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第863話

Author: 青葉凛
その姿を見下ろしながら、州は深い溜息を落としそうになるのを堪えた。

今の彼女の頭の中は、完全に浩一のことで埋め尽くされている。

一人の男に全ての感情を依存し、自分自身を完全に見失っているように見えた。

狂信的なまでに「彼との結婚」という幻想にのめり込み、自分が泥沼に沈んでいることにも気づいていない。

州の目から見れば、そんな彼女の姿はひどく哀れで、痛々しかった。

だが同時に、そこまで全身全霊で一つのものに執着し、「どんな結末を迎えようとも絶対に手に入れる」と腹を括っているその執念は、ある意味で凄まじいとも言える。

本人がそこまで覚悟を決めているのなら、外野の自分がこれ以上口を挟む権利はない。

「俺から見ても、彼好みだと思うよ。気に入ったなら買っておけばいい」

「そうね!じゃあこれにするわ」

結衣は上機嫌で店員にカードを渡し、嬉々としてプレゼントを包ませた。

――浩一と結衣。二人の関係性は、傍から見ればひどく歪で複雑だった。

本人同士は一度たりとも恋人として付き合ったことすらないというのに、両家の親たちは「いずれ結ばれて当然の二人」として一切の疑いを持っていない。

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