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第3話

Author: 草原の晴天
私は薬の受け取り窓口へ向かう。

画面に金額が表示される――5500円。

ポケットに手を入れる。

すべてのポケットを探ってみても、入っているのは1050円だけ。

私は列から抜ける。

病院の隅まで歩いていく。

診断書をきれいに折りたたみ、ズボンのポケットにしまう。

そして病院を出る。

冷たい風が頬を撫でる。

私は、数日前に綾音が言っていたことを思い出す。

冬になると、脚がひどく痛むらしい。

綾音は、ヒーターが内蔵された輸入品の膝サポーターを欲しがっている。

ずっとその話をしていた。

私は自分に言い聞かせる。

先に綾音の膝サポーターを買おう。

それを買い終わったら、自分の薬を買えばいい。

母はスマホを置く。

父を見て、首を横に振る。

「出ないわ」

綾音が眉をひそめる。

自分のスマホを操作しながら、ぽつりと呟く。

「愛理、今日はまだ連絡してこない」

声はひどく小さい。

「いつもなら、配達に出たら写真を送ってくれるのに」

リビングの空気が変わる。

まるで突然、時間まで凍りついたようだ。

テーブルの上では、スペアリブがまだ湯気を立てている。

誰も箸をつけない。

父はもう一度椅子に腰を下ろす。

母はスマホの画面をじっと見つめている。

綾音は車椅子の手すりを両手で強く握っている。

私は食卓のそばに立っている。

不安に曇った三人の顔を見つめる。

私は手を伸ばし、母の髪に触れようとする。

けれど、その手は何もない空気をすり抜ける。

この半月、私は毎日お金を計算している。

ヒーター付きの膝サポーターを買うために。

朝は冷たいパンを二つだけ持って家を出る。

昼は何も食べない。

夜は帰宅して、カップ麺を一杯だけ食べる。

毎日の食費を切り詰める。

携帯代の支払いも先延ばしにする。

冬を越すために持っていた唯一の厚手のゴム靴まで売る。

それで数千円を手に入れる。

そうして、持っているお金をすべてかき集める。

それでも、膝サポーターの値段には少し足りない。

私は診断書を取り出して、一度だけ目を通す。

そして、またポケットにしまう。

もう少しだ。

膝サポーターを買ったら、薬をもらいに行こう。

四日前の夜10時。

私は仕事を終えて帰宅する。

お腹が、まるで刃物で抉られているように痛む。

腰を曲げ、ドア枠につかまりながら家の中へ入る。

母は綾音に薬を飲ませている。

私は壁にもたれ、苦しそうに息をする。

「お母さん、何日もお腹が痛いの。

少しお金をくれない?薬を買ってきたいの」

母は顔すら上げない。

綾音の口元へ、スプーンを運ぶ。

「お姉ちゃんは毎日車椅子に座ってても、痛いなんて言わないわ。

たった何日間配達したくらいで、あっちが痛い、こっちが痛いって。

家のお金は全部綾音の薬代に使ってるの。ひと箱何万円もするんだから」

そこへ父が部屋から出てくる。

冷たい目で私を見る。

「先月も腹が痛いなんて言って、適当なことを言ってただろ。

何千円も検査代を無駄にしたくせに。

今度も同じ手を使うのか?

綾音がサプリメントを食べてるのが羨ましくて、仮病を使ってるんだろう?」

私は口を開く。

胃の中が激しくかき回される。

けれど、何も言葉にならない。

私は背を向け、自分の窓のない小さな部屋へ戻る。

ドアを閉める。

そして硬い板張りのベッドに身を投げ出す。

布団でお腹を必死に押さえる。

エビのように体を丸める。

歯を食いしばり、漏れそうになる呻き声を必死に飲み込む。

もうすぐ9時になる。

テーブルの料理は、すでに二度冷めている。

母は料理をキッチンへ運び、温め直してから、またテーブルへ戻す。

それでも、誰も食べない。

母はスマホを手に取り、もう一度私の番号へ電話をかける。

プルルル――プルルル――プルルル――

「申し訳ありません。おかけになった電話は、留守番電話サービスに接続されました」

機械的な女性の声が、静まり返ったリビングに響く。

母の手が震え始める。

「どうして留守番電話になるの?

愛理は、絶対に電源を切ったりしないのに。

電源を切ったら、配達の依頼だって受けられないでしょう」

父が窓辺まで歩いていく。そして窓を開け、下を覗き込む。

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