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第4話

مؤلف: 鳳小安
中絶手術の後、亜里の体はひどく弱っていた。

彼女は自宅に電話し、家政婦の大塚にスープを作って病院に届けるよう頼んだ。

大塚がスープの入った保温容器を抱え、病院の廊下を急いでいる途中、ちょうど時凪と静玖に出くわした。

「大塚さん?どうしてここに?」

「旦那様、奥様がスープを作って届けるようおっしゃいましたので」

「……スープ?」

時凪は眉をひそめた。

「なぜ急にそんなものを?」

「あら、きっと私に届けてくださるんでしょう?」

静玖がにっこり笑い、さっさと大塚の手から容器を受け取った。

「亜里さん、本当に気が利くわね。いつも私のことを気遣ってくださる。産後の栄養補給まで考えてくださって」

「……そうか。確かに、亜里は気が利くな」

時凪はうなずき、大塚に言い渡した。

「これから数日間は、静玖のためにスープを準備しておけ」

「でも、これは……旦那様、これは奥様がご自身に――」

「もう、いいじゃない。スープ一杯でそんなに言うこと?」

静玖が不満そうに唇をとがらせた。

「作るのが面倒なの?いい?もうすぐ私が新井夫人なんだから、私の言うことも聞きなさいよ!」

苛立ちのこもった声に、大塚は押し黙り、うなずくしかなかった。

「……はい、鈴木さん。では、失礼いたします」

「ああ、待て。せっかくだから、これも持っていけ」

時凪が一枚の書類を差し出した。

「亜里に渡して、できるだけ早くサインして返すように言ってくれ。

それと……一番愛しているのはやっぱり彼女だって、伝えておけ。彼女の子供が生まれたら、すぐに復縁するからな」

亜里は病室でずっと待っていたが、大塚はなかなか現れない。

ようやく姿を見せたとき、彼女の手にスープじゃなく、書類だけを持っていた。

「どうしたの?スープは?」

「奥様……申し訳ございません。スープは、鈴木さんがお取りになってしまいました。どうしてもご自分のものだと言い張り、旦那様もそうおっしゃるので……」

亜里の表情が一瞬で凍りついた。

「……それで、あなたが持っているのは?」

大塚が恐る恐る書類を差し出した。

「離婚協議書と離婚届です。旦那様が、お届けするようにと。復縁されるとおっしゃっていました」

「……はやいわね」

一日も経たないうちに、書類まで整っている。

ためらうことなく、彼女はベッドサイドのペンを取り、その場でサインを書き記した。

――復縁?冗談じゃない。時凪。

大塚が小声で尋ねた。

「……それでは奥様、もう一度スープを作り直して、お持ちしましょうか?」

亜里は冷たい笑みを浮かべた。

「いいえ。私が取りに行く」

静玖の病室の前まで来ると、中から楽しげな会話が聞こえてきた。スープをすすりながら、親しい女友達と電話しているらしい。

「うん、そうなの。あの亜里、結局私には勝てなかったわ。もう離婚協議書と離婚届にサインしたんだから、あとはただの手続きだけよ」

「でも聞いたけど、あの女もまだ六ヶ月でしょ?子供が生まれたら、時凪って本当にあなたと離婚するの?」

「ふふ……あの子が無事に生まれてくると思う?ちゃんとチャンスをうかがって、お腹の中で処理してやるわ!」

――!

その言葉を聞いた瞬間、亜里の内にあった最後の理性の糸が、ぷつりと切れた。

ドンッ!

彼女はドアを蹴り開け、怒涛の勢いで室内に駆け込むと、静玖の髪を掴んで引きずり下ろし、テーブルの上のスープの容器をひっくり返した。

熱いスープが静玖の顔と髪にべっとりとかかる。

「きゃああっ!?亜里!頭がおかしいんじゃないの!?」

「そうよ、頭がおかしいの!今日こそ教えてやる、泥棒猫がどんな末路をたどるのかを!」

ベッドから引きずり下ろし、床に押し倒す。亜里は静玖の顔を狙い、左右から容赦なく平手打ちを浴びせた。

「私の物を奪うのが好きなのね!?私の夫を、私のスープを、そして――私の子供の命まで奪おうとして!?

時凪も目が腐ってるわ、あんたのような女を宝物のように扱うなんて!」

バシッ!バシッ!バシッ!

打撃の音が病室に響く。静玖の頬はみるみる腫れ上がり、唇の端から血がにじんだ。

「やめて!私を殴ったら……時凪が絶対に許さないからね!」

「殴ったもの勝ちよ。彼にどうにかできると思う?」

亜里は静玖の顎を掴み、顔をぐいと引き寄せて、息を呑むような低い声で呟いた。

「いい?新井夫人の座は、あなたが奪ったんじゃない。私が捨てたの。あんな男、もうこれっぽっちもいらないんだから」

ぐいっと顎を振り払い、亜里は彼女の上から立ち上がった。

「それに、離婚の手続きが終わってない限り、私はまだ新井夫人よ。

新井家の家政婦をあなたが呼びつけられると思ってるの?あのスープは私のもの。あなたに奪う権利なんて、最初からなかったの」

「この……アマ!殺してやる!」

静玖が床から起き上がり、狂ったように飛びかかろうとしたその瞬間――

ドアの外から、近づく足音が聞こえた。

彼女の動きが一瞬止まる。視線が、部屋の隅のベビーベッドに揺らめく。

次の瞬間、彼女は信じられない行動に出た。

テーブルの上の枕をひったくり、ベビーベッドに駆け寄ると、その枕を――赤ん坊の顔めがけて、ぐいっと押し当てたのだ。

「……っ!?」

最初の一声だけがかすかに聞こえ、その後、赤ん坊の泣き声は、急に途絶えた。

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