LOGIN余命宣告を受けたその日、久我千景が目にしたのは、最愛の夫・玲司が、初恋の女である鷹宮香澄とその子供の誕生日を優しく祝う姿だった。 かつては、誰よりも真摯に千景のバイオリンに耳を傾けてくれた優しい夫。 けれど今の玲司は、冷徹な瞳で千景を睨み、妻としてではなく、まるで憎むべき相手のように扱ってくる。 大学時代の先輩・成瀬奏人に支えられながら、千景は少しずつ真相へと近づいていく。 しかしその一方で、玲司はまるで正気を失ったかのように、痛みを滲ませた執着を千景へ向け始める。 「頼む……俺から離れないでくれ」 縋るように告げる玲司を、千景は冷めた瞳で見つめ返した。 「私はもう、あなたに愛されたいとは思っていない」
View More「申し上げにくいのですが……久我さんに残された時間は、このままだともうあまり多くありません」
「え……?」 真っ白な診察室で、私は医師の言葉を聞き返すことしかできなかった。 久我千景(くが ちかげ)。 それが、私の名前だ。 数年前の事故で負った怪我の経過を見るため、いつものように病院へ来ただけだった。 今日も、形式ばかりの説明を受けて終わる。 そう思っていた。 けれど、医師の口から告げられたのは、あまりにも予想外の言葉だった。 「先日の血液検査と追加検査の結果、久我さんは血液を作る骨髄そのものが壊れていく病気だと分かりました」 「血液を作る骨髄が壊れる病気……?」 自分の口からこぼれた声が、ひどく遠くに聞こえた。 「はい、簡単に言えば白血病に進行する危険のある血液の病気です」 頭の中が、真っ白になった。 医師はその後も何かを話していた。 治療方針。入院。今後の生活。痛みを和らげるための処置。 けれど、そのどれもが水の中で聞く声のようにぼやけて、意味を持たなかった。 なぜ、私が。 何か悪いことをしたのだろうか。 少なくとも、こんな目に遭わなければならないほどのことをした覚えはない。 悲しみも、恐怖も、怒りも、全部が一度に押し寄せてくる。 息の仕方さえ分からなくなった。 「久我さん。聞こえていますか?」 肩を軽く叩かれ、はっと顔を上げる。 医師が心配そうにこちらを覗き込んでいた。 「あ……はい」 「入院して、今後の治療方針を相談していくことをお勧めします。ご家族の方には、こちらからも説明を……」 ご家族。 その言葉に、私は自嘲気味に笑うことしかできなかった。 「……相談してみます」 それだけ告げて、私は病院を後にした。 外の空気は、いつもと変わらなかった。 行き交う人の声も、車の音も、空の色さえも。 世界は何ひとつ変わっていない。 変わったのは、私の人生だけだった。 震える手でスマートフォンを取り出す。 夫の久我玲司(くがれいじ)に連絡しようとした、その時だった。 通知音が鳴った。 画面に表示されていたのは、インスタグラムの通知。 普段、SNSなどほとんど投稿しないはずの玲司が、写真を更新していた。 嫌な予感がした。 見てはいけない。 開いてはいけない。 頭ではそう分かっていたのに、憔悴しきった私の指先は、勝手に画面をなぞっていた。 表示されたのは、一枚の写真。 大人の男女の手が、小さな子どもの手を包み込んでいる。 幸せを切り取ったような、温かい写真だった。 コメント欄には、私の親友である鷹宮香澄(たかみやかすみ)の名前があった。 『いつもありがとう。これからもよろしくね』 心臓が嫌な音を立てた。 私は震える指で、香澄の投稿へ飛ぶ。 そこにあったのは、まるで幸せな一家三人を写したような家族写真だった。 『1st Birthday。健やかに、幸せに育ってね。』 「……なんで」 声が震えた。 「なんで、よりによって……こんな日に……」 スマホを持つ手が震える。 落とさないように両手で握りしめても、指先の震えは止まらなかった。 私はスマホを額に押し当てる。 その瞬間、脳裏に二年前の光景が蘇った。 台風が通り過ぎた翌日のことだった。 あの日の空は、不気味なほど晴れていた。 私のお腹の中には、玲司との子どもがいた。 安定期に入ったとはいえ、まだ油断できない時期。できることなら、家で安静に過ごしていたかった。 けれど、その日は香澄の誕生日だった。 『せっかくだし、三人でお祝いでもしよう』 そう言ったのは、玲司だった。 親友の誕生日を嫌がるなんて、心の狭い女みたいだったから。 それに、玲司に嫌な顔をされたくなかったから。 だから私は、無理をしてでも外へ出た。 正直に言えば、最悪だった。 妊娠中の私には避けたい食材も多く、食べられないものを告げるたび、玲司は露骨に不機嫌な顔をした。 そのせいで私は終始、彼の顔色ばかり窺うことになり、料理の味なんてほとんど覚えていなかった。 「今日は本当にありがとう」 「だから、もう何回目だよ」 運転席の玲司が苦笑する。 「そんなに言わなくても、ちゃんと伝わってるって」 「だって嬉しかったんだもん」 助手席の香澄は、甘えるように笑いながら玲司の腕に触れた。 その距離の近さに、胸の奥から吐き気が込み上げる。 香澄は昔から距離感が近い。 玲司も、それを嫌がる素振りを見せたことは一度もなかった。 まるで、それが当たり前みたいに。 後部座席には、妻である私がいる。 それなのに二人が並ぶ姿は、傍から見れば恋人同士のようだった。 以前、それとなく指摘したことがあった。 その時、玲司は露骨に顔をしかめた。 『お前の親友だから、無下にできないだけだろ』 そして、苛立ったように吐き捨てた。 『なんだよ。自分の夫と親友が、そんなに信用ならないのか?』 その言葉に、私は何も言い返せなかった。 私がおかしいのだろうか。 嫉妬深いだけなのだろうか。 そう思うようにして、ずっと飲み込んできた。 だから今日も、私は黙って後部座席に座っている。 フロントガラスの向こうには、昨日の台風の爪痕が残っていた。 川の水は濁り、道路脇には折れた枝や土砂が流れ込んでいる。 「昨日の台風、すごかったもんねぇ」 香澄が呑気にそう言った。 「ニュースでも、山道の通行止めとか結構やってたし」 「ああ。この辺も危ない場所あるらしいからな。早めに帰るぞ」 玲司がそう答えた、その時だった。 ――ゴゴゴゴゴッ!! 地鳴りのような轟音が響いた。 「え……?」 車体が激しく揺れる。 次の瞬間、視界の端で茶色い何かが崩れ落ちるのが見えた。 「玲司っ――!」 叫ぶより早く、凄まじい衝撃が車を襲った。 何かに横から叩きつけられ、車体が大きく回転する。 ガラスの割れる音。 潰れる鉄の音。 香澄の悲鳴。 世界がぐしゃぐしゃに混ざっていく。 お腹を庇おうとして、身体を丸めた瞬間、激痛が走った。 何か重たいものが、下腹部へ食い込む。 「あっ……ぁ……!」玲司の言葉が、胸の奥深くへ突き刺さった。 息ができず、目の前にいる玲司の顔も、墓石に刻まれた名前も、すべてが滲んでいく。「私が……紗良さんを……?」 ようやく絞り出した声は、自分のものとは思えないほど掠れていた。 事故に遭ったことは覚えている。激しい衝撃と、全身を焼くような痛み。 目を開けたときには、真っ白な病室の天井があった。 けれど、その裏側で一人の少女が命を落としていたなんて、知るはずもなかった。「三年前、俺は紫苑医科大学附属病院に残されていた内部資料を調べた。正式な手術記録だけじゃない。変更前の予定表や看護記録、当直医が残した報告書までだ」 玲司が私へ視線を戻す。「朝霧美玲は、娘であるお前の命を救うことを選んだ。紗良の命と引き換えにな」 視界がぐらりと揺れる。 倒れそうになり、私は墓石へ手をついた。 冷たい石の感触が、掌から身体の奥まで伝わってくる。「突然、執刀医が変更されたことで現場は混乱する。手術の手順も人員も組み直さなければならなかっただろうから引き継ぎにも時間がかる」 玲司は吐き捨てるように言う。「そこまでのことは記録なんてされたないが、容易に想像がつく。それで紗良の手術は遅くなった」 玲司は、手のひらから血でも出るんじゃないかと思うほど拳を握りしめた。「ようやく手術を始めたときには、紗良の容体はさらに悪化していた。大量出血を止めることができず、手術中に死んだ」「そんな……」 お母さんが私の命を救おうとしたことを、責めることなどできなかった。 けれど、その結果として紗良さんが死んだのだとすれば、私は何を思えばいいのだろう。「病院は、紗良の死を事故による損傷が激しく、救命が困難だったためだと処理した」「それは、嘘だったの?」「紗良の怪我が重かったことは事実だ。美玲が執刀していれば、必ず助かったとも言い切れない」 玲司の言葉に、わずかに息を吐く。 けれど、安堵することなど許されなかった。「だが、助かる可能性はあった」 玲司は低く言い切った。「その可能性を奪ったのは、突然の担当変更と、それによって生じた手術の遅れだ」 胸が締めつけられる。「正式な記録には、美玲が紗良の手術に関わる予定だったことは残されていない。執刀医の欄には、実際に手術を担当した医師の名前しかなかった」「
【玲司side】 紗良と初めて言葉を交わした日のことは、今でも覚えている。 星見の丘へ預けられて間もない頃、俺は施設の裏庭にある古びたベンチに、一人で座っていた。 ここでは誰も信用するつもりはなかった。 そんなふうに思っていた俺の隣へ、紗良は何の断りもなく腰を下ろした。「これ、半分あげる」 差し出されたのは、小さな袋に入ったビスケットだった。「いらない」「でも、お腹鳴ってるよ」「鳴ってない」「鳴ったよ。ぐうって」 紗良はそう言って笑うと、ビスケットを二つに割った。 力加減を間違えたのか、片方は大きく、もう片方は随分と小さかった。 紗良はそれが当然だと言うように、大きい方を俺へ差し出した。「こっち、お兄ちゃんの分」「俺はお前の兄貴じゃない」「私より大きいから、お兄ちゃんでいいの」 勝手なことを言う奴だと思った。 それなのに、差し出されたビスケットを拒むことはできなかった。 口に入れると、ひどく甘かった。 それから紗良は、何かにつけて俺の後をついて回るようになった。 眠れない夜には、職員に見つからないよう廊下を抜け出し、俺の布団へ潜り込んできた。「また怖い夢を見たのか」「見てないよ」「なら戻れ」「お兄ちゃんが怖い夢を見そうだったから来たの」 紗良はそう言い張り、布団の中で俺の手を握った。 その温もりがある間だけは、母を失った夜のことを思い出さずに眠ることができた。 紗良が年上の子供たちに囲まれていたこともあった。 大人しくて言い返せない紗良は、配られたばかりの菓子を奪われそうになっていた。 気づけば俺は、相手の胸倉を掴んでいた。 殴られ、地面に倒されても、紗良の前から退かなかった。 騒ぎを聞きつけた職員が来る頃には、俺の頬は腫れ、手のひらから血が滲んでいた。「お兄ちゃんの馬鹿」 医務室から包帯を持ち出してきた紗良は、泣きながら俺の手に巻きつけた。 包帯は緩く、結び目も不格好で、少し指を動かしただけで解けそうだった。「下手くそだな」「うるさい。お兄ちゃんが怪我するから悪いんだよ」「お前が何も言い返さないからだろ」「だって、お兄ちゃんが助けてくれると思ったから」 あまりにも真っ直ぐに言われて、俺は何も返せなかった。 血の繋がりなんて関係なく。紗良にとって俺は
「一体……どういうこと?」 玲司の言葉をうまく理解できず、私はかすれた声で問い返した。 久我家に妹などいなかったはずだ。 玲司はすぐには答えず、墓石に刻まれた名前を見つめた。「白峰紗良。血の繋がりはない。だが、俺にとっては本当の妹のような存在だった」「紗良……」 玲司がそう呼んだ少女の写真へ、もう一度視線を落とす。 何度見ても、そこに写っているのは幼い頃の私にしか見えなかった。 丸みを帯びた頬も、大きな瞳も、笑ったときにわずかに下がる眉尻も。 他人の空似というには、あまりにも似すぎている。 玲司の話を聞かなければならない。そう思うのに、私は写真から目を離せなかった。「俺は久我家の会長――あのクソ親父が、外の女に産ませた子供だ」 吐き捨てるような声に、私は顔を上げる。「母親が死んだ後、星見の丘へ預けられた。その頃の俺は、久我ではなく水瀬を名乗っていた」「水瀬……玲司」 施設で見つけた絵。 その裏に記されていた、少年の名前。 彼なのではと感じていたそれを、玲司本人の口から突きつけられる。 胸の奥で、散らばっていた欠片が音を立てて繋がった。「やっぱり、あの絵を描いたのは……」「お前……星の丘に行ったのか? そうだ、あの絵を描いてのは俺だ」 玲司は短く答えると、目を伏せた。「紗良とは、星見の丘で出会った。あいつも俺も、大切なものを失っていた。だからなのかもしれない。気づけばいつも一緒にいた」 硬かった玲司の声が、ほんの少しだけ和らぐ。「泣きたいときも、腹が立ったときも、紗良の前でだけは取り繕わずにいられた。あいつは俺を兄と呼び、俺も……本当の妹だと思っていた」 その横顔は、私の知らない玲司のものだった。 冷たくも、傲慢でもなく失ったものを今も大切に抱えている、一人の少年のように見えた。 けれど、その穏やかさは長くは続かなかった。 玲司の口元が歪む。「それなのに、あの男は突然俺を久我家へ引き取った。何年も存在を認めず放置していたくせに、跡取りが必要になった途端にな」 玲司は鼻で笑った。 だけど、その声音に滲んでいたのは嘲りではなく、消えきらない憎悪だった。「久我の人間として生きるなら、それまでの自分はすべて捨てろと言われた。名前も、暮らしも、星見の丘での記憶も。そして、紗良との関係も
準備を終えたあと、私は屋敷の外へ出た。 黒い車の運転席側に立った玲司が、無言でキーを開ける。 ——今日、すべてを教えてやる。 そう告げてきた玲司の言葉が頭から離れず、心臓が嫌な音を立てている。 私は助手席に乗り込み、震える手でシートベルトを掴んだ。 けれど、金具がうまく差し込めない。 カチリ、と鳴るはずの音が鳴らず、何度も手元が滑る。「……」 焦れば焦るほど、指先に力が入らなくなった。 シートベルトは私を嘲笑うように何度も外れた。 その時、玲司が無言で身を乗り出してきた。「え……」 低い体温を纏ったような彼の気配が、一気に近づく。 玲司の腕が、私の身体の前を横切る。 彼の袖口から、ほのかに香水の匂いがした。 心臓が、嫌になるほど大きく跳ねる。 彼の指先が、私の手元に触れそうな距離を通り過ぎる。 包帯を巻いた前腕が視界に入った。 三日前、私を庇って傷を負った腕。 その白い包帯が、胸の奥に生々しい痛みを残す。 玲司の横顔はすぐそこにあった。 少しでも顔を動かせば、頬が触れてしまいそうな距離。 息をすることさえ、許されないような気がした。 ——カチリ。 シートベルトが締まる音が、やけに大きく響いた。 玲司は何事もなかったように身を離す。 ただそれだけだった。 なのに、私の鼓動は先ほどまでの嫌な音ではなくなっていた。「……ありがとう」 かろうじてそう呟くと、玲司は何も答えずに車を発進させた。 車は静かに屋敷の門を抜け、窓の外の景色が流れていく。 車内に会話はなく玲司は前を見たまま、淡々とハンドルを握っている。 その横顔は冷たく整っていて、何を考えているのかまるで読めない。 沈黙に耐えかねたわけではないだろう。 不意に、玲司がカーラジオのスイッチを入れた。 流れてきたのは、明るい音楽ではなかった。 淡々としたニュースの報道音声だった。『三日前、紫苑医科大学附属病院で発生した傷害事件について、逮捕されていた元看護師長の黒崎真知子容疑者が、昨夜、留置施設内で死亡していたことが分かりました。警察は自殺とみて詳しい経緯を調べています』 息が止まった。 黒崎看護師長。 あの人が、死んだ。 頭の中で言葉の意味がうまく繋がらない。 けれど、
シェルネージュのワンピースに身を包んだ香澄は、当然のような顔で店員へバッグを預けた。「こちら、本日入ったばかりの商品でございます」 店員は先ほどまでとは打って変わって、へりくだった笑みを浮かべている。 そして次の瞬間。「奥様、こちらのネックレスなどいかがでしょう?」 その呼び方に、私の思考が止まった。 ――奥様? 香澄は独身のはずなのに、一体誰の妻だというのだろう。 いや、分かっている。 私の中では、もう答えが出ているけどそれを認めたくないだけだ。 胸の奥が、じわりと冷えていく。 店員が、私ではなく香澄を玲司の妻だと思い込むほどに、玲司と香澄は二人でこの店に頻繁に来てい
面会を終えてICUの外へ出ると、今度は事務員が私を待っていた。「久我様、入院手続きと費用についてご説明があります」「……費用?」「集中治療室での管理になりますので、通常の入院より費用が高額になる可能性があります。また、今後の治療内容によっては、保険適用外の費用や差額室料、保証金なども発生いたします」 事務員はそう言って、差し出してき書類を受けとる。 私はそこに記載された金額を見て、息が止まった。「……こんなに?」 私の貯金をすべて使っても、到底足りない額だ。「まずは入院保証金として、こちらの金額をお願いしております」「今日中に、ですか?」「原則としては二十四時間以内です
息ができない。 視界が滲む。 潰れた車体と瓦礫の隙間から、かろうじて外の光だけが見えていた。 遠くで、誰かの声がする。「香澄! 大丈夫か!?」 切迫した玲司の声で、意識が引き戻された。 私は必死に顔を上げる。 けれど、玲司が真っ先に駆け寄ったのは、私ではなかった。 助手席側にいた香澄だった。「やだ……っ、痛い……!」「大丈夫だ。今助けるからな!」 香澄は泣いていた。 腕から血を流していたけれど、意識ははっきりしている。身体も動いている。 それなのに玲司は、瓦礫に押し潰された私ではなく、真っ先に彼女の方へ駆け寄った。 私は……? 声を出そうとしても、喉が震える
「申し上げにくいのですが……久我さんに残された時間は、このままだともうあまり多くありません」 「え……?」 真っ白な診察室で、私は医師の言葉を聞き返すことしかできなかった。 久我千景(くが ちかげ)。 それが、私の名前だ。 数年前の事故で負った怪我の経過を見るため、いつものように病院へ来ただけだった。 今日も、形式ばかりの説明を受けて終わる。 そう思っていた。 けれど、医師の口から告げられたのは、あまりにも予想外の言葉だった。 「先日の血液検査と追加検査の結果、久我さんは血液を作る骨髄そのものが壊れていく病気だと分かりました」 「血液を作る骨髄が壊れる病気…
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