ログイン大戦が終わり、平和な世界で尚も武器を生産する大国、ランスタッド。 その国には武器製造を生業とする一族がいる。 統括として日夜武器を卸す青年、ノーデンスは自他ともに認める美貌を持つ。 彼は愛する夫と息子と幸せな生活を送っていたが、実は一年前に夜逃げされていた。 その発端は、彼が密かに抱いていたある「野望」を話したからで────。 一国を滅ぼす力を持つ暴走系武器商人(妻)と、妻が大好きなマイペース王子(夫)のお話。 ※ファンタジー、異世界。出産が可能な世界観です。
もっと見る彼は遠慮がちだが、相変わらず窘めるような口調だった。「……わかりました。でもあんな危ない物を代わりに預かってもらうんです。必要な管理費を教えてください」「それには及びません。個人様に請求するものではありませんから」そう答えた時の彼の口元がわずかに笑っているのを見逃さなかった。「何よりも我々に託していただいたことに感謝申し上げます」「……」気付いた時には持って行かれていただけなんだけど……どう返そうか迷っていると、ルネに後ろへ引かれた。「私は妻と子どもと平和に暮らしたいだけです。ご面倒をおかけして申し訳ありませんが、あの剣は貴方達にお願いします」「では、長にもそのように伝えます。万が一処分するとしても、あの剣を壊すには相当な年月が必要となるので」ノーデンスは胸の奥が焼き付くような痛みを覚えた。この痛みの理由を考えていたが、ルネの横顔を見て思い出した。だらんと投げ出していた拳を握り締め、使いの男に向き直る。「あの……! 良ければヴィクトルさんに御礼をお伝えください。王城で、剣の暴走を止めてくれたこと……俺を止めてくれたことを」「もちろんです。必ず申し伝えます」それから男は小さな便箋をルネに渡し、一礼して去っていった。「何それ?」「えーと。要はあの剣を彼らが預かる……ことを私達に報告した、という証明書かな」緑色の便箋をポケットに仕舞い、ルネは扉を勢いよく閉めた。「わざわざ来てくれたのに、失礼な態度とっちゃったな。すまん」「あはは、あれぐらいなら平気だよ。彼も言ってたように、得をしたのは彼らさ。物が物だけに損得で考えるのは不謹慎だけどね」合理的な組織だからと、意に介さない様子でダイニングへ戻る。ぬるくなったコーヒーを口にした。「そもそもこっちの意思確認をする気なんてゼロだったろ。当然のように自分達のものにしようとしてた。助かるけどさ」あんなにも堂々とこられたら、よく分からない間に丸め込まれてしまいそうだ。もちろんこちらの手に余ることを見越した上での判断なのだろうが、色々圧倒されて録に話ができなかった。オリビエが部屋で本を読んでることを確認し、ルネの対面に座る。「ノースが費用の話をした時、彼少し笑ってたね」「あぁ」もちろん気付いている。あれは嘲笑以外の何物でもない。「俺なんかが到底支払える額じゃないってことか」ノーデ
熱の中心が離れる。後ろの、ずっと痙攣していた口に当てられる。腰を掴む両手に力が入ったとき、意識を失いそうなほどの衝撃が訪れた。「あああっ……!!」彼が中に入ってくる。息ができない。苦しさに足をばたつかせると、顎を優しく掴まれた。「息して」深海に沈むように、ルネの腕の中で落ちていく。零れ落ちた涙をそっと指ですくわれる。やっぱり何度か意識が飛んだし、天井に向く自分の脚先がいやに鮮明だった。「ルネ、あっ待って、速い……っ!」激し過ぎてついていけない。気付いた時には既にイッてしまっていた。下腹部や胸には白い愛液が飛び散っている。今もイッてるはずだが、もうとけすぎて感覚がない。これ以上なく深いところに繋がっている。抜き差しされてルネの根元が当たる度に仰け反った。「私も悪いかもしれないけど、君があんまり可愛いこと言うから。もっともっと気持ちよくさせたくなっちゃったよ……っ」ルネの汗が、視界が揺れる度にはじける。悔しいけど気持ちいい。自分を手放してしまうほどに、彼の手技は絶妙だった。「ルネ、好き、好きだ……っ」伸ばした手を掴まれる。彼が好きだ。泣きたいほど、どうしようもないほどに。こんなにも愛されて、正直苦しい。でも彼がいなければとても生きていけない。「ありがとう。愛してるよ、ノース」前がまた弾ける。死んでしまいそうな快感が全身を包んだ。「イッ、ちゃ……っ」ドクドクと何かが吐き出されている。前も後ろも、もうぐちゃぐちゃだ。「とけちゃう……っ」脚を広げたまま背中をしならせるの、ルネはわずかに微笑み、さらに奥へと潜り込んだ。「私の愛がどれだけ重いか、知ってるだろう?」もう締め付けることもできないのに、腰を打ち付けられる。ルネは快感を求めてるんじゃなく、ただ自分を感じさせたいのだと分かった。「ああっ……! 分かった、分かったから…ぁ…っ……あ、も、やあぁ……っ!」逃れられない快楽に震える。絶倫なんてレベルじゃない。重症だ。愛され過ぎてやばい。自惚れにも程があるけど、ルネと目が合うとそう確信してしまう。彼が俺に抱く想いは依存や執着なんて生易しいものじゃなくて、災害レベルの愛情だ。なんて言ったらマジで抱き殺されるんだろうな……。とろけきった性器を扱かれ、言葉を失う。 あんな大変な事件を起こして、あれだけ迷惑もかけて。
今日も空は快晴だ。冬が近付いてる為、早朝は少し肌寒い。ランスタッドは時間が止まってるかのように静かだ。他所の国のニュースでは違法薬物の密輸や政治がらみの暴動が起きたりしているけど、こちらは目立った事件もなく生活している。武器生産国とは思えない。少し皮肉に考えてしまい、慌てて思考を掻き消した。庭で遊ぶ主人と息子の姿を見ると弱気になってはいけないと再認識する。そして忘れてはいけない多くを思い出す。ちょうどオーブンの中のケーキが焼けた為、紅茶を淹れて庭へ持っていった。 「良い天気だなー……」雲ひとつない蒼空に、ノーデンスは呟いた。街の喧騒すら届かない丘の一軒家は否が応でも日常に引き込まれてしまう。それが苦く、また助かっている。初めこそ城から遠ざけられたことに落胆していたけど、仕事より何より大事なものに気付かされたから。「お。ちょうど苗植え終わったとこ?」庭に作った小さな畑。半分は葉野菜が顔を出している。もう片方はまだ小さな葉が均等に植えられていた。畑の中心にいた息子はこちらに気付くと手を振った。「お疲れ様。オリビエも手伝ってくれてありがとな」「ううん! 虫もいるし面白いよ。ほらっ」と、オリビエは近くにいた謎の赤い虫を差し出してきた。「うわ! ちょっ、持ってこなくていいから!」「え、かっこいいよ?」「オリビエ、ママは虫が苦手なんだ」後ろから苦笑いのルネが声を掛ける。オリビエはえー、と言いつつも虫を原っぱに連れて行った。「はー、俺はマジで虫は無理。バッタしか無理」「でもノース、オリビエが夏は虫捕りしたいって言ってたよ。ママと」「勘弁してくれ。それ以外なら何でもやるから」ネイビーのストールが風に飛ばされないよう抑えて、遠くにいるオリビエに手招きする。「ケーキ焼いたんだ。天気も良いし、せっかくだから外で食べよう」「おお~。良いね!」二人が手を洗った後、ミニテーブルを持ってきてケーキを皿に取り分ける。オリビエはお腹が空いていたのか、ひと口がとても大きかった。「ノースがケーキを焼く日が来るなんて。感無量だなぁ」「パパ、感無量ってどういう意味?」「感動してるってことだよ。ケーキもちゃんと美味しいし」「オイ、ちゃんとって何だよ」聞き流せない一言に詰め寄るが、ルネは優雅に紅茶を飲んで素知らぬふりをしていた。「君はクッキーは苦手
再会してから何度悲しませたか分からない。これっきりにしようと思っても、気付けばいつも心配させて、困らせていた。今回はその最たるものだ。国の支配権を持つ王族を襲撃するなんて────これを呪いのせいだからと納得してくれる者などまず居ない。ルネだから冷静に話を聴いてくれているんだ。「俺はマトモじゃなかった」全身負った怪我なんかより、彼が苦しんでることの方が痛い。そして、これから彼の為にできることは限られている。「ごめん」ルネが置かれた気持ちを考えると、自分の今後を考えるよりずっとずっと怖かった。気付けば涙が溢れていた。いつかと同じように、嗚咽を堪えながら強く目を瞑る。小さな声で繰り返し謝ると、手を握られた。「もう謝るの禁止」「だって……っ」「私は大丈夫だよ。だから不安にならないで」額に口付けをし、そのままの体勢で呟いた。「何があっても……これからはずっと君の傍にいる」涙で顔がぐしゃぐしゃになって、前は見えない。左手を繋ぐと互いの指輪が当たって、何故か懐かしくなった。ルネは一年前に離れたことを後悔しているようだったけど、あの頃を思い返したら英断だと思う。ルネはもちろんのこと、オリビエへの影響が大き過ぎた。息子を自分から遠ざけてくれたことに感謝してるぐらいだ。大人になってからの方が目まぐるしく、月日が長く感じた。情報量が多過ぎて、間違った道にもぐんぐん入った。それでもぎりぎりで引き返すことができたのは、彼や周りの皆のおかげだ。謝るのを禁じられたら後はお礼の言葉しか出てこない。今度はルネが困るほど、一生分のありがとうを伝えた。「もう一つ謝っておきたいことがあるんだけど……言ってもいい……かな」「どうぞ」「陛下に、王族が憎いことも言っちゃった」息苦しい沈黙が流れる。覚悟を決めて怒声が振り落ちるのを待っていたが、何とも可笑しそうな笑い声が響いた。状況が状況なだけに、一応つっこむ。「笑うところじゃないぞ」「あはは、ほんとにね。でも言い方が、叱られてる子どもみたいで」このことを告白するのは勇気が必要だったのに、ルネはツボに入ったのかしばらく笑いが止まらなかった。まぁ実際、己の悪行を白状してるんだけど……。「呪いのせいじゃなくて、俺の意思で伝えたんだ。お前の立場を危なくして……本当にすまない」「ふふ……ふう。そうか」ひとしき
「いやー、生きてるうちにこんな恐ろしいことがあるなんてな」王城の伝設備管理棟では、各自担当者が仕事しながら現状を嘆いていた。「テロ組織へ対策を練らないといけないってのに、前代未聞の天災。国王陛下も頭が痛いだろう」「全くだ。おいたわしい」ひとりの男性が頬杖をついた時、部屋の外から靴音が聞こえた。ゆっくり近付いてくる。業者か、もしくは伝令役か。「……」靴音は止まったが、待っていても扉は中々開かれなかった。ここに用があるわけじゃなかったか。モニターに視線を戻し、仕事を再開する。その直後、外で凄まじい爆発音が聞こえた。「な、何だ!?」その場にいた全員が音に驚き、音がした廊下の方へ飛
「いたたた……」かれこれ数時間揺られ、ノーデンスは久々に帰宅した。借家とはいえ今では立派な我が家だ。身につけているものを全て外し、閉めきったカーテンを開け、換気した。クラウス達が乗った車は工場のエリアまで行き、送迎者はヨキートへ戻るらしい。今までも思ってはいたが、車ではなく飛行機で帰りたい。国境付近は悪路ゆえ揺れが酷く、腰を痛めてしまう。シャワーを浴びていたらすっかり朝になってしまった。大切な通行証や身分証は部屋の棚に仕舞い、コーヒーをいれて一息つく。「……」椅子に座って周りを見回すも、音一つ聞こえない。そうか。ルネがいないとこんなにも静かだったか。当たり前のことに驚き、
ノーデンスが留守の間も、ランスタッドは特に変わりなく穏やかな時間が流れていた。武器作りのヴェルゼ一族も同じく、急な仕事さえ入らなければ渡された指示書に従うだけの生活だったが……。「オッド、ノーデンス様はいつ帰ってくるんだ?」「ルネ様とヨキートに帰ってもう一ヶ月以上経つ。そろそろ鋼材に力を吹き込んでもらわないと。一度帰って来てもらうことはできないか?」「あああ……そうですね。すぐに打ってみます」工場の広場でオッドは端末を操作する。その様子を見ていた中年の職人が水を一気に飲み干した。「電話はできないのか?」「それが、ここ数日電話に出なくて……忙しいだけならいいんですけど」「大丈夫
「いっっってええ…………」小鳥が囀る喉かな朝、ノーデンスは腰を押さえながら床を這っていた。昨夜も弾け過ぎたことを猛省してる。精神面ではルネのおかげで救われたが、彼の変態プレイにより新たな嫌悪と後悔も植え付けられてしまった。玩具で盛り上がってるしょうもない姿を晒してしまったし、本当に頭が痛い。シャツ一枚羽織って壁に手をついていると、オリビエがパタパタと駆け寄ってきた。「ママー! どうしたの、お腹痛いの?」「あ~……おはよう。大丈夫だよ」大丈夫と返したけど、腰が痛くてその場から起き上がれない。そんな自分の様子を心配そうに見つめる息子。立ち上がるにはもう少し時間を稼がないと無理だ。死