癒したり、アンデッド・ゾンビといった闇系モンスターに効くのは、ゲームでもあるから予想通りだな。

 ちなみに聖属性は特別な魔法なのか、イメージですら何ともならなかった。やはり聖職者でなければ使えないんだろうな。

「あまり関わりたくはないな。アンデッドになるのはどんな感じ?」

『クロエ様の魔力と繋がっているからなのか、暖かく優しい感情に包まれている心地良くなります。それに魔力が底を尽きる事がないですね』

 嫌なら繋がりを断ち切る事も出来たけど、嫌じゃないならそのままで良い。

「そう言ってくれると安心したよ。死体にせよ魂にせよ勝手に弄るのは申し訳ない気持ちもあるからな」

 エクレールは俺とセレナの顔を交互に見て答えた。

『私はクロエ様と繋がったアンデッドなので意思疎通は取れますが、行動制限があります。私の気持ちとしてはセレナ様もお守りしたいのですが』

 セレナは何か良い事をおもいついたのか、手を叩いて笑顔になった。

「それならエクレールはクロエ様を守ってあげて! そしてクロエ様は私を守るの。それなら公平でしょ?」

『アンデッドとなった今、私には疲労・空腹も感じません! これでお二人を守ることができるなら、死んでも護衛できるのなら……騎士としての本望! クロエ様に永遠に忠誠を誓います』

 エクレールは改めて、俺の目の前で片膝を曲げて頭を下げた誓いのポーズをしてくれた。

 彼女の近場に転がっている、自身の生首と死体をただじっと見つめていた。

「ありがとう、エクレール。死体はどうする? 形だけでも埋める?」

『魂となった今、肉体には戻れません。放置していたら時期モンスターの餌となるでしょう』

「俺の国では火葬なんだけど、こっちでは土葬?」

『ここは墓場ではないので、夜には悪霊レイスが埋まった死体に取り憑いてゾンビ・アンデッド系モンスターになったりするので。私の身は燃やしましょう』

 話を聞くと『神聖教会』のシスター達が神聖魔法で土地を浄化する事で、アンデッド系モンスターになるのを防いだり、悪霊レイスの侵入を防いだりするらしい。

 俺のアンデッド達は神聖属性に対して、やはり弱点なのだろうか……。

 そこは気になるが、今の問題はそこじゃないな。

 俺は《ファイア》を使って、エクレールの死体を火葬してあげる。

「形はどうあれ、私はエクレールがいてくれたら良いわ! クロエ様には私達を助けてくれたお礼に、ローゼリア城に招待したいの。お母様にも紹介したいし」

 王女のお母様って事は……王妃様?女王様? 変なトラブルに巻き込まれるのは嫌だが、彼女の気持ちも無碍には出来ない。

『ここまで歩きには2時間は掛かりますが、どうなさいますか?』

 王国のお城へ向かう事になったのは良いが、どうやって行くかだな。

 王女の乗る馬車は半壊して乗れない、足となる馬は出血してたのか、血を垂らしながら逃げたのだろう。

「他のアンデッド達は森の中を散開して、足になるモンスターを捕まえてきてくれ」

 俺の影の中にアンデッド、生前はエクレールの部下だった女性騎士、女性化した盗賊数人が命令通りに動いてくれた。

 さっきから殺した《アサシン》の死体から、残存した魔力が放たれているがアンデッドにしたら戦力になるだろうが……エクレールを殺した奴だし抵抗がある。

『クロエ様。私の事はお気になさらず。戦力補強として強い力を手に入れるのは何も悪い事ではありません』

 王女様を守ってくれる強い奴等が、増えるのは何も悪い事ではないな。

「分かった。今まで何人の人を殺したのかわからないが、これからは俺の為に力を貸すんだ。解放リベレイション

 《アサシン》の死体からアンデッド化した魂が這い上がると、やはり生前とは違い美女になってしまった。

 露出度が高めの『暗殺系防具』なのだろう、防御力が低い代わりに攻撃力・俊敏力が高くなる装備となっていた。

「お前は今から罪を背負う者として『シン』という名前を与える』

 名前を与えると自意識が芽生えたのか、片膝を付いた。

『クロエ様に忠誠を誓います。まずは私の力をお見せ致します』

「グルギャアアアアアッ‼︎‼︎」

 獣の如き咆哮を上げながら四足歩行型のドラゴンが、強靭な脚力で大木に鉤爪を引っ掛けてしがみついていた。

 前脚から逆刃のように鉤爪と両翼が一体化した大きなブレードが、大木を切り裂きながら滑空して襲い掛かる。

『あれは冒険者ギルドではAランク指定。剣戟竜けんげきりゅう・ブレードドラゴン。全身が剣の様になっていて、冒険者・王国軍が総出で倒すのですが』

『《乱撃斬》』

 そう答えたシンは二刀流の短剣を振るうと、ブレードドラゴンに無数の斬撃を浴びせた挙句、またもや頭部を切断してしまった。

 相手を確実に仕留めたと安心する為にも、頭部切断した方が良いのだろうな。

「凄いなシン。仲間にして良かったよ」

『凄いのはクロエ様です。私は生前よりも明らかに強くなっています』

 やっぱり俺の魔力が異常なんだろうな、異世界人だからか?

「君の力を貸してくれ、解放リベレイション

 ブレードドラゴンの死体からアンデッド化した魂が這い上がると、生前よりも少し小さくなった分魔力密度が高まっていた。

「君はこれから『ブレイド』だ」

『グルギャオオオオッ‼︎‼︎』

 生前のブレード状の両翼も切傷があったり、少しだけ刃こぼれがあったのに、今では鋭利で鋭く仕上がっていた。

 ドラゴンの死体も放置するのは勿体無い、やっぱり収納魔法・《インベントリ》は使えないのか?

 試しにイメージしてみると出来てしまった。ブレードドラゴンが魔法陣の中に沈み込んだ。

「では俺達は檻に乗って、『ブレイド』に荷馬車を引っ張らせようか」

「まさか上級魔法まで使えるとは、もう何でも出来そうですね」

 やっぱりこの世界は術式・魔法陣・詠唱等によって魔法を発動する仕組みになっているのだろうか?

 魔力とイメージだけで自由に発動できる俺は規格外なんだろうな。

 こうして俺達はブレイドに引っ張らせて、ローゼリア王国に向かう事にした。

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