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第903話

Author: 風羽
そのキスマークは、耳の後ろにうっすら赤く残っていて、どう見てもついさっき刻まれたばかりのものだ。

一目で、熱の余韻そのままの痕跡だと分かる。

夕梨はもう世間知らずの少女ではない。

その意味くらい、痛いほど理解していた。

寒真に対してとっくに恋心など持っていないし、本気で愛したこともない。

それでも、やはり胸のどこかがざらついた。

彼女の視線があまりに真っ直ぐだったのだろう。

寒真はそれに気づき、無意識に指先でその痕をさわった。

空気が、途端に微妙な色合いになる。

夕梨は前方を向いたまま、細い喉をきゅっと緊張させ、静かに言った。

「前にミルクティーのお店がありましたよね。買ってきてください。飲めば少しは温まりますから」

寒真は悟った。

――彼女は、自分を追い払いたいのだ。

一緒にいる時間を望んでいない。

だが彼は何も言わず、すぐに車を降りた。

そして驚くほど早く戻ってきた。

何年も経ったはずなのに、夕梨がジャスミンミルクティーが好きだということを、ちゃんと覚えていた。

ちょうどそのとき、レッカー車が到着した。

寒真は夕梨にミルクティーを手渡し、自分はス
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良香
これは夕梨ちゃんが好きだった彼の影でしかない、と知った寒真の心持ちが知りたい。 大人の男なら、それすら受け止めてやれよ。 そうでないなら、澄佳から言われたように、近づくな。
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