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第832話

Author: 青葉凛
一方、紫音の真摯な眼差しを受け止めた蘭は、胸の奥がキュッと痛むのを感じた。

私が不甲斐ないばかりに、紫音さんにまでこんなに心配をかけてしまっている……

蘭は深い罪悪感に苛まれた。自分の身の程知らずな恋愛のせいで、尊敬する上司をここまで巻き込んでしまったのだ。

「お願いだから、紫音さん。……もう、私のことは放っておいてください」

蘭は絞り出すような声で、紫音の言葉を遮った。

「彼が諦めていなかろうと、私にとってはもう終わったことなんです。

過去のことはなかったことにしたい……だから、もうこの話はしたくありません。

会社にはまだやるべき業務が山積みですよね。私は今、紫音さんの右腕として、仕事で恩返しをすることだけを考えたいんです」

表情を硬くし、淡々と業務に戻ろうとする蘭の拒絶の壁は分厚く、これ以上踏み込むことは許されなかった。

紫音は小さく息を吐き、それ以上の説得を諦めた。

今の蘭に必要なのは、無責任な慰めや励ましではない。一人になって、ズタズタに引き裂かれた心を安全な場所で休ませるための「静寂」なのだ。

本当に、誰も悪くないのに……どうしてこんなことになってしまう
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