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第6話

Author: 月明かり
車が埠頭に着くと、晴也は飛び降りるようにして高速艇へ乗り込んだ。

そして自ら舵を取り、荒れ狂う海へ向かって船を走らせた。

波が船体を激しく叩きつけ、今にも彼を飲み込もうとしているようだった。

それでも彼は、少しも怯まなかった。

彼の心にあるのは、ただ一つの願いだけだった――美海、どうか待っていてくれ。

……

私は刺すような寒さの中で目を覚ました。

波は何度も私を岸へ押し戻しては、容赦なく海の中へ引きずり込んでいった。

右手の傷からはまだ血が流れていた。

傷口に海水が染み込み、焼けるような痛みに意識が遠のきそうになる。

このまま海に完全に飲み込まれるのだと思ったその時、突然、力強い腕が私の体を抱き上げた。

鼻先に、どこか懐かしい木の香りが漂った。

私は必死に目を開けると、そこにいたのは、焦った表情を浮かべた小林文也(こばやし ふみや)だった。

彼の声は震えていた。

「美海!大丈夫か?」

文也は晴也の生死を共にした親友で、組の中でも数少ない、ずっと私に善意を向けてくれていた人だった。

彼は何度も晴也を諫めてくれた。

けれど、その言葉が届くことはほとんどなか
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    しかし、その結婚式が行われる前に、晴也は激しい怒りを露わにして、私のもとへやって来た。「美海、やりすぎだ。なぜ優子のウェディングドレスを切り裂いたんだ?ドレスを傷つければ、俺たちが結婚をやめるとでも思ったのか?」私は慌てて弁解した。「私じゃない!」けれど、彼は聞く耳を持たなかった。「使用人たちはみんな口を揃えて言っている。お前がこっそり抜け出して、ドレスを切り裂いたと。証言も証拠も揃っているのに、まだ言い逃れをするつもりなのか。お前に本当にがっかりした」そう言うと、彼は背後から短剣を取り出した。「今まで俺がお前をきちんと躾けてこなかった。これからは俺が、人としてどう振る舞うべきかを教えてやる」次の瞬間、彼は私の右手の甲を目がけて、短剣を振り上げた。「この手でやったのか?これで、二度と同じことをしないよう覚えておけ」冷たい光を放つ刃が振り下ろされた。右手の甲に鋭い冷たさを感じた直後、えぐられるような激痛が襲ってきた。血がどくどくと溢れ出し、あっという間に袖口を赤く染める。真っ赤な血が、晴也の目にも焼きついたようだった。彼は短剣を握る手をわずかに震わせていた。まるで、自分が本当に手を下すことになるとは思っていなかったかのように。「痛いか?」彼の声はかすれていた。そこには、本人ですら気づかないほど小さな後悔が滲んでいた。けれど、それもすぐに冷たい声へと変わった。「痛い目を見なければ、していいことと悪いことの区別もつかないだろう 」そう言うと、彼は手下へ命じた。「彼女を島へ送れ。そこでよく反省させろ」……私は二人の手下に乱暴に船へ引きずり込まれ、そのまま孤島へ連れて行かれた。右手の甲の傷に海水の塩分が染み、焼けるように痛んでいる。けれど、それは心が死んでいく痛みに比べれば、ほんの一万分の一にも満たなかった。船室の外では、護送を任された二人の手下の会話が、海風に乗って途切れ途切れに聞こえてきた。「晴兄貴、今回は本当に怒っているな。お嬢様のためとはいえ、まさか水原さんに手を上げるなんて」「何も分かってないな。晴兄貴はずっと前から、あいつを追い出したかったんだ。お嬢様からも、あいつが目障りだから追い出してくれと強く迫られている。それに、今の晴兄貴の立場を考えてみろ

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