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33.美琴の指導

مؤلف: 渡瀬藍兵
last update تاريخ النشر: 2026-08-10 20:12:09
 空は、今にも泣き出しそうだった。

 低く垂れ込めた鈍色の雲の下、目の前には──風鳴トンネル。苔と水気にまみれた坑口が、暗い口を大きく開けている。その入口の脇には、花束がひとつ、静かに供えられていた。

 僕と美琴は、それぞれ傘を片手に、その暗がりの前へ並んで立っている。

「着きましたね」

「……うん」

 屋上で言葉を交わした、その翌日。土曜日の今日、僕たちは約束どおり、風鳴トンネルを再び訪れていた。

 驚くべきことに、昨日まで僕を苛んでいた異常な倦怠感は、今朝にはすっかり消え去っていた。美琴の言葉を疑っていたわけじゃない。それでも、まさか本当に、ここまで一気に楽になるなんて。目を覚ました瞬間、あまりの身体の軽さに、しばらく布団の中で呆けてしまったほどだ。

「では、先輩。今一度、御霊見を発動することは出来ますか?」

 なんて無茶を言うんだ、と思う。発動のさせ方なんて、僕はまだ何ひとつ分かっていないのだ。それでも──やってみるしかない。

「わ、わかった」

 えっと……あのときの感覚は……そうだ。たしか、目に熱さを感じた気がする。

 その記憶を手繰り寄せながら、自分の両
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  • 縁が結ぶ影   33.美琴の指導

     空は、今にも泣き出しそうだった。  低く垂れ込めた鈍色の雲の下、目の前には──風鳴トンネル。苔と水気にまみれた坑口が、暗い口を大きく開けている。その入口の脇には、花束がひとつ、静かに供えられていた。  僕と美琴は、それぞれ傘を片手に、その暗がりの前へ並んで立っている。 「着きましたね」 「……うん」  屋上で言葉を交わした、その翌日。土曜日の今日、僕たちは約束どおり、風鳴トンネルを再び訪れていた。  驚くべきことに、昨日まで僕を苛んでいた異常な倦怠感は、今朝にはすっかり消え去っていた。美琴の言葉を疑っていたわけじゃない。それでも、まさか本当に、ここまで一気に楽になるなんて。目を覚ました瞬間、あまりの身体の軽さに、しばらく布団の中で呆けてしまったほどだ。 「では、先輩。今一度、御霊見を発動することは出来ますか?」  なんて無茶を言うんだ、と思う。発動のさせ方なんて、僕はまだ何ひとつ分かっていないのだ。それでも──やってみるしかない。 「わ、わかった」  えっと……あのときの感覚は……そうだ。たしか、目に熱さを感じた気がする。  その記憶を手繰り寄せながら、自分の両目に意識を集中させる。  ……。  けれど、いくら待っても視界は揺らがなかった。目に熱が灯る気配もない。 「ダメみたいだ……」  美琴は顎に指を添え、しばらく考え込む素振りを見せた。 「……やはり、自発的に発現したわけではない、ということですね」 「えっと……つまり?」 「恐らく、私の霊気に触発されて、先輩の中に宿っていた巫女の力が発現した。そう考えるのが自然ですね」  説明されても、正直、まだ何ひとつ現実感が湧かない。  ただ、思い返してみれば辻褄は合う。僕はおそらく、桜織旧病院で初めて、彼女の言う「霊気」というものに触れた。そして前回、このトンネルで手を繋いだとき、もう一度触れている。つまり──二度目で、発現したことになる。  頭では、そう整理できる。それでも「僕の中に巫女の力が宿っていた」なんて、まだどこか他人事のようにしか響かなかった。 「ひとまず、もう一度手を繋いでみましょう。そして、また前回同様に、私から先輩へ霊気を流します」  そう言って、美琴が手を差し伸べてくる。  僕は頷いて、傘を持っていない方の手で、その柔らかな手を、また取った。 「では

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