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第948話

Author: 風羽
紀代はすぐに続けた。

「そうなの。いきなりでごめんなさいね。いっそ誕生日は改めてにして、今夜は二人の時間にしたら?」

寒真は片手で額を押さえた。

それでも夕梨を見る視線はひどく優しく、温もりに満ちている。

「せっかく来たんだ。一緒に食事しよう」

アシスタントがすかさず口を挟む。

「朝倉監督、お料理すごくお上手なんです」

彼女は夕梨に向かって笑い、軽く手を振った。

「私は佐藤里奈(さとう りな)です。岸本さん、以前お会いしましたよね」

三年前から、彼女はずっと寒真のそばで仕事をしている。

夕梨ももちろん覚えていた。

この場で踵を返すのは寒真の両親に対しても失礼だし、自分の家族に対しても不誠実だ。

夕梨は何も説明せず、寒真の顔を立てるように挨拶をし、スノーをキャリーから出した。

紀代は目を細める。

「まあ、可愛い。寒真が贈ってくれたの?最近、この子ったらずいぶん優しくてね」

寒真は上着を脱ぎ、夕梨のコートと並べて玄関に掛け、室内用のスリッパまで用意してやる。

その一連の所作に、紀代はすっかり満足した様子だった。

――これはもう、先のことまで見えてきたわ。

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