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番外編:魔族のその頃1

last update Huling Na-update: 2025-07-08 11:46:38

 北にある魔族の土地は瘴気がほとんど浄化されて、人の住める土地となった。

 特に瘴気の濃い場所は未だに少し残っているケースもあるが、発見されたら私が出向いて浄化を行っている。

 瘴気からは魔物が生まれて、魔物からもまた瘴気が生まれる。

 放置して広がってしまったら、これまでの苦労が水の泡になってしまうからだ。

 魔族の飛行兵たちが積極的に土地を見て回って、目を光らせている。空から見れば一目瞭然だからだ。

 魔物はもうほとんど出ないから、監視兵たちの危険も少ない。二~三人程度の小隊を組んで見回りを行っているそうだ。

 というわけで、今日も小さな瘴気溜まりを浄化した。

 魔族の城から北東にある、元は沼地だった場所だった。

「特に問題なかったね」

 私を背中に乗せているドラゴンのグランが言うので、うなずいた。

「私も光の魔力の扱いに慣れたわ。ただ、これだけ広い土地だから。少しの瘴気も見逃さないというのは、けっこう大変」

「うん。少なくとも北の山脈までの土地は、瘴気がない状態にしておきたい。かなりの広さだ」

 北の山脈は自然の要塞として瘴気の侵入を阻んでいた歴史がある。

 けれど瘴気は最後には山を乗り越えて南の平原までやってきた。

 それからの汚染のスピードは早く、歴代の魔王が魔力の障壁で阻んでいながらも次々と追い詰められる羽目になったのだ。

「北の山脈までの土地をしっかり確保できれば、山裾を監視するだけで良くなるから。そうなればいくらか楽だと思う」

「早くそうしたいわね」

「十年以内にはできると思うよ。この一年でだいぶ減らしたしね」

 話しながらも、ドラゴンのグランは素晴らしいスピードで飛んでいく。

 彼は魔王なだけあって、他のどんな魔族よりも速い速度で空を駆けることができる。

 瘴気溜まりを見つけたら、素早く現地まで行けるのは大きなメリットだ。

 もちろん力も強いので、多少の魔物が出ても簡単に蹴散らしてくれる。

「それにしても、これだけの広大な土地……」

 グラン

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