LOGIN「「よろしくお願いしますっ!!」」
高校に入学してすぐ、俺は同じゲーム好きで意気投合したクラスメイトの野田翔平とeスポーツ部に入部届けを出しに行った。
私立新葉高校。都内にあり、eスポーツの全国大会では常に上位のランキングに入るような有名な高校だ。環境が整っていて、部員の数こそ多くはないが、毎年のようにプロのプレーヤーを輩出している。
顧問の先生が部室まで案内してくれ、俺たちは早速、入部のための簡単なテストを受けることになった。
「俺は3年で部長の笹原拓海、よろしくね。……ああ、あんまり気負わなくていいよ。テストって言っても、やりたいゲームのタイトルができるかどうか見るだけだから」
笹原部長は気さくなタイプみたいで、黒縁眼鏡の奥で目尻を下げながら笑っていた。
「えっと、神谷がゼロ・グラウンド。野田はバトルソウル……格ゲーだね」
「はいっ」
「りょーかい。あっ、オカノ~! ゼログラのプレーヤー来たから一緒に見てよ」
オカノと呼ばれた人が、奥の席から億劫そうにやってくる。近くまで来て、その綺麗さに驚いた。どこか西洋の血でも混じっているんだろう、色素の薄い肌にグレーがかった瞳。地毛か染めているかもわからないシルバーのアッシュがよく似合っていて、ゲームの邪魔になるのかヘアゴムで適当に括っていた。
俺もよく「サッカー部?」って聞かれるし、幼なじみの女子からは「ゲームなんかさせておくのはもったいない」と言われがちな見た目だが(顔とスタイルはモデル級……らしい)、目の前のオカノも相当だと思う。全体的にやる気がなさそうな、いわゆるダウナーっぽい感じのする中性的な美人だ。
彼(彼女?)はしばらく俺の方を見上げていたけれど、やがてひと言「……めんどくせ」と呟いた。
あ、うん……。喋るまで女の子の可能性がないでもなかったが、これは完全に男だ。あと、性格はあんまり良くなさそう。
「お前が見せろって言ったんだろー? ふたりとも、こいつはうちの副部長の小神野悠馬(おかの ゆうま)。うちのエースで、夏の大会が終わったらプロチームとの契約が決まってるんだ」
「……それ、まだ決まってない」
「へ? お前、カシラゲームズから声がかかってるって……」
「今、違うところからも声かかってるから」
まだ現役の高校生なのに複数のチームから声をかけられている、なんて。
(そんなに強いんだろうか……)
ゼログラに関しては配信や切り抜きもたくさん見ているけど、小神野悠馬という名前は聞いたことがない。
自分のことより、先輩がプレーしているところを早く見てみたいと思いながらも、俺は案内された席に座って自分のアカウントにログインした。ふたりに見られながら、同じランクのプレーヤーとマッチしてゲームを始める。
「これは……なかなか、いいんじゃない?」
部長のそんな言葉に、部屋にいた部員たちがわらわらと集まってきた。
「うわ、すっげー。グランドマスターって上から2番目のランクじゃん」
「小神野先輩もこの前までいたよな」
「今はレジェンドだろ」
「このキャラ、こんな風にも使えるんだね」
「なっ。このルートで移動する奴、初めて見た。先読みもやばい」
俺は『ルーク』という色んな罠を設置できるタイプのキャラクターを使い、敵の拠点を確実に落としていった。後ろで観戦している先輩方は盛り上がってくれていたけれど、小神野先輩だけは妙に静かだ。
俺のいる部隊がすべての拠点を占拠して、ゲームが終わる。部長は隣で「いいねぇ」と手を叩いていた。
「この実力なら、小神野のチームに入れてもいいと思うんだけど、みんなどう思う?」
「俺はいいと思う。律もいいだろ?」
「うん。玲がいいなら、俺もOK」
「椎名兄弟と俺……エースの防衛部隊3人は、みんな賛成だよ。あとは小神野次第かな」
今の会話で、何となく話が見えてきた。副部長のチームはメンバーがひとり足りてなくて、敵拠点を制圧する係が小神野先輩、自陣の防衛に回っているのが椎名律先輩、椎名玲先輩ともうひとりの(いい人そうな)先輩の3人……。
(ていうか、俺、いきなり副部長のチームに入れられるのかよ……)
強いチームに入れるのは嬉しかったが、せっかく部活をやるなら一緒にいて楽しそうなメンバーと青春がしたい。小神野先輩はビジュアルだけはいいけれど、ツンツンしていて性格にも難がありそうだった。腕を組んでこっちを見ていた先輩は、渋い顔を崩さないまま言う。
「俺、雑魚とは組みたくないんだよね」
はい、出たよ毒舌。
今のゲーム、言うほど悪くなかったと思うんだけどな……。
「悪くなかっただろ、今の」
部長がそう反論してくれたけれど、返ってきたのはどこまでも深いため息で。
「いや、まずエイムがブレすぎてて雑魚。判断遅いし、2つ目の拠点取るのに時間使いすぎ」
エイムとは、銃など武器の照準を合わせる技術のことだ。照準がブレてしまえば、敵に攻撃は当たらない。ゲームによってはかなりの練習が必要で、俺だってそこそこの腕は持っているはずだった。だからこそ、このゲームの高ランク帯にいるわけだし……。
(たしかに、苦手意識はあるけどさぁ……)
指摘が間違っていないのが、余計に腹立たしかった。
「俺なら、もっと上手くやれる」
先輩はそう言って、奥の席に戻っていく。
(自分のプレーを見せてくれるんだろうか……?)
そう思って後ろをついて行くと、彼が自身のアカウントにログインするのが見えた。
アカウント名:okaP
「う、嘘だろっ……!?」
思わず叫んでしまった。
(どうして、あのokaPがここに……!?)
たしかにプロに近いプレーヤーだと思ったし、心の中ではライバル認定していたから、彼の試合はずっとチェックしてた。
でも、プレースタイルを見る限り、彼はもっとまっすぐな奴だったはずだ。リスクのある高機動型のキャラを使って、ひとりでも敵陣に突っ込んでいく。どんな場面でも前に進んでいく姿を、『カッコいい』とさえ思っていたのに……。
(まさか、こんな嫌味な奴だったとは……)
戦場を縦横無尽に駆け巡る……先輩はたしかにokaPそのものだった。エイムも完璧で、相手は先輩の姿を見た瞬間にはすでに撃たれていると感じるんだろう。彼はイヤホンとヘッドセットを外すと、「……わかった?」と俺に聞いた。
「二週間くらいしっかり練習して、このくらいエイムが上手くなったらチームに入れてやらないこともないけど」
「……俺、先輩と組むの嫌です」
「は?」
「同じチームで、仲間になりたいわけじゃない」
okaPは俺のライバルだ。いつか倒すべき相手。
あからさまにむっとする小神野先輩に、俺はさらに余計なひと言をつけ足した。
「先輩、美人だけど性格悪そうだし」
「……っ!!!」
「おい、神谷っ! それ言ったら……!!」
部長が止めたときにはもう遅く――俺は気づけば胸倉をつかまれ、殴られ、床に引きずり倒されていた。
どうやら、先輩は本人も高機動型らしい。
馬乗りになられたが、そのまま殴られるのも癪だったので、俺も先輩の制服をつかんでマウントを取り返す。そのまま、取っ組み合いのケンカに発展した。
後に知った話だが、『美人』は先輩に使ってはいけない言葉のTier1だったらしく、俺を殴る彼の顔が真っ赤だった理由もよくわかった。
入部初日にケンカした俺の噂はまたたく間に広まり、裏では『レジェンド(いろんな意味で)』というあだ名がついた……らしい。
その日は律の店に集まった後、みんなでご飯に行って夜まで遊んだ。別れるときに、チャットのグループをひとつ作った。『新葉高校eスポーツ部』。次に全員で集まれる日がいつになるかはわからないけれど……「またみんなでゲームでもやろう!」という話になった。久々に楽しい集まりだったな、と思う。律と家に帰る途中。ずっとくだらない話ばかりしていたけれど、ふと小神野と神谷――あのふたりの話になって。「久々に会ったけどさ、ぜんぜん変わってなかったね! オカピ先輩といおりん。居酒屋でもずっとケンカしててさぁ……」「あれは、過去一でくだらない争いだったな」前の試合、スナイパーを使って弾を外した神谷に「なんで当てられなかったんだ?」と小神野が素朴な疑問をぶつけたのが始まりだった。次第に言い合いがエスカレートしていった結果、ついにふたりはシュウマイにからしをつけるかどうかでケンカしていた。もう、何でもいいんだろ、それ……。「お酒飲んでたってのもあるかもしれないけどさぁ、まじで笑ったよね」「面白かったな。あれで一緒に住んでるっていうんだから、不思議っていうか」「あれ……玲は気づいてなかった? ふたりの指に、お揃いのリングがあったの」「へっ?」自分の理解の及ばない話に、俺は宇宙空間にいる猫みたいになっていたんだと思う。律が俺の顔を指差して、腹を抱える。「薬指だったから、きっとそういう意味なんじゃないかな」「そういう意味って……えっ、お前まじで言ってる?」「うん。前に一度、配信でも事故ってたからさぁ。指輪つけたままにしちゃって、噂流れてたから知ってはいたんだけど」「まじか……俺、あのふたりが、いちばん仲悪いと思ってたわ……」「不思議だよねぇ。言い合いばっかりしてるくせに、いつも一緒にいるっていうか」律の言葉に、俺はあのふたりのことをもう一度よく思い出してみる。いつからだろう、と思ったが……さっぱりわからなかった。たしかに、ふたりで一緒にいることは多か
「めっっっっちゃびっくりしたね!! まさかオカピ先輩といおりんが野良でやってるとは思わなかった」「だな。サブアカウントはソロでやってて、昨日はたまたまふたりだった、とか……偶然が過ぎるよな」「久々にみんなでできて、楽しかったよねぇ~」俺の部屋。律がジュースを片手に興奮気味に話している。「今度、うちのバイト先にもおいでよってふたりに話してたんだ」「バイト先って……例のeスポーツカフェ?」「そうそう! 店長も現役の選手が来るのは歓迎だって。ふたりが来てくれるなら、イベントでもやりたいよねって話してて」律は大学に通いながら、大学近くにあるeスポーツカフェでずっとアルバイトをしている。カフェが併設されたeスポーツ施設とのことで、ゲーム用のPCがたくさんあり、初めての人でも気軽にオンラインゲームを体験できるらしい。俺もいつも話を聞くだけで、行ったことはなかったから……あのふたりが来るなら顔を出してみてもいいかもしれない、とそう思った。「ふたりとも、いつ来れそうなの?」「来週の日曜日!」「そっか……。じゃ、俺も行こうかな」「まじ!!? 玲も来てくれるの嬉しいんだけど」「そんなに喜ぶことかよ」「ずっと誘ってたのに、来てくれなかったじゃん!!! 当日は萩っちも来るし、笹原部長も来るってさ」「部長も来んの!!?」「彼女ができたから、連れて一緒に来るらしい」「あいつ、彼女できたの!!?」自分でもちょっと思ったけれど、律に「驚くところ、そこ?」と大笑いされた。あの規律にうるさ……厳しい笹原と恋愛なんて、いちばん縁遠いものだと思ってたのに。真面目な性格ではあったから、部内のことに胃を痛めているイメージしかない。「当日、楽しみだね!」そう言って笑う律に、俺は小さくうなずいた。◇◆◇◆◇◆◇大学とインターン先の会社と家、三か所をぐるぐる回っていると翌週の日曜はあっという間にやってきて――。秋晴れ
友達が有名人っていうのは、何だかこう、不思議な感じがする。高校にいるときは、ゲームこそ上手いけれど、ただの部活の仲間って感じで。そいつらを、各種メディアやネットニュースで見る日が来るなんて思ってもみなかった。夏の残暑も落ち着いてきた頃。大学で就活の情報をまとめて家に帰ると、弟・律のにぎやかな声に迎えられた。「ねぇ、玲~!! カシラゲームズ、アジアカップ3位だって!!! もう速報見た?」「まだ。……って、お前もう帰ってたんだ?」「うん。今日はバイト早上がり~。配信見損ねちゃったからさぁー、アーカイブまだ残ってるかな?」「さぁ……どうだろうな?」律は、子どもの頃からゲームで遊ぶのが大好きだ。どちらかというと自分でプレーするのが好きで、誰かのプレーを見るのが好きなタイプではなかったけれど……高校時代の仲間がプロの世界に入ってからは、配信で試合を見たり、チームの情報をこまめに追ったりしているようだった。たまに、小神野や神谷の配信を見に行っては、コメントを残したりしているとか。「あ、そういえば萩っちから連絡来てたよ。『週末、たまにみんなでゼログラやんない?』って」「俊、あいつ今何してんの?」「さぁ……大学とバイトじゃない? 個別塾の先生やってるって言ってたけど」「就職どうすんだろ?」「聞いてみたらいいじゃん」大学4年の今、ありきたりな悩みだけれど、俺は就職先に頭を悩ませていて……。インターンでお世話になっている会社はあるけれど、そこに就職するか、別のところに行くか……。色んな人に話を聞いた上で、今後の進路を決めようと思っていた。「みんなでゼログラやるのさぁ、土曜の夜とかでいい?」律はスマホを片手に、棚からポテトチップスを取り出している。「いいけど」「新マップやってみよ! って話になってんだよねー」楽しげに言うこいつは、高校の頃からちっとも変わってない。悩みもなさそうだし、明るくて、常に人生楽しそうって感じ。…
配信のことで伊織に嫉妬されたあの日は――結局、チームの練習が始まるまでめちゃくちゃにされた。練習が終わった後。ふたりで短い配信をした俺たちは、一緒に住んでることをみんなの前で明らかにした。俺はファンの子たちから『だと思った』『デレデレしてるね』なんて、とんでもなくからかわれることになったけど……俺たちはカシラゲームズの同居組と名づけられ、新たに一定のファンを獲得した。そのうち、俺たちのやりとりは色んな意味で注目を集めるようになって――。久々にチーム5人で練習配信をしたときには、何だか懐かしい気持ちになった。「伊織。工業団地攻めるのに挟み撃ちにするから、給水塔の上に場所取って」「……は? サイレンなのに?」「サイレンでもヴァイパーでも給水塔の上が強いのは一緒だから」「ていうか、アップデート入ってからは向かいの建物の方が強くね?」「おー。やるなら、後で表出な」「望むところ」「いや、その議論は今いらんて……」「始まったよ、同居組の『どっちのポジションが強いかバトル』」防衛隊のノヴァ、ゼノふたりが呆れたように呟いている。コメント欄を見ると『またプロレスかw』と視聴者たちが盛り上がっていた。ハルさんがスナイパーで敵をひとり撃破して、「あとは頼んだっ!」と俺たちに向けて発信する。「伊織っ!! さっさとドローン出せって!!!」「出したからもう!!! 車の陰にひとりいるんだよっ!!!」「それ、今殺ったから!!!」「え、倒したの俺じゃない?? 悠馬より俺の方が強いし」「お前、本気で言ってんのそれ」「仕事は早いんだけど、うるさいんだわ……まじで……」ハルさんが呆れたように言って、敵の消えたフラッグのエリアに乗り込んでくる。配信を見ている人たちも『うるさい』『本当にそれw』と便乗していた。同じチームでプレーするようになって、そろそろ1年が経つ。こうしてプロの世界でプレーするようになっても、俺たちが仲間になると賑やかなのは
伊織と同じ部屋に住むことになった。特に、何か大きなきっかけがあったわけじゃない。話を切り出されたのは、ある日突然って感じだった。「前にした約束って、憶えてる?」「そろそろ……一緒に住まない?」ちょうど、カシラゲームズに移籍して半年が経った頃だった。そう言われた俺がどれだけ嬉しかったかなんて……伊織には絶対にわからないだろう。高校のとき。合鍵を断ったあいつが言い放った言葉を、俺はずっと忘れられずにいた。『先輩より多くの賞金稼いで……先輩を俺の家に住まわせるので』。稼ぐ賞金の額で伊織に負けるつもりなんて、さらさらない。だけど、「いつかそうなったら嬉しいな」という気持ちだけは持ち続けていて――。『一緒に俺の家に住んでよ』なんて言われた日には心臓が止まるかと思ったし、その日の夜は嬉しすぎて一睡もできなかった。我ながら単純だとは思う。それでも、俺にとっては心の底から嬉しい出来事だった。好きな奴と四六時中、一緒にいることができる――。そのふわふわとした幸せは、新居に移ってからもずっと続いているようで。ゼログラのワールドチャンピオンシリーズ、ZGWSプロリーグ予選が春に始まり、昨日の夜はその振り返り配信を個人でしていた。雑談も交えて話していたとき、視聴者のひとりが急に変なことを書き込んできた。●引っ越してからyuma、ずっと何か嬉しそうだよねそんなコメントが目に留まったけれど、普通にスルーしようと思っていた。それなのに――。●それな●機嫌がいい気がする●すぐ怒んなくなったよね●幸せそう●何かいいことでもあった?●口元ゆるんでるぞみんなその話題に触れたかったらしく……何故か盛り上がるコメント欄。「べつに……そんなことないけど」否定したにもかかわらず、流れるコメントは止まることがなくて――。●ひとり暮らし?
「うわっ……これ、PCの配線やばすぎね?」「2台分だもんなぁ。繋ぐだけならいいけど……掃除できんのかな、これ」「って、なんかインターホン鳴ってない?」「鳴ってる! ソファー届いたかも」引っ越しは、世界大会の予選が終わった5月の連休にした。その日は朝から慌ただしくて……午前中から悠馬の荷物の運び込み、午後からは俺の荷物と家具が届くようなスケジュールだ。「悠馬、ソファーってここでいい?」「もうちょい手前~」業者の人にお礼を言って、設置までしてもらう。まだ何もないリビングだけど、テーブルとソファーが揃えば何だかそれっぽくなるから不思議だった。「こうやって見ると、テレビも欲しくなるかも」「でっかい画面でゲームやるのも楽しそうだよなー。映画とか観るのもいいし」「悠馬も映画とか観るんだ」「そりゃあ、見るよ。アニメも観るし」「ちょっと意外かも。一緒にいるとき、観てたこととかなかったから」「たしかに、伊織といるときは話したり、ゲームしてたりすることの方が多かったかも……」「じゃあ、新しいの買ったら、一緒に観る?」「いいね。注文しよ」ネットで良さそうなテレビとテレビ台を見つけた悠馬が、さっそくスマホで情報を送ってくる。新居の入居にかかる費用と引っ越しの費用、家具の購入にかかった費用……。銀行の預金残高を思い浮かべつつ、ざっと計算しようとしたけれど――途中から具合が悪くなってきたので、やめることにした。(使った分は、また頑張って稼げばいいわけだし……)そう言い聞かせて、ゲーム部屋の作業に戻る。部屋に入ると、悠馬が待っていて「こっちこっち」と手で招かれた。PCの電源がついていて、配信で使うカメラがオンになっている。「配信用の画面、今のところこんな感じなんだけど……。ドアとドアノブが映ると、家がバレる気がしない?」「うわっ、たしかにそうかも……!」盲点だった。