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第5話

Author: 涼木
玲奈が自殺した。遺書を残し、海に身を投げたのだ。

遺書には、私が妊娠していることに触れ、自分のことで家族がもめるのは望んでいないと書かれていた。一見すると、私をかばっているように読めた。

表向きは、私を気遣う遺書だった。だが、その内容は、玲奈を家族思いの優しい妹に、私を身勝手で薄情な姉に見せるものだった。私をかばうふりをしながら、実際には私を責め、おとしめていた。

父も母も、怜司まで、あの遺書を疑いもせず鵜呑みにした。

3人は私に無理やり中絶手術を受けさせると、そのまま玲奈の葬儀会場へ連れていき、遺影の前で土下座させた。

痛みで気を失っても、3人は冷水を浴びせて無理やり目を覚まさせ、罵った。

「玲奈を死なせておいて、倒れて済むと思ってるの!まるで反省してないじゃない!」

母は私につかみかかり、力任せに殴り続けた。どうして死んだのがあんたじゃないのかと、何度も何度も私を責め立てた。

父は、母に殴られる私を止めようともせず、呆れたようにため息をついた。

「お前が生まれたとき、そのまま首を絞めておけばよかった」

最後に、怜司は私の傷に包帯を巻きながら、いい加減、自分が悪かったと認めろと言った。

さらに、玲奈の遺影の前で正座して心から謝れば、今回のことは水に流して、また夫婦としてやり直してもいいと言った。

もう、何もかもに疲れ切っていた。まるで自分だけが私を許す立場にいるかのように話す怜司が、吐き気がするほど嫌だった。

怜司は何度も私を置き去りにし、家族と一緒になって私を傷つけ、最後には赤ちゃんまで死なせた。その時点で、私たち夫婦はもう終わっていた。

私は怜司を見て、はっきりと告げた。

「もう終わりよ、怜司。この先、一生あなたと関わるつもりはない。離婚しましょう」

怜司はあっけに取られ、しばらく私を見つめていた。やがて、私の手首を強くつかんだ。

「紗奈、お前は俺のためなら命だって惜しくないと言ってただろ。それなのに、俺と別れるだと?まさか本当に、ほかに好きな男が……いや、違う。離婚を持ち出せば、俺が折れて、お前を許すとでも思ったのか?」

怜司は、さらに手に力を込めた。

「そこまで自分の罪を認めたくないなら、玲奈と同じ苦しみを味わえ。お前が自分の罪を認めるまで、絶対に許さない!」

その後、私は海辺へ連れていかれた。

海から突き出た岩に縛りつけられ、体の半分まで海水につかっていた。

少し離れた場所では、父と母が手をたたきながら、「怜司さん、よくやってくれた」「これで少しは懲りるでしょう。玲奈が海で味わった苦しみを、紗奈にも思い知らせてやればいい」と、声を上げて喜んでいた。

ふたりの言葉は、私のところまではっきりと届いた。

……

私が死んだ今も、両親は変わらなかった。護衛が私をかばったと聞くと、ふたりは怜司のもとへ駆けつけ、私をののしり続けた。

「紗奈が見殺しにしなければ、玲奈は死なずに済んだのよ!私たちがどれだけ苦労して紗奈を育てたと思ってるの?それなのに、こんな恩知らずになるなんて。あんな子、もう娘でも何でもないわ!」

「紗奈はうちへ戻ってきた頃から、玲奈をいじめてばかりだった。何年も言い聞かせてきたんだから、少しは変わると思っていた。ところが、前よりひどくなる一方じゃないか。

怜司さんにあれだけ大事にしてもらっておきながら、裏切るようなまねまでして……本当に救いようがない!」

「本当よ、怜司さん。紗奈なんか、簡単に許しちゃだめよ!」

怜司は顔をこわばらせ、父と母に約束した。

「お義父さん、お義母さん、安心してください。あいつには、きっちり償わせます」

自分たちで私を傷つけておきながら、まるで自分たちが被害者のように私を責める。よくもここまで話をすり替えられるものだ。

私があの人たちを裏切ったなんて、笑わせないでほしい。お望みどおり、私は命まで差し出した。

どんな反応をするのか、むしろ楽しみだった。私が死んだと知ったら、祝杯でも挙げてお祝いするんだろうか。

スマホが鳴り、怜司が届いた画像を開いた。

画面には、私が縛られていた岩の周りが写っていた。辺りの海面は血に染まり、私が着ていた服の切れ端が浮いていた。

続けて、現場に残っていた護衛から電話がかかってきた。

「社長、奥様の身に何かあったようです!」

「電話を切るな。今すぐそっちへ行く!」

怜司の声は震えていた。顔は真っ青だった。上着をつかみ、部屋を飛び出そうとした。

そのとき、秘書が部屋へ飛び込んできた。

「社長、玲奈さんが見つかりました!」

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