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第11話

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月曜日の朝八時。楓は千波製薬のビルへ足を踏み入れ、白衣に着替えた。

胸の奥に広がるのは、緊張と高揚が入り混じった感覚。これが、彼女にとって初めての正式な仕事――新しい人生の始まりだ。

研究開発部のマネージャー、夏帆(かほ)は四十代の女性。金縁眼鏡の実務派で、言葉も動きも無駄がない。

彼女は楓を研究室へ案内し、部門メンバーに紹介した。

「皆さん、新しく入った研究員の楓さんです」

その直後。研究室の左前方から、悲鳴みたいな声が上がった。

「ちょっと待って!桃奈、試薬入れるの間違えてるよ!実験が全部台無しじゃないか!」

若い男性研究員が白煙を上げるビーカーを指差す。隣の女性が慌ててこぼれた試薬を拭き取っていた。顔面蒼白だ。

楓はそちらを見た。そして、その女性の姿を認めた瞬間、胸の奥がずしんと沈んだ。

――どうして、よりにもよって、ここで。

吉永桃奈(よしなが ももな)。

桃奈の父親は、かつて高宮製薬の購買部長だった。そして、その会社を創業したのは楓の父だ。

二人は幼なじみだった。一緒に学校へ通って、遊んで、楓は彼女を姉妹みたいに思っていた。

けれど、高宮製薬が倒産し
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