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第874話

Author: 青葉凛
紫音はどうしても首を縦に振れなかった。

彼女は元来、責任感が人一倍強く、仲間を見捨てることができない性格だ。

自分の周囲の人間が暗い顔をして苦しんでいる時に、自分だけが幸せに浸るなど、彼女の矜持が許さなかった。どうにかして彼らの力になりたい。

でも、具体的にどう動けばいいのか分からない。そのジレンマが、紫音をオフィスに縛り付けていた。

「君の優しさはよく分かっている。だがね、紫音。君がここに残ったところで、彼らの恋愛問題の根本的な解決にはならないだろう?」

律は紫音の椅子の背もたれから手を離し、今度は彼女の正面に回ってその両手をそっと包み込んだ。

そして、彼特有のひどく静かな、それでいて有無を言わせない凪いだ視線で紫音をまっすぐに見つめた。

「私にとって一番意味があるのは、君が毎日心穏やかに、笑顔でいてくれることだ。君が彼らの痛みに寄り添い、共に苦しむことではない。

……それに、君がここに残って気を揉んだところで、実質的に手助けできることがないのなら、君まで一緒に心をすり減らす意味がどこにある?」

「それは……」

「仕事のこともそうだ。仕事など、どれだけこなしても尽
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