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第2話

Author: 白黒ねこ
瑛介とは幼なじみで、幼稚園の頃から一緒だった。

幼稚園から大学まで、彼の青春のどこを切り取っても、そこには私がいた。

卒業後、私たちは二人でゼロから会社を立ち上げた。

私のデザイン力と瑛介の経営手腕を生かし、この街で少しずつ実績を築いていった。

事業が軌道に乗った日、私は瑛介のプロポーズを受け入れ、ドイツで学ぶ機会を手放した。

私たちが結ばれるのは、誰にとっても当然のことに思えた。

結婚式には、それぞれの親しい友人を招いた。

親友だった彩乃は招待を受け、ブライズメイドまで務めてくれた。

あの日が、瑛介と彩乃が出会った日だったのだろう。

結婚後も、私たちは仕事の手を緩めなかった。

会社は立ち上がったばかりで、休んでいる余裕などなかった。

次々に押し寄せるデザイン業務に、私は息をつく暇さえなくなっていった。

それでも、わずかな休みの間くらい、夫に甘え、大切にされたかった。

だがその頃から、瑛介は私を煩わしそうにするようになった。

子どもっぽいことはやめろ、少しの時間も無駄にせず二人の将来のために働け、と言われた。

当時は分からなかった。今ならよく分かる。

瑛介の言う「二人」に、必ずしも私は含まれていなかったのだ。

成功した途端、それまで支えてくれた相手を真っ先に切り捨てる人がいる。

幼い頃から瑛介を知っていた私は、彼だけはそんな人ではないと思い込んでいた。

だが現実は、私の考えがあまりにも甘かったことを突きつけた。

会社が軌道に乗ると、瑛介は会食や取引先との付き合いが増えたから、業務を手伝う秘書が必要だと言い出した。

私は何も疑わず、卒業後もなかなか仕事が決まらなかった親友の彩乃を彼に紹介した。

振り返れば、彩乃が入社したのは、ちょうど4年前だった。

退勤時刻を過ぎたオフィスは暗く、明かりがついているのは私のオフィスだけだった。

自分が描いた原案をすべてスキャンして保存したあと、その原本を一枚ずつシュレッダーへ入れた。

低い機械音が鳴り続ける中、涙が頬を伝った。

裁断されているのは紙だけではなかった。

私の心も、同じように粉々になっていった。

紙くずを自分の手で捨てると、誰もいないオフィスに座り、2日後に出発するドイツ行きの便を予約した。

予約完了の通知がスマホに届き、ようやく長く息を吐いた。

瑛介とのLINEを開いて、初めて気づいた。

いつの間にか、私たちのやり取りは、冷たい業務連絡ばかりになっていた。

人が誰かに注げる優しさには、限りがあるのだろう。

すべてを別の人に渡してしまえば、私の分はもう残らない。

私的な最後のやり取りは、1週間前に送った宅配ロッカーの暗証番号だった。

それさえ、結局は私が自分で荷物を取りに行った。

SNSで彩乃に向けていた甘い言葉と、私のLINEに並ぶ素っ気ない業務連絡。

真夏だというのに、身体の芯まで冷え切った。

瑛介に電話をかけ、きちんと話そうとした、その時だった。

着信音が鳴り、スマホが震えた。

瑛介からだった。

「奈緒、俺……飲みすぎた。迎えに来てくれ……」

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