共有

第111話

作者: 風羽
舞の目に、ふと潤みが差した。

子どもを産めないという事実は、今もなお、心の奥に刺さる棘のように疼いている。

空気がほんの一瞬で冷え込んだ。

京介は、彼女の鼻先にそっと額を寄せながら、低く抑えた声で囁いた。

「まだ何もしてないのに、もう泣いちゃうの?」

舞は彼を押し退けて身を起こし、髪を束ね直した。

細く白い指が髪をかき上げるたび、うなじがちらりと露わになった。

その一瞬の色香が、京介の脳裏に過去の記憶を甦らせた。

どうしようもなく欲しくて、あの細い首筋を噛んで名前を何度も言わせた夜。

「京介……京介……」

彼は、シロの毛を撫でながら、どこか気のない笑みを浮かべた。

「犬を迎えに来た?それとも上原九郎のことで?」

けれど、彼は返事を待たず、内線で食事の用意を指示した。

電話を切ると、いつもの柔らかな声色に戻っていた。

「三ヶ月ぶりにちゃんと会えたんだ。一緒にご飯くらい、どう?」

彼の表情は穏やかで優しくて、まるであの傷つけ合った日々なんてなかったかのように。

まるで——離婚なんて、最初から存在しなかったかのように。

邸内の使用人たちは舞の存在にすぐ気づい
この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1302話

    同じ頃。陽白は専用機に乗り込み、H市へ向かっていた。飛行機が到着し、空港から邸宅へ戻った頃には、すでに深夜二時を回っていた。黒い高級ワゴンが静かに庭へ滑り込む。車を降りた陽白は声を落としていた。話しかけてきたのは夜番の使用人だけだ。「旦那様たちをお起こししますか?」陽白は荷物を手にしたまま首を振る。「いや、いい」使用人は何か言いたげに口を開きかけ――最後には、くすっと笑った。陽白もつられて笑う。「……可愛いだろ?」その言い方がどこか自慢げで、使用人は思わず吹き出した。「それはもう。女優さんより綺麗なくらいですよ」陽白は玄関で靴を履き替えながら、柔らかく笑った。「芽衣の家系は、みんな顔が整ってるんだ。双子の兄がいるけど、そっちも相当だぞ。葉山章真っていう」使用人は驚いたように目を丸くする。「男の子までそんなに綺麗なんですか?それじゃあ、学生時代は女の子たちが放っておかなかったでしょうねぇ」陽白は肩を竦めた。芽衣と章真は双子だ。けれど性格はかなり違う。章真はどちらかと言えば翔雅に似ていた。商売では容赦がなく、恋愛にも派手なところがある。特別女好きというわけではないが、恋人は多かった。海外時代の自分といい勝負だ。それに比べると、芽衣は驚くほど古風だった。陽白はそんなことを思いながら荷物を持ち、三階へ上がる。東側の主寝室。ドアを開けた瞬間、月明かりが室内へ静かに流れ込んだ。灯りをつける気にはなれなかった。ただ、そのまま静かに中を見つめる。ベッドの奥では、芽衣が眠っている。昔から、頭まで布団を被って寝る癖がある。黒髪だけが少し覗き、掛け布団の中には細い人影が浮かんでいた。空気にはシャンプーの甘い香りが漂っている。心地よくて、懐かしい匂いだった。陽白は黙ったまま、その光景を見つめ続ける。――昔、夢見ていた未来と重なった。あの頃。芽衣と結婚する未来を考えなかったわけではない。けれど、最後には自分で手放した。合理性を選び、彼女を切り捨てた。もう忘れたと思っていたのに。この瞬間、当時の感情が鮮明によみがえる。なぜ帰国したのか。なぜ立都市で起業したのか。きっかけは卓史の何気ない一言だった。【お前、芽衣

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1301話

    芽衣はずっと微笑んでいた。車が静かに走り出す。陽白の母は芽衣の隣に座り、陽白の父は前の席へ追いやられていた。運転手は陽白が手配した専属ドライバーだった。陽白が成功してからというもの、両親はH市でも指折りの高級住宅街に暮らし、何不自由ない生活を送っている。けれど陽白の母は昔から親戚や知人への面倒見がよく、困っている人を放っておけない性格だった。そのせいか人望も厚い。今回、芽衣が恵さんと繋がりを持ちたいと話した時も、古河家の義姉が一声かけただけで、あっという間に段取りが整ってしまった。陽白の母は終始ご機嫌だった。頭の中では、もう孫の名前まで考えている。男の子でも女の子でもいい。できれば双子が理想。……とはいえ、そこは若い二人の自由だ。しばらく好きに過ごして、落ち着いた頃に一人でも産んでくれたら、自分と夫で面倒を見たい。もっとも――そんな話を今したら、芽衣に逃げられてしまうかもしれない。だから胸の奥にしまっておく。車内は終始、祝い事の前みたいな空気に包まれていた。陽白の母には、この車がまるで結婚式の送迎車のように思えてならなかった。そのまま車は立都市へ向かう。三十分後。黒い高級ワゴンは約二千平米ほどの広大な邸宅へ静かに入っていった。門を抜け、庭園の灯りが次々と灯る。その光景を見た瞬間――芽衣の胸はわずかに揺らいだ。陽白の母の表情には、誇らしさと幸福が滲んでいる。その顔を見ていると、芽衣はふと思ってしまう。――あの頃、陽白が自分と別れ、海外へ渡った選択は間違っていなかったのかもしれない、と。もちろん、もし自分と結婚していたとしても、陽白なら周防家や一ノ瀬家の事業の中で頭角を現し、両親に同じような暮らしをさせていただろう。けれど、それでも違う。誰もが彼を見て、『周防家の婿』や『葉山芽衣の夫』と呼んだはずだ。陽白自身の才能や努力をここまで真正面から認めてもらえたかは分からない。複雑な気持ちのまま考え込んでいるうちに、車は静かに停まった。陽白の両親は完全に芽衣を未来の嫁として扱っていた。もちろん最低限の礼儀はある。だが、芽衣と陽白は大学時代から付き合っていたし、陽白の母とも以前から親しくしていた。そのため、必要以上によそよそしくはない。家に入

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1300話

    芽衣が了承した瞬間。陽白の母は目に見えて機嫌が良くなった。やがて披露宴が始まる。芽衣は目立ちすぎて新郎新婦の邪魔になるのを避け、終始おとなしく陽白の母の隣に座っていた。ただ、その合間を縫って、芽衣はそっと陽白の父へ恵さんの件を相談する。陽白の父は真面目で堅い性格だ。けれど心の中では理解していた。――芽衣はたぶん息子にとって唯一結婚まで行ける女なのだと。彼はちらりと兄夫婦のほうを見やり、それから芽衣へ言った。「安心しなさい。この件、ちゃんと話を通しておく。後日、おばさんと一緒に食事の席を作ろう。その時に、ゆっくり話せばいい」今回の結婚祝い。彼は三千万円近いご祝儀を包んでいる。そのくらいの顔は立ててもらわなければ困る。芽衣はそっと菊地へ向かって小さくOKサインを送った。ようやく肩の力が抜ける。同時に、心のどこかで思ってしまう。――陽白って、本当に運を持ってるのかも。……どれだけ大人しくしていても、会場ではやはり目立ってしまう。なにしろ新婦は星耀所属女優の大ファンなのだ。これで目立つなというほうが無理だった。新郎新婦が各卓を回って挨拶に来た時。恵さんも新郎側親族として一緒に来ていた。彼女は芽衣を見るなり、少し驚いたような、困ったような顔をする。その瞬間。芽衣は絶妙なタイミングで口を開いた。「叔母さま、今日はおめでとうございます」その柔軟さ。空気を読む力。陽白の母は完全にご満悦だった。――やっぱり商売できる子は違う。親戚付き合いも上手い。陽白の母は自ら芽衣を連れ、恵さんの席へ挨拶に向かう。恵さんは慌てて立ち上がった。芽衣を見つめ、笑みを浮かべる。「なんだ、陽白くんの彼女だったのね。最初から知ってたら、もっと早く会ってたのに。いいわ。日を改めてお茶でもしましょう。ゆっくり世間話しながらね」陽白の母は満面の笑み。「芽衣ちゃん、ほら。叔母さまにちゃんとお礼言って」芽衣は素直に頷く。きちんと頭を下げた。恵さんは少し感慨深そうだった。彼女は芽衣を知っている。立都市の周防家も知っている。財界でも別格の名家だ。商談の席で見せる芽衣はもっと鋭く隙がない。なのに今の彼女はまるで普通の女子大生みた

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1299話

    その時、陽白の母は結婚式へ出席していた。会場はH市でも名の知れた高級ホテル。芽衣は外回りから戻り、ホテルのロビーへ入った瞬間――不意に、陽白の母と鉢合わせた。陽白の母は宴席が始まるまでの間、親族たちとロビーで談笑していたところだった。ふと視線を上げたその瞬間、芽衣の姿を見つける。「芽衣ちゃん!」驚きと喜びが混じった声。芽衣は振り返った瞬間、完全に固まった。――陽白のお母さん。前回は半分付き合っているふりのような形だった。それでも芽衣は彼女のことが本当に好きだった。優しいし、料理は美味しいし、一緒にいると不思議と安心する。だから芽衣は慌てて歩み寄り、素直に頭を下げた。「こんにちはおばさま」菊地も横で挨拶する。「ご無沙汰しております、古河様」その場にいた親族たちはぽかんとしていた。――誰、この綺麗なお嬢さん。しかも秘書まで連れてる。陽白の母はすっかり得意顔になる。にこにこしながら紹介した。「前に話したでしょう?うちの陽白の彼女なの。大学の頃から付き合ってるのよ。この前、私が立都市へ行った時も、芽衣ちゃんがずっと買い物付き合ってくれてねぇ。本当に優しくていい子なの。しかも仕事もすごいのよ。星耀エンターテインメントって知ってる?芸能事務所の。今の人気女優さんたち、何人も芽衣ちゃんが育てたのよ。すごいでしょう?」親族たちは一斉に感嘆の声を上げる。「えぇ~!こんな若いのに?今の若い子って本当にすごいわねぇ。陽白くんとお似合いだこと」……芽衣は少し照れながら微笑んだ。「家業みたいなものです。私は継いだだけなので……」その一言に、親族たちが一斉に陽白の母を見る。「名家のお嬢様なのねぇ」陽白の母はもう嬉しくてたまらない。「芽衣ちゃん、出張で来てるの?ちょうど陽白の従兄が結婚式なの。せっかくだし一緒にお祝いしていきなさいよ。菊地ちゃんも一緒に。おめでたい席なんだから、幸せのお裾分けもらわなきゃ」本来なら、芽衣と菊地はホテルで企画の打ち合わせをする予定だった。けれど、ここまで歓迎されると断りづらい。芽衣は菊地と顔を見合わせ、そのまま一緒に披露宴会場へ向かった。そしてさらに驚いたのは――陽白の母が当然のように彼女

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1298話

    翌朝。芽衣は目を覚ました。今度は完全に意識がはっきりしていた。隣で眠る男を見つめながら、胸の内は複雑だった。諦めたい。でも、積み重ねてきた長い時間を思うと、どうしても手放せない。一緒にいたい。けれど、まだ心の整理がつかない。過去の自分を許しきれず、頭の中はぐちゃぐちゃだった。ちょうどその時。菊地から電話が入った。H市の大口サプライヤーとの交渉が難航しており、相手がどうしても芽衣本人と話したいと言っているらしい。本来なら、こうした案件に彼女が直接動く必要はない。けれど今は――出張に出たほうが少し頭を冷やせる気がした。電話を切ると、芽衣はそのまま荷造りを始める。ある程度まとまった頃。寝室のベッドが小さく軋み、続いて男が起き上がった。そのままクローゼットの前まで歩いてきて、後ろから彼女を抱きしめる。陽白は背が高い。上半身は裸のままで、朝の光の中では眩しいほど絵になっていた。芽衣は鏡越しの彼をまともに見られない。薄い唇が首筋へ触れる。昨夜の余韻を残した掠れ声。「どこ行くんだ?」芽衣は少し考えてから、正直に答えた。「H市。ちょっと仕事でトラブルがあって」陽白は即答する。「俺も行く」芽衣は首を横に振った。それから小さく笑う。「私、子どもじゃないんだから。出張にまで保護者同伴なの?」その言い方が少し間の抜けた可愛さで。陽白はそれがたまらなく好きだった。そして彼はとても頭のいい男だった。押しすぎれば駄目になることを知っている。だからそれ以上は言わず、代わりに彼女の荷物を確認し、シャワーを浴び、簡単な朝食を作り、さらには空港まで車で送る準備までしていた。芽衣は何度も「そこまでしなくていい」と言った。けれど陽白は譲らない。朝の光を受けながらハンドルを握る横顔はやけに整って見えた。「芽衣。今の俺、一応お前を口説いてる途中なんだ。これくらい、未来の彼氏なら普通にやるだろ」彼女は他の女とは違う。金でもない。時間でもない。ちゃんと心で向き合いたい。芽衣は何も返せなかった。昨夜の余韻もあり、正直まだ身体がだるい。男は静かに運転を続ける。昨夜のことは流れたものだと思っていた。けれど空港の駐車場へ着き、陽白がシ

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1297話

    芽衣は男の胸にもたれかかっていた。三十二歳の陽白。若さだけではない、大人の男の空気を纏った陽白だった。煙草の残り香すらどこか色気に変わってしまう。成功を手にした男。きっと、多くの女が好きになる男。芽衣も、やっぱり好きだった。でも――それ以上に、苦しかった。彼は本当に自分と一緒にいたがっている。そう分かるからこそ、余計につらい。芽衣は今にも泣きそうな声で呟いた。「陽白……私、本当に悔しいの。今でもすごく腹が立つし、あの頃の自分の何が駄目だったのか分からない。どうして、あんなふうに捨てられたのかも。一緒にいたいって思うのに……でも一緒にいたら、昔の私に申し訳なくなるの。陽白……この気持ち、分かる?」……男は彼女を抱きしめたまま、甘やかすように答えた。「分かるよ。芽衣、ちゃんと分かってる。もう置いていかない。どこへ行くにも、お前を連れて行くから。全部、俺が悪かった。自由ばかり欲しがってた。変なプライドと自尊心に縛られて、お前の家に入る男にはなりたくなかった。でも、俺はお前の存在を軽く見すぎてた。だから戻ってきたんだ。芽衣。俺、お前のところへ戻ってきた。……嬉しくない?」女はまだ、弱々しい声だった。「全然、迎えに来た感じじゃない。いっぱい彼女いたじゃない。あの食事会で見たもん。みんな脚長くて、綺麗で……まるで妖精みたいな女の人ばっかり。陽白は遊び尽くして、そろそろ落ち着きたくなっただけ。それで、一番馬鹿で騙しやすい私を思い出したんでしょ」……男はさらに強く抱きしめた。赤ん坊をあやすみたいに。「そうだな。俺の芽衣は一番素直で可愛い。だから……また一緒にいよう?」そう言うと、彼はそのまま口づけた。少しずつ。優しく。最初、芽衣は抵抗していた。けれど彼の甘い誘導に逆らえず、いつの間にか唇を開いてしまう。深く。もっと深く。最後には唇を噛みながら彼の胸へ逃げ込み、それ以上はもう駄目だと首を振った。陽白はずっと彼女を抱きしめ、優しく宥め続ける。そのとき。ぐぅ……と間の抜けた音が鳴った。芽衣のお腹だった。せっかくの甘い空気が一瞬で崩れる。陽白が視線を落とす。芽衣は唇を噛み、居心地悪そう

  • 私が去った後のクズ男の末路   第960話

    夕方になり、夕梨は目を覚ました。意識が戻った途端、腰はだるく、全身がばらばらになったように痛む。……彼女はゆっくりと寝返りを打ち、柔らかなベッドに仰向けになって、手で照明の光を遮った。けれどしばらくすると、じっとしていられず、布団を跳ねのけ、裸足のまま分厚いウールのカーペットを踏みしめ、寝室の大きな窓の前へ行く。手を伸ばしてカーテンを引くと、目に飛び込んできたのはスイスのユングフラウだ。連なる雪山。山頂には白い雪が厚く積もり、麓には濃く鮮やかな緑が広がっている。――息を呑むほど、美しい。胸が弾み、黒い男物のシャツ一枚を身にまとったまま、彼女はソファの背に身を

  • 私が去った後のクズ男の末路   第980話

    夜の帳が静かに下りていた。尖った月が、低く木の梢に掛かっている。一台の黒いベントレーが、先ほど来た道を引き返していた。通常なら三十分はかかる道のりを、わずか二十分で駆け抜ける。マンションのドアには内側から鍵が掛かっていたが、寒笙が強引に体当たりをして打ち破った。室内は静まり返っているわけではなかった。古い蓄音機がレコードを回しており、寒笙が愛してやまない西洋のバラードが流れていた。かつて、栞が彼と寄り添い、親密に踊り明かした曲だ。だが今は、その旋律がまるで運命の鎮魂歌のように聞こえた。栞は自ら命を絶とうとしていた。彼女は、精巧なまでの死に様を選んだ。――それ

  • 私が去った後のクズ男の末路   第971話

    寒真が昂ぶった様子を見せれば、それは必然的に、己の身を捧げるような激しい情愛へと繋がっていく。だが、夕梨はそれを拒んだ。彼の胸元に手を添え、小さな声で諭す。「あと三十分で空港へ向かわなきゃいけないのよ。少しゆっくりお話ししましょう。それに、あんまりしすぎると体に障るわ」しかし、男はすっかりのぼせ上がっており、なりふり構わず彼女に口づけを落とした。「体に障るなんてことないさ。俺の体力を見くびるなよ」確かに彼は、牛のように逞しく、溢れんばかりの生命力に満ちていた。対する夕梨は、二月の風に揺れる柳のようにしなやかで儚げだった。結局、どうにかそのひとときは終わりを迎えた

  • 私が去った後のクズ男の末路   第963話

    月が中天に掛かり、その淡い光を浴びた人影は、淡い琉璃色を纏ったかのようだった。輪郭はぼやけ、どこかおぼろげで定かではない。夕梨は、思わず足を止めた。寒笙とは、わずか二歩分の距離しかない。だが実際には、二人の間には六年の歳月と、生と死の境界というあまりに深い溝が横たわっていた。あの日以来、彼の死を信じるほかなかった彼女には、さよならを告げる会さえ与えられなかった。遺体はおろか、遺品の一つすら見つからなかったからだ。そして今、彼は戻ってきた。それでも、やはりさよならは言えない。あの頃、二人の関係は、始まる前で止まっていた。そして今、彼には妻がいて、彼女は彼の兄の恋人だっ

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status