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第710話

Auteur: 栄子
この行動は、会社の古株の株主たちをひどく不快にさせた。

3月末、ついに真奈美の親族のおじさんたちは、数人の古株の株主と結託して株主総会を開いた。

彼らは「真奈美は公私混同して誠也を庇っている」という理由で、真奈美に栄光グループCEOの座を退くよう迫ろうとしたのだ。

その株主総会には、誠也も出席していた。

彼は新井家の株を所有していないため、本来であれば株主総会に参加する資格はなかった。

しかし、誠也は、8年前に真奈美の親族のおじさんたちが互いに共謀して殺し屋を雇った証拠をその場で突きつけた。

そして、その殺し屋の狙うターゲットは新井家の長男と、真奈美の婚約者だったのだ。

あの交通事故で1人が死亡、1人が重傷を負ったが、実行犯は8年間もの間、野放しになっていたのだ。

証拠が提出されると、会場は騒然となった。

刑事が会場に入り、真奈美の親族のおじさんたちを連行した。

株主総会は、そのままお開きとなった。

真奈美は8年間耐え忍び、ついに目的を達成したのだ。

オフェスに戻った真奈美は、上機嫌で誠也に言った。「この2ヶ月、お疲れ様でした。3日間休暇をあげますから、家に帰って子供とゆっくり過ごしてきてください」

誠也は返事をして、くるりと背を向け、そのまま出て行こうとした。

「碓氷さん」真奈美が彼を呼び止めた。

誠也は足を止め、振り返って彼女を見た。

「子供たちに会いに行くのは構いませんけど」真奈美は念を押すように言った。「あなたがまだ私の夫だということを、どうか忘れないでください。元妻と親しくするのはやめてくださいね。彼女に不倫相手だという立場に立たせるわけにはいかないでしょう?」

誠也は眉をひそめた。

彼は、綾が自分のせいでまた「不倫相手」の汚名を着せられるのは耐えられなかった。

たとえ誤解であっても。

かつて、彼は一度、綾にそんな思いをさせてしまったからだ。

もう二度と同じ過ちは繰り返したくない。

真奈美は彼の前に歩み寄り、見つめながら言った。「碓氷さん、この世には報われない恋をしている人がたくさんいます。一度選択をしたなら、未練がましい態度はやめたほうがいいですよ。あなた一人の優柔不断さで、二人の女性を敵対させないでください。私の言いたいこと、分かりますか?」

誠也は目の前の女性を見つめた。

彼の表情は冷たく、瞳には何の感
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