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第1084話

作者: 風羽
一瞬にして、寒笙の胸にあったすべての喜びはひそやかな羞恥へと変わった。

現実は容赦なく彼の頬を打つ。

――ぱんと乾いた音を立てて。

彼はようやく目を覚ました。

寒笙は立ち去ろうとした。

だが、そのとき翠乃が彼に気づいた。

顔を上げ、彼を見つめる。

その瞳には隠しきれない脆さと哀しみが宿っていた。

ぼんやりと、ただ彼を見る――それは新婚当初の翠乃によく似ていた。

あの夜、彼女は何も知らなかった。

彼もまた、初めてだった。

二人は手探りのまま、初めてを迎えた。

新婚の頃、夜はほとんど毎日のように重なった。

それは寒笙が望んだからだ。

若く、血気盛んで、手つきはまだ拙くても、体力だけはあった。

夜になれば、ただ彼女を求めた。

そして、翠乃が衣服を解くときの表情は今と同じだった。

――テレビの電源が切れた。

寒笙は中へ入り、彼女の前にゆっくりと屈み込む。

そっと手を伸ばし、目尻の涙を拭った。

分かっていながら、問いかける。

「……泣いてるのか?」

翠乃は取り繕うように首を振った。

まだ、感情の底から戻れていない。

寒笙の声はさらに低くなる。

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