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言葉が欲しい①

Author: 藍沢咲良
last update publish date: 2026-09-24 16:03:24

早すぎて、心臓が跳ねる。

「……お前は」

瑛が言いかけて止まる。

一度、喉が上下する。

それから、低く続けた。

「そういう言い方をするな」

「……どういう」

「……俺が」

そこで一瞬、言葉が切れる。

瑛の手が、首から肩へ移動して

私を鏡の前から少しだけ引き寄せた。

背中に、胸が触れそうな距離。

「……俺が、増やしたくなる」

低音。

理性ギリ。

“言ってはいけない告白”みたいな声。

私は息を呑んで、コンシーラーのパフを置いた。

「……仕事」

「分かってる」

即答。

でも離れない。

瑛の指が、もう一度首筋をなぞる。

さっきより少しだけ強く。

「見える場所は、今日はやめる」

言い方が、完全に“業務判断”。

でも、次に続いた一言で全部崩れる。

「……代わりに」

瑛の唇が、私の耳の後ろに触れた。

触れるだけ。

押し付けない。

でも、呼吸が熱い。

「消えないところにする」

耳元で落ちる低音に、足元が揺れる。

「……瑛」

「時間だ」

言いながら、瑛は私の肩紐を“元に戻す”。

乱さない。

整える。

その丁寧さがいちばん危険。

鏡の中で、瑛がネクタイを締め直す。

完璧な顔に戻そうとしてるのに、

目だけ
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    「……りおちゃん」莉子さんが、耳元で囁いた。「今の顔、だいぶまずいよ」「何がですか」「恋してる人の顔」私は返事ができなかった。ステージ上のコントが終わり、大きな拍手が起きる。司会者が再びマイクを握った。「ありがとうございました! いやあ、今年からなのに、レベルが高いですね!」会場が笑う。「それでは、いよいよ本日のラストです」胸の奥が、どくんと鳴った。司会者が、わざと少し間を置く。会場中が、次の言葉を待っている。「トリを飾りますのは──」私は無意識に息を止めた。「賃貸営業部と賃貸管理部選抜の皆さんによる、BTS『Dynamite』です!」その瞬間、会場が一気に沸いた。拍手。歓声。口笛。誰かが「待ってました!」と叫ぶ。私はその渦の中で、ただステージ袖を見つめていた。照明が少し落ちる。ステージの中央に、柔らかい光が集まる。冒頭。蒼くんのグクパート。神谷さんがナムさんのパートで出てきて。そして、瑛が現れた。ホビのパートだ。一瞬だけ、目が合った気がした。けれど、すぐに瑛は視線を客席の奥へ流して、何事もなかったみたいに笑った。その笑い方が、ずるかった。いつものスーツ姿とは少し違う。ジャケットはなく、白いシャツに黒いパンツ。ネクタイは外していて、袖は軽くまくっている。それだけなのに、会場の空気が変わった気がした。隣で莉子さんが、小さく息を呑む。「……これは、ずるいね」本当に、ずるい。私はグラスを持つ手に力を込めた。美味しい料理と美味しいお酒。余興を見るだけの私は、気が楽だった。そう思っていた数時間前の自分を、少しだけ恨んだ。こんなの、気楽に見られるわけがない。音楽が鳴った瞬間、瑛の空気が変わった。それまでの瑛は、いつもの瑛だった。落ち着いていて、余興のステージに立っていることすら、会議のひとつみたいな顔をしていた。なのに、最初のステップを踏んだ瞬間、会場がわっと沸いた。白いシャツの袖をまくった腕。無駄のない動き。少し伏せた視線が、音に合わせて上がる。──まずい。そう思った時には、もう遅かった。瑛はセンターにいた。普段、感情を表に出さない人が、音楽に合わせて肩を揺らし、軽く顎を上げる。それだけで、会場の視線が一斉に集まる。「……りおちゃん」隣で莉子さんが、楽しそうに囁いた。「呼吸

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  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜   特技はなあに?③

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