Home / BL / 神ゲーマーふたりは今日もオンライン / 2.私立新葉高校eスポーツ部

Share

2.私立新葉高校eスポーツ部

last update Last Updated: 2025-07-22 15:57:06

「「よろしくお願いしますっ!!」」

高校に入学してすぐ、俺は同じゲーム好きで意気投合したクラスメイトの野田翔平とeスポーツ部に入部届けを出しに行った。

私立新葉高校。都内にあり、eスポーツの全国大会では常に上位のランキングに入るような有名な高校だ。環境が整っていて、部員の数こそ多くはないが、毎年のようにプロのプレーヤーを輩出している。

顧問の先生が部室まで案内してくれ、俺たちは早速、入部のための簡単なテストを受けることになった。

「俺は3年で部長の笹原拓海、よろしくね。……ああ、あんまり気負わなくていいよ。テストって言っても、やりたいゲームのタイトルができるかどうか見るだけだから」

笹原部長は気さくなタイプみたいで、黒縁眼鏡の奥で目尻を下げながら笑っていた。

「えっと、神谷がゼロ・グラウンド。野田はバトルソウル……格ゲーだね」

「はいっ」

「りょーかい。あっ、オカノ~! ゼログラのプレーヤー来たから一緒に見てよ」

オカノと呼ばれた人が、奥の席から億劫そうにやってくる。近くまで来て、その綺麗さに驚いた。どこか西洋の血でも混じっているんだろう、色素の薄い肌にグレーがかった瞳。地毛か染めているかもわからないシルバーのアッシュがよく似合っていて、ゲームの邪魔になるのかヘアゴムで適当に括っていた。

俺もよく「サッカー部?」って聞かれるし、幼なじみの女子からは「ゲームなんかさせておくのはもったいない」と言われがちな見た目だが(顔とスタイルはモデル級……らしい)、目の前のオカノも相当だと思う。全体的にやる気がなさそうな、いわゆるダウナーっぽい感じのする中性的な美人だ。

彼(彼女?)はしばらく俺の方を見上げていたけれど、やがてひと言「……めんどくせ」と呟いた。

あ、うん……。喋るまで女の子の可能性がないでもなかったが、これは完全に男だ。あと、性格はあんまり良くなさそう。

「お前が見せろって言ったんだろー? ふたりとも、こいつはうちの副部長の小神野悠馬(おかの ゆうま)。うちのエースで、夏の大会が終わったらプロチームとの契約が決まってるんだ」

「……それ、まだ決まってない」

「へ? お前、カシラゲームズから声がかかってるって……」

「今、違うところからも声かかってるから」

まだ現役の高校生なのに複数のチームから声をかけられている、なんて。

(そんなに強いんだろうか……)

ゼログラに関しては配信や切り抜きもたくさん見ているけど、小神野悠馬という名前は聞いたことがない。

自分のことより、先輩がプレーしているところを早く見てみたいと思いながらも、俺は案内された席に座って自分のアカウントにログインした。ふたりに見られながら、同じランクのプレーヤーとマッチしてゲームを始める。

「これは……なかなか、いいんじゃない?」

部長のそんな言葉に、部屋にいた部員たちがわらわらと集まってきた。

「うわ、すっげー。グランドマスターって上から2番目のランクじゃん」

「小神野先輩もこの前までいたよな」

「今はレジェンドだろ」

「このキャラ、こんな風にも使えるんだね」

「なっ。このルートで移動する奴、初めて見た。先読みもやばい」

俺は『ルーク』という色んな罠を設置できるタイプのキャラクターを使い、敵の拠点を確実に落としていった。後ろで観戦している先輩方は盛り上がってくれていたけれど、小神野先輩だけは妙に静かだ。

俺のいる部隊がすべての拠点を占拠して、ゲームが終わる。部長は隣で「いいねぇ」と手を叩いていた。

「この実力なら、小神野のチームに入れてもいいと思うんだけど、みんなどう思う?」

「俺はいいと思う。律もいいだろ?」

「うん。玲がいいなら、俺もOK」

「椎名兄弟と俺……エースの防衛部隊3人は、みんな賛成だよ。あとは小神野次第かな」

今の会話で、何となく話が見えてきた。副部長のチームはメンバーがひとり足りてなくて、敵拠点を制圧する係が小神野先輩、自陣の防衛に回っているのが椎名律先輩、椎名玲先輩ともうひとりの(いい人そうな)先輩の3人……。

(ていうか、俺、いきなり副部長のチームに入れられるのかよ……)

強いチームに入れるのは嬉しかったが、せっかく部活をやるなら一緒にいて楽しそうなメンバーと青春がしたい。小神野先輩はビジュアルだけはいいけれど、ツンツンしていて性格にも難がありそうだった。腕を組んでこっちを見ていた先輩は、渋い顔を崩さないまま言う。

「俺、雑魚とは組みたくないんだよね」

はい、出たよ毒舌。

今のゲーム、言うほど悪くなかったと思うんだけどな……。

「悪くなかっただろ、今の」

部長がそう反論してくれたけれど、返ってきたのはどこまでも深いため息で。

「いや、まずエイムがブレすぎてて雑魚。判断遅いし、2つ目の拠点取るのに時間使いすぎ」

エイムとは、銃など武器の照準を合わせる技術のことだ。照準がブレてしまえば、敵に攻撃は当たらない。ゲームによってはかなりの練習が必要で、俺だってそこそこの腕は持っているはずだった。だからこそ、このゲームの高ランク帯にいるわけだし……。

(たしかに、苦手意識はあるけどさぁ……)

指摘が間違っていないのが、余計に腹立たしかった。

「俺なら、もっと上手くやれる」

先輩はそう言って、奥の席に戻っていく。

(自分のプレーを見せてくれるんだろうか……?)

そう思って後ろをついて行くと、彼が自身のアカウントにログインするのが見えた。

アカウント名:okaP

「う、嘘だろっ……!?」

思わず叫んでしまった。

(どうして、あのokaPがここに……!?)

たしかにプロに近いプレーヤーだと思ったし、心の中ではライバル認定していたから、彼の試合はずっとチェックしてた。

でも、プレースタイルを見る限り、彼はもっとまっすぐな奴だったはずだ。リスクのある高機動型のキャラを使って、ひとりでも敵陣に突っ込んでいく。どんな場面でも前に進んでいく姿を、『カッコいい』とさえ思っていたのに……。

(まさか、こんな嫌味な奴だったとは……)

戦場を縦横無尽に駆け巡る……先輩はたしかにokaPそのものだった。エイムも完璧で、相手は先輩の姿を見た瞬間にはすでに撃たれていると感じるんだろう。彼はイヤホンとヘッドセットを外すと、「……わかった?」と俺に聞いた。

「二週間くらいしっかり練習して、このくらいエイムが上手くなったらチームに入れてやらないこともないけど」

「……俺、先輩と組むの嫌です」

「は?」

「同じチームで、仲間になりたいわけじゃない」

okaPは俺のライバルだ。いつか倒すべき相手。

あからさまにむっとする小神野先輩に、俺はさらに余計なひと言をつけ足した。

「先輩、美人だけど性格悪そうだし」

「……っ!!!」

「おい、神谷っ! それ言ったら……!!」

部長が止めたときにはもう遅く――俺は気づけば胸倉をつかまれ、殴られ、床に引きずり倒されていた。

どうやら、先輩は本人も高機動型らしい。

馬乗りになられたが、そのまま殴られるのも癪だったので、俺も先輩の制服をつかんでマウントを取り返す。そのまま、取っ組み合いのケンカに発展した。

後に知った話だが、『美人』は先輩に使ってはいけない言葉のTier1だったらしく、俺を殴る彼の顔が真っ赤だった理由もよくわかった。

入部初日にケンカした俺の噂はまたたく間に広まり、裏では『レジェンド(いろんな意味で)』というあだ名がついた……らしい。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   【社会人編】12.俺たちの『これから』

    取材やメディア向けの対応に追われながらも、翌日にはロサンゼルスをあとにして日本へと戻った。チームの仲間と別れた後、こっそり悠馬と合流して部屋へと向かう。半年ぶりに来た悠馬の部屋は、以前よりもさらにチームカラーのグッズが増えたような気がした。「はぁ……やっと着いたぁ」「長かったよな、フライト。11時間だっけ」「映画、何本観たかわかんないかも」「俺はずっとゲームやってたよ」「ああ……携帯ゲーム機、持って行ってましたもんね」「それじゃなくて。機内モニターについてた、怒った鳥をパチンコ玉みたいに飛ばして敵倒してくやつ」「そっちか……」「意外とハマるんだよな、あれ」行きも帰りも、ずっとやっていたらしい。悠馬がパズル系のゲームをやってるイメージがなかったから少し意外だったけど、真剣になって鳥をスリングショットで飛ばしている姿を想像すると、ちょっとかわいいような気もする。「取材とかは、もういいの?」緩めのスウェットに着替えた悠馬が、冷蔵庫の牛乳の賞味期限を確かめながら聞いた。「うーん……直近のものはなさそう、かな。SNSの更新も済んだし」「じゃあ、明日まではとりあえず休みなんだ」「うん。あとは、ミーティングがあるくらい。金曜からは普通に練習」「そっか。……まぁ、俺も似たような感じかな」着替えてベッドの上に陣取る。スマホの通知を確認していると、チームのチャットに連絡があったことに気がついた。「ごめん、悠馬。……これからミーティングやるっぽい」「あー……いいよ。じゃあ、ちょっと静かにしとくわ」「ありがと」俺は礼を言ってからスマホを操作し、専用のアプリを立ち上げる。チームのオーナーも入ってのミーティングだ。もしかすると、チャン

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   【社会人編】11.隣に並びたくて(悠馬side)

    ゼログラの天才・神谷伊織は本当に身勝手な奴だと思う。俺が高校3年のとき。プロチームへの所属が決まり、もう部活では会えなくなるからと勇気を出して合鍵を渡したら、思いっきり突き返された。理由は「俺だってすぐプロの世界に行くし」みたいな、よくわからないもの。その上、「俺の方が賞金を稼いで、先輩を俺の家に住まわせる」なんてプライドの高そうなことを豪語して、ついには俺の前に姿を見せなくなってしまった。1年以上経った頃に札幌で再会はしたけれど、練習が忙しいのか連絡はたまに来るくらい。向こうが卒業式の日。ようやく部屋にやって来て、久しぶりにキスをした。卒業旅行という名目で温泉にも泊まり、「ああ、これからはこんな風にたまに会えたりするのかな……」なんて思っていたら、『俺はもう、しばらく先輩には会いません』。なんて身勝手な奴だろう、と思った。だけど、そんな身勝手な奴が好きで好きで仕方ない……俺が悪いだけの話なのかもしれない。神谷伊織を――こんな身勝手な後輩を、うっかり好きになってしまったから。結局、「先輩には会わない」なんて言っていたくせに、遠征先のロサンゼルスのホテルには出没するし、こっちの話を遮っていきなり宣戦布告とかしてくるし……。そんな奴に心を乱されて、試合のときにトリガーを引くのが一瞬の遅れたこともまた、途方もなく悔しかった。部屋に戻ってちょっとだけ泣いたら、その泣き顔も見られて……最悪だ。その後、ベッドの上で散々いじわるをされて、また泣かされた。(こんなことされても……まだ好きなのか)目が覚めて、まず最初に呆れがくる。朝日が射し込むホテルの部屋。広いベッド、ぐしゃぐしゃになったシーツの上で俺はまるで抱き枕みたいに伊織の腕の中におさまっていた。無理な態勢もあったから身体はあちこち痛いし、痕だらけだし、喘がされたせいで声は枯れてるし……。伊織が目を開けたので、俺は寝返りを打つようにしてふい、と背中を向けた。「……んー……」まだ寝ぼけてるのか、後ろから強く抱きしめられる。心臓がうるさかった。シャワーを浴びようとベッドを抜け出すと、腰が抜けて床にへたり込んでしまう。気づいた伊織が、ベッドを降りてこっちに近づいてきた。「ごめん……色々しすぎた」「……っ! べつにっ」強がってみるものの力は抜けたままで――俺は伊織に横抱きにされて、シャワー

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   【社会人編】10.神谷伊織の本性

    部屋はひと言で表すと荒れていて、服や書類など雑多なものがあたりに散らばっていた。机の上に倒れているジュースの缶はよく見るとアルコール飲料で、もしかしたら部屋に引きこもって飲んでいたのかもしれない、と思う。薄暗い部屋のテレビには携帯ゲーム機が接続されていて、プレー中のゼログラの画面が表示されていた。「練習、してたんですか?」「……ん」先輩は「そこ座って」と室内にあるひとり掛けのソファーを指す。「つき合えよ」「えっと、練習を……ですか?」「そう。お前を倒す練習がしたい」「べつに、いいですけど……」先輩は掠れた声で言うなり、俺に小さなコントローラーを押しつけてきた。そのまま対戦モードでプレーする。キャラクターの選択画面になり、俺は何となくヴァイパーを選んだ。先輩がルークを選び、旧マップで試合がスタートする。レジェンドランクの野良のプレーヤーはそこそこの強さがあり、味方との連携がいまひとつだと拠点を制圧するのも苦労する。港を本拠地にした先輩と、工業団地を本拠地にした俺が、それぞれ北と東の施設を攻め始めた。「今日のは……お前と最初に出会ったときの一戦に、よく似てた」コントローラーを操作していた先輩が、ぼそりと呟くように言う。どうやら、先輩も同じ印象を抱いていたらしかった。あの広い会場でも、全世界の配信でも……そう思っていたのが俺と先輩のふたりだけなんだと思ったら、胸の奥が熱くなる。「俺も……そう思いましたよ」「キャラクターは逆だったけどな」「結果も逆でしたけどね」いつもならこっちを睨んできそうなところなのに、先輩はモニターを見つめながら淡々と手を動かしていた。それぞれのチームが拠点をひとつずつ占領し、お互いに市街地の真ん中でぶつかり合う。激しい銃撃戦になり、仲間がひとり、またひとりと消えていった。最後に残ったのは――先輩と俺で。先輩の使うルークが、罠と壁を使って動ける範囲を狭め、俺のことをじりじりと追い詰めて

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   【社会人編】9.未来への切符と先輩の

    俺の読みはほぼ当たっていたらしく……北の施設に向かってしばらくすると、本拠地のフラッグ周辺は戦場になった。「イオリっ! この要塞基地を攻めて来ているのは、現状4人だ!」「小神野悠馬が来てる。ひどい銃撃戦で、そんなには持たないぞ」敵チームの攻撃を、ゼノさんが扱う鉄壁のブルワークを中心に何とかしのいでいるみたいだが……戦況はなかなか厳しそうだ。「俺が他の拠点を奪還するまで、耐えてください!」「了解、急げよっ!!」いつもはマイペースなノヴァさんの、余裕のなさそうな声が返ってきた。俺は機動力の高いヴァイパーで、北の地下施設までの道を急ぐ。火山のある山岳地帯。目立たない入り口から中へ入ると、奥にフラッグが見えてきた。俺たちの基地を攻めているのが4人ということは、あとひとりはこの堅牢な施設を守っているはずだ。周囲に警戒しつつ進んでいくと、銃弾が飛んでくる。ギリギリで避けて、銃撃戦に突入した。(……っ! さすがに強いな)敵の使っているキャラクターは守りに特化した、鉄壁と呼ばれるブルワーク。まともに弾を受ければ耐久力の差で負けることは必至だった。ただ、幸運なことに、この地下施設と操作キャラであるヴァイパーとの相性は――最高だ。俺は固有のアビリティで毒ガスを出すと、シールドが破壊されて弱った相手をライフルでハチの巣にした。「地下施設のフラッグ、取れましたっ!!」「ナイス! 他の空いた基地も、そのまま占領できるか?」「やってみます!! ……耐えられますか?」「カイがやられたけど、こっちもひとりキルしてるし、何とかするっ!!」「さっきからyumaの姿が見えない。もしかしたらそっちに行ってるかも……気をつけろよっ!」「わかりました!」うちの最強防衛チームふたりが、代わる代わ戦況を伝えてくれる。俺は西の港に走ってフラッグを取り、ついでに南の工業団地へと足を運んだ。(誰もいないはず、だけど……)さっきの忠告が胸をかすめ、ライフ

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   【社会人編】8.あの日を超えるために

    ゼログラは近年アップデートが頻繁に入るようになり、マップの種類も格段に増えた。ただ、今回の一戦は初期からあったいつものマップで、俺たちは運よく東の要塞基地を本拠地として引き当てた。クエーサーが工業団地、フェニックスフォースが港、そして……。(チームアリゲーターは北の地下施設か……。手ごわいな)火山帯のエリアにある地下施設は、本拠地として最も強固な砦だ。本拠地ガチャとしてはいちばんの当たり。司令塔のカイさんがイヤホン越しに俺たちに指示を出す。「ハルとイオリ、ふたりは南の工業団地へ。俺はチームアリゲーターの攻撃を警戒して防衛部隊とここに残る」「了解」「俺が先行します、ハルさん」「頼んだ」というハルさんの声を聞きながら、俺はクエーサーの本拠地へと走る。途中で手に入れたライフルのスコープをのぞくと、工業団地のフラッグが見えた。防衛部隊の数は2人だ。――いける。「俺がオトリになって、裏側から敵の部隊を引きつけます」「わかった。捕まるなよ」「大丈夫です。……俺は今日、ヴァイパーですから」キャラクターの選択については、俺は今でもルークが好きだ。上手く裏をかけたときは特に気分がいいし、相手の先回りをするような攻撃の仕方は俺の性にも合っている。でも、色んなキャラクターを練習していくうちに、先輩がいつも使っていたヴァイパーの良さにも気がついて――。今では2番目によく使うキャラクターになっていた。体力がない代わりに機動力が高く、素早い動きができる。俺は工業団地のフラッグに裏から侵入し、防衛チームをライフルで陽動した。ヘイトが十分に集まったところで、『スナイパー』という長距離射撃のキャラを使ったハルさんが次々とヘッドショットを決めていく。「ナイスです、ハルさん!」「イオリもナイス! ……で、この後どうする? カイ」「……っ! 本拠地が攻撃されてる! 悪いけど、戻れそうか?」「わかった。イオリ、行ける?」「はいっ!」

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   【社会人編】7.ZGWS本戦プレーオフ

    煌びやかなライトの装飾に彩られた、アリーナでのプレーオフが始まった。オフラインでの開催ということもあって、会場内はゼログラが好きな人たちや、各チームのファンで賑わっている。プレーオフは全世界の地区大会を勝ち抜いた計32チームで争われ、Aグループに振り分けられた俺たちは初日の試合、8チームの中で上位6チームを目指すことになった。(チームアリゲーターとは……離れたな)グループ分けガチャではゼログラで日本最強と言われるチーム、イグニスとも離れたみたいだ。戦ってみたい気持ちもあったから、ちょっと残念な気もする。「まぁ、勝ち抜いていけば、そのうち当たるでしょ」明るく言うゼノさん。俺たちは初日の5試合を総合3位で勝ち抜け、無事に2日目の試合に進めることになった。「あのさ……ちょっと、みんなに話しておきたいことがあるんだけど」試合後、チームのメンバーを集めたのはリーダーのカイさんだ。「どしたの、急に」マイペースを崩さないノヴァさんの問いかけにも、彼は真剣な表情を崩さない。「……もう、契約絡みの話は済んでるから、あとはメンバーだけなんだけどさ……。俺、この大会が終わったらチームを抜けようと思ってるんだ」「はぁ!!?」「ちょっ……なんで、いきなりっ」「これは前から話してたと思うけど……単純に力量の話だよ。俺が隊長で、国内では成績を残せても、たぶん世界では難しいと思うんだ」淡々と話す彼に、ハルさんが珍しく声を荒らげる。「……だとしても、それはさすがに今する話じゃないだろ!? 大会の途中だぞ!? ここまで、みんながどれだけ頑張ってきたか……」「だな。それに、今日だって成績は3位で……決して悪くないんじゃないかと思うけど」ゼノさんがフォロ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status