神ゲーマーふたりは今日もオンライン

神ゲーマーふたりは今日もオンライン

last updateLast Updated : 2025-09-06
By:  おおはた奈実(Ohata)Updated just now
Language: Japanese
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プロゲーマーを目指すイケメン高校生(16) × ダウナー系美人でギャップがあるeスポーツ部の先輩(17) ゲームの中で出会ったふたりが高校のeスポーツ部で再会し、お互いをライバル視しながらも絆を深めて夏の大会で優勝するまでを描いたお話です。 【あらすじ】 高校の部活で因縁の相手・小神野悠馬(17)と再会した神谷伊織(16)は、その実力から悠馬のチームに入るものの、性格やプレースタイルの違いからぶつかってしまう。ケンカばかりで連携もできず、練習試合でもボロ負け。時間が必要だと感じた伊織は悠馬の部屋に押しかけ「今日から先輩の家にお世話になりますっ!」と宣言するが、実は悠馬は伊織に好意を抱いていて――。

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Chapter 1

プロローグ

最初はゲームの中で出会った、小神野先輩と俺。プロのプレーヤーを目指す俺をあっという間に倒したくせに、名前さえ教えてくれなかった彼を探すこと1年……。俺は高校のeスポーツ部で先輩と再会した。

先輩は俺のライバルだ。仲良くなろうと思っていたわけじゃないけど、初日から『雑魚』呼ばわりされてケンカになり、同じチームを組むことになっては、またケンカ。一緒にゲームをやっているときだけは楽しいかと思いきや、協力するゲームにもかかわらず、お互いを撃ち合ってばかりだった。

まったくタイプの違う先輩と、共通する部分はゲームが好きなことと、負けず嫌いなこと。試合に負けたのをきっかけに2か月限定の共同生活をすることになった俺は、そこで先輩の意外な一面を知ることになる。家事ができなかったり、意外と不器用だったり、嫌がらせでキスすると顔を赤くしたり――。

「お前にだけは負けたくない」と話す先輩に、自分は先輩にとって特別なのかと聞いたら、「……お前は、俺の特別がいいの?」と唇にキスされた。

くすぶる気持ちに火をつけられた俺は、「先輩って、誰かを好きになったことある?」と立ち上がる先輩の手を取り、強引に口づけて――。

大会で優勝を目指す俺たちの関係は、夏に向けて少しずつ変わっていく。

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35 Chapters
プロローグ
最初はゲームの中で出会った、小神野先輩と俺。プロのプレーヤーを目指す俺をあっという間に倒したくせに、名前さえ教えてくれなかった彼を探すこと1年……。俺は高校のeスポーツ部で先輩と再会した。先輩は俺のライバルだ。仲良くなろうと思っていたわけじゃないけど、初日から『雑魚』呼ばわりされてケンカになり、同じチームを組むことになっては、またケンカ。一緒にゲームをやっているときだけは楽しいかと思いきや、協力するゲームにもかかわらず、お互いを撃ち合ってばかりだった。まったくタイプの違う先輩と、共通する部分はゲームが好きなことと、負けず嫌いなこと。試合に負けたのをきっかけに2か月限定の共同生活をすることになった俺は、そこで先輩の意外な一面を知ることになる。家事ができなかったり、意外と不器用だったり、嫌がらせでキスすると顔を赤くしたり――。「お前にだけは負けたくない」と話す先輩に、自分は先輩にとって特別なのかと聞いたら、「……お前は、俺の特別がいいの?」と唇にキスされた。くすぶる気持ちに火をつけられた俺は、「先輩って、誰かを好きになったことある?」と立ち上がる先輩の手を取り、強引に口づけて――。大会で優勝を目指す俺たちの関係は、夏に向けて少しずつ変わっていく。
last updateLast Updated : 2025-07-22
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1.戦闘開始
その都市は長い戦いの末、荒廃していた。倒れたビルはミサイルの爆撃によって穴が開き、街はいたるところで硝煙が上がっている。俺は瓦礫でところどころふさがれた道を、でかいショットガンをかつぎながら特殊部隊の仲間とともに駆けていた。敵の拠点である巨大な工業団地にたどり着く。(ここを占領すれば、俺たちの勝ちだ)掲げられたフラッグのそばには敵の防衛部隊が待ち構えていて――。俺は物陰に隠れながら、仲間からの合図を待った。……といっても、これは本物の戦争をしているわけじゃなく、ゲームの中の世界だ。リリース以来、世界で圧倒的な人気を誇っているオンラインゲーム『ゼロ・グラウンド』。一人称視点のシューティング(FPS)とリアルタイムで進む戦略ストラテジー(RTS)とが合わさった、空白の都市をめぐって4つの国の特殊部隊が争いを広げるウォーゲーム。そのゲームの中の戦場で――俺たちは出会った。どこかで鳴る、妙に静かな銃声……。振り返ると、仲間がひとり倒れていた。(サイレンサーか……! どこから撃ってきたか、わかりにくいな)相手の場所を特定する前に、もうひとりの仲間も回復不可能な状態にされる。「クソっ、こんな短時間で……!」マップを見ると、占領したはずの拠点がふたつ取り返されていた。ゲームパッドから手を離し、感情にまかせて机を叩く。(ありえないだろ、こんなの!)普段からチームを組んでいる仲間じゃないものの、ここはゲームの中でもかなり高ランクのプレーヤーが集まる場所だ。そんな簡単にやられるような奴らでもない。(戦況をたったひとりで変える、なんて……。そんなことができるの、プロのプレーヤーくらいだ)相手が何者かについて考えながら、絶対に狙撃されない場所まで移動する。ポイントに着いてひと息ついたところで、背中を撃たれた。(まさかっ……! いったい、どこから……)見上げると、給水塔の上に『ヴァイパー』という機動力の高いキャラクターが、ライフルを手にこっちを見下ろしていた。あっと思って撃ち返したときには、相手は塔の上から飛び降りていて――。空中で持ち換えたんだろうナイフで、あっという間にキルされてしまった。アカウント名:okaP(……オカ、ピー……オカピ?)ふざけた名前だと思った。昔どこかで見た図鑑に、そんな動物がいたような気もする。俺は負けたイラ立ちにまかせて、
last updateLast Updated : 2025-07-22
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2.私立新葉高校eスポーツ部
「「よろしくお願いしますっ!!」」高校に入学してすぐ、俺は同じゲーム好きで意気投合したクラスメイトの野田翔平とeスポーツ部に入部届けを出しに行った。私立新葉高校。都内にあり、eスポーツの全国大会では常に上位のランキングに入るような有名な高校だ。環境が整っていて、部員の数こそ多くはないが、毎年のようにプロのプレーヤーを輩出している。顧問の先生が部室まで案内してくれ、俺たちは早速、入部のための簡単なテストを受けることになった。「俺は3年で部長の笹原拓海、よろしくね。……ああ、あんまり気負わなくていいよ。テストって言っても、やりたいゲームのタイトルができるかどうか見るだけだから」笹原部長は気さくなタイプみたいで、黒縁眼鏡の奥で目尻を下げながら笑っていた。「えっと、神谷がゼロ・グラウンド。野田はバトルソウル……格ゲーだね」「はいっ」「りょーかい。あっ、オカノ~! ゼログラのプレーヤー来たから一緒に見てよ」オカノと呼ばれた人が、奥の席から億劫そうにやってくる。近くまで来て、その綺麗さに驚いた。どこか西洋の血でも混じっているんだろう、色素の薄い肌にグレーがかった瞳。地毛か染めているかもわからないシルバーのアッシュがよく似合っていて、ゲームの邪魔になるのかヘアゴムで適当に括っていた。俺もよく「サッカー部?」って聞かれるし、幼なじみの女子からは「ゲームなんかさせておくのはもったいない」と言われがちな見た目だが(顔とスタイルはモデル級……らしい)、目の前のオカノも相当だと思う。全体的にやる気がなさそうな、いわゆるダウナーっぽい感じのする中性的な美人だ。彼(彼女?)はしばらく俺の方を見上げていたけれど、やがてひと言「……めんどくせ」と呟いた。あ、うん……。喋るまで女の子の可能性がないでもなかったが、これは完全に男だ。あと、性格はあんまり良くなさそう。「お前が見せろって言ったんだろー? ふたりとも、こいつはうちの副部長の小神野悠馬(おかの ゆうま)。うちのエースで、夏の大会が終わったらプロチームとの契約が決まってるんだ」「……それ、まだ決まってない」「へ? お前、カシラゲームズから声がかかってるって……」「今、違うところからも声かかってるから」まだ現役の高校生なのに複数のチームから声をかけられている、なんて。(そんなに強いんだろうか……)ゼログラに
last updateLast Updated : 2025-07-22
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3.ケンカのあとで
次の日。昼休みに顧問に呼ばれた俺はこっぴどく怒られることになった。本来なら何らかの処分が下されるところらしいが、先に手を出してきたのが先輩だったということもあって、しばらく部活動禁止~なんて罰はなんとか逃れることができた。先輩の方も、顧問と部長の説教をしっかりと受けた上で、すぐ部活に来るらしい。職員室のそばにある説教部屋から出ると、格ゲー好きの野田が外でニコニコしながら俺のことを待っていた。「……なんでいるんだよ」「そりゃあ、入部してから最速で顧問に呼び出された神谷の顔は見たいでしょ。で、どうだった?」「特に何も。……事実確認されただけだよ。どっちが先に殴ったのか~とか、なんでケンカになったのか~とか」「すぐ出られんの? 部活」「部長と話してからなら、出てもいいよって。今日の放課後からかな」「なぁんだ」と拍子抜けしたように言う野田は、性格が悪いというよりはただのゴシップ好きって感じがした。呆れた顔をしながら、自分の頬をトントン、と指で叩く。「ケガ、大丈夫なん?」「ゲームパッドより重いもの持たない奴のパンチなんて効かねーよ」「そのわりに、湿布なんか貼ってますけど」「……っ! これは、俺は怪我しましたっていうアピール!」「そういうことにしとくか」と笑う野田に、俺はまっすぐ指を向けた。「小神野先輩が殴ったの、俺が初めてじゃないらしいから……野田も気をつけろよ」「まじか」「見た目のこと言うのはダメなんだって。特に『美人』は禁句だって」「神谷……お前、初対面で思いっきり先輩の地雷踏み抜いたんだな」「そうらしい」俺だって、最初からダメだとわかってたら、言わなかった。そもそも『性格悪そう』は明らかに悪口だけど、『美人』はいちおう褒めたつもりだったのにな。言葉って難しい。昨日、ケンカする俺と小神野先輩のことはほかの先輩方が無理やり引き剥がしてくれた。部長には「今日はふたりとも帰れ!」と言われたけれど、途中で呼び止められ、別室で話をされた。頭を下げ
last updateLast Updated : 2025-08-01
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4.先輩のチーム
「今日から、小神野先輩と同じチームで練習する……?」俺はたった今、部長から言われたことを復唱していた。放課後の部活。いつものように練習をしていると、俺は部長と小神野先輩に部室の隅のミーティング用スペースに呼び出された。「課題だったエイムの技術も上がってきたし、6月には大会の予選が始まるからな」「大会って、あのeスポーツの甲子園って言われてる……?」「そう。e-JAPAN全国高校ゲーマーズ選手権。6月から7月にかけて全国の予選が始まって、8月の末にグランドファイナルの試合がある。去年、うちは『ゼロ・グラウンド』部門で優勝を逃して、2位だったからね。最後の試合、内容は知ってる?」「……動画サイトの切り抜きで、少し見ました。序盤は良かったんですが、中盤で攻撃の手が少し緩んでしまって……相手側の戦略が上手かったのもあって、逆転されてしまったんですよね」「そうなんだよ。ネットの解説では新葉の攻撃力不足って言われてる。うちは5人いるうちの3人を自陣の防衛に回して、残りの2人で攻撃を仕掛ける守りの固いチームなんだ。作戦としては悪くないと思っているけど、この構成だと、どうしても攻撃ふたりの火力が重要になってくる。そこで、小神野のチームに神谷を入れたい。小神野の機動力の高さに神谷の先読みの上手さと攻撃の多彩さが加われば、2人だけの少数部隊でも全国相手に戦えると思うんだ」「攻撃チームが上手くかみ合えば、の話だろ? ……実力はともかく、プレースタイルが違いすぎる」小神野先輩がイスの背もたれに寄りかかりながら、口を挟んだ。どうやら、先輩も部長の提案にそんなに乗り気じゃないらしい。先輩はたしかに、シューティングの技術とセンスで真正面からごり押しするタイプだ。俺はどちらかというと、マップやキャラクターの特性への知識を活かしながら、相手の動きを読んで先回りの攻撃を仕掛けるタイプ。okaPの戦い方も、そのカッコよさも……俺はよく知っている。でも、どうやって倒そうか考えたことはあっても、一緒に戦うなんて考えたこともなかった。「スタイルに違いがあるのは、見ててわかるよ。でもこのふたりが噛み合えば、うちのチー
last updateLast Updated : 2025-08-02
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5.フレンドリーファイア!
俺はその日のうちに、小神野先輩のいるチームに招かれた。「ようこそ、新入り君! 歓迎するぜ。俺は3年の萩原俊(はぎわら すぐる)、よろしくな!」まるでゲームのチュートリアルに出てくる人みたいに言ったのは、前にいい人そうだなーと思っていた萩原先輩だ。まとめ役っぽい雰囲気はあったけれど、どうやら3年生だったらしい。次に、隣に並んだよく似たふたりが背の高い方から順にあいさつをしてくれた。「同じく3年の椎名玲(しいな れい)、よろしく。ここ、兄弟だから下の名前で呼んでくれ」「2年の椎名律(しいな りつ)だよ、よろしくね~」「よろしくお願いします」と同じように自己紹介をすると、律先輩から「なんて呼べばいい?」と尋ねられた。「えっと、何でも……」「うーん……じゃあ、いおりんにしよう!」明るく言って、にっと笑う律先輩。あだ名をつけるのが好きなんだろうか?小神野先輩との出会いが強烈すぎたせいか彼のことばかり考えていたけれど、他の先輩方は親しみやすい人が多いみたいだった。ほっと胸を撫で下ろす。小神野先輩はともかく、このメンバーなら連携が必要なゲームでも上手くやっていけそうな気がした。『ゼロ・グラウンド』は一人称のシューティングと戦略ストラテジーとが合わさったウォーゲームだ。どの国のものでもない空白都市『サイファラス』を巡って、4つの国の特殊部隊がひとつの都市の中で戦いを繰り広げる。ゲームが開始されると、俺たち5人にはひとつの本拠地が与えられるようになっている。そこを防衛しながら、他チームが守る3つの拠点をすべて占領できれば、俺たちの勝ちだ。俺たちが敵の拠点を制圧しに行くように、敵チームもまた俺たちの本拠地を攻めてくる。ときには基地に戻って防衛部隊と合流することもあるし、占領する拠点が増えれば、防衛部隊の誰かが本拠地以外の護衛に当たることもある。とにかく、ゲームの中で俺たち5人は同じ国の仲間だ。みんなでプレーする以上、連携が欠かせない。腕を組みながらメンバーを見回していた萩原先輩が、まとめるようにして言った。「とり
last updateLast Updated : 2025-08-03
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6.チーム解消の危機?
放課後の部活。いつものミーティングスペースで、部長と先輩が言い争っていた。「だから言っただろ!? こいつとやるのは無理だって」「無理とは言ってなかっただろ。それに、たかが1週間で諦めるのか?」「そういうわけじゃないけど……予選はもう2か月後だ。無駄なことに費やしてる時間なんてないだろ」「そう言って、今までにお前のパートナーを何人クビにしたよ!? そっちの時間の方が無駄だったんじゃないのか」部長のその言葉に、先輩は見慣れたふくれっ面で黙り込んでいる。部長はテーブルに置かれたペットボトルのお茶を一口飲んで、ため息をついた。「犬桜高校との練習試合……客観的に見た感想を言わせてもらうけど、小神野は神谷の動きを少しも気にしてないし、神谷はそんな小神野の動きに戸惑ってるように見えた」小神野先輩は本当のことを言われたのが気に食わなかったらしく、黙ったまま校舎前の銅像みたいに動かなくなってしまった。先輩はその見た目から勝手に省エネのダウナー系だと思っていたけれど、どうやら意外と感情的らしい。いつも気分が乱高下しているので、遊園地のフリーフォールでも見ているみたいだ。部長の言った、俺が先輩の動きに戸惑っているっていうのは本当の話だった。俺は素直にうなずいて言う。「先輩の動きは正直、今まで一緒にやってきたどのプレーヤーよりも読めない感じがします。セオリーなら右から行くだろってところを、左から攻めに行く。予測不能だし、合わせにくいです」「……お前、敵の動きはちゃんと読めるのにな?」「うっ」「ふたりとも、上手いんだから、お互いのことをもうちょっとよく見られないのか?」「……前のパートナーは、俺の動きに合わせてくれた」先輩はようやく口を開いたかと思ったら、不満げにそう言った。「それは、相手が先輩だったからだろ。今は小神野が先輩なんだから、お前が神谷に合わせてやれよ」「……何だよ、そのわけのわかんない理屈。神谷が俺に合わせればいいだけの話だろ」「お前なぁ……」部長はたまらず、頭をばりばりと掻いていた。その
last updateLast Updated : 2025-08-04
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7.小神野悠馬の気持ち(悠馬side)
うちの部活に、天才がやってきた。俺が高校2年のとき、一度だけオンラインで対戦したことのある相手だ。その日は家でたまたまゲームをしていて、同じランクだったそいつと偶然マッチした。敵のチームに振り分けられた、ioriというアカウント。『ルーク』と呼ばれる攻守のバランスの取れたキャラクターで戦場を走るそいつが、とにかく凄かった。俺のやっている『ゼロ・グラウンド』というゲームはFPSであるのと同時に戦略ストラテジーの要素もあるゲームだ。どの拠点を先に落とすか、自由に使えるモブの兵士をどこに配置するか、相手の作戦に合わせてこちらの攻撃をどう変えていくか……。ioriは戦略ストラテジーにおける天才で、頭の中にスーパーコンピューターでも入ってんのかってくらい先読みが上手かった。きっと、こいつの性格は最悪だろう。そう思うほど、「このタイミングでされたら嫌だな」と思うことを的確にしてくるような奴だった。(こんなプレーヤー、初めて見たな……)自分もeスポーツの有名な高校で日々練習をしていて、在学中にプロになるのが目標だったりするが、こんな奴はプロの世界でも見たことがない。拠点制圧の順番、モブ兵士の配置、キャラクターの固有アビリティの使い方……。すべてにおいて「そんなやり方があるのか」と驚いたし、感心させられる自分がいた。(誰だ、こいつ……)そう考えながら、劣勢になってしまったこの状況をどう覆そうか思案する。とりあえず、ルークに奪われた脱落済みチームの拠点を素早く取り戻して、自陣の基地へと戻った。ショットガンを抱えたそいつが、仲間とともに占領ポイントを狙っている。あやうく、本拠地を取られるところだった……。俺は地上からは見えにくい給水塔に登って、ioriとその仲間を撃つ。そいつは撃たれてからも俺のことをショットガンでずっと狙っていて――最後の一瞬までこの試合を諦めようとはしなかった。(なんとか勝ったな……)そう思
last updateLast Updated : 2025-08-05
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8.初めての共同生活
先輩の部屋にはゼログラの遊べるゲーム機があって、練習にはそれを使うことにした。初日。部屋に着いてコンビニで軽く夕飯を済ませた俺たちは、さっそく夜の練習を開始した。(……変なの)先輩の様子が、少し変だった。具体的には、学校の廊下で俺が先輩にキスしてから。ゲームをしていても、いつもはギャンギャンとうるさく噛みついてくる感じがあるのに、今日は妙に大人しい。「こういう場面では、後方で俺のフォローに回って」「地雷置くとき、声かけマストな」指摘の仕方にも、いつもよりトゲがない……。(これはこれで、調子狂うかも?)怒っていない先輩は、先輩らしくないような気がした。それでも……元気がないとか、具合が悪いというわけではなさそうだ。(本当に、キスしてからなんだよな……)妙に静かで、たまにじっとこちらを見ているときがある。(さすがに、やり過ぎたか?)考えつつも、手を動かす。無事にすべての拠点が制圧され、このゲームは俺らの勝利となった。気づけば練習を始めてから4時間近くが経っていて……。明日も学校だし、そろそろ寝ようということになった。「神谷、シャワーは?」「朝に借りるんでいいです。……あ、スウェット忘れた。まぁ、いっか。寝るだけだし」「……パジャマ?」「あ、はい。でも、下着はあるんで大丈夫です」もう春だし、そこまでたくさん着なくても大丈夫だろう。そう思っていると、シャワーを浴びようとしていた先輩がクローゼットに戻って、中をごそごそと探り始めた。「……パンツだけで寝るとか、ないから。これ着て。フリーサイズ」先輩はそう言うなり、薄手のスウェットの上下をこっちに放り投げてくれる。「あ、ありがとうございます」お礼を言うと、「べつに」と風呂場の方に消えていってしまった。(なんか……優しい!!?)今回は俺が勝手に家に押しかけて来たわけで……チームのためとはいえ、先輩に強く当たられても仕方ないかな、と思
last updateLast Updated : 2025-08-06
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9.スキル【家事】
朝起きて身支度を整え、先輩と一緒に学校まで行く。授業が終わった、放課後。いつもなら部活に出ている時間だったけれど、今はそろって出禁にされている状態だ。俺たちはいったん先輩の部屋に戻り、なんとかチームで練習できないかと苦心していた。他の先輩方にSNSのグループチャットでメッセージを送り、オンラインで参加させてもらえないかとお願いをする。『いや、無理だろ。部長に見つかったら出禁にした意味ないって言われるし』『それに、ふたりともまだ同士討ちの最中なんじゃない?w』『とりあえず、それ直してから参加した方がいいだろうな。攻撃チームの連携が取れてないうちは5人でやったって仕方ないだろ』『それなー。しばらくはふたりのチームでよろ』『寂しかったら、いつでも連絡してきていいからね☆』律先輩から陽気なスタンプが送られてきて、会話は終わった。「クソっ……!」先輩は机を悔しげに叩いて、スマホを放り投げていた。「仕方ないですよ。しばらくはふたりでやりましょう」「復帰したら、あいつら全員背中から撃ち抜いてやる……」「それやったら、また出禁になりますって」血の気の多い先輩をなだめつつ、諦めてふたりで練習を始める。たっぷり3時間。なるべく声をかけ合うように気をつけていたら、相手を背中から撃つようなフレンドリーファイアは3回に1回くらいまで減った気がした。「そろそろ……腹減らない?」先輩が聞いたとたん、俺のお腹の鳴る音が響いた。「減りましたね」「じゃ、買いに行くか」「……もしかして、先輩っていつもコンビニのご飯食べてるんですか?」「……? そうだけど」まじか。たしかに、キッチンには一通り調理器具があるけど、シンクはぴかぴかだったっけ。ひとり暮らしで毎食コンビニのご飯となると、栄養的にも偏りそうだ
last updateLast Updated : 2025-08-07
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