Share

第509話

Author: 雲間探
「大丈夫よ、おばあさん」玲奈は言った。「まだ仕事が残っているから、夕食はまた今度にしよう」

玲奈の様子だと、仕事があるわけではない。明らかに、ここに長居したくないし、長居する立場ではないと思っているのだ。

本当なら、玲奈と智昭はまだ正式に離婚していない限り、玲奈はまだ藤田家の人間だから、ここまでする必要はないのだ。

しかし玲奈の中で、おそらく智昭と離婚を考え始めた時から、すでに彼との線引きをしていたのかもしれない。

これらのことは、藤田おばあさんも理解している。

玲奈が帰ると言うなら、これ以上勧めるのもよくない。

藤田おばあさんは智昭を強く睨みつけた。

智昭は見て見ぬふりをして、玲奈に向かって言った。「送るよ」

「結構よ」玲奈は拒否した。「仕事は忙しいだろう。運転手に送ってもらえばいいわ」

智昭もそれ以上食い下がらなかった。「わかった」

玲奈は部屋に戻ってバッグを取って、帰る準備をした。

藤田おばあさんと智昭は二人とも階下まで玲奈を見送りに来た。

茜は玲奈がもう帰ることを知り、とても寂しがった。「ママ、もう帰っちゃうの?」

玲奈は「うん」と言いながら茜の頭を撫
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (139)
goodnovel comment avatar
良香
かつて智昭と玲奈さんは幼馴染で、玲奈さんは好きだったが智昭は無関心ってあったけど、 青木家は静香さんが壊れちゃったタイミングで首都に来た家だよね?それでも幼馴染になるんかな? あと、智昭が恋した大学生は玲奈さんだと思うんだが、幼馴染ならわかるよね。 だから、恋した人を優里だと思っているからあの待遇なんかな、って。 でも廉は玲奈さんを覚えてるから、やっぱ智昭の初恋は玲奈さんだと思うんだよな〜。
goodnovel comment avatar
Yuka Murata
出てこなくなるとしてもまだ先ですかねー 優里と智昭の結婚は、 私にとっては最悪の結末ですね。 でも広告で車内熱中症で子どもが父親のせいで死んでしまう動画があったのですが、 それをどこで観られるのか検索してた時に、その手のブログで子どもは助かり幸せに暮らしたとあって、 動画見たら死んでしまってるし、 嘘じゃん!と思ったことあります。 結構適当ですかね(-_-;) この話のドラマでは2本共、玲奈は智昭と茜を捨てて、礼二(男性が智昭と礼二しか出てこない笑)と新たに踏み出してるから、小説もやっぱり離婚ですかね。 ドラマと小説のラストが違うことあるのかなー
goodnovel comment avatar
ひまわり
吉田さん 不倫する初めの頃の話をしておりました…わかりにくくてすみません。今はもう、玲奈自身が離婚を求めているので、正直何もしないでほしいなぁと思ってしまいます。
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • 社長夫人はずっと離婚を考えていた   第853話

    清司の印象では、茜は毎日楽しそうにしている。もし何か嫌なことがあれば、真っ先に智昭に話しているはずだ。それなのに、いったい何をそんなに悩んでいるというのだろう?茜はタブレットの画面をスクロールしながら、顔を上げずに言った。「別に不機嫌じゃないです」普段会うとき、茜はいつも笑顔を浮かべていて、一目で楽しそうにしているのが分かった。普段なら、からかわれればすぐに元気いっぱいに言い返してくるはずだ。だが今のように、からかわれても大人しくしていて、人に構おうともしない様子を見れば、清司にも茜は本当に不機嫌であると分かった。清司が茜を少しからかって、何か嫌なことでもあったのか聞こうとしたところ、辰也が軽く咳払いをした。「次はお前の番だ。料理を注文しろ」「もう注文したよ」「あと2品頼め」清司は驚きながら、「今日そんなに腹減っているのか?」と聞いた。だが、辰也は何も言わなかった。以前、みんなで一緒に海へ遊びに行ったとき、辰也はすでに茜が何か心に抱えていることに気づいていた。そのときから、きっと生田博士のパーティーの日に起きたことと関係があるのだろうと考えていた。つまり、茜と玲奈、智昭、そして優里の4人の間に起きたことが関係している可能性があるということだ。そう考えた辰也は、智昭と茜を交互に見た。茜が不機嫌な理由について話しているのに、智昭は口を挟もうともしない。それに、今もこの2人の間には静かな空気が流れ、ほとんど会話がないようだった。その様子を見て、茜が元気をなくしているのは、やはり玲奈と優里が関係しているのだろうと、辰也はますます確信した。なので、辰也は軽率に深く聞くことはせず、すぐに話題を変えた。食事もほぼ終わり、茜がトイレに立ったところで、辰也がようやく智昭に尋ねた。「お前、茜ちゃんと喧嘩したのか?」そのことには、先ほど食事をしているとき、清司も気づいていた。なぜなら、先ほど食事をしている間、茜はずっと大人しくしていて、智昭はいつもどおり茜に料理を取り分けていた。茜もそれを受け取り、「ありがとう」と礼を言っていたが、その口調は以前とは明らかに違っていた。智昭は「まあ、そんなところだ」と辰也に返した。清司の中では、茜は玲奈よりも優里のほうに懐いている。少し前の生田博士のパーティーにも茜は同席していたが、

  • 社長夫人はずっと離婚を考えていた   第852話

    その後数日間、玲奈は会社の仕事に追われていた。ある日、礼二が突然玲奈にこう言った。「藤田総研では最近、また何人かの技術の中核を担っていた人材が辞めたらしい」「うん」玲奈が返事した。「私も聞いたわ」「投資家も何人か撤退したが、まだ撤退していないところもある。おそらく、もう少し様子を見るつもりなんだろう。智昭側が動くかどうかを見極めたいんじゃないか」そこまで言うと、礼二は少し笑って、付け加えた。「撤退した投資家の中には、進研マテリアルもいるらしい」進研マテリアルは、淳一の会社だ。玲奈は軽くうなずいた。礼二は思わず言った。「前に見た感じじゃ、徳岡は大森にかなり夢中になっていたように見えたからな。あっさり出資を引き揚げるするとは、ちょっと意外だったよ」玲奈は淳一のことには関心がなかったため、それを聞いても何も言わなかった。礼二はまた尋ねた。「智昭は出張からまだ戻っていないのか?」玲奈は首を振った。「わからないわ」ここ数日、玲奈は茜とも連絡を取っていなかったし、智昭の動向も特に気にしていなかった。彼が出張から戻ってきたのかどうかも、玲奈には分からなかった。「もうかれこれ1か月近くになる。大森テックの裁判の日も間近だし、藤田総研も今にも倒れそうな状況だ。智昭は本当に、この2つの会社を救うのを諦めるつもりなのか?」礼二が聞いた。「私にも分からないわ」礼二も分かっていた。たとえ智昭が大森家への支援を諦めたとしても、それだけで何かを意味するわけではない。そのことを理解していたからこそ、大森テックと藤田総研の件についても、礼二はそれほど気に留めていなかった。……放課後、茜がちょうど車に乗り込もうとしたとき、車内に座っている智昭の姿が目に入った。すると、茜はきゅっと唇を引き結び、足を止めたあと、車に乗り込んだ。智昭は隣に置いてあったプレゼントを茜に差し出した。茜は顔を背け、智昭から受け取らなかった。智昭は無理強いせず、プレゼントを脇に置くと、手を伸ばして茜の頭を撫でた。「パパは辰也おじさんと清司おじさんと食事する約束をしてるから、一緒に4人でご飯を食べよう」茜は避けようとしたが、うまくいかず、仕方なく顔を背けた。「どっちでもいい」「ここ最近、学校はどう?」茜は自分のタブレットを取り出し、俯いてパス

  • 社長夫人はずっと離婚を考えていた   第851話

    その夜、茜は串焼きを何本か食べ、しばらく積み木で遊び、星空を眺めたあと、山を下りてホテルに戻り、休むことにした。翌日、玲奈は礼二や会社の一部のスタッフと仕事について話し合っているとき以外は、ほとんど茜と一緒に過ごした。礼二と翔太も、何度か自分から仲良くなろうと茜に歩み寄っていた。茜はそのたびに素直に挨拶をし、きちんとお礼も言っていたが、彼ら2人と茜の距離が縮まることはなかった。2人は最初、茜が人見知りしているのだと思っていた。だが、すぐに茜が自分たちに近づかれることを拒んでいるのだと気づいた。茜はただ、2人と友達になりたくないのだ。以前、茜が優里に懐いていたことについて、礼二は玲奈をとても気の毒に思っていたものの、茜はまだ幼く、分別もつかない年頃だったため、茜を本気で責めることはなかった。茜は玲奈の娘なのだから、礼二が心から可愛がってあげたいと思わないはずがなかった。だが、今の茜の態度には、礼二もさすがに複雑な気持ちになり、思わず口にした。「礼儀正しくはしているけど、実際には俺たちが近づくのを拒んでる。まさか、生田博士のパーティーの日に俺が智昭や大森のことをあんなふうに言ったのを、恨んでるんじゃないだろうな?」玲奈は首を振った。「私にもわからない」自分も当然、茜が礼二と親しくなりたくないのだと気づいていた。礼二だけではない。自分に対しても、茜の態度は以前と比べてよそよそしくなっていた。茜の性格は、以前と比べて確かに変わっていた。その原因について、玲奈には分からなかった。だが、茜は一度も自ら彼女に話しかけてくれなかった……礼二は、茜に自分がどう接されようと、実は気にしていなかった。ただ、玲奈のことが不憫でならなかったのだ。彼は、生田博士のパーティーの日、茜が多くのことを知ったにもかかわらず、それでも智昭と優里のほうに肩入れするとは思っていなかった。礼二もこれ以上このことに深入りするわけにはいかず、ただ玲奈の肩を軽く叩いて、意識を仕事へと戻した。日曜日の午後、社員旅行が終わると、玲奈と礼二はそれぞれ帰路についた。この2日間は社員旅行だったとはいえ、玲奈も礼二も実際にはかなり忙しく、玲奈が茜と話す機会はそれほど多くなかった。茜の世話はほとんど田代がしていた。ただ、玲奈はこの2日間、智昭がずっと

  • 社長夫人はずっと離婚を考えていた   第850話

    今夜は天気もよく、山の上には展望台も設けられていて、そこからは街のきらめく夜景を一望することができる。玲奈と茜が山の上に着いたときには、長墨ソフトの何人かの社員がすでに展望台のそばの広場にバーベキューコンロを設置し、バーベキューを始めていた。2人の姿を見つけると、みんなはすぐに挨拶し、そのうちの1人が声をかけた。「青木さん、ここにはバーベキューの腕がいい人がいるんですよ。焼き肉がめちゃくちゃおいしいんです!よかったら少し食べませんか?」玲奈は笑って受け取り、「じゃあ少しいただくわ、ありがとう」と言った。「そんな、遠慮しなくていいですよ。まだまだありますから」社員の1人がそう言うと、今度は茜に差し出した。「茜ちゃん、で合ってるかな?はい、こちらどうぞ」茜も受け取り、「ありがとうございます」と礼をした。「青木さん、茜ちゃんって本当にお利口ですね。こんなに美人で、性格や雰囲気も青木さんによく似ていますね。大人しくて聞き分けもよさそうだし、物静かで礼儀正しくて、本当にいい子ですね」別の人も笑いながら話に加わった。「そうそう。さっき田中さんも羨ましがってましたよ。『うちの娘は一時もじっとしていられないし、家内もとてもじゃないけど見ていられない』って」それを聞いた玲奈は、串焼きを手に静かに食べている茜に目を向け、一瞬呆気に取られた。正直なところ、これまで何年もの間、茜が容姿の面で玲奈に似ていると言われることは多かった。だが、茜の性格や雰囲気が玲奈に似ていると言われたのは、これが初めてだった。それに、玲奈自身も茜の性格が自分に似ているとは、これまで一度も思ったことがなかった。だが、認めざるを得ない。この2度の再会で見る限り、茜は以前よりずいぶん物静かになっていたし、以前ほど遊び回ったり、甘えたりすることもなくなっていた。特に今日は……玲奈には、茜が自分と一緒にいるときだけこうなのか、それとも気分が落ち込んでいて、ほかのことをする気になれないからなのか……分からなかった。そう玲奈が考えていると、翔太が上がってきて、手にしていたプレゼントを茜に差し出した。「プレゼント、持ってきたよ。開けてみて!」茜は一瞬手を止めたが、プレゼントを受け取って箱を開けた。「すごく気に入りました。ありがとうございます」「どういたしまして」

  • 社長夫人はずっと離婚を考えていた   第849話

    「うん、分かった、ママ」そう言うと、茜は田代と一緒にその場を離れた。玲奈はみんなと食事を終えたあと、礼二としばらく会社の話をしてから、先に部屋へ戻った。玲奈が部屋に戻ると、茜はちょうど部屋でシャワーを浴びていた。玲奈が腰を下ろしたばかりのとき、ベッドの上に置いてあった茜のスマホが鳴った。智昭からの電話だった。玲奈は電話に出ず、田代に茜の代わりに出るよう目配せした。すると、田代は苦笑して言った。「茜ちゃんは今、智昭様からの電話には出たがらないんです。私が代わりに出るのも嫌がっていて……茜ちゃんが智昭様と話したければ、あとでお風呂から上がってから折り返すと思います」玲奈は、これらのことについて知らなかった。茜の親権は智昭にあるため、父と娘の間のことに玲奈があまり口を挟むわけにもいかなかった。田代の話を聞き、今日の茜があまり機嫌がよくなかった様子を思い出した玲奈は、ふと尋ねた。「2人、喧嘩したの?」「……はい」実は、あの生田博士のパーティー以降、茜と智昭は本当の意味では仲直りしていなかった。茜もまた、本当の意味で笑顔を取り戻したことはなかった。そのことについて、田代は玲奈を見ながら、何か言おうとした。だが、この件は茜の父親である智昭なら、とっくに気づいているはずだ。そんな智昭が玲奈に何も話していない以上、田代が出しゃばって口を挟むわけにもいかなかった。それに、茜が他人から玲奈にそのことを話してほしくないと思っているのも、田代には分かっていた。もし本当に話してしまったら、茜はきっと怒ってしまうかもしれない。今の茜は、怒らせると正直かなり怖い。茜と智昭の間のことにあまり深く立ち入って尋ねるわけにもいかなかったため、2人が喧嘩をしたと知っても、玲奈はそれ以上聞かなかった。田代は、玲奈が何も尋ねようとしないのを見て、ため息をついた。田代は玲奈の考えも理解できた。だが、茜はまだ幼い……そのとき、茜がシャワーを浴び終えて浴室から出てきた。玲奈の姿を見ると、微笑んで尋ねた。「ママ、おかえりなさい」「ただいま」田代は、智昭から電話がかかってきたことを茜に伝えた。茜は表情を変えることなく、「分かった」と言った。口ではそう応じたが、茜は折り返す気はなかった。玲奈は尋ねた。「この後行きたいと

  • 社長夫人はずっと離婚を考えていた   第848話

    1時間余りして、玲奈と茜はようやくホテルに到着した。玲奈が到着したと知ると、礼二と翔太はともに階下まで迎えに行った。礼二は玲奈が茜を迎えに行ったことを知っていたが、翔太は知らなかった。車から降りてきた茜を見て、翔太は一瞬呆気に取られた。玲奈は茜の頭を撫でた。「茜ちゃん、湊おじさんに挨拶して」茜は「湊おじさん、こんにちは」と挨拶した。礼二も優しく「こんにちは」と返した。玲奈は今度は翔太のほうを見た。「この人はママの会社の同僚よ。秋山おじさんって呼んで」「秋山おじさん、こんにちは」翔太は茜を見て、少し複雑な気持ちになった。自分と茜は以前にも会ったことがある。ただ、それはもう2、3年前のことだ。当時の茜はまだ幼かったので、おそらくもう自分のことは覚えていないだろう。礼二は玲奈に声をかけた。「もうすぐ夕食だから、先に中に入ろう」「わかった」長墨ソフトの人たちは、以前から玲奈がすでに結婚していて、子どもも1人いることは聞いていた。だが、少し前になって初めて、玲奈が結婚した相手がまさか智昭だったことを知ったのだ。多くの社員はこれまで茜本人を見たことがなかったため、実際に茜を目にすると、思わず何度も目を向けてしまった。「この子が青木さんと藤田さんの娘なの?藤田さんにかなり似てるよね」「確かに」茜は玲奈と礼二の間に座っていた。茜が来ると知った礼二は、わざわざ子ども向けの料理を何品か追加で用意させていた。席に着くと、玲奈は茜の好きな料理を何品か取り分けて、茜のお碗に入れてやった。「これは湊おじさんが茜ちゃんのためにわざわざ頼んでくれたのよ。食べてみて」礼二が自分のために頼んでくれたと聞くと、茜は目を伏せたまま一瞬動きを止め、それから礼二に言った。「湊おじさん、ありがとう」「どういたしまして」礼二は当然、玲奈の好みをよく知っていた。玲奈が茜の世話をしているのを見ると、礼二は取り箸を使って玲奈の取り皿に取り分けてやった。玲奈は微笑みながら「ありがとう」と礼二に言った。礼二は智昭のことを好いてはいなかったが、茜は何と言っても玲奈の娘だ。だからこそ、礼二は過去の不満はひとまず置いて、心から茜に接することができた。礼二は茜を見て、尋ねた。「茜ちゃん、おじさんが何か取ってあげようか?」茜は一瞬ため

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status