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第269話

Auteur: 風羽
南郊の湖面には、金色の光がゆらゆらと揺れ、見えない再会が静かに浮かんでいた。

一つの灯りが水に漂いながら、心の奥へと波紋のように広がっていく。

舞は岸辺に立ち、その灯が遠くへ、どこまでも遠くへ流れていくのをじっと見つめていた。

きっと——あの先に、お婆さんがいる。

おばあちゃん、舞、戻ってきたよ。

わたしね、根津坂町にも行ってきたの。昔一緒に住んでたあの場所、いまじゃ高層ビルだらけで、もうあの頃の面影はなかった。

でもね、百年も経ってる銀杏の木は、まだそこにあったよ。あの木の前が私たちの家だった。

あの通りで、春雨と野菜の煮込みを頼んで食べたんだけど……やっぱり、おばあちゃんの味にはかなわなかった。

澪安も澄佳も大きくなったよ。

そしてね、澪安のために、わたし……もう一人、赤ちゃんを授かったの。名前は、周防願乃。

おばあちゃん……舞は、ずっとずっと、あなたに会いたかったよ。

……

舞は、ずっと湖のほとりに佇んでいた。

夜空に雪が舞いはじめ、ようやく身体を返したとき、そこに京介がいた。

男も黒いコート姿で、静かな眼差しには、かつての記憶が静かに沈んでいた。

しばらくして、彼が歩み寄り、そっと彼女を抱き寄せた。

かすれた声で舞に言った。

「……冷える。帰ろうか」

けれど舞は彼の腕をそっと握り、空を仰ぐようにして、ひらひらと降る雪を見つめながらぽつりとつぶやいた。

「京介……人に魂って、あると思う?」

京介には答えられなかった。

けれど、ひとつだけ確かにわかっていた。

——自分は、永遠に舞に償いきれない。

……

別荘に戻ると、京介は舞を連れて二階へ上がり、使用人に生姜湯を頼んだ。

窓の外には細かな雪が舞い、室内は春のようなぬくもりに包まれていた。

今日は特別な日——舞の表情は終始沈んでいた。ほとんど何も話さなかった。

京介はソファの前で片膝をつき、彼女の手をそっと握る。

「……これから、もし昔を思い出して苦しくなったら、俺がそばにいる。ずっと一緒にいるから、いいだろう?」

舞は顔を伏せていたが——

やがて、ゆっくりと彼を見つめ返した。

目と目が合った瞬間、言葉にはできない苦さが胸を走る。

京介は微笑んだ。

ああ、彼にはわかっていた。舞の愛も憎しみも迷いも、全部。

そっと涙を拭ってやりながら、低く語りかける
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