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第1072話

Penulis: 風羽
翠乃は伏し目がちに、寒笙を見つめた。

その瞳には深い情と乞うような色が浮かんでいる。

あまりにも無垢で――まるで、彼女を脅し、追い詰めてきたのがこの男だとは思えないほどだった。

……可笑しい。

寒笙は本気で思っているのだ。すべてがかつてのように戻れると。

翠乃の声は淡々としたものから冷えきったものへと変わり、ひどく硬かった。

「書斎で話しましょう。愛樹も愛夕も……もう、大人の話が分かる年齢よ」

そう言い切ると、彼女は強く手を振りほどき、子ども部屋を出ていった。

去り際、その背筋はまっすぐに伸びていた。

本当は限界だった。心も身体もとうに疲れ果てている。

それでも、寒笙の前で弱さを見せるつもりはなかった。

――これから先も、決して。

背後から注がれるのは、男の深く考え込むような視線。

……

十分後。

寒笙はいつもの穏やかな装いで書斎に入ってきた。

室内に足を踏み入れた瞬間、彼は足を止める。

翠乃は床まで届く窓の前に静かに立っていた。

その背中はやはりまっすぐだ。

まるで式典に臨むかのように、隙がない。

――けれど、彼は覚えている。

かつての翠乃は
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