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35.届かない言葉

作者: 渡瀬藍兵
last update 公開日: 2026-08-14 19:00:00

僕たちが風鳴トンネルを離れ、バス停へ向かっていた途中のことだった。

 山道の向こうから、一人の男性が歩いてきた。

 くたびれた紺色のスーツを身にまとい、ワックスで整えていたらしい髪もすっかり崩れている。けれど、その手に抱えられた花束だけは、ひどく丁寧に包まれていた。

 白い花々が、男性の歩みに合わせて小さく揺れている。

 すれ違いざま、僕たちは互いに軽く会釈を交わした。

 そのまま数歩進んだところで、背後から聞こえていた靴音がふいに止まる。

「君たち」

 突然呼び止められ、肩が跳ねた。

 白い花束を抱え、風鳴トンネルへ向かう人。

 もしかすると、あの場所で亡くなった誰かの関係者なのではないだろうか。そんな考えが、真っ先に頭をよぎった。

「はい?」

 振り返ると、男性は僕たちをじっと見つめていた。

 眼差しは肌にまとわりつくように疑い深い。それなのに、その瞳自体は妙に乾いて見えた。怒っているというより、怒ることにさえ疲れてしまったような目だった。

「……君たちは、どうしてあのトン
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