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Author: 甘寧
last update Huling Na-update: 2025-07-23 14:55:53

「それで家出したって?」

煙草を吹かしながら不貞腐れように枕を抱えるシャルロットに声をかけるのは、親友のドロシー。

漆黒の髪に切れ長の目で妖艶に微笑む姿は、同性であるシャルロットでも思わず息を飲むほど美しい。

煙草を咥え、素足を晒して脚を組む姿はとても令嬢とは思えいないが、これでも立派な侯爵令嬢。自由奔放で淑女とはほど遠いが、ありままの自分を隠そうとしない姿が格好良く、憧れている者も多い。

「まあ、こちらはいつまで居てくれても構わないよ」

「本当!?」

「あの男の事だ。あんたがここに居ることは把握してるだろうしね。ゆっくりして行きな」

男前発言に目に涙を浮かべて喜んだ。

そんなシャルロットに「きっとすぐに迎えが来るんだろうがな」とは言えず、言葉を飲み込んだ。

すぐ迎えに来ると思っていたが、一日、二日と何事もなく日が過ぎ、更に三日、四日と日が経った。

「お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

タイトで艶やかなドレスを纏ったドロシーに祝いの言葉をかけた。

今日はドロシーの誕生パーティー当日。

家出を決行してから数日、クライヴからの連絡は一切ない。あれだけ行動を制限していたんだから、すぐに怒鳴り込んでくるかと思っていたシャルロットも拍子抜け。

しかし、こうも静かだと逆に心配になってくる自分もいる。

「クスクス」

眉を顰めて外を眺めていると、ドロシーの楽しげに笑う声が耳に届いた。

「連絡がなければないで心配になるとは、あんたも大概だね」

「そ、そんな事ない!清々してるわよ」

「そうか?私はそうは見えないがな」

そんな揶揄う言葉をかけられながら、招待客の待つ広間へと急いだ。

広間の扉を開ければ、そこは別世界。煌びやかで賑やかな光景が目に飛び込んできた。毎年広間を覆いつくほどの人に圧巻される。

主役であるドロシーが足を踏み入れれば、すぐにワッとその場が湧き上がる。ドロシーの周りにはあっという間に人だかりが出来上がり、人柄が分かるように笑顔で一人一人に挨拶をして行く。こうなるとシャルロッテは完全に蚊帳の外。

まあ毎度の事なので慣れたもの。グラスを手にして壁際に寄り、人が掃けるのをジッと待つ。

一つ目のグラスが空になり、二つ目のグラスに手を伸ばした所で「こんばんわ」と声がかかった。チラッと見ると、色眼鏡をかけた男が同じようにグラスを手に立っていた。

「綺麗なお嬢さんが壁の花は勿体ないよ?」

(なんだこの人……)

ニコニコと笑顔を振りまいているが、初めて見る顔に警戒心が高まる。

着ている装いも変わっていて、民族衣装か?ここら辺では見たことがない。それより何より、纏っている雰囲気が怪しくて妖しい。直感で関わってはいけない人だと警告音が頭に鳴り響く。

「……ツレがいますので……」

「へえ?」

「……」

疑っているのか、その場から動こうとしない。それどころか、隣に並ぶように体をすり寄せてきた。

流石に「あの!」と声を出した所で「シャルロット」とドロシーが腕を組みながら声をかけてくれた。

「ドロシー!」

助かったとホッとしたのも束の間、ドロシーは男の顔を見て「ああ、来てくれたのか」と嬉しそうに頬を緩めた。こんな顔、余程信頼している者にしか見せない。

「…え?知り合い…なの?」

困惑と戸惑いが顔に出ながら問いかけると、二人はお互いに顔を見合わせクスッと微笑んだ。

「そうだな。知り合い…というよりは、より濃い関係だな」

「え!?」

ドロシーは男の腕に指を絡ませ、匂わす発言をしてくる。

「僕らは身も心も繋がってる仲なんだよ。知らなかった?」

「は!?」

男の方もドロシーの頬に手を当て、見せつかるかのように自分の顔を近づけている。傍から見れば、完全に友達以上の関係。各界で恋多き令嬢と名を轟かせているドロシーの事だ、男の一人や二人いても不思議じゃない。

何が悲しいって、そんな相手がいた事を親友である私に黙っていたって事が何よりも悲しい。

あまりの衝撃に言葉を言葉をかけるどころか、泣きそうになっているシャルロットを見て、ドロシーが「ふはっ!」と吹き出した。

「あははははは!!なんて顔してんだ!?冗談だよ!冗談!」

堪らないとばかりに腹を抱えて笑い出した。

「すまんすまん。そんな本気にするとは思わなかったんだよ。こいつは、ただの馴染の商人。あんたが思っているような事は一切ないから安心しな」

「騙してごめんね?僕は商人のシャオ。信頼と実績で未来を創る商人目指してます。以後お見知りおきを」

謝罪しながら丁寧な自己紹介を受けるが、何一つ頭に入ってこない。唯一分かることは、騙されて遊ばれたって事だけ…

シャルロットはムゥと頬をパンパに膨らませて不機嫌そうに二人を見ていた。

「もう、ごめんて。あまりにも簡単に信じてくれるからさ。こっちも面白くなっちゃって」

シャオは機嫌を取る為に、料理を持ってきたりグラスのおかわりを持ってきたりと甲斐甲斐しく世話を焼くが、シャルロットの機嫌は一向に良くならない。

「ほら、そろそろ機嫌を直しておくれ?今日は私を祝ってくれるんだろう?」

見かねたドロシーが、シャルロットを抱きしめるように引き寄せた。騙された怒りと親友を祝いたい気持ちが葛藤し、酷い顔になっていく。

「こら、可愛い顔が台無しだろ?」

そんな事言われたら、赤面してしまって言い返せない。顔を隠すようにドロシーに抱きついた。恥ずかしさもあるが、仕方ないから許してあげると言う意味合いもある。

「機嫌が直って何よりだよ」

「…ドロシーの事は許しても、貴方の事を許したつもりはありませんから」

ジロっと睨みつけながら牽制するが、シャオは怯える様子は一切ない。

「いいね、その眼。僕は好きだよ。君、名前なんて言うの?」

それどころか口説いてきやがった。

(絶対に教えない!)

口をつぐみ、睨みつけてやった。

「くくくっ、別に教えてくれなくてもいいけど、僕の情報網舐めない方がいいよ?」

完全なる脅し。

ドロシーからも「名前以外を知られたくなきゃ、大人しく教えた方がいい」と助言されてしまい、仕方なく名前を伝えた。

「シャルロット・ヴァレンティン…?ああ、君が─」

名を口にしながら何かを思い出したように呟くが、その言葉を遮るように「あ、まずい」とドロシーの焦った声が聞こえた。

「ロティ」

それは静かな低音の品質ある声…その声が聞こえた瞬間、その場の空気がピリついたものに変わった。振り返らなくても分かる威圧感。

焦り、恐怖、緊張、怒り…色んな感情が混じり合い、体が硬直して動かない。

(…奴が、来た…)

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