ある野望を話したら夫が子どもを連れて出ていった話

ある野望を話したら夫が子どもを連れて出ていった話

last updateHuling Na-update : 2025-08-07
By:  七賀ごふんKumpleto
Language: Japanese
goodnovel18goodnovel
Hindi Sapat ang Ratings
43Mga Kabanata
1.3Kviews
Basahin
Idagdag sa library

Share:  

Iulat
Buod
katalogo
I-scan ang code para mabasa sa App

大戦が終わり、平和な世界で尚も武器を生産する大国、ランスタッド。 その国には武器製造を生業とする一族がいる。 統括として日夜武器を卸す青年、ノーデンスは自他ともに認める美貌を持つ。 彼は愛する夫と息子と幸せな生活を送っていたが、実は一年前に夜逃げされていた。 その発端は、彼が密かに抱いていたある「野望」を話したからで────。 一国を滅ぼす力を持つ暴走系武器商人(妻)と、妻が大好きなマイペース王子(夫)のお話。 ※ファンタジー、異世界。出産が可能な世界観です。

view more

Kabanata 1

【ひとり暮らしの武器商人】

섭정왕부(攝政王府).

동상방(東廂房) 내 꽃무늬가 새겨진 침상 주위에 옷들이 널브러져 있었다.

낙청연(洛清淵)은 몸을 일으켜 앉더니 침상 위의 난잡한 흔적을 확인하고는 안색이 창백하게 질렸다.

햇빛이 빨간색의 흔적을 또렷이 비추고 있었다. 어젯밤 신방(新房)에 대여섯 명의 남자들이 쳐들어왔던 기억을 떠올리니 다시 한번 수치심과 모욕감이 울컥 치밀어올라 돌연 그녀를 견딜 수 없었고 굴욕으로 인한 눈물이 왈칵 쏟아졌다.

“왜 우는 것이냐? 드디어 네 바람대로 섭정왕부에 시집왔으니 기뻐해야 하는 것이 아니냐?”

서늘하고 낮은 목소리가 들려오자 낙청연은 등골이 오싹했다. 놀란 얼굴로 고개를 돌려보니 의자 위에 정좌로 앉은 남자가 보였다.

그는 위엄 있으면서도 싸늘한 표정을 짓고 있었는데 그의 차가우면서도 냉담한 시선이 그녀에게 닿았을 때 낙청연은 그의 시선이 칼이 되어 살을 에이는 것 같았고 온몸이 피 칠갑이 된 것 같았다.

낙청연은 순간 머릿속에서 무언가 폭발하는 듯한 느낌을 받았고 이내 가슴 부근이 꽉 막힌 것처럼 숨을 쉴 수가 없었다.

“왕야(王爺)… 줄곧 여기 계셨습니까?”

남자는 덤덤한 어투로 말했다.

“너와 내가 혼인을 올린 날인데 본왕이 여기 있지 않으면 어디에 있어야 하느냐?”

그 순간, 낙청연은 마치 벼락을 맞은 것 같았고 온몸의 피가 얼어붙는 듯한 기분이 들었다.

어젯밤 신방에 쳐들어왔던 남자들과 도처에 남겨진 어지러운 흔적들에 그녀는 수치스러웠고 분했는데 그녀와 함께 첫날밤을 보내야 했던 남자는 그 방 안에서 밤사이 그 남자들이 어떻게 그녀의 옷을 찢어발겼는지를 보고 있었다는 것이다.

“왜입니까? 제가 그렇게나 미우십니까?”

정신이 완전히 무너져버린 낙청연은 눈물이 그렁그렁한 눈으로 분통을 터뜨렸다.

그녀가 가장 사랑하는 남자는 첫날밤 하인들더러 그녀의 순결을 빼앗게 했고 그녀의 몸과 마음을 더럽혔다.

낙청연은 심장이 갈가리 찢기는 고통 때문에 숨을 쉴 수가 없었다.

그녀는 어릴 때부터 그를 경모했었고 당시 태황태후(太皇太后)는 두 사람이 금동옥녀(金童玉女)이고 천생연분이라면서 그들의 혼인을 맺어주겠다고 말했었다.

장난삼아 한 말이었을지는 몰라도 낙청연은 그 말을 단 한 번도 잊은 적이 없었다.

하지만 열세 살 때 크게 앓아눕게 되면서 낙청연은 살이 오르고 용모가 추해졌다. 그 뒤로부터 만나는 사람마다 그녀를 차가운 눈초리로 보거나 그녀를 비웃었다. 그러나 그의 시선만큼은 예전과 다를 바 없었고 그래서 낙청연은 더더욱 그가 아니면 평생 혼인하지 않겠노라 다짐했었다.

그렇게 기다리고 또 기다렸다. 하지만 그녀를 기다리는 건 그와 그녀의 서매(庶妹) 간의 혼약이었다.

낙청연은 그와 생판 모르는 사람이 되고 싶지 않았고 그래서 동생이 자신을 대신해 혼인을 치러달라는 제의를 해왔을 때 전혀 망설이지 않았다. 그에게 시집올 수만 있다면 언젠가는 그의 마음을 얻을 수 있을 거로 생각했기 때문이다.

그렇게 부푼 기대를 안고 첫날밤을 기다렸는데 돌아온 건 죽을 정도로 괴로운 치욕이었다.

낙청연의 말에 부진환(傅尘寰)은 코웃음을 쳤다. 그는 몸을 일으키더니 천천히 그녀에게 다가가서는 고고한 자태로 그녀를 내려다보면서 말했다.

“미워한다고? 넌 너 자신을 너무 과대평가 하는구나. 난 그냥 너를 혐오하고 역겨워하는 것뿐이다.”

첩자 따위가 공공연히 다른 사람을 대신해 그의 왕비가 되려 하다니? 게다가 그녀는 그를 함정에 빠뜨리려 했다.

그의 말을 들은 낙청연은 목이 메어 말했다.

“그래서 사람을 시켜서 저의 순결과 정절을 더럽히신 겁니까?”

낙청연은 체념하지 못하고 그의 소맷자락을 잡으며 힘겹게 물었다.

“만약… 제가 이렇게 못생기지 않았더라면, 그랬더라면 절 조금이나마 좋아하셨을 것입니까?”

정신이 반쯤 나간 듯한 그녀의 모습에 부진환은 그녀가 더욱 역겨워졌고 그 기색이 그의 눈빛에서 고스란히 드러났다. 부진환의 깊은 눈동자에 서늘한 빛이 감돌았고 뒤이어 그는 뼈를 부술 듯이 어마어마한 힘으로 그녀의 턱을 잡았다.

“설령 네 외양이 선녀처럼 아름다웠다고 할지라도 본왕은 네가 역겨울 것이다.”

말을 마친 그는 턱을 잡고 있던 손을 힘차게 뿌리쳤고 그 바람에 낙청연은 침상 위로 내쳐져서 쓰러졌다. 이불이 미끄러져 내려가 그녀의 몸에 남은 파란색 멍자국들이 드러났지만 남자는 싸늘한 눈빛으로 그 모습을 덤덤히 쳐다봤고 낙청연은 더욱더 심한 치욕을 느꼈다.

부진환은 혐오스럽다는 듯이 옷자락을 휘날리며 떠났다.

그가 떠나는 모습을 바라보며 낙청연은 절망했다. 그녀는 멍한 얼굴로 그를 바라보면서 울컥한 목소리로 말했다.

“제가… 제가 잘못했습니다…”

문 입구에 다다른 남자의 발걸음이 순간 멈췄지만 그건 단지 찰나에 불과했고 그는 곧장 옷소매를 휘날리며 방 안에서 나갔다.

낙월영(洛月盈)과 혼인하기 위해 황제에게 청을 올려 어렵게 얻어낸 혼인이었다. 그런데 저 역겨운 여자가 산통을 깬 것이다.

거기까지 생각이 닿자 부진환의 눈빛은 더욱더 어두워졌고 그는 남몰래 두 주먹을 꽉 쥐었다.

잠시 뒤, 두 계집종이 물을 받아서 방 안으로 들어왔다. 낙청연은 침상 구석 쪽으로 향하면서 이불을 손에 꼭 쥔 채로 몸을 가렸지만 난잡하게 어질러진 방안 곳곳을 전부 가릴 수는 없었다.

이상한 걸 보는 듯한 그들의 시선에 그녀는 감히 고개도 들지 못했다.

벽 하나를 사이에 두고 계집종들이 처마 밑에서 수근거리는 소리가 들려왔다.

“얘기만 들었었는데 이렇게 확인해보니까 진짜 돼지처럼 뚱뚱하던데? 어젯밤에는 어떻게 남을 대신해서 혼인을 치렀대? 둘째 아씨는 저보다 훨씬 날씬하던데 신부를 맞이하러 갔던 사람들이 왜 눈치를 못 챘을까?”

계집종은 불쾌하다는 듯이 설명했다.

“어젯밤 어떻게 이 저택에 어떻게 섞여 들어왔는지 모르겠어. 둘째 아씨를 때려서 기절시키고는 자신이 신방 안에 들어왔잖아? 어제 왕야께서 술을 하도 많이 드셔서 하마터면 신방 안으로 들어갈 뻔했다니까. 저 여자 좋은 일을 할 뻔했어. 다행히도 왕야께서 술을 빨리 깨셨으니 망정이지, 자칫하면 저 돼지 때문에 더럽혀질 뻔했잖아.”

“세상에나! 정말 낯짝 두꺼운 사람이네. 자기 분수도 알지 못하고 우리 왕야를 넘보다니!”

그 소리는 날카롭기 그지없었고 벽을 사이에 두고 있음에도 그들의 경멸과 혐오가 선명히 느껴졌다.

저들도 그러한데 부진환은 아마도 자신을 죽도록 미워할 터였다.

아니, 밉다는 단어조차 그녀에게는 사치였다.

낙청연은 얼굴이 희게 질려서는 이불을 손에 꼭 쥐었다. 굴욕적이면서도 슬프고 비통해서 낙청연은 결국 눈물을 터뜨리며 목이 메어 말했다.

“만약 다음 생이 있다면 절대 당신의 미움을 사지 않을 것입니다…”

아직 정원을 채 나서지 못한 두 계집종은 방 안에서 궤가 ‘쿵’ 하고 넘어지는 소리를 듣고는 깜짝 놀라서 곧바로 방 안으로 되돌아왔다.

그리고 이내 방 안에서 새된 목소리가 들려왔다.

“거기 누구 없습니까? 왕비 마마께서 자결하셨습니다!”

Palawakin
Susunod na Kabanata
I-download

Pinakabagong kabanata

Higit pang Kabanata
Walang Komento
43 Kabanata
【ひとり暮らしの武器商人】
剣に槍、弓、銃。武器が産まれたことで争いは増え、多くの命が失われた。時代が移るにつれ神術や呪術を扱う者も現れたが、そんな力を開花させるのはほんのひと握り。自分もそうだがせいぜい一国に五、六人いればいいものだ。火を出現させる程度のものから地形を変える神術まで、力の幅もまるで違う。大きな力を持つ者が革命を起こそうとしないのは、まだ武器の存在が抑止力になっているからだ。どれほどの神術を持ち得ていたとしても、大国が協力し合って兵と武器を用意すれば、世界の均衡そのものが危うくなる。資源も人も失われた土地など手に入れても仕方がない。どこの国もなにかひとつ、他所にはない資源を獲得している。隣のサンセン王国は農作、北のヨキート国は羽毛や木綿、絹などの織物。そしてこのランスタッド王国は武器生産。百年以上前に世界がひとつになったことで領土争いなどは無縁となったが、未だに武器の需要は高い。争いがなくなったのに武器がなくならないってのは本当に可笑しい。ランスタッドは元々鍛治屋が多い小さな町だったが、戦火の中生き残る為、他国から武器生産の依頼を受け続けた。その見返りとして大国から庇護され、町のものは誰も兵として招集されることなく、やがて世界の三分の一に近い領土を占める大国に成長した。誰も使わないはずの武器を造り続け、他国に輸出する日々。どの国も平和を謳い、しかし地下に巨大な研究施設を拵えている。人間という生き物の恐怖、醜さ……武器の存在は負の感情を象徴している。武器を生み出したことも、また失くすことができないのも、所詮は弱さ故だ。皆心のどこかでは分かっているが、決して口に出さない。けど自分は違う。自分の信念の為に王を敵に回す覚悟がある。ランスタッドの中央には巨大な城がある。王族だけでなく一部の貴族も住まうその城の最上階で、明るい銀髪を靡かせる青年がいた。白く大きなローブを脱ぎ、見晴らしの良いテラスへ出た。まだ夜明け前で、薄紫の空が果てしなく続いている。実質的には武器商人の最高権力者の青年、ノーデンスだ。 古くからこの地に住んでいた武器商人の一族であり、両親が病で亡くなった今では一族の長でもある。まだ二十六歳だが、鍛冶師達を取り纏めているのは理由があった。ノーデンスは高い神力をその身に宿しており、自身の気を込めることで精度の高い武器を造ることが可能なのだ。今では自分は
Magbasa pa
この地は特別で、必ず同じ時刻に陽が沈む。一分一秒狂うこともなく空は薄紫に染まり、やがて灯りを際立たせる濃紺へ変わる。 昼とは違う活気が生まれ、橙色の灯りが店先に垂れ下がった。仕事を終えた大人達が酒を飲み交わす、ささやかな宴の時間が始まる。「お! ノーデンス様、良かったら一緒にどうだい?」屋台の前を通り過ぎた時、鉱山の歩荷の男性達に捕まった。隣国に商品を運搬する出稼ぎの青年達も一緒だ。どうも通り行く者皆に声を掛けて飲み会をしているらしい。既に席がいっぱいの為、ノーデンスは財布から金貨だけ取り出し、手前の青年に渡した。 「今日はちょっと疲れてて。また誘ってください」 「もちろん。美人がいると酒が進むもんなー」 どっと場に笑い声が響く。その時、まだあどけなさが残る青年が手を挙げた。「そうだ、ノーデンス様。昨日ヨキート王国に行ったんだけど、第二王子に会いましたよ。大丈夫ですか?」 「大丈夫? 何がです?」 「え? いや、その……お子さんも一緒だったから、いつこっちに戻って来るのかな、って。ノーデンス様も寂しいと思いますよ、ってお伝えしたんですけど、彼はまだもど……んっ!」その先を聞くことはできなかった。しどろもどろに話す彼の口を、周りの男達が手で塞いだからだ。中核にいた男が慌てて前に躍り出て、愛想のいい笑顔で弁解する。「すみません、こいつ本当に何も分かってない世間知らずで……今言ってたことは忘れてください! 後でちゃんと、きっつー……く教えておきますんで!」賑やかだった店先が静まり返った。誰も口を開くものがいない。一番に動いた者が殺されるのではないか、という謎の緊張感を放っていた。 心の中で深いため息をつく。 ……結局、こういう事があるから嫌だったんだ。“アレ”に心を許したことが失敗だったのだと、嫌でも思い知らされるから。 努めて当たり障りのない笑顔を浮かべ、元気に答えた。「……もう~、大丈夫ですよ。今までで一番仕事に打ち込めて、充実した日々を送れています。せっかくの飲み会なんですから、皆さんもっとたくさん飲んでください! それでは失礼します」踵を返し、非常に静かになった一行を置いて城へ戻った。住宅街を抜け、城へ近付くほど喧騒は遠ざかる。 音が死ぬ。光が消える。星が輝く。 高台へ登って振り返ると、さっきまでいた城下
Magbasa pa
翌朝は曇天で、冷気が体内に充満しているようだった。そう……風邪をひいた。「さむ! ううう……寒い、寒い寒い寒い……!」ブランケットを引き摺りながら自身の熱を計る。昨夜の行いを心底後悔しながら体温計を眺めた。 幸い体調を崩した時に必要なものは全て揃ってある。服を着込み、今日の予定を確認した。 熱は三十七度八分。周りにうつすわけにはいかないから、今日は仕事も休んで大人しくしよう。まさか風呂場で自慰をして風邪をひくとは……情けなくて死にたくなる。ただ普段から鋼材に神力を注いだ後は寝込むことが多いので、今回は特に負担が大きかった。ということにしよう。 連絡用の端末を操作し、従者のオッドに繋いだ。すぐに返事が返ってきて、確認するとなにか必要なものはないか、という内容だった。 気遣いは嬉しいものの、今は誰かと話す気分じゃない。「大丈夫。ありがとう」と文字を入力し、送信してから画面を落とした。早朝は城の中も慌ただしい。物資を運び入れる者や、朝食の支度をする者が忙しなく動いている。 王族お抱えの武器職人ということで特別に城に住まわせてもらっているが、あまり有難みを感じないのは気の所為だろうか。 食費や家賃の心配もないし、欲しいものは与えられる裕福な生活をしているのに、時折煩わしさを感じる。独りなのに。「はぁ……」朝から色々考えるのはやめよう。ますます体力を持っていかれる。 熱はあっても腹は空いているので、卵を手に取ってフライパンで焼いた。後は良い具合に焼けるのを待つだけだ。 この卵もそうだが、城のすぐ近くに小さな市場がある。仕事の関係で城の食事が食べられない時もあるので、普段から食料はストックしていた。 備えあれば憂いなしとはこの事だ。頬杖をつきながら固めのパンを頬張った。皿を出すことも億劫になってしまった為、テーブルに鍋敷きを置いてフライパンをそのまま持ってくる。あとはグラスに牛乳を注ぎ、ひといきに飲み干した。「もう食べられないな……」朝のミッションはクリアということでいいだろう。使ったフライパンをシンクに入れて、覚束ない足取りで寝室へ戻った。 洗い物も片付けも明日でいい。まずはゆっくり休もう。 一時期は毎日使っていた氷枕を用意し、ベッドに横たわった。首の後ろと脇、あと脚の付け根にも氷嚢を添える。これでだいぶ体温は下がる
Magbasa pa
今日はいつもと違う大事な仕事が入っている。ノーデンスは頭の中で段取りをイメージし、気を引き締めた。暖かい昼下がり。鍛冶師の製作場に数人の客人を招き、完成して間もない短剣の精度を見せた。もっとも、今手にしているのは戦いの為ではない、狩猟をする為のナイフだ。刃先が滑らかな皮剥タイプをメインに、その魅力を伝えていた。客人は皆他国からやってきているが、商人や料理人、そして軍関係者まで、幅広かった。宣伝活動としては幸先が良い。わざわざ用意した鹿(の脚のみ)を手早く解体する。「勿論皮だけでなく、肉もよく切れますよ。荷物を減らしたい時はこれ一本でも満足できる仕上がりとなってます」刃についた油を拭き取り、側近のオッドに人数分の短剣を持ってこさせた。「遠方からせっかく来てくださった皆様に、こちらの短剣を一本ずつ差し上げます。供試となりますがご意見をお聞かせいただければ幸いです」黒い刃と言ってもいい。電灯に近付け、鋭利な刃先で軽く机を叩いた。大きな獲物も解体できるが、野外での使用を考えているので軽量化を重視している。刃の合金には神力を込めたので尚さら自信がある。しかし一番の功労者は鉄を打った鍛冶師達だ。いつだってそれだけは変わらない。「ノーデンス様、お疲れ様でございます。まさか狩猟用の武器を展開するとは思いませんでしたよ。どうなるかと思いましたけど、好評で安心しました」「ほんとにな。余裕ができたら、本格的に調理道具も造ろうかね」これまでは武器をメインに扱っていた為、狩猟におけるナイフや料理用の包丁など考えたこともなかった。だがこの平和な世の中に合わせると、日用的な道具は需要がありそうだ。「さすがにこういうものばかり作るわけにはいかないから何点か絞って、最高級のものだけ作ろう。そうすれば金に糸目をつけない職人が求めてくる」武器ではないのだから、売り上げは申告せず全て自分達のものにしても良さそうだ。どう思う? と訊きそうになったが、オッドは存外潔癖な青年なので訊くだけ無駄だと悟った。「良いですねぇ。ところで……ノーデンス様、エプロンも似合いますよね」「そう?」解体の時につけたエプロンがそのままだった。スーツが血と油まみれになっては大変なので、わざわざ用意したものだ。外してから水を張ったバケツに放り入れる。「普段料理する時はエプロンなんてしないけど」「
Magbasa pa
武器の大量製造は国の財力、軍事力を証明するのにうってつけだ。それは武器を買収、所持する個人や組織も同様。近頃は過激な思想を掲げる武装集団が各地に現れ、市民を惑わしているらしい。さまざまな考えを持つからこそ素晴らしい発見や改革に繋がるが、衝突が起きた時のリスクはでかい。ランスタッドを含め他国は争いを恐れている。平和主義を掲げながら、裏では遅れをとるまいと武器や兵の確保に力を入れている。いつか裏切られるかもしれない、寝首をかかれるかもしれないという恐れがある限り、戦争は絶対になくならない。「なら皆が一斉に武器を捨てればいいじゃん」「でも、武器を隠し持つ悪い人がいるかもしれないからできないんでしょ? “自己防衛”しなきゃいけないから武器は持ってないと駄目だって父さんが言ってた」長閑な昼下がり、煉瓦造りの家が密集している南方の街へ来ていた。比較的富裕層が集まる、景観も美しい街。その一角にある広場で、学校帰りの子ども達が熱心に教科書を読んでいる。「武器を作ることをやめればいいんじゃないの?だから、ノーデンス様が武器作りをやめればいいんだよ」ひとりの少年が邪気のない瞳で見つめてきた為、手鏡をポケットに仕舞った。店のガラスに映る自身の格好に気を配りながら、小さなため息をつく。これだから子どもは苦手だ。単純思考を思ったまま口に出して、それが相手にどんなダメージを与えるかまるで分かってない。やっぱり人間ってのは歩けないうちが可愛いよな。「俺が今から言うことをよー……く聴くんだ。武器は俺だけが造ってるわけじゃない。鍛冶師は世界中、星の数ほどいます。俺達の一族が一番歴史が古くて、誰よりも早く、誰よりも多く造れるから有名になっただけ」将来有望なお子様は史実を覚える必要がある。この広場では不定期に子ども達のお勉強会が開かれるのだが、用事ついでに歩いていたところを見つかり捕まってしまった。 もちろん良い教育を受けてる彼らには専用の学習施設がある。にも関わらず広場に寝そべって勉強するところはやはり子どもと言うか、平和ボケした国の象徴に思えた。例えば政治や医療等、専門的な仕事に就くことが決まってなければ、何も高度な学習はしなくていい。漁師や農家、施行等に関わる親の子ども達は早くに学問を打ち切って仕事をする。裕福な家庭の子は、将来なりたいものをじっくり考え、選ぶ権利が
Magbasa pa
「ノーデンス様、今日も凛として美々しいこと」「……でも最近は食事の時間にお見かけしなくなったな。夜遅くまで働かれて、昼近くに起き出してるようで」「ほら、この間ロッタ様のことで陛下にお叱りを受けただろう。あれは城中で噂が広まったし、沈んでおられるのでは?」一歩自室から出ると自分の噂話が聞こえる。彼らは声を潜めているつもりだろうが、地獄耳の為に全て綺麗に拾うことができた。聞こえないふりをして、涼しい顔で闊歩するのは慣れている。なるべく毅然とした態度で仕事へ向かった。自分はいつだって特異な存在で、城内では良くも悪くも浮いている。心を殺し、余計なことを考えないよう一日動き続けた。「ノーデンス様、お帰りなさいませ」「……ただいま。お疲れ様」夜が更けた頃ようやく今日の仕事を終え、城に戻った。いつもより身体が怠くてふらふらする。さすがに以前のような風邪ではないだろうが、疲れがたまってるようだ。今すぐ部屋へ戻って、ベッドに倒れたい。でもその前にシャワーを浴びたい。飯は……食べなくてもいいか。「ノース」「わわわわっ! へ、陛下!?」王宮の広間を抜け、自室がある塔へ登った。その階段上で待っていたのはローランドだった。しかも一人。また護衛もつけずにここまで来たらしい。後、いるわけないと思ってる人間がいるのって結構ビビるもんだな。醜態を晒してしまったことも歯痒く、内心舌打ちした。「陛下……差し出がましいことを申し上げますが、いくら城内でもお独りで行動するのは……」「いいから部屋に入れろ」……こいつ、本当に何様だ。国王様……というセルフツッコミを心の中で済ませ、自室の鍵を開ける。彼が自分に会いに来た理由も、わざわざ部屋に上がる理由も分からないが、逆らうという選択肢はない。馬鹿みたいに広い客間へ通し、ソファに腰掛けた彼に紅茶を淹れた。席に着いてもしばらく無言が続いた。特に話すこともないし、何ならこうして向かい合うのはロッタ王女の件以来だ。増してや二人きりなんて……へとへとで帰って来たというのに、何故また疲れる状況に身を置かないといけないのか。心底ため息をつきたくなった。「……近頃諸外国による武器の買収が何倍にも増えている。それは良いが、大半は無名の商人で輸出後の経路が分からない。これからは身元が分かる証明書類を用意した者にのみ武器を売るようにしたらどうか
Magbasa pa
武器作りとして長い歴史を持つヴェルゼ一族はランスタッドの鉱山を所有し、巨大な工場地帯を与えられている。鋼材採取はもちろん、工房の増築や水道整備も自己責任で行うことができる。女性や子どもは製造や発掘といった力仕事には携わらずに、少し離れた場所に家を建てて裏方としてサポートするか、静かに暮らしている。男手のおかげで衣食住には困らない生活が送れていた。祖先から受け継がれた技術と知識が何よりの宝だ。工場からさらに離れた場所に、集落の跡地がある。伝達や物資の運搬等不便な為、王都に近くに移住するよう命じられたらしい。一族は時の王に従い、百年近く前に今の土地に移り住んだという。ノーデンスは小さなランタンを手に、夜の廃屋へ訪れていた。嵐などのせいで家屋のほとんどは倒壊してしまったが、頑丈な家はまだいくつか建っている。かつて人が住んでいたとは思えないほど不気味だが、中には毛布や缶詰が散乱してあり、仄かな生活感を演出していた。ここからさらに外れへ行くとランスタッドの墓地がある。息を引き取れば、国民は皆そこへ運ばれ、土の中に埋められるのだ。慈しみよりも深い悲しみと強い怨念が集まる特別な場所。昼に来ても夜に来ても、誰かの泣き声と叫び声が聞こえる気がする。暗いエネルギーが集まる。だからこそ選ばれたのだろう。廃屋の最奥にあるドアを開け、地下へと繋がる扉を持ち上げた。開けた瞬間、風など吹かないはずの地下から肌を焼くような熱気が込み上げる。待っていた、と言わんばかりに地下の廊下に明かりが灯る。誰もいないはずの空間。その奥から泣き叫ぶ声。左手の薬指にそっと手を被せ、今夜も導かれるように階段を降りていく。
Magbasa pa
胡乱の祭日
過ごしやすい秋が終わりを迎えようとしている。冬に備え食料の調達や防寒対策で忙しくなるときだ。心なしか、街を歩く人々の顔は険しく見える。 日照時間が変わらないのは良いことだが、ランスタッドも年に数回は雪が降る。子どもくらいしか喜ばないが、ノーデンスは雪を眺めることが密かに楽しみだった。白が好きだ。鮮やかな景色は確かに気持ちが上がるが、状況次第で疲れてしまうから。 「ノーデンス様。今日はいくつか新規の商談が入ってるのでこちらをお目通しください」 「ああ。ありがとう」 月の半分を武器製造に注ぎ込み、残った時間は通商に勤しむ。朝からオッドに渡された書類を確認し、時間を気にしながら他国の商人と数件取り引きを交わした。 景気も客層も上々。心配事なんて何もないが、「ところでノーデンス様……最近また、陛下を避けてます?」 「……」休憩を兼ねた資料チェック中、オッドが不思議そうに首を傾げた。淹れたての珈琲を近くに置いてくれたが、すぐに手をつけることができなかった。手に持った書類に視線を向けたまま、短いため息をつく。 「“また”? またって何だ。俺は国王陛下を避けたことなんてただの一度もない」 「あれっ、そうなんですか? じゃあ今までの違和感は俺の勘違いかな。申し訳ありません」 軽い。申し訳ないと思ってる人間の口調じゃない。 「オッド、お前最近無駄口とミスが多いな。ここの提携先、この前変わったぞ。更新を忘れてる」 「あっ申し訳ありません!」 不備が見られる書類を差し出すと、彼は空いてるスペースにばさっと広げてチェックを始めた。こいつめ、コーヒーが零れたらどうするつもりだ。取引先がいる時にやったらただじゃおかないぞ。 「よし、できた! さすがノーデンス様、仕事に関することは全て頭に入ってるんですね。俺はもうお祭りのことで頭がいっぱいでしたよ。申し訳ありません」 「祭り? ……あぁあれね……。それよりお前、申し訳ないなんて微塵も思ってないだろ。口先だけの謝罪はやめろ。自分が思ってるよりも簡単に見抜かれてるぞ」 「そんなぁ、本当に申し訳ないと思ってますよ! 申し訳なさ過ぎて、申し上げることが何もないです」 「……うん?」 しばらく無言で見つめ合った。嫌になったのでひとりで城を出た。 オッドと一緒にいると色々馬鹿らしくなる。内ポケットから煙草を取り出
Magbasa pa
1
建国記念日当日の朝は普段と何ら変わらなかった。空の色も気温も鳥のさえずりも、知り尽くしたもののせいで心を動かさない。それよりずっと激しく自分を動揺させるのは、身体の不調。「はっくしょん!」震えを抑える為に厚いブランケットを体に巻き付け、ノーデンスは自身の熱を計った。三十八度二分。最悪だ。この大切な日にまた熱を出してしまった。しかも何故か前より高い。昨夜は祭典前日ということもあり、一日中動き回っていた。武器の増強の為に神力をいつもより注いでいたせいか、凄まじい倦怠感に襲われている。寝不足と近頃増えた頭痛も拍車をかけ、朝のコンディションは最低だ。開会式では何もしないとはいえ席を用意されているし、熱を出して欠席なんてシャレにならない。夜には大事な会合を二つ予定している。しかし熱を誰かにうつしたら、そっちの方が問題だ。どうする。頭を抱えて唸っていると、ドアをノックする音が聞こえた。現れたのは上質なスーツを着たオッドだった。何もなければ恰好を褒めるところだが、今はとてもそんな余裕はない。「ノーデンス様! おはようございます! とうとう今日ですね。祭典が無事に終わるよう、俺も気を引き締めていきます!」「オッド、そこで止まれ。俺は熱がある」「そうですか。……え? 熱ぅっ!?」爽やかな笑顔から一転、オッドは扉を勢いよく閉めて駆け寄ってきた。「こんな大事な日に何やってるんですかー! いつも俺達に体調管理だけはしっかりしろって仰るくせに、笑えませんよ! 貴方がいなかったら俺達はただの市民と同じ扱いで、満足に動けないんだから!」「分かってる。分かってるから大声出すな。誰かに聞かれたら困るだろ」オッドに移さないよう距離を置き、ブランケットを引き摺りながら窓の外を覗いた。「開会式には絶対出席する。……オッド、薬師の爺さんから薬を貰ってきてくれないか。強いもので構わないから、即効性の解熱剤を」「えっ! でも……」「もしテロリストが攻撃を仕掛けてきたらどうする。明日なんてないも同然だぞ」彼はまだなにか言いたそうに口を開けていたが、やがて小さなため息をついて背を向けた。「……すぐにお持ちします」オッドは足早に部屋を出ていった。遠ざかる靴音にほっとする。王族お抱えの薬師に相談するわけにはいかないし、強い解熱剤は絶対にくれないだろう。だから今回だけは一族で
Magbasa pa
こちらとしてはテロの可能性を考慮しながら幾度も内容を調整し、金と時間と人員を費やした。祭典も規模を縮小した為諸外国への宣伝効果は例年より薄いだろう。得た物より失ったものの方が遥かに大きい。燻るものを心の中で消化し、努めて笑顔を保った。「王制反対派か知りませんが、どうかお引き取り願えませんか。こんな平和な国のことを構うより、他に攻めるべきものがあるでしょう。まぁ王族のみ標的にしてるなら別ですが……」内緒話をするように声を潜めると、彼は明らかに動揺した。「どういう意味だ? お前はこの国の人間じゃないのか」「この国の人間ですよ。迫害こそされてませんが、いいように使われてるので彼らのことは嫌いです。さっさと滅べばいいと思ってる。でもこの国や、民は関係ない。ランスタッドは常に中立を守る国ですから」こんな台詞、誰かに聞かれたら大変だ。でも、聞かれてもいいか。壊すことは簡単なんだ。目の前にいる彼も、王族も。後始末が面倒なだけで、……それら全てを放棄して、“なかった”ことにしてしまえば。「興味深い話が聞けそうだが……今日は引き下がろう」男は構えを解いた。「だが放っておくという約束はできない。お前達は軍事国家だ。中立だとほざくならまずその忌まわしい武器の輸出を止めろ。それをしない限り目的のひとつとして殲滅する」「……」さすがに納得はしてもらえなかったが、彼は近くの扉を開け、外階段を使って去っていった。無理やり捕まえて自白させることも考えたが、街に潜んでいる仲間の報復に合いそうだ。撤退すると言う以上、深追いはせずさっさと出て行ってもらった方が良い。どれほどの規模の組織か知らないが、今過激に応戦しても損しかない。王族を守りながら戦わなきゃいけないのも骨が折れる。「……」いつの間にか地上からのぼる煙は見えなくなった。テラスへ出て見ると広場には誰もおらず、テントや国旗が倒れて酷い有様だった。怪我人の手当も片付けも大変だ……。敵と接触したこと、取り逃したことを軍に報告し、再度体制を立て直した。もしファギュラが見ていたら、その様子に歓喜しているだろう。彼らにとっては挨拶程度。そう思うとやりきれない気持ちになる。この国が攻撃されたことはすぐに世界中に広がり、ランスタッドを含めた四つの国で緊急会議が開催されることが決定した。国の最高責任者が出る為、恐らくロ
Magbasa pa
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status