共有

85

作者: 酔夫人
last update 最終更新日: 2026-01-22 11:01:43

【動画はわちゃわちゃなのに、料理が完璧で笑えた】

【レシピ試した。20分で完成したのに、旦那に今日は手が込んでるって言われた】

【すごく美味しそう。毎日これを食べられる家族が羨ましい】

「そうだ、羨ましがれ!」

そう言って、朋美さんがお弁当用のだし巻き卵をつまみ食いした。

スマホを見ながら、つまみ食い。

ダブルでお行儀が悪い。

仕方がない、武司さんのお弁当の分のだし巻き卵を減らそう。

ごめんなさい、武司さん。

蓮司さんもだし巻き卵が大好きなんです。

恨みは朋美さんへお願いします。

「今度は何を作るの?」

「甘い物がいいと水野さんに言われているので、材料費を考えるとプリンか、シュークリームか、ガトーショコラか……そんなところにしようかと」

「撮影はポンコツなのに、作れる料理はポンポン出てくる桔梗さん」

ポンコツ……肯定したくないけれど、否定もしにくい。

「……最近は撮影に慣れてきたわ。ちょっとずつ用語も分かってきたし」

「えー、本当かなあ」

ちょっと見栄を張ってみたら、見事にバレてしまった。

だって、ホワイトバランスって何?

AIにこっそり聞いたら、「白を白に見せる」と当たり前のことを言われた。

結局どういうことか分からないけれど、撮られる側だから気にしないことにした。

でも、何となく白いエプロンは避けている。

「いまつけているエプロンも手作りでしょう? 動画見たよ、最近は料理だけじゃないよね」

「もともとの肩書きが家政婦なので、家事全般にしようかと相沢さんたちと話したの」

「いいと思うよ。動画見たけど、口はボケかましているのにミシンを操る手と足はプロ級の動きをしていたよね」

「ボケをかました覚えはないから、水野さんの編集が上手なのね」

「…&hellip

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 知らないまま、愛してた   95

    「いま、嫌だと思っただろう」「当たり前だろう」「当たり前って……これだから自分から告白したことのないモテ男はっ!」「……は?」「告白してフラれたくないなんて、そんな気持ち、世の中の男女はみんな経験してんだよっ!」それは……。「武司もか?」俺の質問に、武司がくわっと目をむいた。……間違えた。 「当たり前だろ! 俺の場合、もっと悪いぞ。フラれるときは大体”武司君も、悪くなんだけどぉ、蓮司君のほうがいいの”だよ。それでも蓮司の傍にいる俺、馬鹿じゃないか」「いや、そう言うな。武司がいてくれていつも助かっている」「ああ、もう、この流れだよ」武司がぴしゃっと自分の額に手を当てて、上を仰ぎみる。……武司、何があった?妙に情緒不安定じゃないか? 「お前、何もわかってないな」「……多分」「お前、ちゃんと恋愛小説読んだのか? ここは俺が”大丈夫だよ、桔梗さんも蓮司のこと好きだよ”みたいな感じで励ますところだろ」「ああ、まあ、そうだな……その台詞、無責任すぎないか?」「無責任だよ。大体、真面目に考えていない。うだうだしているのに苛立つから早く決着つけてこいって背中をどついているだけだから」「そのあとは? 心配とか?」「テレビの前で、ポテトチップスを食いながらドラマを鑑賞しているような感じだな。うまくいけばお祝いで、フラれたら慰めるための準備期間」おいっ! 「蓮司のことだからさ、どうせ、桔梗さんは俺のことを嫌ってるとか、仕方がないから今の生活を受け入れているとか、そんなことを考えているんだろ?」「長い付き合いは、伊達じゃ

  • 知らないまま、愛してた   94

    桔梗が全ての記憶を思い出してから、ぎこちない日々を過ごしている。桔梗が、何もなかったことにすることを選択したことは、あのとき桔梗の顔を見てすぐに分かった。桔梗にとっては、そうせざるを得ない状況だったのだろう。 俺たちの間には、誠司がいる。全てが分かる前から、桔梗が自分を暴行したのが俺だと知る前から、桔梗は子どもを産むこと選択していた。その理由は、分からない。俺に分かるのは、桔梗が全てを分かったときには、堕胎できる時期をとうに過ぎていた。妊娠中の桔梗に、覚えていないあの夜のすべてを明かして、またショックを与えるわけにはいかなかった?仕方がなかった?桔梗を、騙しているわけではない?桔梗を、守りたかった?子どもを、守りたかった? ああ、違う。俺は、ただ、桔梗が欲しかったんだ。全てを忘れている、あのときが、千載一遇のチャンスだったから。桔梗が、思い出したら、俺は桔梗に軽蔑され、嫌悪される。当たり前だろう。俺は、彼女に恐怖を与え、彼女を穢した男だ。だから、桔梗が何も覚えていないことをいいことに、桔梗を法的に俺の妻にした。桔梗が、好きだったから。俺の妻にすれば、桔梗が俺を愛すると思ったのだろうか。それは、今となっては分からない。でも、何も知らないまま俺を愛してくれた桔梗を俺は抱いて、桔梗を妊娠させた。いや、違うな。桔梗は、そういう女じゃない。俺に抱かれたとか、俺に妊娠させられたとか、桔梗は「騙された」と思うことはあっても、妊娠に関して自分を被害者とすることはないだろう。今度は、無理やり抱かれたわけではないと、桔梗なら考えるはずだ。何も知らなかったとはいえ、俺の誘いに乗り、ときには俺を誘い、だから妊娠したと、自分にも責任はあると桔梗なら考えるだろう。責任。それで、子を産ませるべきだろうか

  • 知らないまま、愛してた   93

    蓮司さんたちとの、「新たな関係」を私は望んでいない。私は、蓮司さんの妻でいたい。この家族の一員でいたい。 トラウマ、みたいのはある。あの夜のことを思い出して、また暗闇が駄目になった。真っ暗な中にいると、ただ怖いと感じる。あれは蓮司さんだったんだと思っても、「それはそれ」と脳が判断してしまっているように、蓮司さんだから大丈夫にはどうしてもならない。暗闇という条件下で湧き上がる恐怖心はまだいい。問題は、突然湧き上がるとき。視線を変えて、目に入った蓮司さんの手に「怖い」と感じたり。ぼんやりしているところを蓮司さんに声をかけられて体を震わせたり。 私が恐怖心を見せるたび、蓮司さんは「すまない」という。あの夜の人は蓮司さんなんだけど、うまく言えないけれど私の中で蓮司さんだけど蓮司さんじゃない人で、とにかく蓮司さんが怖いというわけではない。でもそれが、うまく言えなくて。手間取っている間に、蓮司さんは離れていってしまう。それを引き留めて、うまく説明ができればいいんだけど、引き留めてしまっているということが私を焦らせて、私は焦りのあまり本当のことを打ち明けそうになる。暴行された、妊娠させられた、責任取ってと、吉川凛花さんから蓮司さんを奪おうとしたんだって。私はこんな汚い人間なんだって。だから、怖いのは蓮司さんじゃない。怖いのは、悪魔のような自分自身なんだって。でも、それは知られたくないから、結局何もうまく言えずに、蓮司さんが立ち去るのを見ているだけになる。エゴの塊だ、私は。新たな関係を望まず、これまで通りでいたいのは、蓮司さんを誰にもとられたくないという私のエゴ。罪悪感のある限り、蓮司さんは私の傍にいてくれるって、最低のエゴ。 そして事態は私の思

  • 知らないまま、愛してた   92

    「……朝だ」朝の光が当たって光るカーテンを見たあと、ごろりと体を転がして部屋の中を見る。桐谷家にきた当初に暮らしていた、私の部屋。妊娠が分かってからも、三ヶ月。この間、ずっと私は夫婦の部屋ではなく、自分の部屋で寝起きしている。蓮司さんが「体をゆっくり休めたほうがいいから」と自室で眠るようになった。夫婦の部屋だと残されたという感覚があって、「大きな寝具を一人で使うのは勿体ない」とか「大きな洗濯物は大変」とか言って、私はこの部屋で眠るようになった。 廊下から、パタパタと軽い足音。誠司が来たみたい。「パーパ、こっちー」「誠司、ママはまだ寝てるから」「だいじょーぶ」起こしたって怒られないって確信に満ちた誠司の声に思わず口が緩む。 「ママ、おはよう。おきてー……おきてるー!」起こしにきたところで、私が起きていることに誠司は喜んで駆け寄ってくる。足元は覚束ないが、ひやひやする感じはなくなった。成長している、と思う。「あーちゃん、おはよう」なるほど、この子に挨拶したかったのか。それで起こしにきたというわけか。もにゅっとお腹の中が動く感じがする。「おきてるー?」誠司は私のお腹をジッと見るけれど、残念ながらまだ外からは分からないだろう。「起きてるみたいよ」「そーなのねー」……誰の口真似だろう。違和感のある喜び方だけど、誠司は嬉しそうに笑って私のお腹をポンポンッと叩く。私や蓮司さんの真似をした挨拶のつもりだろうけれど、二歳児の力くらいで赤ちゃんに何かあるわけないと分かっていても、ちょっとハラハラしてしまう。 「誠司、桔梗のお腹を叩くのはやめなさい。赤ちゃんが吃驚するぞ」

  • 知らないまま、愛してた   91

    ……妊娠、した?最近、朝になると決まって吐き気がする。空腹だから、気持ち悪いのかもしれない。だけど、今までそんなことなかった。食欲が増した?それは、やっぱり妊娠したから?自分では、よくわからない。妊娠した、と思いたいだけ?好きだったコーヒーの香りが、急に鼻につくようになったのも?これは期待?それとも、不安? 妊娠したかもって思うと、なんだって妊娠の兆候に思えてしまう。胸が、張っている気がする。少し触れただけでも、痛む気がする。眠っても眠っても、まだ眠い気がする。体が重い、気がする。 一番頼りになる生理は、まだ来ていない。でも、まだ予定日から三日目。このぐらいのズレは、いつもとは言わないけど、よくあること。まだ来ない、何日来ていないと、毎日考えている。 検査をすれば、いいだけ。いまは、ネットで妊娠検査薬を買える。誰にも知られずにこっそり検査して……でも、それで?妊娠していたら?………いや。妊娠したって言えば、いいだけ。そうだよ、ね。今さら、なかったことにはできな……っ!「痛っ!」視界が、大きく揺れる。とっさに、目の前の台に手をついた。 ガチャンッ!陶器の割れる大きな音に、ハッとした。視界がもとに戻っていく。頭の痛みは……ない。……なんだったのだろう。 「桔梗!」「……蓮司さん」蓮司さんが、駆け込んできた。あれ?これ、どこかで、前にも……。 「大丈夫か?」

  • 知らないまま、愛してた   90

    「そろそろ二人目かしら」……二人目。最近、「二人目」という言葉だけやけに大きく聞こえてくる気がする。言っている人は悪くない。夫婦仲を疑う、探りではない。下卑た揶揄いでもない。好意的な、夫婦仲がいいからって、ただの感想みたいに言っているだけ。夫婦仲が認められることは、単純に嬉しい。素敵な旦那様ですねと言われても、蓮司さんは胸を張ってYESと言える人だ。そして蓮司さんも、素敵な奥様ですねという言葉に、迷いなくYESと言ってくれる。蓮司さんは夫で、愛おしい人。その人の子どもを、もっと欲しいと思うのは、いけないこととは思わない。経済的にも、二人目を考える余裕はあると思う。でも、なんでか、蓮司さんは「二人目」を望んでいない気がする。言葉にして言われたわけでもない。私も「二人目を」と言ったことがないから、お相子かもしれない。でも、なんでだろう。「二人目」のことになると、蓮司さんになんとなく壁を感じる。拒否、されている感じがする。だから、この感情を「お相子」で消化できていない。不満?いや、違う。言葉にするなら、不安。 夜の営みがないわけではない。頻度は減ってはいるかもしれないけれどレスではないし、寂しいと感じることもない。私から誘い掛けてばかりというわけでもない。蓮司さんから触れてきて、始まることもある。ただ、私から誘うことが増えたことは、確か。でも、蓮司さんが”仕方がないから”って感じで応じているわけでもない……と思う。いや、そうなのだろうか。この辺りは、正直分からない。 ああ、そう、分からないんだ。蓮司さんが見ているものが分からない。私と蓮司さんは違う個を持つ人間。だから、同じものを常に見るこ

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status